ローマ人の物語(16) の商品レビュー
初代皇帝アウグストゥスの晩年、58歳から77歳まで。 紀元0世紀時代、ローマによる平和の礎を築くために、彼は実質の後継者に孫のガイウスとルキウスを当てるよう仕組みを作っていきます。凡庸だったというこの孫たちでしたが、それぞれに外交で活躍する機会を与えます。しかし、この兄弟は任務を...
初代皇帝アウグストゥスの晩年、58歳から77歳まで。 紀元0世紀時代、ローマによる平和の礎を築くために、彼は実質の後継者に孫のガイウスとルキウスを当てるよう仕組みを作っていきます。凡庸だったというこの孫たちでしたが、それぞれに外交で活躍する機会を与えます。しかし、この兄弟は任務を遂行中、相次いで傷病で亡くなります。そして実の娘ユリウスも行状の悪さから、幽閉しなければならない事態になります。 血縁者に恵まれないアウグストゥスは、遂に公から退いていたテイベリウスを養子に迎えます。拡大した領土の防衛などその手腕が待ち望まれていたテイベリウスでした。テイベリウスはその後、アウグストゥスの死に際にも立ち会い、パクス・ロマーナを目標にした帝政への移行を確実に引き継ぎでいくのでした。 個性の強いカエサル違い、歴史家からはあまりよく評価されていないようなアウグストゥスですが、創業者と比較される二代目というのは地味でいいのかもしれません。確実に政策を実行し、広大領土を平和に導き、安全な生活を国民にもたらした偉大な政治家と言えると思いました。 政治とは「ある職業でもある技術でもなく、高度な緊張を要する生活」であるとする小林秀雄の引用文は、今の政治家さんたちの緩みっぱなしの態度に喝を入れたくなる気持ちになりました。
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ゲルマニア制覇作戦の失敗はあったものの、帝国繁栄のための盤石の基盤を築いたアウグストゥスは77歳でこの世を去る。 アウグストゥスは道徳や倫理にやかましかったようで、それを法律にして国民に強いようとしたのははた迷惑な話であるが、娘がまずそれを破って島流しになるとはなかなか皮肉な話...
ゲルマニア制覇作戦の失敗はあったものの、帝国繁栄のための盤石の基盤を築いたアウグストゥスは77歳でこの世を去る。 アウグストゥスは道徳や倫理にやかましかったようで、それを法律にして国民に強いようとしたのははた迷惑な話であるが、娘がまずそれを破って島流しになるとはなかなか皮肉な話である。 彼を激怒させたという詩人オヴィディウスの「アルス・アマトリア」という作品が紹介されているが、これはおもしろそうだな。 「第一巻と第二巻は、男たちに対して、いかに振る舞えば女をモノにできるかを教え、第三巻では、今度は女たちに向かって、どうやれば男をモノにできるかを説いた作品である。全巻とも、実に具体的に例証を示しながら書かれている。」(p79) 2000年前にもハウツー本はあったわけか。 そんな昔のものなんて役に立つ筈がないと思うけれども(ローマ帝国のはしっこではナザレの少年イエスがリアルで生きていた頃ですよ!)、「ハウトゥ物の古典は常に、人間性への深く鋭い洞察故のシニカルな機知とユーモアに満ちているものだが、オヴィディウスの『アルス・アマトリア』もこの種の作品の傑作だ」(p79)と作者は絶賛している。 こういう本まできちんと読んでいるというのが、あいかわらず塩野七生先生のスゴイところだ。 ひょっとして現代でも通用するのかも。 と思ったら、なんと「恋愛指南」というタイトルで岩波文庫から出ていた!(驚) やるなあ岩波文庫。
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アウグストゥスの死。ただそれでも平和は続いていく。しかしなんにせよ、身内というのは心強いか一番のリスクになるかどっちかなのかも。アウグストゥスの場合は後継者候補が不幸に見舞われること多数だが、結局ティベリウスというある意味最初から一番固い存在に落ち着いたことはよかったのかも P...
アウグストゥスの死。ただそれでも平和は続いていく。しかしなんにせよ、身内というのは心強いか一番のリスクになるかどっちかなのかも。アウグストゥスの場合は後継者候補が不幸に見舞われること多数だが、結局ティベリウスというある意味最初から一番固い存在に落ち着いたことはよかったのかも P16 しかし、アウグストゥスの偉いところは、私的な必要から発したことでも必ず、公的な必要性をも満たせる形でシステム化する点にもあった P34 第一に、自らの能力の限界を知ることもふくめて、見たいと欲しない現実までも見すえる冷徹な認識力であり、第二には、一日一日の労苦の積み重ねこそ成功の最大要因と信じて、その労をいとわない持続力であり、第三は、適度の楽観性であり、第四は、いかなることでも極端にとらえないバランス感覚であると思う P84 なぜなら、征服者に対する被征服者の不満は、個々人が持つ限りは爆発にまでは至らないからだ。爆発するのは、指導者を得たときである
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かの有名なカエサルの跡を意に反して突如引き継いだアウグストゥスは、プレッシャーの連続の中なぜパクス・ロマーナをもたらすことができたのか。著者の言葉によれば1.自らの限界を知ることも含めて、見たくない現実までも見据える冷徹な認識力。2.一日一日の労苦の積み重ねが成功の最大要因と信じ...
