安徳天皇漂海記 の商品レビュー
幻想文学として素晴らしく読み応えのある物語だ。平家物語で海中に身を投げた安徳天皇を軸に、鎌倉幕府三代将軍であり歌人でもある右大臣実朝が前編、東方見聞録のマルコポーロが後編で絡んでいく、その構成だけ見てもなんとも幻想的である。 正直、〜でございます、という文語体で書かれる前編は読み...
幻想文学として素晴らしく読み応えのある物語だ。平家物語で海中に身を投げた安徳天皇を軸に、鎌倉幕府三代将軍であり歌人でもある右大臣実朝が前編、東方見聞録のマルコポーロが後編で絡んでいく、その構成だけ見てもなんとも幻想的である。 正直、〜でございます、という文語体で書かれる前編は読みづらくてしょうがないが、実朝の詠んだ歌を上手く物語の設定に沿って配置するなど、手が込んでいて、徐々に盛り上がってくる。 口語体となる後編では一気に幻想が花開く感があり、どんどん読み進められる。 参考文献に太宰治の「右大臣実朝」と澁澤龍彦の「高岳親王航海記」とあるのも胸熱。
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かなり史実に基づきながらも怪異譚と混ざり合った形で,二人の幼い皇帝の死を傷んでいる.安徳天皇に対する実朝の関わり方は独創的で,前半の実朝の滅びに向かって静かに歩んでいるかのような態度は,そういうことだったのかと説得力があった.後半のマルコ・ポーロ編は元寇に安徳天皇が絡んでくるなど...
かなり史実に基づきながらも怪異譚と混ざり合った形で,二人の幼い皇帝の死を傷んでいる.安徳天皇に対する実朝の関わり方は独創的で,前半の実朝の滅びに向かって静かに歩んでいるかのような態度は,そういうことだったのかと説得力があった.後半のマルコ・ポーロ編は元寇に安徳天皇が絡んでくるなど,驚きの事実?そして,神話の水蛭子の哀しみに思いを馳せて唐突に終わる.かなりユニークで面白かった.
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亡国、流亡、衰亡、滅亡、興亡、亡者…。読んでいるあいだ、「亡」という文字がずっと頭の隅に引っかかっていた。歴史の中で浮かんでは消える「亡」とはなんなのか、伝奇ものならではの手法でみごとに描いている。お薦め。
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歴史小説かと思ったら、まるで違った。前半は語り部が誘導してくれるけど、後半は自分で持てる限りの想像力を駆使して読まなきゃならない。広がりが予想以上ですよ。
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落人伝説のような物語を想像していたが、まったく違った。 壇ノ浦の後の時代に天子と関わる人々の物語。 『古事記』『平家物語』『東方見聞録』などの史料がつながり、足跡ができていく。 関わりは無いように見える物語がつながっていく様子に驚いた。 第一部と第二部でまったく別の作品にも見え...
