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歴史学ってなんだ? の商品レビュー

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37件のお客様レビュー

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2012/01/26

本書は「素人のための歴史学入門講座」(「内容紹介」より)と銘打っているように、歴史を専門的に学んだことのない人々-特に、歴史は“暗記”であり、社会の役に立たない“虚学”だと思っている人々に向けた一冊である。 筆者が強調するのは、歴史学における“プロセス”の重要性である。それは、...

本書は「素人のための歴史学入門講座」(「内容紹介」より)と銘打っているように、歴史を専門的に学んだことのない人々-特に、歴史は“暗記”であり、社会の役に立たない“虚学”だと思っている人々に向けた一冊である。 筆者が強調するのは、歴史学における“プロセス”の重要性である。それは、歴史家に必要な資質を「疑い、ためらい、行ったり来たりすること」(p.151)だと規定していることからも分かるだろう。つまり、教科書の記述(解釈)を暗記することが重要なのではなく、むしろ、その解釈を疑い、史料を通じて「より正しい解釈」を導き出す営みこそが、歴史学の本髄であると指摘する。さらに言えば、与えられた前提を疑い、使えるデータを批判的に解釈し、他の人々とのコミュニケーションを通じて、新しい解釈を打ち出すという作業は、歴史学に限らず、社会一般に役立つスキルであるとも言えよう。 その他にも、本書では様々な視点から歴史学という学問を分析していく。入門書という位置づけ故に、その記述の一部には、楽観的過ぎたり、簡略化し過ぎたりする部分がないわけではない。しかし、分かりやすさという点も含めて、これから歴史を学ぼうとする人(あるいは、歴史が嫌いになってしまった人)が最初に手にするべき一冊としてオススメしたい。

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2011/11/30

高校の教科書を見て、「歴史は何の役に立つのだろう」と思った人向けの本。 歴史学は過去の真実(史実)を明らかにする学問である。 そして、史実という事物の根源を知ることで、その問題に定義づけをすることができる。 物事を考える際には先ず問題を意識する必要があるが、その問題の...

高校の教科書を見て、「歴史は何の役に立つのだろう」と思った人向けの本。 歴史学は過去の真実(史実)を明らかにする学問である。 そして、史実という事物の根源を知ることで、その問題に定義づけをすることができる。 物事を考える際には先ず問題を意識する必要があるが、その問題の定義づけをするのに歴史は非常に役立つのである。

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2011/09/24

「なぜ歴史を学ばなければならないのか」という問いは,多く聞かれる。筆者は歴史学がこれまで歩んだ経緯を示し,その存在意義を述べている。 歴史学が史料批判を通じ「より正しい解釈」に至ることの営みであることは,説得力がある。 近年の教科書問題にも通じ,その解決にも寄与する書だと思う。

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2011/08/29

歴史学のところを中国古典文学と変えて読めば、そのままわれわれの専門分野のこととして理解できます。ぜひ読んで下さい。

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2011/07/01

この本では三つの問題を考えています。 ①史実はわかるか? ②昔のことを知って社会の役に立つか? ③そもそも歴史学とは何か? みんなで検討し、より正しいものを選び取っていく。現在の段階で最善を尽くし、史実をより正しく認識し、解釈し、よりよい歴史像を構築するべきことを考える...

この本では三つの問題を考えています。 ①史実はわかるか? ②昔のことを知って社会の役に立つか? ③そもそも歴史学とは何か? みんなで検討し、より正しいものを選び取っていく。現在の段階で最善を尽くし、史実をより正しく認識し、解釈し、よりよい歴史像を構築するべきことを考える。しかし将来どう評価されるかはわからない。 直接に社会の役に立とうとするのではなく、真実性を経由したうえで社会の役に立とうとすること。集団的な愛エンティティや記憶に介入しようとするのではなく、個人の日常生活に役立つ知識を提供しようとすること。役に立つはずだ。

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2011/06/26

「歴史学」とは、一言でいえば「史実」を明らかにする学問、ということになるんだろうけど、ちょっと考えれば、本当にそんなことが可能なのか?(そもそも、その言い方はwell-definedなのか?)という疑問にぶつかることになる。本書は、歴史学の存立にかかわる本質的な問題に正面から取り...

「歴史学」とは、一言でいえば「史実」を明らかにする学問、ということになるんだろうけど、ちょっと考えれば、本当にそんなことが可能なのか?(そもそも、その言い方はwell-definedなのか?)という疑問にぶつかることになる。本書は、歴史学の存立にかかわる本質的な問題に正面から取り組み、一般人向けに分かりやすく説明しようとする良書である。歴史学者と歴史小説作家は違うのか?正しい「史実」は存在するか?など、興味深い議論が満載で面白かった。ちなみに筆者の主張をまとめると、「解釈が一意に定まる史実はない。解釈を固定した場合も、史実を100%正しく認識することはできない。歴史学とは、より正しい解釈に基づいて、史実をより正しく認識し、よりよい歴史像を構築することである。ある時代の歴史学者の活動が正しかったかどうかは、歴史によって評価されるべき。」といった感じであろうか。私は、自己矛盾に陥りかねない、この身も蓋もない結論を基本的に支持する。(20世紀は、あらゆる学問がこのように総括された時代であった) 本書で言及されなかったテーマの1つに、「事象の発生から何年たったら、歴史学の考察の対象になりうるか?」ということがある。本書では、議論の具体例として従軍慰安婦の問題を大きく取り上げている。私は、従軍慰安婦の問題を、現時点(本書は2004年に出版された)における「歴史学」の対象に入れていいのかどうか、という基本的なところで躓いてしまった。当事者が生きている状況で「史実」を明らかにしようとしても、利害関係(賠償問題とか)が生々しく絡み合うため、「よりよい解釈」に基づく議論が成り立つとは思えない。中国における「正史」は、前王朝が滅びてから100年程度経過してから書かれるそうである[1]。利害関係や感情論を排して客観的な「史実」を探求することと、「史実」に根拠を与える膨大な史料(公文書)の整理に時間がかかることを鑑みると、事象発生から「3世代」が過ぎたあたりから歴史学の出番になるのかな、と個人的には考えている。 [1] 加藤徹「西太后―大清帝国最後の光芒」中公新書(2005)   http://booklog.jp/users/asaitatsuya/archives/4121018125

