生物から見た世界 の商品レビュー
人はしばしば、自分が見えている世界を「生物にはどう見えているか(環境)」と捉えがちだが、本書が説くのは「生物は世界をどう見ているか(環世界)」という視点。人の目には部屋の中に机や椅子、本棚が見えていても、飛び回るハエには机の上の皿にある食べ残ししか知覚されていない。飼っている犬に...
人はしばしば、自分が見えている世界を「生物にはどう見えているか(環境)」と捉えがちだが、本書が説くのは「生物は世界をどう見ているか(環世界)」という視点。人の目には部屋の中に机や椅子、本棚が見えていても、飛び回るハエには机の上の皿にある食べ残ししか知覚されていない。飼っている犬には食べ残しの他にも椅子やテーブルといった"座れるもの"が知覚されているかもしれない。さらに人の中でも、読書家であれば本棚は別の色を帯びてみえるかもしれない。 このように似ているようで異なる、生物の数だけ存在する環世界という発想がとても面白かった。 ユーザーであれば使いやすさや工数削減、エラー率を知覚するだろうし、経営層であればROIやKPI、全体最適を知覚し、そしてエンジニアはコード品質や安定稼働をそれぞれの視点から知覚しているはず。つまり、ステークホルダーの数だけ環世界が存在して、Agentic AIもプロンプトや学習内容、MCP、確率的統計といった独自の環世界を基に判断しているだろうと意識する良い学びとなった。 また、盲導犬の調教を例に示されるように、異なる環世界を共有することの難しさ、それでも想像し理解する姿勢が出発点になるという示唆も。 挿絵の魅力もさることながら、「完全な国内平和を維持している『反射共和国』といえよう。」 「失敗に終わった結婚飛行を物語っている。」など分かりやすいんだか分かりにくいんだかな比喩表現も味わい深かった。
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ユクスキュルの「環世界」の話が刺激的で最高だった。ページ数は少ないが、世界の見方を根底から変えてくれる、極めて濃密な一冊だ。 特に、カタツムリの知覚スピードの話が心に残る。 客観的に見ればカタツムリは「ゆっくり」動いている。しかし彼らの主観(環世界)では、世界は人間よりはるか...
ユクスキュルの「環世界」の話が刺激的で最高だった。ページ数は少ないが、世界の見方を根底から変えてくれる、極めて濃密な一冊だ。 特に、カタツムリの知覚スピードの話が心に残る。 客観的に見ればカタツムリは「ゆっくり」動いている。しかし彼らの主観(環世界)では、世界は人間よりはるかに速い速度で流れているという。 この話を読み、杖をつき一歩一歩確かめるように歩く老人の姿が重なった。 はた目には「ゆっくりとした足取り」に見えても、彼らの内側では、時間は恐ろしい速さで過ぎ去っているのではないか。 客観的な時間など存在せず、生命の数だけ異なるリズムがある。 この本を閉じたあと、身の回りの生き物や人々を見る目がガラリと変わった。
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愛のある日高敏隆の翻訳が素晴らしい。著者のユクスキュルはエストニア出身の動物比較生理学者で、1934年に「動物と人間の環世界への散歩」という原題で出版された。副題の「見えない世界への絵本」が示すように、動物にとっての世界は人間の見る世界とはまるで違うことを科学的な説明とクリサート...
愛のある日高敏隆の翻訳が素晴らしい。著者のユクスキュルはエストニア出身の動物比較生理学者で、1934年に「動物と人間の環世界への散歩」という原題で出版された。副題の「見えない世界への絵本」が示すように、動物にとっての世界は人間の見る世界とはまるで違うことを科学的な説明とクリサートの絵で巧みに伝えている。訳者の日高は、その動物にとっての世界を「環世界」という訳語を発明して表現した。象徴的なのは第1章で、目が見えず音も聞こえないマダニの生活史を追い、光感覚と嗅覚でその世界が作られていることを描く。さらにマダニは獲物が通りかかるまで時には何年も待つことから、マダニと人間にとっては流れる時間さえ違うと説く。人間の見る世界がすべてというのは大きな誤りであることを教えてくれた。
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生物達それぞれにあるシャボン玉。環世界の構造が簡潔に説明されていた。 分かりやすい図と説明が、こちらの思い込みをガラッと変化させてくれた。 生き物の見方に、新しい道ができた気がする。
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本書は、90年以上前に書かれたにもかかわらず、現在でも読み継がれている名著である。本文を著した生物学者ユクスキュルは、生物は同じ場所に存在していても、認識している世界は大きく異なり、それぞれが独自の「環世界」をもって生きているという考え方を提示した。本書では、さまざまな生物が何...
