まぶた の商品レビュー
Posted by
『リンデンバウム通りの双子』がよかった。 逆にそれ以外は、老婆や身体の一部など不気味さを連想させる要素による、おとぎ話的なわざとらしさが強く感じられた。その点があまり好みではなかった。 ・飛行機の中で古書商の男が語った「眠りの物語」。死の要素に満ちたその物語とともに私は眠りに落...
『リンデンバウム通りの双子』がよかった。 逆にそれ以外は、老婆や身体の一部など不気味さを連想させる要素による、おとぎ話的なわざとらしさが強く感じられた。その点があまり好みではなかった。 ・飛行機の中で古書商の男が語った「眠りの物語」。死の要素に満ちたその物語とともに私は眠りに落ちてゆく。『飛行機で眠るのは難しい』 ・12日の木曜日に見知らぬ老婆にもらった中国野菜を育てていたら夜中に光るようになった。老婆の畑を訪ねると、そこには駐車場しかなかった。『中国野菜の育て方』 ・レストランの前で倒れている男を助けたことをきっかけに、少女は、島にある男の家に通うようになる。男の家のハムスターにはまぶたがなかった。男が語る話は事実とは信じられない気配がある。『まぶた』 →ホテルアイリス? ・つつましい雰囲気が気に入って通うことにした料理教室での実習中、突然現れた排水管清掃業者に、清掃してもらうことになった。排水口からは流したものが次々と吹き出し、流しは60年分の汚物でいっぱいになった。『お料理教室』 ・彼女は匂いを茶色い小瓶に収集していた。彼女がいないときに棚の一番上を覗いてみると、知らない男の身体の一部が、瓶に収められていた。『匂いの収集』 →薬指の標本? ・作家にとって、プールは特別な風景であった。強制収容所の処刑場近くにある場違いなプール。背泳ぎの選手として将来を期待されていた弟のために、母が庭に作らせたプール。しかし弟は、あるとき左腕を降ろすことができなくなり、ついにその左腕は付け根から抜けてしまった。『バックストローク』 ・恋人をおいて一人で訪れたある街の裏道には、昔の詩人のための小さな記念館があり、そこには詩人の孫である老婆と客引きの少年がいた。記念館の展示ケースに収められていた髪の毛は、詩人の卵巣に生えた髪の毛で、詩人はそのために命を落としたのだった。その夜、ベッドでまどろむわたしの意識の前に、老婆と少年が現れ、わたしは眠りへと誘われていった。『詩人の卵巣』 ・わたしの作品をドイツ語に翻訳してくれていたハインツは、80歳過ぎの老人であり、しかも一卵性双生児であった。ロンドンの娘に会いに行く途中、ウイーンに立ち寄ったわたしは、ハインツ兄弟の人生の話を聞き、思い出の場所を訪れる手助けをした。『リンデンバウム通りの双子』
Posted by
久しぶりの小川洋子作品。 ずいぶん昔に、友人から「お前のまぶたのラインが良い」と言われたことを思い出して、ほうっとなった。
Posted by
淡々としているようで、どこか奇妙な感じのする短篇集。 独特の雰囲気が、何とも小川さんらしいです。表題になっている「まぶた」を始め、どの物語も不思議な後味が残りました。
Posted by
独特。不気味さがあって、気持ち悪さがない。すぱっと終わる。考えされはしないけど、シーンの画像が強く残る。
Posted by
短編集です。収録作品「バックストローク」が大好きで、何回も読んでいます。他の作品も素敵なものばかりです。
Posted by
表題作を含む、8つのお話が収められた短編集です。 表題作の『まぶた』は、『ホテル・アイリス』によく似た話でしたが、あんなに激しくはなく、オチも少し違いました。 どの話も、死、或いは死に近い気配が感じられ、どことなく不安な気持ちになります。 それが、非常に小川洋子さんらしくて、...
表題作を含む、8つのお話が収められた短編集です。 表題作の『まぶた』は、『ホテル・アイリス』によく似た話でしたが、あんなに激しくはなく、オチも少し違いました。 どの話も、死、或いは死に近い気配が感じられ、どことなく不安な気持ちになります。 それが、非常に小川洋子さんらしくて、好きなのですが。 凄いな、と思うのが、読み始めてすぐに、彼女の世界にぐっと入り込んでしまうところ。 長編も好きだけれど、やはり、短編が凄く上手い人だなぁ、と、感じました。
Posted by
短編集。小川洋子の淡々とした文は癖になります。ちょっとダークなファンタジー。ミステリ(匂いの収集)は好きだなあ。
Posted by
博士の愛した数式から惚れ込んでしまった小川洋子の短編集。必要最小限の場面描写で物語を綴る小川作品は短編が合う。 それぞれ普通の暮らしをしてきた主人公たちが少し不思議な体験をすることで自分の人生を考え直す。どんな体験をしても生き方を大きくは変えられないが、考える行為が大切なことだ...
博士の愛した数式から惚れ込んでしまった小川洋子の短編集。必要最小限の場面描写で物語を綴る小川作品は短編が合う。 それぞれ普通の暮らしをしてきた主人公たちが少し不思議な体験をすることで自分の人生を考え直す。どんな体験をしても生き方を大きくは変えられないが、考える行為が大切なことだと気づかされた。 休日に静かな所で読みたい。
Posted by
現実のようで、すべてが非現実。 白昼夢みたいな心地よさと残酷な鋭利さ。 最後にすっと冷たくなるような。
Posted by