ある秘密 の商品レビュー
フィクションと思って読んでたら、ノンフィクションに近い話だった。 秘密は大きなことのように思えなかったけれど当人にとっては重大なことだったんだろう。もっとボリュームをかけて記述があったなら、どんなに当人が重く感じてたか受け取れたように思う。 本自体割と薄くて、小さいブロックに分か...
フィクションと思って読んでたら、ノンフィクションに近い話だった。 秘密は大きなことのように思えなかったけれど当人にとっては重大なことだったんだろう。もっとボリュームをかけて記述があったなら、どんなに当人が重く感じてたか受け取れたように思う。 本自体割と薄くて、小さいブロックに分かれてて読み易い。
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第二次世界大戦時におけるドイツナチスのユダヤ人に対するジェノサイト(大量虐殺)の物語は多く語られている。 今でもドキュメント映像として時より引用されていることから、きっと白黒の映像を目にしたことがあるのでは。 代表的な物語は『アンネの日記』。 映画では『シンドラーのリスト』『戦...
第二次世界大戦時におけるドイツナチスのユダヤ人に対するジェノサイト(大量虐殺)の物語は多く語られている。 今でもドキュメント映像として時より引用されていることから、きっと白黒の映像を目にしたことがあるのでは。 代表的な物語は『アンネの日記』。 映画では『シンドラーのリスト』『戦場のピアニスト』などがアカデミー賞作品として知られている。 作者は自身の両親にまつわるエピソードを「ある秘密」と称して小説化した。 それは、ありきたりの悲劇物語ではなく、家庭の恥部も描く。 「そこには確かに人間の家族が存在し、いやなことも、いいことも綴られている」ことを……。 ホロコーストの映像に映る人々は、人間。 1ページで描く文字数は極端に少なく、感情を極力排除した日記のような文章が、かえって「ことの残酷さ」を象徴している。 まさに、新潮クレスト・ブックスシリーズの一冊。
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扱われるテーマ、一族が経験した悲しい出来事にそぐわないほど淡々とした文章だった。訳者あとがきを読み、それが意図されたものだとわかった。 迫害にまつわる悲劇と、その裏にあった情熱的な愛と穏やかな疎開先の様子のコントラストに心を揺さぶられた。迫害・虐殺と、情熱的な愛はたしかに同時代...
扱われるテーマ、一族が経験した悲しい出来事にそぐわないほど淡々とした文章だった。訳者あとがきを読み、それが意図されたものだとわかった。 迫害にまつわる悲劇と、その裏にあった情熱的な愛と穏やかな疎開先の様子のコントラストに心を揺さぶられた。迫害・虐殺と、情熱的な愛はたしかに同時代に存在しえたと思うけれど、ハッとさせられた。 あまりに大きな悲劇の前では、生き残った人々は口をつぐむしかないのかもしれない。 飼い犬の死を悼む気持ちがあるのに、迫害と虐殺を許容した首相とその親族への怒りが本書へとつながったというエピローグも印象に残った。人は身内にはどこまでも優しく、他人にはどこまでも残酷になることができる。 あとこの本を高校生たちが選んだということに驚いた。わたしが高校生の頃は、SNSとおしゃれすることと受験勉強ばかりで、本なんてろくに読まなかった気がする。 フランスの高校生たちは充実した読書経験を積み、本を見る目が養われているんだろうな。
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父さんと母さんは何か隠してる…。ひとりっ子で病弱なぼくは、想像上の兄を作って遊んでいたが、ある日、屋根裏部屋で、かつて本当の兄が存在していた形跡を見つける。1950年代のパリを舞台にした自伝的長篇。
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高校生ゴンクール賞受賞の自伝的小説。”金原編・12歳読書案内”から。ここにも一つ、ナチスの残した大きな傷跡が。前半で描かれる、非日常的というか、戦争とは距離のある比較的のどかな物語から一転、後半では残酷な真実が浮かび上がる。そのコントラストが鮮やかな分、非人道性がよりくっきりと浮...
高校生ゴンクール賞受賞の自伝的小説。”金原編・12歳読書案内”から。ここにも一つ、ナチスの残した大きな傷跡が。前半で描かれる、非日常的というか、戦争とは距離のある比較的のどかな物語から一転、後半では残酷な真実が浮かび上がる。そのコントラストが鮮やかな分、非人道性がよりくっきりと浮かび上がるように感じられる。事実が淡々と述べられていくかの静謐な文体も、本作においては事実の重要性を際立たせる役割を担う。これぞ文学、という一作でした。
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当初はファンタジックな描写も含めて進むのかと思ったが、その実はとても辛い出来事を背景にした一人の少年の成長物語であり、三世代にわたる一家の物語だった。当初ひ弱だった少年が長じて肉体的にも精神的にも健全な青年となり成長していくさまが、ギリギリにそぎ落とされた文章で綴られている。主人...
当初はファンタジックな描写も含めて進むのかと思ったが、その実はとても辛い出来事を背景にした一人の少年の成長物語であり、三世代にわたる一家の物語だった。当初ひ弱だった少年が長じて肉体的にも精神的にも健全な青年となり成長していくさまが、ギリギリにそぎ落とされた文章で綴られている。主人公がマレの記念館に行って真実を知り、父に語る部分はイニシエーションなのだろう。このような感想を抱いたらほぼ同等のことを訳者が後書きで書いておられた。
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家族の秘密を知ることで、その背景にある戦争、ユダヤ人への迫害という歴史的事実にも向き合うこととなる少年(著者自身)の物語。 両親側から物語を考えてみるのも面白い。彼が精神科医になったように、過去が未来に連鎖しているのだと思う。 この本が、また新たな未来の連鎖のきっかけになっている...
家族の秘密を知ることで、その背景にある戦争、ユダヤ人への迫害という歴史的事実にも向き合うこととなる少年(著者自身)の物語。 両親側から物語を考えてみるのも面白い。彼が精神科医になったように、過去が未来に連鎖しているのだと思う。 この本が、また新たな未来の連鎖のきっかけになっていることを願う。
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※このレビューにはネタバレを含みます
親の理想に近づけない主人公。主人公には、想像上の兄がいた。でも、その想像上の兄は実際に存在していた。家族の秘密として。 魅力的な親戚の義姉に惹かれる主人公の父に対して、母はなすすべもなく、父が一番大切にしているものを壊してしまう。 人の復讐って、一番大切なものを壊すこと。そこに悲劇が生まれるのだけれども、復讐心は子供への愛情に勝るのだろうか?きっと、無理心中なども一緒なんだろうけど、そこに自分なりの論理を引っ付けて、正当化するのだと思う。 最後の方で、主人公は親と対峙するのだけれど、自分も知っているという秘密を明かすことで、主人公はより成長していくことになる。 秘密はわだかまりになる。わだかまりは、互いに共有し、解消しなければ成長しないのだろうと思った。
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罪悪感が何重にも重なって、秘密になっていく。子どものささやかな想像に過ぎなかったものが実体となり、知らずにいた過去が紐解かれる。 秘密は、家族のものだけではなく、フランスの秘密でもあるのでは。
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※このレビューにはネタバレを含みます
戦禍を記憶する世代(少なくても先進国で)が減っていくのは、時間が流れる以上、避けられないのかもしれないけど。 その風化を止める役割を担う小説が絶えず出てくるという事実が、同世代の作家への信頼につながっている気がする。 戦下でも、私たちと同じように日々の感情を持って生きた人たちがいることを伝えてくれるお話でした。
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