オリガ・モリソヴナの反語法 の商品レビュー
あんな時代があった…
あんな時代があったということ、あんな人生があったということ、そんな人に本を通してでも出会えること、そのすべてがすごい。誰かが一生かけて生き抜いた物語をあっという間に読んでしまうのは申しわけないけど、一気に読み進んでしまった。
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プラハのソビエト学校…
プラハのソビエト学校の教師、オリガ・モリソヴナの人生を追ううちにロシアの悲しい歴史が浮かび上がってきます。夢中になって一気に読んでしまいました。春江一也さんの「プラハの春」「ベルリンの秋」を併せて読むのがおすすめです。
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前半ちょっとぎこちな…
前半ちょっとぎこちない部分はありましたが・・・圧巻、です。今年2006年に読んだ本の中で、否、今までに読んだ物語の中で最高のものでした。魅力的な登場人物たちが織り成すロシア粛清の悲劇を下敷きに描かれたドラマ。ロシアという国についての勉強にもなります。「自分のちんぼこより高くは飛べ...
前半ちょっとぎこちない部分はありましたが・・・圧巻、です。今年2006年に読んだ本の中で、否、今までに読んだ物語の中で最高のものでした。魅力的な登場人物たちが織り成すロシア粛清の悲劇を下敷きに描かれたドラマ。ロシアという国についての勉強にもなります。「自分のちんぼこより高くは飛べないものなんだよ!」――強烈な個性を持つダンス教師、オリガ・モリソヴナと、プラハ・ソビエト学校の生徒である日本人の女の子、志摩を見るたびに「お嬢さんは中国の方ですの?」と問いかける悲運の女性、エレオノーラ・ミハイロヴナ。過
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本編約500ページの結構なボリュームですが、読み始めたらあっという間に引き込まれました。幼い頃の謎解きがやがてスターリン独裁政治下の東欧の歴史に繋がっていき、関係者の証言から教師の人生が浮かび上がってくる様子は、主人公と一緒に謎解きをしているような気持ちになれて、ページを捲る手が...
本編約500ページの結構なボリュームですが、読み始めたらあっという間に引き込まれました。幼い頃の謎解きがやがてスターリン独裁政治下の東欧の歴史に繋がっていき、関係者の証言から教師の人生が浮かび上がってくる様子は、主人公と一緒に謎解きをしているような気持ちになれて、ページを捲る手が止まらず、ラストはじんわりと沁み入りました。だからこのタイトルだったのだと。この1冊で重厚なドキュメンタリー映画を見たような気持ちになり、読み終えた後はしばし茫然としていました。 巻末の池澤夏樹さんとの対談も興味深かったです。 この本は文芸評論家の三宅香帆さんがPage Turners (Youtubeチャンネル 「TBS CROSS DIG」の書籍紹介コーナー) で紹介されていたことで知りました。以下にURLを掲載します。 "【「報われたい」Z世代に 報われない読書のススメ】三宅香帆 15歳で読んだ「原点」の3冊/京都のカレー屋と丸山眞男/高校の図書室と『文章読本』/10代のあなたに 「本の読み方」はこう学ぼう" https://youtu.be/zSIlImo5VSY?si=nTxIv6Hk_34lukm5
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登場人物の名前が長く、まずそこで少し頭がこんがらがるが、慣れます 全体通して感じたことは、基本的には青春をともに過ごした親友や新たに出会った仲間たちによる謎解きの旅をともに楽しめる構成となっているということ。 社会主義の負の面(と一括りにするには強烈すぎるが)スターリン体制に...
