沈黙博物館 の商品レビュー
最初からわかっていたはずなのだけれど、なんとなく目を背け続けている感じ。のどかな田園風景の隅には常に闇と落胆の気配があり、季節の巡りとともに死と腐臭の予感はいよいよ避けられないほど濃くなってくる…。 「僕」と少女がゆっくり感情を通わせていく過程や、老婆との信頼関係の構築など丁寧に...
最初からわかっていたはずなのだけれど、なんとなく目を背け続けている感じ。のどかな田園風景の隅には常に闇と落胆の気配があり、季節の巡りとともに死と腐臭の予感はいよいよ避けられないほど濃くなってくる…。 「僕」と少女がゆっくり感情を通わせていく過程や、老婆との信頼関係の構築など丁寧に、時にユーモラスにすら、描かれている。でもどこか冷徹で無表情なあきらめのようなものが常につきまとっていて、最後には「ああ、やっぱり…」という一種の虚無感がもれるのでした。 小川さんは「モノ」と「仕事」に関する執着が強い。この作品はまさにその最たるものといったところで、いろいろと物思いを呼びます。
Posted by
沈鬱で危うい色のない世界。 押し付けない生と死の、教戒を施されているよう。 冷たい雪がじんわり凍みてくる感じが堪らなく恐ろしい。
Posted by
表紙のデザインが『クラフト・エヴィング商會』の吉田夫妻、小説が小川洋子、解説が堀江敏幸。この三つが揃った奇跡の一冊。 博物館技師である「僕」がどこにでもありそうなちょっと寂れた町へ依頼を受けて出向き、依頼主から突飛な依頼を受けて、展示品を収集することになる。 登場人物に名前はな...
表紙のデザインが『クラフト・エヴィング商會』の吉田夫妻、小説が小川洋子、解説が堀江敏幸。この三つが揃った奇跡の一冊。 博物館技師である「僕」がどこにでもありそうなちょっと寂れた町へ依頼を受けて出向き、依頼主から突飛な依頼を受けて、展示品を収集することになる。 登場人物に名前はなく、「僕」は「技師さん」と呼ばれ、「少女」と「老婆」と「庭師」と「家政婦」がメインキャスト。 この匿名性と、展示品が語りかけてくる異様なまでの存在感(個人としてのアイデンティティ)が、不思議なほど違和感なくスムーズにぼくを受け入れさせた。 博物館建設予定地からほど遠いところに沈黙の伝道師と言われる修道士たちが暮らしていて、彼らは動物の毛皮を着込んで、いっさいの言葉にふれない生活をしている。 彼らの存在がこの作品を詩的で隔世な雰囲気をかもす材料になっていて、小気味よい。 展示品の収集とそれについて解説を清書する作業と、建築物ができていくさまを眺めること、それらを序盤は詳しく語っていき、基礎ができると、伝道師や庭師などにスポットがあたっていったり、野球や祭りなどの行事、イベントが挟まれており、テンポよく、飽きさせない。 驚くほど、すがすがしい気持ちになれたのは、ぼくだけだろうか。
Posted by
以前、読んだ小川洋子さんの「ミーナの行進」を 夜の世界にしたような雰囲気を感じました。 また、小川さんがホラー小説を書いたら、 すごい作品ができるのだろうなとも感じました。 この作品に関しては、大切にじっくり読んだともいえますし、 読み終えるまでに骨を折ったともいえます...
以前、読んだ小川洋子さんの「ミーナの行進」を 夜の世界にしたような雰囲気を感じました。 また、小川さんがホラー小説を書いたら、 すごい作品ができるのだろうなとも感じました。 この作品に関しては、大切にじっくり読んだともいえますし、 読み終えるまでに骨を折ったともいえます。 それでもボクは、小川さんのように繊細な筆致のエッセンスが 自分にも欲しいので今回も大変勉強させて頂きました。
Posted by
小川洋子、2冊目。「偶然の祝福」が思いのほかよかったので。 主人公は博物館技師の30代の男。 はるばるやってきた街で、大きなお屋敷に住む金持ちの、そして偏屈で風変わりな老婆から、ある博物館を造ることを命じられる。 老婆がこれまで集めてきたコレクションを収め、そしてこれから...
