魔笛 の商品レビュー

野沢尚(著者)

2011/08/21

　新興宗教の教祖・坂上輪水被告に死刑判決が下された瞬間、私は手元のボタンを押した。それにより渋谷スクランブルで爆弾が爆発、多くの人生がその時停止した。さぁ、警察よ、鳴尾良輔よ。私にたどりついてみろ。

　宗教に潜入したが、ミイラとりがミイラになってしまった元公安の照屋礼子。彼女の自己分析＝一人称で物語が進んでいくのだが、これがとにかく読みにくくてしょうがなかった。それでもこの作者だし、Amazonの評価も高いし・・・と思ってなんとか最後まで読み切ったが、全然おもしろさがわからないまま終わってしまった。照屋がそこまで鳴尾に執着する理由とか、鳴尾が刑事という立場でありながら安住藤子に獄中結婚を申し込む程惚れ込んだ理由とか、藤子にいわゆる安楽椅子探偵をやらせる設定とか、どれもこれもいまいちピンとこないし必要性がわからない。私が楽しめたのは爆弾解体のところぐらいか。爆弾処理の真杉はかっこよかった。

2011/07/25

またまた野沢サスペンス。某宗教団体の事件に確実にインスパイアされたであろう内容であった。しかし、これはなんといおうか小説を語る語り部としての視点が、結構特殊だった。一見くるくる語り手が代わっているようで、おそらく一貫して一人が語っていたのだろう、この視点がなにやら新鮮な緊張感を与えていた。相変わらずの、キャラクター設定の妙と構成力の妙。しかし、後半にいくにつれて疾走する物語の展開が少し著者の他作品の展開とやや、空気感というかそういったものが似ており、また展開を読めてしまう部分もあったので最後の方はだれてしまったかも。

2011/06/10

初野沢尚。
これは面白い。
冒頭でいきなり渋谷テロ。
ほぼ全編テロリストの独白という感じでストーリーが進んでいく。
刑事がテロリストまでたどり着くまでの状況や公安とのやりとりが
疾走感を持って語られる。
そしてクライマックス直前に登場人物の行動を細切れに見せていくことで、
緊迫感を一気に煽る。
文章量は多いのに、全然苦もなく読めてしまった。
若干、獄中の妻が頭良よすぎな感じがしないでもなかったけど、面白かった。

2011/06/01

３回目読んだ。毎度引きずり込まれておもしろい。
最初のころは宗教の側面でしか読めなかったけど
今回は深いところまで行けたと思う。

2011/05/29

読むのに思いの外時間がかかってしまった…緻密で読み応えがあって面白かった。警察・公安・そして新興宗教が三つ巴に絡んでスピードがあって。断片が収斂していく快感…

2011/05/27

「圧巻」の一言！！
公安と宗教が生み出したテロ魔と、警察と、そして公安との三つ巴とでも言うのだろうか。
某宗教を色濃く匂わせていたり、情景や思想・思考の描写がとても細かく、読むのが大変な(難しい的な意味で)作品ではある。しかし、とても凝縮された密度の濃い、だけどスピード感ある一冊でした。
参考資料もさることながら作者さんもとても頭良かったんだろうなあと、読み終わった今しみじみと震えております。
あと、こんな作品が映画化ドラマ化してほしいなとも思った。まあ実写化は表現に限りがあって難しい＆活字だからこその激震だったのですが……
是非、この出会いを機に著者の他の作品にも触れてみようと思いました。著者さんがすでに故人であることが実に残念……

2011/05/23

読みはじめてから感じたなんとも言えない違和感は、読み進めるに連れ気持ちのいいくらい氷解し、作者である野沢尚さんの用意した舞台の上で私一人だけに用意された劇を目の前で見せられている錯覚に陥った。
作者の筆力によるものだが、生々しく迫ってくるそれから 時折目を背けたくなる様なリアルさで逃がしてはくれない。あっという間に読み終えてしまった。犯罪小説というより、誰もが抱える心の闇をまざまざと見せられた。

2011/05/15

前半何度もくじけそうになったけど、後半は一気に読めた。
事件のあらましも心理描写も緻密で計算されてる。

2011/05/16

たまには小説でも、と思って適当に本屋で衝動買い。ゲームの428をやったあとだったので、渋谷での爆弾テロというストーリー展開に惹かれて購入。公安と警察の関係みたいなリアルっぽさが面白かった。これを機に、少し本を読もうと思い始めた。

2011/04/30

野沢尚著【魔笛】読了。久しぶりに時間も忘れ、物語に引き込まれた作品。公安、共産党、宗教、テロ、憎しみ、自分の葛藤…様々なテーマを上手くまとめてあり、かつ物語として成立している。時折、想像しえないくらいダーティーな場面が作品を際立たせていた。警察小説としても疾走感があり秀逸。