土の中の子供 の商品レビュー
もし虐待に耐えて死なずに生き延びたとしたら、その人はこのように世界からの疎外感を感じるのだろう。 死に値すると判を押す自己規定、痛みや恐怖でもってしか感じられない生命。 絶望ではなく再生のラスト。 主人公は強かった。
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中村文則の作品の主人公の多くは自らの過去、幼少期に大きな精神的傷を負っている。 目も当てられないような、息が詰まるような純粋な狂気。悪。 世界はそのような悪が生み出した惨状を一瞥しただけで何事もなかったかのように過ぎ去り世界の均衡状態を保つ。 多くの人間が通り過ぎ忘れ去られた事件...
中村文則の作品の主人公の多くは自らの過去、幼少期に大きな精神的傷を負っている。 目も当てられないような、息が詰まるような純粋な狂気。悪。 世界はそのような悪が生み出した惨状を一瞥しただけで何事もなかったかのように過ぎ去り世界の均衡状態を保つ。 多くの人間が通り過ぎ忘れ去られた事件の時間、空間の中に被害者はいつまでも取り残され悪意にさらされた精神は歪む。 この作品の主人公も恐怖にさらされ続けたせいでその恐怖に支配されず恐怖を支配することこそが復讐であると考えるようになってしまった。 自らの意思で恐怖の根源、すなわち死へと向かう行動を取ることでしか自らの生を実感できない。 幸せを望むと同時にどこかで破滅する未来を無意識に予感してしまう。 それは同じような境遇を持つ不感症の同居人白湯子も同様である。 自らの過去を内側に封印するのではなく振り返り、白湯子とともに共有することで死を伴わない生を実感できるようになる。 これは悪によって歪められた世界の一部の再生へと向かう物語。
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★ここまで掘り下げるのは体力が要る★暗い、といってしまえばそれまでだが、どこかに光はあると微かに信じたいが信じ切れず、自問を繰り返している若者の姿といえるだろうか。幼いころにうけた恐怖の大きさのあまり、恐怖を求めているのか、乗り越えたいと思うためか、もしくはあまりに身近すぎてそれ...
★ここまで掘り下げるのは体力が要る★暗い、といってしまえばそれまでだが、どこかに光はあると微かに信じたいが信じ切れず、自問を繰り返している若者の姿といえるだろうか。幼いころにうけた恐怖の大きさのあまり、恐怖を求めているのか、乗り越えたいと思うためか、もしくはあまりに身近すぎてそれなしでは生の実感がないのか。破滅型とはまた異なる、行き場のない鬱屈を抱え込んだストーリー。
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説明 (Amazonより) 受賞歴 第133回(平成17年度上半期) 芥川賞受賞 内容紹介 私は土の中で生まれた。親はいない。暴力だけがあった。ラジオでは戦争の情報が流れていた——。重厚で、新鮮な本格的文学と激賞された27歳、驚異の新人の芥川賞受賞作。 主人公は27歳の青年。タ...
説明 (Amazonより) 受賞歴 第133回(平成17年度上半期) 芥川賞受賞 内容紹介 私は土の中で生まれた。親はいない。暴力だけがあった。ラジオでは戦争の情報が流れていた——。重厚で、新鮮な本格的文学と激賞された27歳、驚異の新人の芥川賞受賞作。 主人公は27歳の青年。タクシーの運転手をして生計を立てている。親から捨てられた子供たちのいる施設で育ち、養子として引き取った遠い親戚は殴る、蹴るの暴力を彼に与えた。彼は「恐怖に感情が乱され続けたことで、恐怖が癖のように、血肉のようになって、彼の身体に染みついている」。彼の周囲には、いっそう暴力が横溢していく。自ら恐怖を求めてしまうかのような彼は、恐怖を克服して生きてゆけるのか。主人公の恐怖、渇望、逼迫感が今まで以上に丹念に描写された、力作。表題作に、短編「蜘蛛の声」を併録。 私の読解力の無さなのか 共感も感情移入も出来なかった。 終始、暗い空気が漂っていて 気持ちがどんよりする。 虐待されて育った人の内面が描かれてあり 誰にでも心の闇みたいなモノはあるのだろうとは思っているが 私はここまで死について深く囚われてはいない。 本当の親と会わないと決めた事は 今までの自分と決別出来たと思いたい。そして、白湯子と共に救われて欲しい。
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思ったより盛り上がりに欠けたかな。児童虐待のトラウマからの回復や人間が生きる意味について問うてますが、なんかディテールの描写が大きく、テーマ全体についてや主題についての描写が弱かったのかなと思った、が、そうなんかね。
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主人公は幼少期に体験した酷い虐待の影響で、大人になった現在でも衝動的に破滅的な行動をとってしまう。それは自ら死を望むようでもあり、暴力や恐怖を克服するための行動であるようにも思える。何度か死の淵に立つ主人公は、その度安息を感じつつもその理不尽な世界を拒絶し、希望を掴もうと踠き叫ぶ。この物語に結末は描かれていないが、人混み向けて歩き出した主人公は土の中で生まれ変わったのだと信じている。
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テーマがテーマだけに読んでいて重苦しい.虐待や暴力.人間にはこのような側面もあることに気づかされる.その中でいかに希望を見出すか.
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こぢんまりと、そして濃密に纏まった話。 虐待のシーンや受ける側の心理が痛くて怖い。 喪失感…。 書いてて辛くないのかな。 作家という職業ってすごいな。 「蜘蛛の声」は自分の中で堂々めぐりのような話。 安部公房の箱男をなんとなく思い出した。 閉塞感のみ!
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この人の本、一回全部読み終わったら、作品発表順に読み返そうと思う 一作品で完結するではなく、何作か経てちょっとずつちょっとずつ事象を位置付けて言語化して、定めたり壊していっている動きを確認しときたい
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