遮光 の商品レビュー
作品に救いはないが、それ自体が救いのような気もする。 根本的に自分というものがなく、場面場面で誰かを演じることで、どうにか自分を引き止めていた主人公。そのせいか自分を過度に客観視した文体になっていて奇妙で新鮮だった。彼女を愛していたというより、彼女が死んでから、その指自体に自分...
作品に救いはないが、それ自体が救いのような気もする。 根本的に自分というものがなく、場面場面で誰かを演じることで、どうにか自分を引き止めていた主人公。そのせいか自分を過度に客観視した文体になっていて奇妙で新鮮だった。彼女を愛していたというより、彼女が死んでから、その指自体に自分のアイデンティティを見つけようとしていたように見える。だから純愛というのも違う気がする。アイデンティティを見つけることの難しさを描いたのかな。 気持ち悪いけど気持ち悪いと言い捨てるには、感情移入しすぎてしまった。 親しいはずの友達とは何か壁を感じ、好きな女は好きなはずだがなにか違和感を感じ、そんな中で自分の内面を許してくれるような、受け入れてくれるようなナニカと出会い、それに依存するが最終的には、、、 という展開や作品の雰囲気は銃と似てた。
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黒いビニールに包まれた瓶を肌身離さず持ち歩く青年が、瓶の中身に執着し取り込まれていく様子は、前作『銃』を彷彿とさせます。 虚言癖、唐突すぎる暴力衝動など、狂気に満ちた言動は理解出来ませんが、その迫力は十分で読み進めるごとに引き込まれてしまいました。 陰鬱さと不穏さがドライに描...
黒いビニールに包まれた瓶を肌身離さず持ち歩く青年が、瓶の中身に執着し取り込まれていく様子は、前作『銃』を彷彿とさせます。 虚言癖、唐突すぎる暴力衝動など、狂気に満ちた言動は理解出来ませんが、その迫力は十分で読み進めるごとに引き込まれてしまいました。 陰鬱さと不穏さがドライに描かれ、息苦しさすら感じる暗い世界観。 それでも、他の作品も読みたくなってしまうという、不思議な魅力を感じる一冊です。
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ずーっと漂う不協和音は、段落わけの無い文章からも来るものなのだろうか。主人公の想いとリンクと言うよりもモヤがかかる感じ。その閉塞感と不協和音は、解消されることのないまま、物語は転がっていきます。どう転がるものか。不穏なまま、読み進めることが止まらないのも一興です。
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「指」に異常なほどに執着する話。 愛する人をなくして、悲しみが狂気になるのは理解できるけれど、それ以前から、主人公がどうしようもない嘘つきで、暴力的なのが、どうにも共感できない。 それでいて女から結構モテるし、友達もいる。 もしかしたら、その辺にこういう人は沢山いるのかも? 普通...
「指」に異常なほどに執着する話。 愛する人をなくして、悲しみが狂気になるのは理解できるけれど、それ以前から、主人公がどうしようもない嘘つきで、暴力的なのが、どうにも共感できない。 それでいて女から結構モテるし、友達もいる。 もしかしたら、その辺にこういう人は沢山いるのかも? 普通の生い立ちの主人公かと思いきや、やはり小さい頃に両親を亡くすという背景があって、「またか!」と思わさせれた。 あとがきで「苦しみから一定の距離を置くのではなく、その中に入り込んで何かを掴み、描き出そうとすること。僕が読んで救われた気分になったのはそういう小説だった」と言っているけれど、結末からして、この小説を読んだら、救いようのない絶望しかなかった。 途中、指のことがバレそうになるのに、ハラハラするのが面白い。そこだけ主人公と気持ちがリンクする、不思議な小説。
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図書館で借りた本。 同棲していた彼女が居なくなった。友達と旅行に行って、そのまま帰らなかった。正確には生きて帰らなかった。 遺体安置所で再開した彼女の指を無断で持ち帰り、大事に保管。自分の「普通」では考えられない行動。そういう発想が出てくることがすごいなぁと思った。
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自分というものが無く、全て演じている。 言動の理由がいつもそこに無い。 口から嘘がどんどん出てくる。 何度も何度も同じ過去にぶつかって、なんにも超えられない。 「この物語に共感した」なんて、なんだか知り合いにはとても言えないな…。 最後まで悲しかったけれど私にはすごく良かった。
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わかる。 わかる。 わかるが、 わかるが、、 わかるが、、、 終始、気持ち悪かった・・・。
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彼なりの愛のかたちなんでしょうけど。 自分のおかしさをわかりながら深みにどんどんはまる様子が…カーテンを閉め切った光の届かない部屋の中だけの生き方をあえて選んでいる気がします。
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歪んでいびつでグロテスクで純粋な愛情。 誰よりも現実を受け止めながら、その苦しみから必死に目をそらし続ける男。 日に日に壊れゆく姿が鬼気迫る。 愛と狂気にまみれた物語。
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陰鬱な邦画の原作のようだと感じました。 「男が堕ちた狂気の愛」といったキャッチコピーがつきそうな。 客観的でありながら狂っている、渦にのまれていくリアリティーがありました。 あと、 「この状況なら普通こういうこと言うんだろうな」ということをあえて言うのってわかる。 彼女が風邪で倒...
陰鬱な邦画の原作のようだと感じました。 「男が堕ちた狂気の愛」といったキャッチコピーがつきそうな。 客観的でありながら狂っている、渦にのまれていくリアリティーがありました。 あと、 「この状況なら普通こういうこと言うんだろうな」ということをあえて言うのってわかる。 彼女が風邪で倒れたときに慌てふためいて駆けつける彼氏といったような。
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