Posted byブクログ

2011/06/18
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 大学1年時の授業で勧められた本。「史実を明らかにできるか」、「歴史学は社会の役に立つのか」、「歴史家は何をしているか」という3つのテーマでページが割かれている。  突き詰めると ・史料批判でコミュニケーショナルに正しい認識をすることでより正しい解釈に至る ・真実性を経由することで、「コミュニケーションの改善」、「教訓を得る」という形で個人の役に立つ ・歴史家の仕事は「テーマを設定する」→「史料を探して読み解く」→「そこから得た知識を文章化する」の三段階にわけられる  ということになります。従軍慰安婦をめぐる論争の根底に「歴史は物語(フィクション)であるか否か」という問いがあったこと、「倹約」、「謙譲」、「孝行」といった美徳が規範になったのは江戸時代で、その結果「日本人は勤勉」という共通認識が生まれたということは、当時としては印象的だった。

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2011/04/09

現・東北大学大学院経済学研究科教授(社会経済史・フランス)の小田中直樹による「歴史学」の解説書。 【構成】 序 章 悩める歴史学 第1章 史実を明らかにできるか  Ⅰ 歴史書と歴史小説  Ⅱ 「大きな物語」は消滅したか  Ⅲ 「正しい」認識は可能なのか 第2章 歴史学は社会の役...

現・東北大学大学院経済学研究科教授(社会経済史・フランス)の小田中直樹による「歴史学」の解説書。 【構成】 序 章 悩める歴史学 第1章 史実を明らかにできるか  Ⅰ 歴史書と歴史小説  Ⅱ 「大きな物語」は消滅したか  Ⅲ 「正しい」認識は可能なのか 第2章 歴史学は社会の役に立つか  Ⅰ 従軍慰安婦論争と歴史学  Ⅱ 歴史学の社会的な有用性 第3章 歴史家は何をしているか  Ⅰ 高校世界史の教科書を読みなおす  Ⅱ 日本の歴史学の戦後史  Ⅲ 歴史家の営み 終 章 歴史学の枠組みを考える 「歴史は何のために学ばなければならないのか?そもそも社会や個人の役に立つのだろうか?年号ばかり羅列する歴史教科書への疑念。一方で相対主義や構造主義は”歴史学の使命は終わった”とばかりに批判を浴びせる。しかし歴史学には、コミュニケーション改善のツールや常識を覆る魅力的な「知の技法」が隠されていたのだ!」(表紙裏書きの内容紹介より)  本書の内容は上記内容紹介の通りであると思っていただいて、まず間違いがない。そもそも一般の人間には存在すらほとんど認識されない「歴史学」という学問。社会学、経済学、政治学、法律学といった所謂社会科学分野の学問は、多少の規模をもつ書店ならば1コーナーが設置されている。しかしながら、「歴史学」というジャンルが設置されている書店はほとんど無い。かのAmazonですら、「地理・歴史」のカテゴリーにおいて、歴史学者が書いた書物が上位100位のうち1冊あればいい方である。  「歴史学」は唯一無二の史実を明らかにする学問でもなければ、社会に決定的に有用な学問ではない。しかし、そうであっても妥当な「事実」を提示することとその時代に対する問題意識に対する「解釈」を与えることに際しては、「歴史学」的手法を採る以外にまっとうな科学的方法は存在しない。その一端を知る上で、極めて単純明快に解説をほどこしているのが本書である。無論、著者の意見に全て賛成であるということではないが、自分自身が「歴史学」を知らない人に伝えたいと思っていたことが、「かゆいところに手が届く」ように述べられている。  「歴史学」に触れたことの無い人にこそ、本書を手にとって欲しい。

Posted byブクログ

2011/03/20

せっかくあまりにも素晴らしいテーマ設定なのに、話が冗長でよくわかんなかった。 結局、「結論はよくわかんないよ」ってことが言いたかったのかな。実際の結論もそうなんだろうけど。

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2010/12/20

歴史は決まりきった事実の単なる暗記ではなく、日々変わりつづける現在進行形の解釈である。 このことに新鮮な喜びを感じた人はしかし、まもなく別のモヤモヤした疑問に包まれる。「それってけっきょく学者の思い込みじゃないの? 時がたつと変わってしまうような解釈の意味って?」…まっとうな疑...

歴史は決まりきった事実の単なる暗記ではなく、日々変わりつづける現在進行形の解釈である。 このことに新鮮な喜びを感じた人はしかし、まもなく別のモヤモヤした疑問に包まれる。「それってけっきょく学者の思い込みじゃないの? 時がたつと変わってしまうような解釈の意味って?」…まっとうな疑問です。 そんな疑問を考えるときに教えられる本。 第1章は「歴史書と歴史小説」の違いから始まる。第2章では「じれったくてもがまん」してコンセンサスをつくることの意味(=社会的有用性)を、第3章では「歴史家は何をしているのか」というテーマで、高校までの歴史教科書がどうしてあんなにも退屈なのかを説明してくれる。 著者は現役のフランス近代史学者。フランスのアナール学派が20世紀歴史学を洗い直したという経緯もあって、フランス史家には歴史学の理論に強い人が多い。

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