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つむじ風食堂の夜 の商品レビュー

3.8

455件のお客様レビュー

  1. 5つ

    102

  2. 4つ

    152

  3. 3つ

    134

  4. 2つ

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  5. 1つ

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2023/03/30

初めて読む吉田さんの著作。事件や冒険は特に何も起こらないが、頁を捲ることが止められないムズムズとした感触が心地よい。行間にあるものを読むタイプの作品だと思った。

Posted byブクログ

2023/02/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

月舟町シリーズの1冊目。 出だしは、「その食堂の皿は本当に美しかった。」 どんな皿だろう?と想像する暇なく、 単に真っ白なだけで、よく見るとその皿は傷だらけだと明かされる。 テーブルも壁もコップも傷が重なり合っている、そんな安っぽい定食屋にいる。 そして、 「傷は、そこに人が生きていた証ですから」 という古道具屋のオヤジの言葉を思い浮かべる。 最初の10行で吉田篤弘ワールドに包み込まれてしまう。 あとは流されるがままに読むだけだ。 つむじ風食堂も十字路にあった。 先日読んだ「水晶万年筆」も十字路にまつわる物語を集めたものだった。 吉田篤弘さんは十字路が好きみたいだ。 十字路なんて要するに交差点で、どこにでもある風景なのだが特別な場所に感じる。 食堂での常連さんたちの"自信"に関する会話になるほどと思った。 「まだ若いんだから、自信をもって」 「人間てのは、そもそも自信が持てない生き物なんです。」 「なのに、無理やり自信を持とうとするから争いってもんが起きるんです。」 「自信ってなんです?しょせんは他の人に優るってことじゃないですか。」 ほかにも、 太陽がなければ昼はない。夜があるだけだ。夜は宇宙だ。 おー、なるほど! ここじゃないどこかに行きたい。 ここにオレンジがある。 「ここ」ってなんでしょう。「ここ」ってどこのこと? 地球の外から眺めたら、月舟町とコペンハーゲンは隣みたいなもんです。 ここは「地球」という一つの場所とも言える。 「ここ」とはどこなのか、正確な答えはないんですよ。 このようなちょっと哲学的な会話に何度も、おー、なるほどね、と思わされた。 さて、シリーズ2冊目は「それからはスープのことばかり考えて暮らした」だ。 14話あるので、1日1話くらいのペースで、のんびりと読むことにしよう。

Posted byブクログ

2023/02/19

先生は様々な原稿を引き受けては書くのだが、その原稿を書く過程で色んな物語がしずかに繰り広げられる。そこに関わる食堂を巡る登場人物たちが個性豊かで、ユーモアに満ちている。 ちょっと出てきただけのオゴオリさんだって、結局どちらだったのか気になる。

Posted byブクログ

2023/02/14

吉田篤弘さん初めまして、の1冊でした。 月舟町で暮らす通称「雨降り先生」と、 つむじ風食堂に集まる人々の風変わりな日常を描いた物語。 冬の夜長に、静かに読むのが似合う印象でした。 雨降り先生と周囲の人々が繰り広げるやり取りは、不思議でもあり、意味があるようでなくもあり、でも想...

吉田篤弘さん初めまして、の1冊でした。 月舟町で暮らす通称「雨降り先生」と、 つむじ風食堂に集まる人々の風変わりな日常を描いた物語。 冬の夜長に、静かに読むのが似合う印象でした。 雨降り先生と周囲の人々が繰り広げるやり取りは、不思議でもあり、意味があるようでなくもあり、でも想像するとちょっと笑えるような。 懐かしさも感じる世界観にどっぷり浸かりました^^ 「星と唐辛子」「奇跡」の2話が特にお気に入りです。

Posted byブクログ

2023/01/25

じぶんもこの街にいるような、やっぱり外側から静かに見守るような絶妙な距離感で読みすすめた。文章の余韻が心地よく、いちいちちょっと泣きそうになる。照らされたオレンジ、つむじ風が合わさる交差点が印象的。好きだな〜〜〜

Posted byブクログ

2023/01/05

月舟町で生活をする「先生」の話。 なにか劇的なことが起こるわけでもない、日々のあれこれがあるだけである。舞台も登場人物も、本編を通して変わることはない。 それなのに、読んでいると惹き込まれる、不思議な雰囲気を持った本。「先生」はどんな演劇を書くのだろうか、それが気になる。

Posted byブクログ

2022/12/27

初めての吉田篤弘作品 ファンタジーな雰囲気もあり、終始穏やかな文章で心地よいお話でした 出てくる人たちの個性が面白い 考え方の違いを話し合える つむじ風食堂 に行ってみたいと思った!

Posted byブクログ

2022/12/28

月舟町シリーズは三部作で、それらプラス1冊の番外編もある。 何も知らなかった私が、吉田篤弘さんの初読みとして手にしたのはシリーズ2作目の「それからはスープのことばかり考えて暮らした」だった。 そして今回1作目の「つむじ風食堂の夜」を読み終えた。 吉田さんの作り出す世界が、終始...

