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敗北を抱きしめて 増補版(上) の商品レビュー

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39件のお客様レビュー

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2024/07/21

日本の戦後は、あれだけの悲惨と混乱の最中にありながら、なぜ、無秩序と無縁であったのか?あれだけの激しい戦闘のあとに、なぜ、占領者に対する暴力がまったく発生しなかったのか?どのような事情によって、日本人はあの苦難を乗り越え、多様な創造性を発揮して「やり直す」ことができたのか?戦後日...

日本の戦後は、あれだけの悲惨と混乱の最中にありながら、なぜ、無秩序と無縁であったのか?あれだけの激しい戦闘のあとに、なぜ、占領者に対する暴力がまったく発生しなかったのか?どのような事情によって、日本人はあの苦難を乗り越え、多様な創造性を発揮して「やり直す」ことができたのか?戦後日本では、いったいどんな心理的、制度的、法的な変革、それも重要かつ永続的な変革が起こったのか?戦後初期の「アメリカ」は、今やイラク占領に苦しみながら、グローバルな「自由市場」の帝国を築こうとしている今のアメリカと、どこがどう違っているのか? こういったことを本書で述べているが、戦勝国の歴史書という側面が多分にあり、第三者的視点から書かれているとは決して思わなかった。太平洋戦争などを知るには、山岡荘八の小説太平洋戦争がやはり一番だと思った

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2023/12/16

著者のスタンスはやや左寄りかと思ったが、左にありがちな独善的な説教臭がなく、戦後「何が起きたか」を淡々と丁寧に綴ってある。 吉田茂ら日本の指導層が抱いていた「日本人に民主主義が根付くはずがない」という信念は、必然的に統制された社会(「臣民」の権利は君主の恩寵であり、許容できる範...

著者のスタンスはやや左寄りかと思ったが、左にありがちな独善的な説教臭がなく、戦後「何が起きたか」を淡々と丁寧に綴ってある。 吉田茂ら日本の指導層が抱いていた「日本人に民主主義が根付くはずがない」という信念は、必然的に統制された社会(「臣民」の権利は君主の恩寵であり、許容できる範囲内での異議申し立ても可能)を志向する。(そして日本人もそれをよしとする) 軍備、経済、インフラ、資源を徹底的に破壊された敗戦は、それまで日本人の属性であると「信じ込まされ、宣伝されてきた」全体奉仕的な心性をあっけなく剥ぎ取り、拠り所を失くすと同時に重しから解放された、破壊された人生を嘆き、生きるためにエゴイズムを剥き出し、新しい支配者に諂い、それでも自らの力で立ち上がろうとする「市民」を作り出した。 日本について何の予備知識も持たなかったマッカーサーは、白紙状態に置かれた7千万の市民に民主主義を与える使命を帯びた植民地総督として君臨し、一国家の基本理念を個人の思い付きレベルで決めるという壮大な歴史的実験を開始した。 現実を見ず理念だけを追いかけるリベラルらしく、旧体制の経済的基盤だった財閥を解体したが代わりを用意しなかった経済政策は深刻なインフレと食糧不足を生み、理念よりも生存を優先せざるを得ない市民は、生存権のために「民主主義的」要求を掲げて立ち上がる。(この状況で暴徒化しなかったのは日本人の美点と言ってもよいのかもしれない) しかし、困窮する市民を組織化し、暴力に変えるのは共産党のお家芸であり、残念なことにそこにはコミンテルンからの「命令」が介在していた。日本人が真に日本人の意思で革命を志向していたのであれば、想像を絶する犠牲の上に「民主主義」国家が成立したのかもしれないが、現実は米国の実験に過ぎず、実験である以上、7千万の国民を有するソ連主導の民主主義擬き国家の成立など、可能性レベルでも許容されるはずがない。GHQのゼネスト中止「命令」は、日本が独立した国家ではなく、占領中の植民地にすぎないという現実を革命気分の夢想家に容赦なく突き付けた。 結果は、相変わらず米国の傀儡だが戦前と変わらない支配力を維持した財務省、そこかしこの労働組合に潜伏した活動家、確かに芽吹いた民主主義の信奉者、そして、自ら考えリスクを負って自主的に行動するほど民主主義でもなく、かといって個人を無にして信仰や国家に忠誠を誓うほど全体主義でもない、利己的でシニカルで無気力で熱狂的で優しい「普通の日本人」が残された。

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2023/07/20

終戦直後の日本の世相を論じた本。戦争が日本から何を奪い、何をもたらしたかをこの本から考察できる。外国人が書いているため変にバイアスがかかっておらず、読む側も第三者的視点で冷静に考えることができ読みやすい。

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2023/05/29

日本人を「江戸時代のゼロ成長と家長中心の家=村社会の変化を嫌う伝統」文化社会と見ると、敗戦による変化は支配者を換えただけの愚民の聚合である。中央集権の帝政官僚の忠誠心が民に初等からの学校教育により愛国心を天皇を中心とした信仰(大日本賛美)に裏打ちされ、軍の暴走・大陸侵略に「新たな...