小川洋子、2冊目。「偶然の祝福」が思いのほかよかったので。 主人公は博物館技師の30代の男。 はるばるやってきた街で、大きなお屋敷に住む金持ちの、そして偏屈で風変わりな老婆から、ある博物館を造ることを命じられる。 老婆がこれまで集めてきたコレクションを収め、そしてこれから先は男がその収集を引き継ぐことになる、という。 そのコレクションとは・・・。 ちょっと暗くて、抽象的で、静かな世界。 フランス映画っぽい、というのがやはりイメージとしてわかりやすいかな。 そして、舞台設定とかが、村上春樹っぽい気もする。 この小説に関して言えば、「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」の、<世界の終わり>の方のイメージがすごく近い。 淡々としつつも、細いガラスの糸をぴんと張ったような繊細な緊迫感があります。 世界観を楽しみつつ、ストーリー展開も楽しめる作品。 でも、やっぱり「偶然の祝福」のほうが好きかも。
Posted by
博物館技師の「僕」が呼び寄せらせた村での仕事は 老女が集め続けた人々の形見を収集、展示する博物館を作るコトだった・・・ こちら側とあちら側の境界にある博物館 形見は強烈な死のイメージがあった 二度は手に入らないモノだし いない人を思う為の品物だから でも、この話を読んでみて 生...
博物館技師の「僕」が呼び寄せらせた村での仕事は 老女が集め続けた人々の形見を収集、展示する博物館を作るコトだった・・・ こちら側とあちら側の境界にある博物館 形見は強烈な死のイメージがあった 二度は手に入らないモノだし いない人を思う為の品物だから でも、この話を読んでみて 生きた証であり 生と死を内包する 唯一のモノなんだと それを集め続ける老婆と僕は どこの世界に属しているんだろう 面白かった
Posted by
消えてしまわないものは何だか悲しい。 持ち主の元から消えてしまった物の物語。 小川洋子のひんやりとして静かな世界観がここでも見られます。
Posted by
朝食の後のコーヒー飲む時間に、1章ずつゆっくりゆっくり、味わって読みました。 乳首の描写がめちゃくちゃ怖いです…痛いです…。 というか、小川洋子さんのこの想像力のすごさはどこからわいてくるんだろう?オチはハッピーともバッド(?)とも取れるけれど、読後感に不快感は全然ありません...
朝食の後のコーヒー飲む時間に、1章ずつゆっくりゆっくり、味わって読みました。 乳首の描写がめちゃくちゃ怖いです…痛いです…。 というか、小川洋子さんのこの想像力のすごさはどこからわいてくるんだろう?オチはハッピーともバッド(?)とも取れるけれど、読後感に不快感は全然ありませんでした。 そろそろ真面目にアンネの日記を読もうか…。
Posted by
…こういう物語が読めるのも彼女がいてこそなんだろうけれど。 これまた静かで、寂しくて、淡々としていた。 形見の博物館を作るために、老婆の命令に従って盗みすらはたらく技工士。 誰の感情もほとんど示さず、淡々としたお話。
Posted by
なんだかぞっとしながらも、読み進めずにはいられない。 小川さんの著書はそういうものが多い。 「博士の愛した数式」が有名だが、こういうちょっと不気味な作風の方が好みではあるな。 有名でもなんでもない、全く普通の人物の形見を集め、博物館を作ろうとする話。 その博物館の沈黙を想像する...
なんだかぞっとしながらも、読み進めずにはいられない。 小川さんの著書はそういうものが多い。 「博士の愛した数式」が有名だが、こういうちょっと不気味な作風の方が好みではあるな。 有名でもなんでもない、全く普通の人物の形見を集め、博物館を作ろうとする話。 その博物館の沈黙を想像するだけで・・・ 横隔膜、縮む。
Posted by