まぶた の商品レビュー
とても奇妙で不思議な物語。物語の終わりは、どれも着地する場所に戸惑う話が多いけれど、何故か感じたことのないような温かみがある。『バックストローク』が良かった。
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再読。 ふと思う。「小川洋子が読みたい」と。その瞬間にはすでに、どの作品を欲しているのかも頭に浮かんでいる。目次を見ただけで涎が出てしまいそう。ああたまらない。 73頁目 《どんな時でも彼はわたしを否定しない。すべてを受け入れる。》 否定することは容易い。違うことが当たり前だか...
再読。 ふと思う。「小川洋子が読みたい」と。その瞬間にはすでに、どの作品を欲しているのかも頭に浮かんでいる。目次を見ただけで涎が出てしまいそう。ああたまらない。 73頁目 《どんな時でも彼はわたしを否定しない。すべてを受け入れる。》 否定することは容易い。違うことが当たり前だから、ただそれを認めるだけでいい。けれど、差異をそのままの姿で受け入れることは本当に難しい。意識しても、無意識だとしても。 80頁目 《「ハムスターだよ。彼が見てるんだ。目の病気でまぶたを切り取ってしまったから、目を閉じることができないんだ」》 見たくないものを見続けなければならないこと。見たいものを見ることすら叶わないこと。残酷なのはどちらなのだろう。 116頁目 《彼女は匂いの専門家だ。この世のあらゆる匂いを収集するのを趣味にしている。》 何フェチかと聞かれたら「匂いフェチ」と答えるようにしている。それはたぶん、「香り」でなくやはり「匂い」でなければならない。妙なこだわり。 133頁目 《彼は決して自慢げにではなく、お伽話を聞かせるようにユーモアを込めて喋った。タンスと壁の間や流し台の下では、彼の声は思慮深く響いた。》 内容なんてさほど重要でないことが多い。話し方や話す場所、込める感情や選ぶ言葉でその物語は良くも悪くもなる。 148頁目 《弟は背泳ぎするだけで、わたしの求めるものを何でも差し出すことができた。》 たまに不安に思うことがある。一緒に居て、自分に何ができているのかと。だから言葉にする。少しでも伝わるように、気持ちや感謝やお詫びを何度でも繰り返す。 189頁目 《アルファベットの並ぶページをめくっていると、たとえ両手に収まるわずかなスペースであっても、世界の果てのどこかに、僕のための居場所が確保されているんだと、感じることができた。》 自分の言葉を形にして残すという行為は、結局、自分のためなのかもしれない。 読了。 小川洋子さんの作品を読むと、感想も解説も紹介も、一切が無意味なことに思えてくる。詩や短歌を眺めて「いいなあ」と詠嘆するように、その場限りの余韻だけで満たされてしまう。「言葉の標本」として文字を収集しながら頁を繰っていくのがたまらなく楽しい。
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ちょっと奇妙な8つの短編集。 う~~~ん。 読み終わってズバリ感想を言うと。。。。 中途半端やな~。(苦笑) なんか全てが全て中途半端でした。 え?これで終わっちゃうの?え?何が言いたかったの? って感じ。 8つの短編は 『飛行機で眠るのは難しい』 『中国野菜の育て方』 『ま...
ちょっと奇妙な8つの短編集。 う~~~ん。 読み終わってズバリ感想を言うと。。。。 中途半端やな~。(苦笑) なんか全てが全て中途半端でした。 え?これで終わっちゃうの?え?何が言いたかったの? って感じ。 8つの短編は 『飛行機で眠るのは難しい』 『中国野菜の育て方』 『まぶた』 『お料理教室』 『匂いの収集』 『バックストローク』 『詩人の卵巣』 『リンデンバウム通りの双子』 です。 この中でまぁまぁ良かったのは『匂いの収集』かな?最後、お~~こわっ!って感じでちょっとゾッとした。 で、一番イケてなかったのは、表題にもある『まぶた』。 中学生の女の子がこんな大人の喋り方しないだろ~!!って思って、なんだかすっごい読みづらかった。で、あの終わり方。は?って感じ。 なんだかな~。 ま、こんな本もあっていいのかもね。
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短編集。 どの物語も小川洋子さんらしく、 静かでどこか物悲しいけど心が暖かくなる不思議なお話。 それと、文章が綺麗。 綺麗というか潔癖な感じすらする。 しかし、やはり長編が好き。
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ファンタジックであり、ホラーテイストの短編集。 『飛行機で眠るのは難しい』 飛行機でとなりあった男の物語を主人公が聞かされる作中作的話。 『中国野菜の育て方』 訪問販売の老婆にもらった中国野菜を育て始めた主人公。 やがて芽吹いたその野菜は怪しい光を発するようになる。 寓話めい...