日本人を「江戸時代のゼロ成長と家長中心の家=村社会の変化を嫌う伝統」文化社会と見ると、敗戦による変化は支配者を換えただけの愚民の聚合である。中央集権の帝政官僚の忠誠心が民に初等からの学校教育により愛国心を天皇を中心とした信仰(大日本賛美)に裏打ちされ、軍の暴走・大陸侵略に「新たな領土ができた」と有頂天になり、ついにはアメリカ様に挑戦するまで不遜になったと見れば「反省」「新日本」で蒔き直しようという「焼け跡民主主義」を理想化「そこには理念があった」著者は占領軍の贅沢三昧、45万人で電力消費の1/3も指摘する

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2022/10/02

戦後直後の日本の世相・風俗・思想を詳しく論述した書。外国人の視点であるため、白人の優生思想が若干見え隠れするものの、客観的であることが良い。日本人の著書だとやたら愛国的であったり戦争アレルギーが出てたりと思想が強いものが多いので。 若干難しめの論述をしているのにもかかわらず、訳文...

戦後直後の日本の世相・風俗・思想を詳しく論述した書。外国人の視点であるため、白人の優生思想が若干見え隠れするものの、客観的であることが良い。日本人の著書だとやたら愛国的であったり戦争アレルギーが出てたりと思想が強いものが多いので。 若干難しめの論述をしているのにもかかわらず、訳文が非常に優れてて読みやすい。

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2022/06/05

駐日経験のある著者の、日本についての論説。深い洞察を期待していたが、日本は第二次世界大戦時に道を誤った国という、戦時中の米国でのプロパガンダをベースに、日本での戦後の出来事を表層だけ選び取り、自分が考えるストーリーに合わせている感がある。例えば、天皇にあれだけ忠誠を誓って、兵隊は...

駐日経験のある著者の、日本についての論説。深い洞察を期待していたが、日本は第二次世界大戦時に道を誤った国という、戦時中の米国でのプロパガンダをベースに、日本での戦後の出来事を表層だけ選び取り、自分が考えるストーリーに合わせている感がある。例えば、天皇にあれだけ忠誠を誓って、兵隊は決死の覚悟であったはずなのに、戦後すぐに武装解除に応じた旨など、まるで日本兵が掌を返したように記述されているが、それ以上の深い洞察はしていない。別の書になるが、「天皇の国史」(竹田恒泰)では、皇族が必死になって降伏後の陸軍の暴走を止めたという記述があり、より納得感がある。日本に対してだけでなく、米国に対しても辛口なので、そのような論調かと思えば、ソ連による日本兵シベリア抑留はさらっと表面しか述べられておらず、なにかしら興醒め感を持った。それ以降、読む気力を失った。

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2022/03/26

上巻は 日本の庶民の敗戦直後の様子が中心。犠牲者としての庶民が 当時の文学、生活状況とともに 映し出されている。これが 敗北の姿なのだと思う 上巻のポイント *敗戦により 庶民に虚脱が生まれたこと *戦勝国のおごりと 敗戦国の屈辱 が 虚脱を生んだこと *非軍事化と民主化は ...

上巻は 日本の庶民の敗戦直後の様子が中心。犠牲者としての庶民が 当時の文学、生活状況とともに 映し出されている。これが 敗北の姿なのだと思う 上巻のポイント *敗戦により 庶民に虚脱が生まれたこと *戦勝国のおごりと 敗戦国の屈辱 が 虚脱を生んだこと *非軍事化と民主化は 女性を強くしたこと *「売春婦」「闇市」「カストリ」が 庶民の虚脱を救ったこと *虚脱を理解すると 坂口安吾「堕落論」の意味が理解できること *敗北に目をつけて、英会話の本を出版した目ざとい日本人もいたこと

