まだ遠い光 の商品レビュー
「家族」というものへの思い。 それはきっとひとりひとり違っていて当たり前なのだろう。 現実としての家族をしっかりと見据えて生きていくか。 それとも、幻想の中にある家族を追い求めて生きていくか。 答えはそれぞれの中にあるようで、実はどこにもないかもしれない。 親になりたくて親になる...
「家族」というものへの思い。 それはきっとひとりひとり違っていて当たり前なのだろう。 現実としての家族をしっかりと見据えて生きていくか。 それとも、幻想の中にある家族を追い求めて生きていくか。 答えはそれぞれの中にあるようで、実はどこにもないかもしれない。 親になりたくて親になる人ばかりではない。 親を選んで子どもになったわけではない。 もしも運命というものが本当にあるのなら、きっと親子になったことは運命なのだろう。 登場人物たちはみな一つの結末を迎える。 その結末を幸せだと受け止めるか、不幸だと嘆くか。 きっとそれも人それぞれだ。 生きていくことの意味。 家族である意味。 そして、ひとりであることの意味。 正解はきっとない。 生きていく中で、自分にとって一番正解だと思うものを掴むしかないのだろう。 ひとつだけ。 どうしても山賀たちの行動が理解できなかった。 どんなに不幸に見えても他人にはわからないことだってあるはずだ。 死の直前まで追い詰めて、命を奪って、そこに何が残ったというのだろう。 生きていてこそ、愛を感じられるのではないのか? 山賀たちは自分たちの失敗を受け止めきれずに、他へ責任を転嫁していただけのような気がする。 不満や悩みを受け止めてくれる場所は必要だろう。 でも、踏み込んではいけない見えないラインが絶対にあるはずだ。 社会問題として捉えると難しすぎて答えなんてどこにもない。 もっと小さな単位。自分の家族…自分の親や兄弟…そこから目を逸らさずに生きていくこと。 それくらいしか出来ることって思い浮かばない。 もっとも、日常生活を普通に送っている間はなかなか大切さに気づかないのも仕方がないと思っているが。
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もっとゆっくりと終焉を迎えて欲しかったと感じた。家族愛がテーマなら、それは長年の結晶であるはずだから、物語だって性急であって欲しくはなかった。なし崩し的に問題が解決しなくてもよかったなあとも思うし、一つずつ、じっくり解けていけばいい問題たちが、まるでマジックのように一本の線になっ...
もっとゆっくりと終焉を迎えて欲しかったと感じた。家族愛がテーマなら、それは長年の結晶であるはずだから、物語だって性急であって欲しくはなかった。なし崩し的に問題が解決しなくてもよかったなあとも思うし、一つずつ、じっくり解けていけばいい問題たちが、まるでマジックのように一本の線になってしまうのは、ちょっとエンタメ色が強すぎる。でも逆を返せば、もっとこの物語の中にいたかったってことなんだと思う。それだけ、いつの間にかこの作品に強く惹かれていたんだろう。これを一つの旅だとすれば、この旅が終わった今、旅をする前とは違う世界を自分は見ているのだろうか。それもきっと、今答えなければいけない類の問いではないのかもしれないなあ。家族って、いいなあ。どうでもいいけど、参考文献を見て、やはり小説家の勉強量はヤバイと思った。不勉強はいかんね。
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山本周五郎賞を受賞した『家族狩り』を文庫化すべくリニューアルしたもの。『悼む人』で直木賞を受賞したばかりの天童さんだから気になってはいたんだけど、なにせ5部作と長いから敬遠してたもの。 しかし気にすることはなかった。スラッスラ読めて、長さなんて感じさせない! 現代の家族崩壊の問題がメインテーマになっていて、ものすごくリアル。ちょうど母親と内縁の夫が、小4の娘を殺した事件があったばっかだし。 ただこの本に出てくるのは逆のタイプの崩壊。なにかが壊れた子供が親を殺そうとする、他人に危害を加えようとする。それを防ぐために、子による一家無理心中に見せかけて、一家を殺害する元夫婦。しかし彼らにとってそれは”救済”であり、悪意なんてカケラもない。 その事件を追う刑事自身も過程に問題を抱え、生徒が事件に巻き込まれた教師自身も家族とは離れて生きてきて、他人との関わりを恐れている…。「小さな家族の愛情の話にこそ、真実がある」と信じる夫婦。 ものすごくメッセージ性の強いストーリーだよ、ホント。 けど現実は違うって。家族を信じられる子供を育てるためには、小さいうちに十分な刷り込みが必要だと思う。この年になって読んでも、もうそうは思えないや。
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更生が見込めず犯罪を繰り返し、他者を落とし込める人はこの世から排除したほうが良い、という考え方と、そんな人でも人なのだから、そのようになってしまったのには訳があるというのを考慮して対話していく、という考えもある。わたしにはどちらも正しいと思うが、他人はどう考えるだろう。こういった...
