ローマ人の物語(16) の商品レビュー
アウグストゥスの治世後期を書いている。まず、ティベリウスにすてられた娘のユリアの奔放な男女関係が醜聞となり、「正式婚姻法」をさだめた手前、流刑にせざるをえなくなった。ちなみに後に孫のユリアも同じ理由で流刑になっている。このとき詩人オヴィディウス(『愛の技法』の著者)も「とばっちり...
アウグストゥスの治世後期を書いている。まず、ティベリウスにすてられた娘のユリアの奔放な男女関係が醜聞となり、「正式婚姻法」をさだめた手前、流刑にせざるをえなくなった。ちなみに後に孫のユリアも同じ理由で流刑になっている。このとき詩人オヴィディウス(『愛の技法』の著者)も「とばっちり」で流刑になった。くわしい理由はわからない。元老院からは「国家の父」として栄誉をおくられるが、対ゲルマン戦争の余波で、アドリア海をはさんだユーゴ周辺で反乱が勃発し、ティベリウスが復帰してくる。兵站の優秀さが功を奏して反乱の鎮圧には成功するが、つづいてアルミニウスに率いられたゲルマン民族の一部にローマ兵三個師団が敗れ、虐殺される事態に陥った。これはゲルマンの支配を急いだせいである。未開民族は力の前に屈するから戦闘で勝利した将軍に戦後統治を任せるのが原則なのに、最初から官僚型の総督ヴァルスを任命してしまった。アウグストゥスは軍団旗をゲルマンに三本も奪われたまま恥を雪ぐことができずに死んだ。妻の腕のなかで76歳の大往生だった。遺言は業務の引き継ぎと会計報告を読んでいるようであった。カエサルの後をついで「持続する意志」をもった律儀な人で、晩年はティベリウスに全軍統率権を与え、互いを認め合い愛情の点でも和解し、権力委譲はぬかりなく済ませてあった。
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ローマ平和の礎を築いた偉大なるアウグストゥス。でも血縁のこだわっていたがために後継者に恵まれなかった。そして家庭内の不祥事にも足を引っぱられた。ティベリウスと寄りを戻せたのは幸いか。信頼できる忠臣を失い孤独となった皇帝は先の将来をどのように見据えてたのだろうか。大きくなった領土を...
ローマ平和の礎を築いた偉大なるアウグストゥス。でも血縁のこだわっていたがために後継者に恵まれなかった。そして家庭内の不祥事にも足を引っぱられた。ティベリウスと寄りを戻せたのは幸いか。信頼できる忠臣を失い孤独となった皇帝は先の将来をどのように見据えてたのだろうか。大きくなった領土を継ぐのはいくら帝王学を学んだとしても並大抵ではいかないでしょうな。この先のローマ史はあまりよく知らないのだが、タイトルが『悪名〜』ですから。どうなるのだろう。
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個人的意見として、アウグストゥスの懸命な頑張りを、60年近くの年月を背伸びしてきたように感じてしまった。 アグリッパ、マエケナス、ティベリウスといった人材に恵まれて、戦略の天才は活きたのだと、、 でもコレは、ユリウスカエサルというスペシャルを知ってしまったために、ベター、ベス...
個人的意見として、アウグストゥスの懸命な頑張りを、60年近くの年月を背伸びしてきたように感じてしまった。 アグリッパ、マエケナス、ティベリウスといった人材に恵まれて、戦略の天才は活きたのだと、、 でもコレは、ユリウスカエサルというスペシャルを知ってしまったために、ベター、ベストレベルな才能に触れるだけでは満足しなくなったからなんだろうと思う。 それがゆえに、アウグストゥス自身も「血縁」というのにこだわり、ゲルマニア制圧を目指したのだろう。 ただ、著者の最後の絞めにはとても共感する。 あの時代、時期だったからこそ、アウグストゥスという才能が必要であり、アウグストゥスにしかできないことだったのだと思う。
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ローマ帝国をアウグストゥスが一人で 統治する晩年の話し。 家族の問題や ゲルマンに悩まされる ティベリウスが2代目皇帝となる
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次々と後継者が亡くなってしまうアウグストゥスは後継者選びに苦悩するが、結局は一度は引退してしてまったティベリウスにその地位を譲る。でも後のティベリウスの善政をみるとこれがベストの選択だった気もする。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ついに皇帝オクタビアヌス(アウグストゥス)が亡くなる。 凄い人なのだろうけど、すごさが伝わりにくいというのもある。 寡頭政(共和政)から移行したローマ帝国の基盤づくりをした功績は大きいのだろう。天才と秀才の違いをカエサルとの間に感じざるを得ない。 と、メモ書き。
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政治の世界では着々と成功を遂げたアウグストゥスだったが、 彼の狡猾とも言える慎重さをもってもどうすることも出来ない ことがあった。 軍事面での右腕であったアグリッパ亡きあと、それを引き継い だのは妻の連れ子であったティベリウスとドゥルーススの兄弟で あった。ふたりの軍事...