登場人物の名前が長く、まずそこで少し頭がこんがらがるが、慣れます 全体通して感じたことは、基本的には青春をともに過ごした親友や新たに出会った仲間たちによる謎解きの旅をともに楽しめる構成となっているということ。 社会主義の負の面(と一括りにするには強烈すぎるが)スターリン体制による大粛清の波をいかにオリガは乗り切ってきたか、、そりゃフィクションだろうな(対談に記載)と思いましたが相当な下調べがあってこそのリアリティでした! ===本の情報(Amazon)==== ロシア語通訳の第一人者としても、またエッセイストとしても活躍している米原万里がはじめて書いた長編小説である。第13回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞した。 1960年代のチェコ、プラハ。主人公で日本人留学生の小学生・弘世志摩が通うソビエト学校の舞踊教師オリガ・モリソヴナは、その卓越した舞踊技術だけでなく、なによりも歯に衣着せない鋭い舌鋒で名物教師として知られていた。大袈裟に誉めるのは罵倒の裏返しであり、けなすのは誉め言葉の代わりだった。その「反語法」と呼ばれる独特の言葉遣いで彼女は学校内で人気者だった。そんなオリガを志摩はいつも慕っていたが、やがて彼女の過去には深い謎が秘められているらしいと気づく。そして彼女と親しいフランス語教師、彼女たちを「お母さん」と呼ぶ転校生ジーナの存在もいわくありげだった。 物語では、大人になった志摩が1992年ソ連崩壊直後のモスクワで、少女時代からずっと抱いていたそれらの疑問を解くべく、かつての同級生や関係者に会いながら、ついに真相にたどり着くまでがミステリータッチで描かれている。話が進むにつれて明らかにされていくのは、ひとりの天才ダンサーの数奇な運命だけではない。ソ連という国家の為政者たちの奇妙で残酷な人間性、そして彼らによって形作られたこれまた奇妙で残酷なソ連現代史、そしてその歴史の影で犠牲となった民衆の悲劇などが次々に明らかにされていく。 物語の内容や手法からすれば、この作品は大宅壮一ノンフィクション賞作品『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』の姉妹版であるといえる。しかし読み終わったあと、ときにフィクションのほうがノンフィクションよりも多くの真実を語ることができる、ということに気付くに違いない。(文月 達)
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あまり触れてこなかった時代(WW2前後のロシア)が舞台の話。学生時代の印象的すぎる先生の謎を(解けるようになったので)解こうとする主人公視点で徐々に謎が解明していく。最終的に二人の養女だった同級生から話を聞けてほぼ全ての謎がとけることとなる。外務省での公式資料から劇場の衣装係、...
あまり触れてこなかった時代(WW2前後のロシア)が舞台の話。学生時代の印象的すぎる先生の謎を(解けるようになったので)解こうとする主人公視点で徐々に謎が解明していく。最終的に二人の養女だった同級生から話を聞けてほぼ全ての謎がとけることとなる。外務省での公式資料から劇場の衣装係、強制収容所の手記の著者に古い友人と様々な立場が関わってくる。 戦後シベリア抑留があったことは知っていたが、ロシア人ですら逮捕され劣悪な環境で強制労働などがあったことはこれで初めて知った。普通の文庫本か少し厚いくらいのボリュームなのに、書かれている人々の記録や人生や悲しみが濃厚すぎる。ロシアでは友達同士は愛称で呼ぶが、そうでない場合は名前と父称で呼ぶという文化も知った。戦時中の独裁者下で暮らす息苦しさは凄まじい。
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チェコ・プラハのソビエト学校で出会ったダンス教師、オリガ・モリソヴナ。老齢だが魅力にあふれ、ほれぼれするような舞踏。教え方は厳しく、口が悪い。その特徴的な言い回しは「反語法」。いったい彼女はだれだったのか。30年後、その謎を解く旅に出るが、謎はさらなる謎を呼ぶ。モスクワのロシア外...
チェコ・プラハのソビエト学校で出会ったダンス教師、オリガ・モリソヴナ。老齢だが魅力にあふれ、ほれぼれするような舞踏。教え方は厳しく、口が悪い。その特徴的な言い回しは「反語法」。いったい彼女はだれだったのか。30年後、その謎を解く旅に出るが、謎はさらなる謎を呼ぶ。モスクワのロシア外務省資料館に始まって、トゥーラのダンス教室で終わる怒涛の7日間、めくるめくような展開。 旅は7日間だが、そこにロシア革命からスターリンの大粛清、雪解けとペレストロイカまで、80年間の事件や出来事の回想が詰まっている。ロシア史(あるいはソビエト史)に詳しくない場合は、座右に『世界史年表』が必要かもしれない(少なくとも私はそうだった)。 後半はかなり駆け足。ミステリ作家よろしく、米原万里は自分の仕掛けた謎を完璧に解くことに夢中になっているように見える。曖昧さを残すのを嫌う、いかにも彼女らしい。 本作品の魅力のひとつは、事実とフィクションが混然一体となっているところ。どこからがフィクションなのか。巻末の池澤夏樹との対談では、そのことにも触れている。 (しかし、『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』に登場した「反語法」がこのような形で活かされるとは!)