ファンタジックであり、ホラーテイストの短編集。 『飛行機で眠るのは難しい』 飛行機でとなりあった男の物語を主人公が聞かされる作中作的話。 『中国野菜の育て方』 訪問販売の老婆にもらった中国野菜を育て始めた主人公。 やがて芽吹いたその野菜は怪しい光を発するようになる。 寓話めいた深い物語だと思うが、味わい方が少々わからなかった。 『まぶた』 表題作。 渡し舟で行き来しなくてはならない「島」に住むNと、15歳の私の交流を描いた話。 『お料理教室』 古民家を改装した料理教室に参加した主人公。 風変わりな「先生」と主人公のある日の料理教室の風景を切り取った作品。 とても小川作品ぽいなと思った。 『匂いの収集』 様々な香りを集める「彼女」と「僕」の短編。 サイコホラーの香りを秘めながら、ふたりの愛情の交歓は『薬指の標本』を思い出した。 『バックストローク』 将来を嘱望された背泳ぎ選手の弟を主人公が振り返る話。 これまた寓話的。 『詩人の卵巣』 不眠症のわたしが睡眠薬を持たず訪れた異国で、 詩人の卵巣に生えていた髪の毛で織物をする老婆と出会う話。 あまりピンとこず。 『リンデンバウム通りの双子』 離別した娘と会うためロンドンへ向かう途中に、 自分の著作を長年翻訳してくれている老人のもとを訪れた主人公。 ウィーンで出会った翻訳家は、双子の兄と共に生活していた。 物語の展開よりも、主人公と翻訳家の翻訳を通した交流が描かれる冒頭部分が印象に残った。 郵便受けを介したやりとりが、一作目の『飛行機で眠るのは難しい』と共通に流れるものを感じ取れる。 死をはじめ、病や異質なものを切り出すことで、生きることを浮かび上がらせているのが小川さんの作品かもしれないと思った。 残暑に読んだものの、秋の夜長にこそぴったりかも。 ゆっくり読みたい。
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一瞬のうちに取捨選択するシャッター 必要なときには閉じたままの眠りを 場合によっては死をも準備してくれる薄い被膜 薄い膜の開閉ひとつですべてが決まり すべてが終わってしまうはかない劇を書く 光の授受の瞬間に、「まばたき」との「あいだ」に 失われていく寸前のものと、うまれ落ちる寸前のものとを見分ける特異なまぶたで彼女はその光を丁寧におっていくのだ。 上記のすべてはあとがきに記された堀江俊幸の 小川洋子に、『まぶた』にかんする書評だ。 小川洋子の作品にも まぶたを感じ、そのことばたちに 愛を感じたのに、やはり作家、この説明の行かない小川洋子の大事に書きあげてきたものをまた 丁寧につつむのだ。 「まぶた」の存在になんともぞくぞくとした、魅惑や畏怖、ただならぬものを感じたのに、それをうまく表現できないこのむづかゆさのようなものを払しょくしてくれた。 ああ、このことばたちは 書き留めて残したい。
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どの話も私にはあまり発見がなくてつまらなかった。 最近、何を読んでも面白くないのだけど、 たまたまとった本がダメだったのかしら・・・ やっぱり、たまには安い古本じゃないものを買わないとな…
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静かで奇妙な8編の物語を収める。 どれも冒頭からあやしい雰囲気を醸し出しているので覚悟をしながら読むのだが、それでも“その時”になると「あっ…」と息をのむ。 たとえば「匂いの収集」で身体のパーツの入った瓶を見つけてしまう場面、「バックストローク」で弟の腕がもげる場面、「詩人の卵巣」で詩人の死因が明かされる場面。 それらを、登場人物たちのように一方で冷静に、一方でやわらかいまなざしで受け止めることができない。 私にはちょっと小川色が濃過ぎたのか。
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短編8つ。 どれも独特の雰囲気があるのだけれど、中途半端に終わっているような感じで好きになれなかった。
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しとしと雨が降っている時に紅茶を飲みながら読みたい。 そんな雰囲気?の小説。 文章の美しさや表現はよかったものの、 話としてはまぁまぁ・・・
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