土の中の子供 の商品レビュー
途中までは「ただの暗い話や〜ん」って感じですが、微かな希望のかおりをまきはじめる中盤と、主人公が自らの意志につき動かされる後半が読んでいて非常にすがすがしいです。とても微妙な層の部分を書ききっていて「すげー」と思いました。
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★土の中の子供 主人公は養父母に暴行を受けて育った。長じた今は何事にも情熱を持てず、破滅的な行動をとってしまう。 ★蜘蛛の声 ある日いきなり会社に行かなくなった主人公。彼は高架下に身を潜め続ける。
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p.85 大きくなりなさい。 大きくなれば、君は自分の人生を自分で生きることができる p.86 私が勝ち取ったものは、 これなのだろうか。 暴力の下をくぐり抜け、土の中から這い出して山を降りた私の得たものは、このような日常に過ぎないのだろうか。 圧倒的な暴力、抗おうとする...
p.85 大きくなりなさい。 大きくなれば、君は自分の人生を自分で生きることができる p.86 私が勝ち取ったものは、 これなのだろうか。 暴力の下をくぐり抜け、土の中から這い出して山を降りた私の得たものは、このような日常に過ぎないのだろうか。 圧倒的な暴力、抗おうとする人間の本能 死の間際に追いやられるほどの恐怖とそこから逃れたことにより抱いた欲
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中村文則さんの作品には、鬱屈とした自閉的な雰囲気が漂っている。その点では、太宰治の自意識過剰ワールドと似通っている。この暗さは、好きな人にはたまらない暗さだ。反対に、受け付けないという人には全くダメだろう。 私がこれまでに読んだ中村作品は、『銃』と『何もかも憂鬱な夜に』と本作だ...
中村文則さんの作品には、鬱屈とした自閉的な雰囲気が漂っている。その点では、太宰治の自意識過剰ワールドと似通っている。この暗さは、好きな人にはたまらない暗さだ。反対に、受け付けないという人には全くダメだろう。 私がこれまでに読んだ中村作品は、『銃』と『何もかも憂鬱な夜に』と本作だ。その中で一番すきなのは『銃』である。主人公が「改心」するまでの閉塞感は、すげえなとしか言いようがなかった。『何もかも―』は、終りの部分が救われすぎていて、逆に虚しくなった。本作は、どうだったろうか。比較になってしまうが、やはり『銃』の方が好きだ。というのは、『銃』の方が自分とフィットするからだ。それに比べると『土の中―』は、あくまでも自分とは別の世界で起こっていることを眺めているだけの、いわば物語であるという感じだった。もっとも、『土の中―』の方が『銃』よりも作品としての完成度は高いと思う。だから、「芥川賞受賞作」はやっぱりこっちの方がいいのだろうなあ、と選評を参考にしつつ、考えてみたりもした。
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芥川賞らしい作品。 主人公の精神的な部分の表現が丁寧です。ただ、暗く重い。陰鬱。 養父に虐待を受けていた主人公が死を身近に感じることで自分の存在価値を見出そうとしています。落ちてつぶれてしまう物と自分を重ねる。そんな欲求までも暗い。白湯子という女性の不遇さも負を負で固める感じがしました。それにしても名前が変だ。 短編の「蜘蛛の糸」も暗く似たような話ではあるけれど、とことん内側へ精神が流れていく重さ。こちらの作品のほうが好きです。
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共感した自分に傷ついた。恐ろしい。 どうしてこういう運命的なものに選ばれてしまう人間がいるのだろう。自分だから、とずっと考えていたけれどそうでもないのかなと思いついたのは大人になってからだった。 無駄な言葉をそぎ落とした抑制の効いた文章が余計に彼のうちに秘めている傷に共感を誘う...
共感した自分に傷ついた。恐ろしい。 どうしてこういう運命的なものに選ばれてしまう人間がいるのだろう。自分だから、とずっと考えていたけれどそうでもないのかなと思いついたのは大人になってからだった。 無駄な言葉をそぎ落とした抑制の効いた文章が余計に彼のうちに秘めている傷に共感を誘う。
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私にとって読書の意義とは、 自分でない何者かになる 全く違った価値観を得る 知らなかった世界、事象、知識を得る 挙げればきりがないが、この小説は『浸る』という言葉がとにかくしっくりくるほどに、 その世界(実際的には狭いにも関わらず、無限の果てまで見渡せるような)にどっぷりと浸か...
私にとって読書の意義とは、 自分でない何者かになる 全く違った価値観を得る 知らなかった世界、事象、知識を得る 挙げればきりがないが、この小説は『浸る』という言葉がとにかくしっくりくるほどに、 その世界(実際的には狭いにも関わらず、無限の果てまで見渡せるような)にどっぷりと浸かってしまう。 性別すらを超えて、自分自身がこの男になってしまう。 非常に危険な小説だ。 この小説を、暗い、と片づけてしまうのは間違っている。 ただ暗いたけの小説など、吐いて捨てるほどある。 とても一言では言い表すことができないが、 ただただ、この社会で生きることの非常なる息苦しさ、煩わしさ、圧迫感、 そういったものを、これでもかというほどに思い出させられる。 一個人として生きることの、苦みの部分とでもいおうか。 少なからず自分も持つ部分で、 しかしそれを全面に押し出して生きることは不可能に近く、(蜘蛛の声しかり) ただ、うまくやりすごすしかないこの感情を、 ここまで掘り下げ、このような作品にした作者に畏敬の念を感じずにはおれない。
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暗いところが引かれる。共感しそうで恐いけど、また作品を読みたくなった。重いのにさらっと読めるのがいい。
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破滅的思想は多分誰しもが持っているのだと思う 程度の差で このまま駄目になってしまうんじゃないかと思っていた主人公が少し前向きになったようで良かった
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救われようのない幼年期。施設で唯一の理解者が彼を救ったのか?一応の光が、最後は救われた感じがしてホッとした。 蜘蛛の声はもミステリアスで安部公房の作品にありそうな、そんな感じがした。なかなかいい。
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