本書は、90年以上前に書かれたにもかかわらず、現在でも読み継がれている名著である。本文を著した生物学者ユクスキュルは、生物は同じ場所に存在していても、認識している世界は大きく異なり、それぞれが独自の「環世界」をもって生きているという考え方を提示した。本書では、さまざまな生物が何を知覚し、その結果どのような行動をとるのかが、具体例とともに紹介されている。たとえば、1/4秒の間隔で振動する棒を人間は「動いている」と認識できるが、実験の結果、カタツムリはこれを「静止している」と捉えるとされ、時間の流れさえ生物によって異なると主張される。また、知らない土地を詳しい人に案内してもらうことで新たな発見があるように、人間同士であっても「環世界」は異なる。本書内に散りばめられた、同じ風景が生物ごとにどのように見えているかを想像したイラストも興味深い。本書は、自然科学の本として楽しめるだけでなく、ものの見方が変わるきっかけを与えてくれるだろう。 (ラーニング・アドバイザー/生命農学 UEHARA) ▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら https://www.tulips.tsukuba.ac.jp/opac/volume/1592308
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生き物は同じ世界を見ているようで実はそれぞれ異なる宇宙に棲んでいる――本書はそんな静かな驚きから始まる。 ダニには匂いと温度の点だけで構成された世界があり、ミツバチには人には見えぬ色の地図が広がる。私たちが当たり前と思う風景は数ある環世界の一つにすぎない。 ここで視線は反転す...
生き物は同じ世界を見ているようで実はそれぞれ異なる宇宙に棲んでいる――本書はそんな静かな驚きから始まる。 ダニには匂いと温度の点だけで構成された世界があり、ミツバチには人には見えぬ色の地図が広がる。私たちが当たり前と思う風景は数ある環世界の一つにすぎない。 ここで視線は反転する。世界が一つあって生物が適応するのではなく、生物ごとに世界が立ち上がるのだ。 他者を理解するとは相手の立場に立つ以上にその人の見ている世界を想像することなのかもしれない。生物学の書でありながら共生の哲学をそっと差し出す一冊である。
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なるほど、生物それぞれが持つ「環世界」という概念。人間の環世界、ダニの環世界、カラスの環世界といったように多種多様な独自の世界があるという考え方に感心しました。それぞれの環世界は知覚も視覚も違けりゃ時間の感じ方にも生物によって違う。またこの概念は実験に基づいた自然的なものから、超...
なるほど、生物それぞれが持つ「環世界」という概念。人間の環世界、ダニの環世界、カラスの環世界といったように多種多様な独自の世界があるという考え方に感心しました。それぞれの環世界は知覚も視覚も違けりゃ時間の感じ方にも生物によって違う。またこの概念は実験に基づいた自然的なものから、超自然的な魔術的環世界まであるとの事でそれもまた面白い。さらに人間の中でも、各個人の持つ知識の違いで見える環世界もまた異なってくるといった指摘も頷けた。頁数も少なく、例や図もふんだんに使われているから読みやすかった。 昔の人が(おそらく)人生を賭けた功績を手軽に文庫サイズで手に入れる事が出来るのは、何というか本というものの有り難さを感じられますねえ。
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文章表現はやさしいけれど、中身は難しい。「こういうことかな」と考えても、そうした理解で合っているか自信が持てないところがある。齧った程度の理解でしかないが、それにしても驚くことばかり。世界の多種多様な生物がこうやって生きている。よく命脈を保ててきているものだと感嘆するほかない。 ...
文章表現はやさしいけれど、中身は難しい。「こういうことかな」と考えても、そうした理解で合っているか自信が持てないところがある。齧った程度の理解でしかないが、それにしても驚くことばかり。世界の多種多様な生物がこうやって生きている。よく命脈を保ててきているものだと感嘆するほかない。 私が理解したところでは、私が見て聞いて知っている世界は私だけのもの、ということ。共感というもの。あれはなんなのだろう。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ありがとう。良いものを読みました。 私の語彙と読解力でざっくり内容を書き記すと、こうです。 「動物は全て反射と本能で行動しており、機械と同じ」という思想に対する、反証。 動物のみならず、単細胞生物も含んだ、生物は主体であり、物事を知覚し行動していることの解説。 動物は機械じゃないんですよ
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ビジネス書として読めました 生物ごとの物理的センサーの話と、人間のバイアスに共通点があるように感じます 認知の話もよかったです 視界には入っているのに、そのものが、自分のにとってのスキーマに当てはまらなければ、見えなくなる いかに主観的な世界観で生きているのかという事 そうす...
ビジネス書として読めました 生物ごとの物理的センサーの話と、人間のバイアスに共通点があるように感じます 認知の話もよかったです 視界には入っているのに、そのものが、自分のにとってのスキーマに当てはまらなければ、見えなくなる いかに主観的な世界観で生きているのかという事 そうすると同じ人間であっても、視界に入るものは同じでも、その解釈に差が出るのは当然と言えましょう その特性を踏まえて、コミュニケーションの際には、相手の視点を想像しながら臨みたいと思いました
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