Posted byブクログ

2022/04/24
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

昨年読み終えた本だけど、改めて... 20年以上前の本だけど、第二次世界大戦後の日本人の姿が、残酷なほどリアルに描写されていました。 著者の冷静で深い考察がとても面白く、非常に興味深い内容でした。 ・天皇は屈辱的な敗北宣言を日本の戦争行為の再肯定と天皇の超越的な道徳性の再確認へと転換しようとした。 ・分割占領だったドイツとは異なり、日本は米国一国による占領のため日本が被害を与えたアジア諸国が日本占領において重要な役割を得られなかった。 ・敗戦後の飢餓と虚脱状態によって日本人が自分自身の悲惨さに囚われてしまった。 →日本人の加害者意識より被害者意識が強まった。 ・占領軍による植民地主義的な民主主義革命という矛盾 加藤悦郎 「鎖は切断された ー しかし、我々はこの鎖を断つために一滴の血も汗も流さなかったことを忘れてはならない。」 戦時中、極限の飢餓によって日本兵が同じ日本人の肉を喰らったということは遠藤周作の「深い河」で知りましたが この本では、国内の悲惨な食糧不足の結末も描かれています。 「敗戦国の非軍事化と民主化」という米国による未知の試みは、現代の日本人にも影響を与え続けているのに、歴史と切り離れてそのことに無自覚になっていったのかなぁ。 正直、日本は今でも米国に実験体にされている気がしてならない。 開国以来、欧米列強への劣等感をバネに「一等国」を目指し続けて戦争へと突入した姿と、本質的には変わっていない気がします。 テレビで流れる「先進国」という言葉に虚しさが響く。 RAAなど、読むのがつらくなる内容が多いです。 自分が思い描いていた戦争の実態がいかに甘かったか、思い知らされました... でも、全ては知ることから始まると思いますし 知らなければ、次の世代に引き継げない。 そして 戦争について学び、語り継ぐことが戦争の犠牲者への最大の鎮魂になるのではないかと思います。 戦没者を一方的に「英霊」と祀り上げて 戦没者に「ありがとう」と言う人達もいますが 僕は絶対にそんなことはしたくありません。 それこそが、戦争を引き起こした思想だからです。 平和には学ぶ努力が伴うことを、改めて教えてもらえた気がします。 この本を読んだからかもしれませんが 池上彰さんがテレビ番組で 「日本は戦後すぐ民主化しました。」と話していて とても腹が立ちました。 なぜそんな大事なことを一言で片付けるのか。 どうやって民主化したのか。 なぜ民主化したのか。 国家の民主化とはそんなにすぐ成し遂げられるものなのか。 あらゆる問いを置き去りにした後に 日本と比較して韓国は民主化の歴史が浅いという話まで始めていて、出演者は誰一人疑問を呈さない。 日本は本当に民主化しているのか。 なぜ韓国や中国に対する日本人の加害者意識がこんなに低いのか。 こういう話をしないのは 最終的に天皇の戦争責任の話につながるからだと思います。 自国の歴史を省みずに 他国批判に走る大人が「戦争」を言い出すのではないでしょうか。 僕自身も、戦争の話をしてくれた祖父や こういった本と出会わなければそんな大人になっていたと思います。 先人達が命懸けで遺してくれたものを 手放してはいけないと思うし この本の表題は、そういう意味が込められているのかもしれません... 戦争の勝者は、今も戦争を続けています。

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2021/08/08

副題が「第二次大戦後の日本人」。 第二次大戦の敗戦後、アメリカを主体とする連合国の占領軍が日本に上陸した。1945年8月の終戦からさほどの日数は経っていない。本書は、占領下の日本および日本人のふるまいの記録である。 筆者のジョン・ダワーは本書発行当時、MITの教授。歴史学者と思う...

副題が「第二次大戦後の日本人」。 第二次大戦の敗戦後、アメリカを主体とする連合国の占領軍が日本に上陸した。1945年8月の終戦からさほどの日数は経っていない。本書は、占領下の日本および日本人のふるまいの記録である。 筆者のジョン・ダワーは本書発行当時、MITの教授。歴史学者と思うが、学者の著書らしく事実関係を丹念に整理し記録している。1945年からの数年間のことが主題ではあるが、発行は2001年と比較的新しい(それでも20年が経過しているが)。 本書の説明にも書かれているし、本文中の筆者の筆の運び方もそうだが、この時期の日本・日本人について、筆者は、「勝者による上からの革命に、敗北を抱きしめながら民衆が力強く呼応した奇蹟的な敗北の物語」としてとらえている。 同時代に生きていたわけではないので、時代の感覚までは分からないのであるが、本書を読む限り、日本人一般は終戦からマッカーサー占領軍の占領を、ある程度抵抗感なく、受け入れていたように思える。それは表面上はともかく、戦争および戦争を戦うための日本軍の生活全般におけるしめつけや経済的窮乏、さらには、度重なる市街地の爆撃による設備的・人的な被害に対して、当時の日本人は実際には飽き飽きしていたのではないかと思うからである。 そういった気分の中での米軍による占領を、様々な側面から描写・記録しており、とても興味深い。下巻を引き続き読む予定。

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2020/09/27

敗北を抱きしめて 上 増補版―第二次大戦後の日本人 (和書)2013年11月22日 21:14 2004 岩波書店 ジョン ダワー, John W. Dower, 三浦 陽一, 高杉 忠明 どうしてこうなってしまったのか疑問に思っていたところが明確にされていてこんな本を読みた...

敗北を抱きしめて 上 増補版―第二次大戦後の日本人 (和書)2013年11月22日 21:14 2004 岩波書店 ジョン ダワー, John W. Dower, 三浦 陽一, 高杉 忠明 どうしてこうなってしまったのか疑問に思っていたところが明確にされていてこんな本を読みたかったのだと叫びたいです。 こういった本がアメリカ人の手によって書かれたのが面白いところです。ハワード・ジンの「民衆のアメリカ史」を敗戦後の日本の民衆をテーマに書きなおしたようなそんなインパクトの有る本です。 凄く良かった。次巻も楽しみです。

Posted byブクログ