かの有名なカエサルの跡を意に反して突如引き継いだアウグストゥスは、プレッシャーの連続の中なぜパクス・ロマーナをもたらすことができたのか。著者の言葉によれば1.自らの限界を知ることも含めて、見たくない現実までも見据える冷徹な認識力。2.一日一日の労苦の積み重ねが成功の最大要因と信じて、その労をいとわない持続力。3.適度な楽観性。4.いかなることでも極端にとらえないバランス感覚。他者を圧倒しなくても実のある結果をもたらすリーダーシップは興味深い。ただし年を重ねていくうちに彼を悩ませたのが後継者問題。次巻に続く。
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アウグストゥス死す。パクスを実現して。しかしカエサルは若いオクタヴィアヌスに何を見出したのだろう。作者はbreaucrat に不満のようだが。関ヶ原に勝った石田三成って感じかな。三成にアグリッパはいなかったと。 ティベリウスとゲルマニクスの戦記を中心にした方が面白かったかもしれ...
アウグストゥス死す。パクスを実現して。しかしカエサルは若いオクタヴィアヌスに何を見出したのだろう。作者はbreaucrat に不満のようだが。関ヶ原に勝った石田三成って感じかな。三成にアグリッパはいなかったと。 ティベリウスとゲルマニクスの戦記を中心にした方が面白かったかもしれない。家族関係はややこしくて読み飛ばしてしまったので。 アウグストゥスは権力と権威に加えて血筋も統治には重要な要素だと考えていなかったのか。これも作者には不評。うまくいかなかったせいで妄執とまで言われる始末。
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後継者として目をかけていたほとんどの血縁者に先立たれ、唯一残された妻の連れ子ティベリウスに早々に引退され、後継ぎを増やすために次々と婿をあてがった結果、醜聞を繰り返すことになってしまった娘を自ら追放したアウグストゥスには、しかしローマが残されていた。 アウグストゥスは異常と言わ...
後継者として目をかけていたほとんどの血縁者に先立たれ、唯一残された妻の連れ子ティベリウスに早々に引退され、後継ぎを増やすために次々と婿をあてがった結果、醜聞を繰り返すことになってしまった娘を自ら追放したアウグストゥスには、しかしローマが残されていた。 アウグストゥスは異常と言われるほど血縁相続にこだわったが、それでも決して、ローマよりも自身と後継者を先に置くことはなかった。ローマの行く末を案じた結果、血縁者が後を継ぐことが最善だと信じたからこそのこだわりであり、ローマのために国境を引き直し、ローマのために法を整備し、ローマのために帝国を創った。 そして、アウグストゥスはそれを戦いではなく、会計で成し遂げた人だった。それをよくあらわす現代にも残る逸話がある。思いがけずアウグストゥスに金貨40枚づつ賜ることになった商人たちに、一つだけ条件が付けられた。それは、エジプトの物産を購入して他の地で売ること。即ち貿易による経済の活性化だった。 アレクサンダー大王のような軍才も持たず、神君カエサルのようなカリスマも持たず、パクス・ロマーナという平和の上に成り立つ経済圏を創り上げたのが、初代皇帝アウグストゥスであった。 こうして皇帝によって創られた帝国は、皇帝によって危機に瀕することになるのか。次巻、『悪名高き皇帝たち』に続く。
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ローマ初代皇帝アウグストゥスの時代。 共和制から帝政への移行がいかにしてなされたのか。 カエサルと比べれば地味なアウグストゥスがとても魅力的に思えるのは、作者の筆力の賜物。
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帝政完成。長かった。正直地味な場面が多くて読むのに時間がかかった。皇帝の力量が問われる帝政が今後どうなっていくのか楽しみ。
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ローマ世界に平和をもたらし、繁栄の礎を築いたアウグストゥスを、人々は「国家の父」と呼ぶようになる。しかしその彼にも大きな悩みがあった。後継者を誰にするかー妻リヴィアの連れ子ティベリウスは偉大なる父に反発して一方的に引退。娘ユリアの息子たちに期待をつないだものの、いずれも若くして死...
ローマ世界に平和をもたらし、繁栄の礎を築いたアウグストゥスを、人々は「国家の父」と呼ぶようになる。しかしその彼にも大きな悩みがあった。後継者を誰にするかー妻リヴィアの連れ子ティベリウスは偉大なる父に反発して一方的に引退。娘ユリアの息子たちに期待をつないだものの、いずれも若くして死んでしまう。カエサルの構想した帝政は果たしてローマに根付くのか。アウグストゥスの「戦い」は続く。
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