更生が見込めず犯罪を繰り返し、他者を落とし込める人はこの世から排除したほうが良い、という考え方と、そんな人でも人なのだから、そのようになってしまったのには訳があるというのを考慮して対話していく、という考えもある。わたしにはどちらも正しいと思うが、他人はどう考えるだろう。こういった社会問題は、よく何が正しいかということが曖昧なので、議論をしても答えが出てこないが、常に問題提起をして話をしていくということが大切なんだなと思った。 最近でも親殺し子供殺しが日本だけではなく、世界中で報道されている。家族の問題は今始まったことではなく、これからもずっとあるのかもしれない。
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うーーーーむ。 なんとなく、都合よく話がまとまっちゃったのね、という印象。 油井のことや、駒田のこと、亜衣のこととか……。 佐和子と馬見原のことも、佐和子が馬見原と綾女の関係を忘れちゃった、って感じで終了なのかな。 馬見原と真弓のことも、馬見原が持ってた○○の存在で解決? それ...
うーーーーむ。 なんとなく、都合よく話がまとまっちゃったのね、という印象。 油井のことや、駒田のこと、亜衣のこととか……。 佐和子と馬見原のことも、佐和子が馬見原と綾女の関係を忘れちゃった、って感じで終了なのかな。 馬見原と真弓のことも、馬見原が持ってた○○の存在で解決? それって、馬見原にとって都合よすぎじゃない? あんた、全然自分の家族のこと真剣に解決しようとしてないじゃない、全部、佐和子が「彼を理解してる」ってスタンスでかばってる感じ。 うーーーん。 これから変わってってくれよと願うばかり。 いい話なのだとは思うけど、少し長いし疲れました。
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駒田に刺され、怪我を負った遊子。遊子からのメールを見て駆けつけた浚介のおかげで、一命を取り留める。そんな2人は、次第に距離を縮め、お互いを求めるようになる。 山賀と大野は、静かにでも確実に儀式を進めていた。 また、綾女と研司のことで、揉めてきた油井と馬見原。2人の決着は着くのか…...
駒田に刺され、怪我を負った遊子。遊子からのメールを見て駆けつけた浚介のおかげで、一命を取り留める。そんな2人は、次第に距離を縮め、お互いを求めるようになる。 山賀と大野は、静かにでも確実に儀式を進めていた。 また、綾女と研司のことで、揉めてきた油井と馬見原。2人の決着は着くのか…。 ついに完結! 改めて家族のあり方や、世の中の問題、世界の問題を考えさせられる本でした。 この本に登場する人物は、家族というものに悩みを抱えた人がほとんどで、どの人物も不器用で、だからこそ、伝わるものがありました。 もともとドラマを観てから、この本を読み始めましたが、ストーリーをわかっていても十分ずっしりくるものがありました。やっぱりドラマの方がコメディー感があったかなという印象。一つ一つの言葉が重く、ずっしりきました。 天童さんの作品は、このシリーズが初めてでしたが、別の作品も読みたくなりました。
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テレビの総集編を見て、最終回だけ見て見事にハマった本。 結末だけでは良く分からなくて、原作本が読みたいと思って読み始めたら面白い。 ただ、とても長くて5冊にも渡る長編の為飽きるかと思いきや、久しぶりに本屋に行くのが楽しみになって買っていた。 現代の家庭や社会を映し出している。
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長い話の先は、多少の心残りがあった。 ただ、児童虐待や家庭内暴力には簡単な終わりはなく、そしてまた誰もが踏み込み解決出来るものでもない。 でも今の世の中に溢れ、悲劇を生んでいる現実がある。 長編であったこともあり、とても心に深く刻み込まれる話だった。 2015.3.2
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題名が重く、なかなか手が伸びなかったが、読み始めたら5巻一気に読めた。大まかなストーリーはテレビドラマで知っていたが、原作はその何倍も内容が濃く、読み応えあり。家族のあり方、自分を取り巻く社会について、考えさせられるシリーズだった。 登場人物は家族に悩みを抱え、心を痛めている人...
題名が重く、なかなか手が伸びなかったが、読み始めたら5巻一気に読めた。大まかなストーリーはテレビドラマで知っていたが、原作はその何倍も内容が濃く、読み応えあり。家族のあり方、自分を取り巻く社会について、考えさせられるシリーズだった。 登場人物は家族に悩みを抱え、心を痛めている人ばかり。不器用で、格好良くなく、だからこそ親近感を覚えるし、共感できる。天童荒太はこの国の端っこにいる弱い人たちの痛み、どうにもならないもどかしさを表現するのがうまい。今でも、どこかしらで起きている紛争、大義の前で肉親を奪われたり、住むところを追われたりする一般市民、亡くなってもすぐに忘れ去られる人々…「悼む人」は、「家族狩り」で描かれたその部分がより強まって形になったものだと思う。 読んでいたときは、ちょうどISILの非情さがクローズアップされたとき。力づくでの収束は新たな遺恨を生むだけ。家族にしろ、国にしろ、人がそこに存在する限り。心のざわざわは収まらない。
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1冊目は「家族狩り」といタイトルに惹かれて手に取りました。全5冊と知らず読んだのもあり、よくわからないまま終わってしまって、2冊目を読むまでに間があいてしまい、2冊目から5冊目をまとめて買いました。 2冊目からは面白く段々とストーリーと登場人物の気持ちに興味を抱くように。 5冊目は最後なので、読み終わるのがもったいない気持ちになりました。 一連の一家心中が家族狩りというなの他殺事件に変わっていきます。 家族狩りをしていた犯人は意外な人物で、その真意もまた意外なものでした。 登場人物がそれぞれ気持ちを入れ替えて生きて行きます。 家族とは、本当の愛とは、考えさせられるものもあり、家族とは当たり前にあるものではなく、大事にしなければならないと痛感しました。
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