煙か土か食い物 の商品レビュー
テーマは暴力と家族愛。ミステリーを期待して読んだら全然ミステリーではなかったけど、これはこれで面白かった。圧倒的なスピード感で最後まで一気に読めてしまった。こういう文章を書ける人に憧れる。
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2001年デビュー作。出だしから最後まで凄まじく疾走。この感覚は経験したことがない。改行なく文字で埋め尽くされた頁に怯みますが口語基調なので読みやすい。文字の密度が主人公から次々に湧き出てくる想いと同調して、こちらの読むスピードも加速していきます。
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主人公は米国の救命外科医奈津川四郎。母が連続事件の被害者となり帰国、事件解決に向けて暴走する。物語の根幹となるのは親子の確執。バイオレンス強めのミステリー。
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NINEまでは作者と主人公の癖の強さについていけず何度か断念しそうになったが、TENで奈津川家の過去が深く掘られていくとようやく四郎の全体像がなんとなく掴めたので、同じ気持ちの人たちはどうにか断念せずに読み進めてほしい。全体像を雰囲気だけでも掴めたら、あの躁状態に近い気持ちについても推し量ることができ、内容が前よりも噛み砕きやすくなると思う。 初めは主人公は実際には力もお金も女も無い男が心の内飲みで強い自分を演じているのかと思っていたが、話を読み進めていくとルックスも頭も良く、一般的に優れた人物であること、それでも四郎を始め兄弟も父も祖父も突飛な性格であることなど、想定外でかつこれまで読んだことのない展開が多く、夢中になってからはとてもおもしろく読むことができた。 今回舞城王太郎作品に初めて触れたので、また別の作品も読んでみたいと思う。
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死ぬことと眠ることは似ている。目を閉じて動かなくなる。四郎がなぜ眠れなかったのかというのは、人は死んだら何も残らない(=煙か土か食い物)ということへの恐怖がそうさせていたわけだが、それは単なる精神ストレスというよりも、眠ること≒死ぬことというアクション的な比喩で提示されていたよ...
死ぬことと眠ることは似ている。目を閉じて動かなくなる。四郎がなぜ眠れなかったのかというのは、人は死んだら何も残らない(=煙か土か食い物)ということへの恐怖がそうさせていたわけだが、それは単なる精神ストレスというよりも、眠ること≒死ぬことというアクション的な比喩で提示されていたように思う。しかし皮肉なことに、人間は眠らないと生きていけない。眠らないことが死ぬことに繋がってしまう。 上述の「煙か土か食い物」という呪いは過去にかけられている。過去にかけられたこの呪いは「未来への恐怖」とも言いかえることができる。恐怖たる未来を取り除くのではなく、その恐怖そのものを切開し、縫合し、あくまで「未来への恐怖」だけを治療する。何も残らなくても何かが残る。過去に何が起きても我々は今日や明日や明後日をこそ生きてゆく。たとえば手術とはそのためにあり、たとえば事件推理とはそのためにある。
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語り口は軽い感じなのにハラハラでドロドロでグログロだった笑。あ、真犯人、割りとあっさり怪しく出てきちゃいます??って思ったけど、期待は裏切らない。
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最高。基本ユニークな表現とセリフで笑わせてくるのに、最後の四郎怒涛の緊急施術の嵐で涙ぐんでしまった。 ヘンテコミステリーを求めてこの作品を手に取ったのに、ド級の家族愛パンチを喰らってしまった。奈津川兄弟大好きだ!
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暴力、性欲、狂気、生と死、そして家族愛! 疾走感とリズミカルな文章に浸れる傑作 #煙か土か食い物 海外で外科医をやっている主人公は、母が事件に巻き込まれたと連絡を受ける。急いで日本に戻って事件解決のために尽力するが、彼の家庭環境は壮絶だったことが明るみになっていく。猟奇的な殺人...