月舟町シリーズは三部作で、それらプラス1冊の番外編もある。 何も知らなかった私が、吉田篤弘さんの初読みとして手にしたのはシリーズ2作目の「それからはスープのことばかり考えて暮らした」だった。 そして今回1作目の「つむじ風食堂の夜」を読み終えた。 吉田さんの作り出す世界が、終始心地好い。 風変わりなキャラクター達が、夜毎つむじ風食堂で繰り広げるとめどない会話。 洒落のきいた言葉遊びのようなやり取り、 そもそも答えなど無いような議論、あえて核心を突かぬような物言い……いやいや、机上の空論と思う無かれ。 話すことは考えること。 彼らは不器用だけど、実は全て分かっているような気さえしてくる。 きっと彼らは、あーだこーだと言葉を交わしながら、自分の位置を確かめているんじゃないかな。 「あっちこっちから風が吹いてきて、それがくるりとひとつのつむじ風になるでしょう?それが"ここ"ってやつじゃないですか?」 主人公の先生もまた、手品師だった今は亡き父親の思い出をなぞりながら、「オノレ・シュブラックの消滅」議論や、東西の果ての話、タブラさんとの会話などを経て、自分の位置を見つめ直してゆく。 そして然り気無く、私達読者も街の住人たちに励まされているように感じた。 「昔から何度も反芻してきた重要な自問。 それを忘れてしまったのか、あるいは知らないうちに問いそのものが価値を失ってしまったのか。 それが歳をとったっていうやつ。 決して何かをあきらめたとか、そういうんじゃなく、何かもっと自然にどうでもよくなってしまう。」(本文の一部を抜粋し繋いでます) けれど帽子屋さんは言う。 「これからが人生本番なんです。いやほんと」 そんな流れの中に、素敵なエピソードや言葉が散りばめられている。 呪文のような「エスプレーソ。タブラカタブラ。シューッ。」。 「すべて平等に雨が降ってる」「でも、雨って、そのうちやむからいいんじゃないの?」。 つまりは万歩計である「二重空間移動装置」。 まるで月そのものがごろんとしているように、ほのぼのと明るいオレンジ。 そのオレンジをめぐる、奈々津さんと先生のやり取り。 300万円の「唐辛子千夜一夜奇譚」。 父親そっくりの帽子。 まだまだ沢山あって、この文章も染みる、この言葉も素敵…と付箋を立てていたらバサバサになった 笑 今回も美味しい食べ物が物語に香りと味を添え、読者それぞれのイメージも思い出も掻き立ててくれる。 クロケット定食、エスプレーソ、オレンジ…。 そして吉田さんは、ため息を「皆、口々に魂を吐き出した」と表現する。 この辺り、後の螺旋プロジェクト「天使も怪物も眠る夜」に活かされているのだろうな。 あぁ、月舟町の住人になりたいな。 もしかしたら住み慣れたこの街が、既に私にとっての月舟町なのかもしれないけど。 ワニの涙 とは、偽善者が悲報に接して噓泣きをするような、偽りの不誠実な感情表現のことを指す言葉。 ワニには涙管があり、目の潤滑のために涙を流すが、一般的には、水辺から長時間離れ、目が乾いているときに見られる。ただし、それが食事により起きる可能性があることが実証されている (Wikipediaより)

Posted byブクログ

2022/12/15
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

fukayanegiさんに吉田篤弘さん初めて読むなら推し本はこちらとのことでお取り寄せ。カバーデザインは吉田篤弘・吉田浩美の連名 装幀も手掛けているとのこと 黒の背景に白地で題名、著者は薄青 金色の星は淡いほのかな輝く色合い☆ あとがきで「筑摩書房の方と食堂のテーブルで話すうちにこの本はできあがりました。」ですって、素敵。 つむじ風食堂常連さんのちょっと不器用だけど魅力的な登場人物達、程よい距離で見守っている感じがいい。独特な雰囲気をもったタブラさんのエスプレーソの香り、デニーロの親方の古本屋で立ち読み、屋根裏部屋で調べもの読書、試着用の円鏡のある帽子屋さん、奈々津さんの演技がみたい 香りや味覚や触覚が刺激されたり台詞の言い回しが小気味よい 「若いころのね、つまらない夢だの欲望だのが、ふっと消えちまう」「おのれが少し分かっちゃうってこと」「別れ際になって、急速に話が弾んでしまう」<二十空間移動装置>でどこまで行こうかな

Posted byブクログ

2022/10/23

どこかの町のつむじ風が集まる一角にある食堂に集う人々の、なんとも心和むお話。 “先生”と呼ばれる主人公を軸にこれと言って大きな出来事がないにも関らず、彼と彼を取り巻く人の台詞がやけにじんわりと響き、ファンタジー的な、哲学的なことをむむむ…と考えちゃいそうだけど、まぁ別に考えなく...

どこかの町のつむじ風が集まる一角にある食堂に集う人々の、なんとも心和むお話。 “先生”と呼ばれる主人公を軸にこれと言って大きな出来事がないにも関らず、彼と彼を取り巻く人の台詞がやけにじんわりと響き、ファンタジー的な、哲学的なことをむむむ…と考えちゃいそうだけど、まぁ別に考えなくてもいっか、みたいなスタンスで問いかけてくる一冊。 非常に好きです。 お気に入りの場所で、お気に入りの人の背中を背もたれにのんびりと読みたい。

Posted byブクログ