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昨年末に手にした集英社文庫の“ふゆイチ”で紹介されていて、ずっと気になっていた本書。 ロシア語の翻訳をしている志摩(シーマチカ)は、少女時代に通っていたプラハのソビエト学校で出会った、踊りの才能が抜群で強烈毒舌キャラの舞踊教師、オリガ・モリソヴナの謎めいた来歴を探る為、ソ連崩壊...
昨年末に手にした集英社文庫の“ふゆイチ”で紹介されていて、ずっと気になっていた本書。 ロシア語の翻訳をしている志摩(シーマチカ)は、少女時代に通っていたプラハのソビエト学校で出会った、踊りの才能が抜群で強烈毒舌キャラの舞踊教師、オリガ・モリソヴナの謎めいた来歴を探る為、ソ連崩壊後のモスクワを訪れます。 ソビエト学校時代の親友・カーチャ達と共に真相を追う中で浮かび上がってきた壮絶な背景とは・・。 オリガと伝説の踊り子・“ディアナ”は同一人物なのか? オリガと共に「オールドファッション・コンビ」と呼ばれていたフランス語教師・エレオノーラが東洋人に異常な“食いつき”を見せていたのは何故だったのか・・? 等々・・といった数々の謎を解明するというミステリ要素もあり、スターリン独裁下での過酷な“やりすぎ粛清”時代を生き抜いた人々の力強さを描いた、人間ドラマとしても読み応えバッチリな内容だと思いました。 かつて強制収容所で過ごした女性の手記&語りで綴られる、“控えめに言って地獄”な生活は、その理不尽さ&悲惨さに胸が痛みましたが、シーマチカとカーチャが仲良しで楽しそうな場面とのコントラストがいい塩梅だったので良かったです。 ということで、良くも悪くもロシア(ソ連時代も含めて)という国の“底知れなさ”に圧倒されましたね~。 登場人物達の逞しさにパワーを貰ったような気持ちでございます。 巻末に収録されていた、著者の米原万里さんと池澤夏樹さんとの対談も興味深く読ませて頂きました~。
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書評で薦めがあり。 通訳者ならではの視点。痛快な人物。 だからこそ、暗く過酷な時代をより鮮明に映し出す。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
面白かった、泣いてしまった、どうして今まで読まなかったんだろうと思った。いろんなことが思い出された。 何人からかおすすめされて、何年か越しに手に取った。最近読んだ系統で言うと、ハンガン『少年が来る』『別れを告げない』と同じく、歴史があってその中にうまくフィクションとして成立している小説。 1960年プラハのソビエト学校に入った主人公の志摩(シーマチカ)は、オリガ・モリソヴナという舞踊教師に魅了される。それから30年、日本に帰国後翻訳者となった彼女は、ダンサーになるという夢に破れ子供を持ち離婚を経験し、、といった後に、モスクワに渡りオリガ・モリソヴナの半生を辿り出す。ソビエト学校時代の親友に再会し、謎解きをするように過酷なスターリン時代の歴史を紐解いて行く、その謎解き自体がハラハラドキドキで面白いのもさることながら、きっとこういうことがあったんだろうというリアリティ、悲しと喜びのジェットコースターで、なんと表現したらわからない気持ちになる。良かったとも言えない(もちろん良かったんだけれど)、ただぐんと来るものがあった。 …こうして自分で刃物を手にした瞬間、途轍もない解放感を味わったんだ。自由を獲得したと思った。あたしの生死はあたし自身で決めるって。もうそのときは、自殺する気なんて完全に雲散霧消していた。絶対に自殺するものか、生き抜いてやる、と心に固く決めていた。そういう勇気と力をこの手製のカミソリは与えてくれた(p.445) 「シーマチカ、そんなことないよ。巨大なあくや力に翻弄されるのもしんどいけれど、そういう矮小な理不尽に立ち向かったり耐えたりしていくことも、それに劣らず大変なのかも知れないよ。いや、きっとそうだよ。引くか、踏み止まるか、選択肢が残されているってことは、常に自分自身の意志と責任で決めて行かなくてはならないんだもの…そういうあたしも、偉そうなことは言えないんだけどさ」(p.476) リラの花が美しく咲き誇る五月だった。先生方や生徒たち、それに生徒の父兄が心から悲しんでくれた。棺にリラの花をいっぱい詰めたの。(p.487) ルビャンカ、サボイ・ホテル、ルビャンスカや広場、マヤコフスキイ広場、フルンゼンスカヤ駅…どれもこれもが、どれもこれもが、リラの花を思い出させる。
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