暴力、性欲、狂気、生と死、そして家族愛! 疾走感とリズミカルな文章に浸れる傑作 #煙か土か食い物 海外で外科医をやっている主人公は、母が事件に巻き込まれたと連絡を受ける。急いで日本に戻って事件解決のために尽力するが、彼の家庭環境は壮絶だったことが明るみになっていく。猟奇的な殺人と家族のゆがんだ関係性は解決に至るのか… 猛烈なバイオレンス、スピード感で迫る本作。これがうわさの舞城節ですか。 改行がほとんどなく、文章が襲い掛かってくる感じ。まるでスラッシュメタルやメロコアパンクの音楽を聴いているような感覚に陥りますね。これは癖になる、読む手が止まらない。なんだこれは! しかも猟奇性あるあふれる言葉、冗談めいた言葉、死に関する言葉が次々出てきても、嫌な気分にならない。不思議な感覚。 登場人物も強烈な人たちばかりで、気がふれた変態やおかしな人が次々登場。まともな人がいねーよ。 お話としては、なんとか起承転結が追えるという感じで、一応はエンタメ小説ですね。ミステリーとしても不可思議で、正直凡人には意味が分からないです。 本作の一番の魅力は、なによりテーマ性ですね。哲学や純文学に近い。 何が言いたいのか、分かるようで全然分からないのですが、ただ「愛」と「死」だけは強烈に伝わってきました。 日々つまんないなーとぼやいている人は、是非一度このドライブ感を体験してみてほしい。おすすめです!
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『淵の王』がなんかよく分からないけどすごく良かったので、他の作品も読んでみたくなった舞城王太郎。 奈津川四郎は、不眠症で腕のいい外科医だ。サンディエゴの病院で働いていて、女にはモテモテでセックスだってし放題。あるとき、日本にいる彼の母親が何者かに殴られ、土に埋められて意識不明の...
『淵の王』がなんかよく分からないけどすごく良かったので、他の作品も読んでみたくなった舞城王太郎。 奈津川四郎は、不眠症で腕のいい外科医だ。サンディエゴの病院で働いていて、女にはモテモテでセックスだってし放題。あるとき、日本にいる彼の母親が何者かに殴られ、土に埋められて意識不明の重体だという連絡が入る。四郎の地元では同じ手口の事件が続いていて、同一犯の仕業である可能性が濃厚だという。 日本に帰った四郎。彼はもちろん四男だ。一郎二郎三郎。名前が覚えやすくて親切だ。それにまずわたしは感動した。ちなみに二郎は失踪して行方知れず。 飛び切り冴えてる脳味噌を持つ四郎は、この事件の犯人を突き止めるべく動く。 バイオレンスに続くバイオレンス。果てしなく続く暴力の描写は色鮮やかで、やることはとことんえげつなく、傷は気が狂いそうに痛そうだ。ラストなんて本当に笑っちゃうくらいすごい。 こっちを先に読んでいたら『淵の王』は読まなかったかもしれない。これが面白くなかったというわけではない。むしろ面白かった。だけど暴力の描写が多過ぎる小説は、読むと魂が疲弊するのだ。 順番間違えなくてよかったと思った。 色んな顔を持つ作家なんだな、彼は。
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面白かった。初の舞城王太郎作品。煙か土か食い物。文章が詰まっていて、少々読みにくいものの、慣れてしまうと主人公の思考を丸々追っているかのようなドライヴ感が楽しめる。自分とは似ても似つかない主人公だが、その一体感は必然的にとても読者に近い距離にあるものだと思う。又この小説はキャラク...
面白かった。初の舞城王太郎作品。煙か土か食い物。文章が詰まっていて、少々読みにくいものの、慣れてしまうと主人公の思考を丸々追っているかのようなドライヴ感が楽しめる。自分とは似ても似つかない主人公だが、その一体感は必然的にとても読者に近い距離にあるものだと思う。又この小説はキャラクター小説とも言えるほど登場人物の背景がある。魅力的なキャラクター達が、その背景をもとにどういう感情で動いているのか。創作の物語という点からはごく当たり前のことなのだが、それが忠実的にこなされており、後半になればなるほど面白かった。
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