落人伝説のような物語を想像していたが、まったく違った。 壇ノ浦の後の時代に天子と関わる人々の物語。 『古事記』『平家物語』『東方見聞録』などの史料がつながり、足跡ができていく。 関わりは無いように見える物語がつながっていく様子に驚いた。 第一部と第二部でまったく別の作品にも見えるが、天子を荒ぶる御霊にさせまいと動く物語の軸は一貫している。 軸となる話が幼い天子の入水なので、物語の雰囲気は静かで哀しい。 歴史小説ではなく歴史ファンタジー。 序盤の鎌倉ではゆっくり進む物語に焦れましたが、舞台が移って行くに連れ世界が広がってからは、もう一気に読めちゃう。 おもしろかった。
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幼帝の 御霊包みし 琥珀玉 波間漂い 時を越えゆく 壇ノ浦の合戦で亡くなった安徳天皇をモチーフにしていたので、山口県に住んでるものとして、興味があって読んでみました。 面白かったけど幻想小説としては少し地味かもしれません。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
壇ノ浦で入水したはずの安徳天皇が実は・・・、という話はよくあるんだけど、これは琥珀の玉の中で老いもせず生き続けてる、といういきなりなんだかすごい特殊なイメージ。 山田風太郎とかともまた違う、こゆのなんていうんだろ?歴史ファンタジー?伝奇? どこへ連れて行かれるかわからないのが面白くもあり、微妙に不安でもある。 第二章での南宋の少年皇帝がせつなくてしんみり読んでたら最後の最後は古事記にまでさかのぼってく怒濤の展開。 不思議な本だった。一度では消化しきれなかったので、もう一度読みたいです。
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源平の争いの最中、壇ノ浦で入水された安徳天皇。 齢6歳で崩御された幼帝の魂は鎌倉へ、そして中国の抗州へ。。。 物語は2部構成でつづられる。 第一部は三代将軍 実朝時代の鎌倉。 陰謀蠢く鎌倉で、実朝が海外への夢。実朝はなぜ大船建設をしてまで海外への夢を持つに至ったかを、漂う安徳...
源平の争いの最中、壇ノ浦で入水された安徳天皇。 齢6歳で崩御された幼帝の魂は鎌倉へ、そして中国の抗州へ。。。 物語は2部構成でつづられる。 第一部は三代将軍 実朝時代の鎌倉。 陰謀蠢く鎌倉で、実朝が海外への夢。実朝はなぜ大船建設をしてまで海外への夢を持つに至ったかを、漂う安徳天皇の魂が巻き起こす騒動とともに描かれる。 実朝の従者の視点で、語られる。 第二部は、元朝皇帝フビライ時代の抗州。 元の侵攻により、滅亡寸前の南宋。 南宋最後の皇帝祥興の悲劇を、安徳天皇との不思議な符合をモチーフに描かれる。 当時、元皇帝フビライの側に近侍ていたベネチアの商人マルコポーロの視点で語られる。 第一部と第二部では、文体が全く違います。 第一部では歴史書(主に吾妻鏡)を意識しており、硬派な時代小説と行った雰囲気ですが、二部に入った途端にライトなファンタジー小説風の雰囲気に。 正直、第二部は辛かったです。 荒唐無稽な話も、第一部のような世界観のディティールにこだわっていれば、世界にのめりこめるのですが、第二部は語り口のせいなのか世界観に深みがないため、安っぽいファンタジーを延々読まされているような感想でした。 読了後は、第二部の印象が強いため、第一部のいい部分も記憶が薄れてしまう。 この小説、第一部のみで完結した方がよかったのではないでしょうか?
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壇ノ浦の合戦で入水した幼帝安徳天皇は、琥珀色の玉に包まれて海を漂う・・・。 源実朝が自分の首を捧げることで日本を救う第1部、マルコ・ポーロが黄金の島に辿り着く第2部とも、史実をファンタジーで紡いでいく手法の巧みさに驚かされます。 そして、要所を和歌でバシッと決めるのも素敵で...
壇ノ浦の合戦で入水した幼帝安徳天皇は、琥珀色の玉に包まれて海を漂う・・・。 源実朝が自分の首を捧げることで日本を救う第1部、マルコ・ポーロが黄金の島に辿り着く第2部とも、史実をファンタジーで紡いでいく手法の巧みさに驚かされます。 そして、要所を和歌でバシッと決めるのも素敵であります。 また、ストーリー全体が澁澤龍彦「高丘親王航海記」を下地にしているのですが、かの名作とは味わいの異なる美しさに酔いしれそう。特にラストのへんとか。
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買って、最初の数頁だけ読んで、本棚の肥しになっていた本。 出だしが読みにくい本なのだろう。そういう本はよくある。 久しぶりに手にとって、最後まで、一気に読んでしまった。 舞台は鎌倉時代の初めだが、最後は中国まで、舞台を広げ、スケールのでかいストーリーになっている。
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