政治の世界では着々と成功を遂げたアウグストゥスだったが、 彼の狡猾とも言える慎重さをもってもどうすることも出来ない ことがあった。 軍事面での右腕であったアグリッパ亡きあと、それを引き継い だのは妻の連れ子であったティベリウスとドゥルーススの兄弟で あった。ふたりの軍事面での才能は甲乙つけがたいが、初代 皇帝が愛したのは弟のドゥルースス。 しかし、ドゥルーススは不慮の事故で若くして亡くなる。ならば、 兄のティベリウスかと思いきや、こちらはとっとと引退を宣言し てしまう。 孫でありアグリッパの子であるふたりの男子を養子にするも、 こちらのふたりも相次いで世を去ってしまう。そして、娘と孫娘の 異性関係の不祥事と、老いた皇帝を悩ませるネタは尽きない。 カエサルが計画し、アウグストゥスが基礎を固めた「パスク・ロ マーナ」は達成された。だが、己の血の継承にこだわった初代 皇帝は後継者選びで悲哀と苦悩を滲ませる。 結局は引退していたティベリウスが現場復帰を果たし、後継者 としての指名を受けることになるのだが、「アグリッパが存命で あったのなら…」と考えずにはいられない。 晩年、なんでも相談出来たはずの人材を欠いた初代皇帝は、 77歳を目前に世を去る。パスク・ロマーナを盤石にする仕事を、 2代目のティベリウスに託して。
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カエサルが道筋をつけた「ローマ帝国」をアウグストゥスが完成させる過程が描かれている。カエサルのカリスマ性に比べると、アウグストゥスは病弱で見劣りしてしまうが、パクス=平和 を旗印にして共和制を強化するフリをしつつ、全権能を集めて皇帝になってしまう。ただし、ローマ帝国が成立した明確...
カエサルが道筋をつけた「ローマ帝国」をアウグストゥスが完成させる過程が描かれている。カエサルのカリスマ性に比べると、アウグストゥスは病弱で見劣りしてしまうが、パクス=平和 を旗印にして共和制を強化するフリをしつつ、全権能を集めて皇帝になってしまう。ただし、ローマ帝国が成立した明確な年やイベントがでて来ないのは、少々モヤモヤ感が残る。
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初代皇帝アウグストゥスの死と、二代目皇帝ティベリウスへの権力のバトンタッチを描く。 理想の帝国を築くため、厳格で品性を重んじ、誰よりも用心深く、心を開ける人が少なく、一方で家族の愛を求め、裏切られ、そのくせ誰よりも長生きをしてしまう、初代皇帝の深い孤独が印象的な「パスク・ロマーナ...
初代皇帝アウグストゥスの死と、二代目皇帝ティベリウスへの権力のバトンタッチを描く。 理想の帝国を築くため、厳格で品性を重んじ、誰よりも用心深く、心を開ける人が少なく、一方で家族の愛を求め、裏切られ、そのくせ誰よりも長生きをしてしまう、初代皇帝の深い孤独が印象的な「パスク・ロマーナ」シリーズでした。 しかし、生きているうちにローマ中人々から尊敬され、讃えられながら穏やかな死を迎えることができたことは、ものすごく幸福なことなんだろう。
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20110607読了 ローマ帝国初代皇帝アウグストゥスの治世終盤から最期までを描く。 印象的だったのは 兵站の重要性を理解していたローマ軍。 カエサルもよく述べていたが、兵が多いことは良いだけではない。 食料危機の問題 兵士の訓練の問題 など数に伴い新たな問題も発生してくる。...
20110607読了 ローマ帝国初代皇帝アウグストゥスの治世終盤から最期までを描く。 印象的だったのは 兵站の重要性を理解していたローマ軍。 カエサルもよく述べていたが、兵が多いことは良いだけではない。 食料危機の問題 兵士の訓練の問題 など数に伴い新たな問題も発生してくる。 逆をいえば、数では劣っていても兵站によって相手に有利になることも多い。 そのことをティベリウスの戦略によって再認識させられた。
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