理由 の商品レビュー
幾人も出てくる登場人物とその物語が絡まりながら話が進んでいく。まどろっこしいような、なるほどと納得させられるような、複雑な気分。でも最後まで読んでみると辿り着く所が、うーん、そこかー、と考えさせられる作品でした。
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章がものすごく気になる終わり方するのでやめ時に困りました。 登場人物、誰と話ししてるの?と思ったけどインタビューなのね。 いろんな関係者達の話が語られる。インタビューを受けている人達皆のドラマもリアリティーがありそれぞれに理由がある中、1つの事件に繋がっていく。ここで繋がるのかーと何度も思わされる。 占有屋なんて初めて聞いた。法の隙間を突いたそんな悪事もあるんだなぁよっぽど勉強しないと出来ないでしょ。世の中良くするために使えばいいのになぁ。 (引用しながら) 帰るところも行く場所もないということと自由ということは全然別。宿のお母さん言ってた。 2025室の偽家族もそう。帰るところ行く場所もなかった。 近代的なこの立派なタワーマンションに人間が狂わされている。 未来的環境のなかで暮らしているのに中身はまだまだ大時代的。 男は威張って女は苦しまなくちゃならなかった時代はほんのちょっと前の話。 今だって薄皮1枚剥いだ下に昔の生活感が残ってるっていうあぶなっかしいお芝居を続けている。確かにちょっと前まではお侍さんとかがいる時代だったんだからね日本。
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直木賞受賞作。 とある事件の全体を俯瞰してから詳細に入って行くのではなく、ドキュメンタリー調で起きた物事や登場人物を一つずつ丁寧に、事後の取材のような体で解き明かしていくもの。そのため中盤までは読みながらちょっともどかしく思うこともあった。 1998年刊行の本(単行本)のようだけど、タワマンに対する問題提起みたいなものも感じられた。 複雑な事情を抱える様々な家庭が登場し、外からは分からないであろうそれぞれの家の中のリアルや、一歩間違えば誰でも犯人になってしまいそうな危うさがあった。 石田直澄は子供達に良いところを見せようとして、工夫もしつつこのタワマンを手に入れたのにこんなことになって、悪いことは何もしてないのに気の毒だなぁ…
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凄まじい。初期宮部作品の人気と評価に納得。 超高級マンションで、一家惨殺事件と転落事件が同時に発生。だが彼らは皆、全くの他人同士だった。 何故彼らはそこにいたのか。 何故殺されねばならなかったのか。 何故殺さねばならなかったのか。 何故逃げねばならなかったのか。 何故、何故、何故。 通常「真相」と呼んでいるものは事件の表層でしかなく、事件に至るまでの個々の「理由」はわからないまま日々は過ぎてしまう。 ドキュメンタリーの形をとって、関係者たちの証言を素に、事件の起こった経緯が浮かび上がってくる。ひとりの人間が書いた小説とは思えないほど、それぞれの思考方法や行動原理がバラバラ。書きすぎていると思うほどに詳細に執拗に内面が書かれていて、実によく見えるので「どうしてその人がそうしたのか」に違和感が無い。 唯一引っかかるとすれば「ヤシロユウジ」だが、これは多分意図的にぼかしていると思う。 「彼がそうした『理由』があなたには理解できますか?」と。 コイトタカヒロは幽霊に会うことは無いだろう。彼は自分の中の「ヤシロユウジ」を知っているから。同じ理由で、殺さないで生きていけるんじゃないかな。 不動産についての知識を少し増やせた。 「競売」を経験した事はあったが、その先に起こり得る諸々は知らなかった。分不相応にもマンションを買ってみようかとした時期もあったが、流れて良かったなぁと今では思う。
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「理由」 なぜタイトルが理由なのか? 最後の最後、読み終えて本を閉じて初めて分かりました。 事件の真相は一つ。 ただ、そこに至るまでにたくさんの人、たくさんの家族が複雑に絡み合っており、過程や動機、背景は様々。 この事件はこうだからこうなった、と一言では言い表せないたくさんの「...
「理由」 なぜタイトルが理由なのか? 最後の最後、読み終えて本を閉じて初めて分かりました。 事件の真相は一つ。 ただ、そこに至るまでにたくさんの人、たくさんの家族が複雑に絡み合っており、過程や動機、背景は様々。 この事件はこうだからこうなった、と一言では言い表せないたくさんの「理由」がそこには存在しています。 実際の事件もそうなのかもしれない。 私たちはテレビや新聞の報道で一つの面しか知る事はないけれど、ゆっくりと丁寧に紐解いていけば、同じようにたくさんの「理由」が隠れているのかもしれない。 そうしみじみと感じてしまいました。 作中にはたくさんの家族が出てきます。 一つとして同じ家族はなく、みんなそれぞれに抱えている問題や考え方が違います。 その中でも特に目に付くのは、親の勝手に振り回される子供の存在。 宮部みゆきさんの他の作品にも多々見られるのですが、なす術のない子供にとって毒親の存在は、本当に胸が苦しくなる思いです。 こうならないようにしなくては…と、親や家族と言うものについて、深く考えさせられました。
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さすがの宮部みゆきさん とても面白かった。 ドキュメンタリー的手法って説明に書いてあったけど、いろんな視点から事件をみていてとても面白かった。 最後は一気読み!
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#読了 2024/5/25 理由/宮部みゆき 多分昔読んだ。見覚えのあるシーンなんだけど、全然続きを覚えてない。面白く最後まで。 普通の人間が、一歩ずれただけで弱い立場に落ちてしまう。読んでいて凄く恐ろしかった。普通の生活の傍に、悪意やどうしようもない事態は存在している。
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長いし、暗い、、 評価1.9 audible 21時間58分 事件の起こった高層マンションの紹介から始まる。もちろん事件の詳細も述べられるのではあるが、これが長い。エレベーターの仕組みから、セキュリティまである意味宮部みゆきらしく暗い雰囲気で説明されていく。細部が重要なとこは分かるが、事件の詳細を知る前にちょっと飽きてくる。 やっと分かったことはどこの誰だか分からない4人の死体。しかも一人は転落してる。これがスタート。 話はスタートしたがスムーズにはすすまない。次は事件の起こった部屋の持ち主である小糸家の話。これも相変わらずの暗い話で、このトーンで続くのかと思うと小説の行く末が心配になる。 こんな感じで事件を振り返りながら情報が少しづつまとめられていく。次第に全体像がつかめてくるのではあるが、ついでに述べられる周辺一家の家族背景が重々しくて嫌になる。特に覗き見したくもない姉弟関係、嫁姑問題、若くして子をつくった出戻り娘、親子喧嘩から悪徳不動産を掴まされる父親などの家族問題を知ることと引き換えに事件の情報が少しづつ得られる。皮肉な言い方をすれば、こういうのが作者の得意技のようにも思われる。作者のファンには怒られそうだが、暗い話を我慢するたびに新しい情報を一つ知ることができるシステムに辟易とする。もちろん、この作風が社会派小説としても評価が高いことは分かっているし、こっちが少数派のことも分かる。ただお気軽に楽しく読める本をこよなく愛する僕には苦痛でしかない。もっとお気軽に読みたい、、 最後までこの雰囲気は変わらず、特に驚きもなく終幕を迎える。いろいろな人に怒られそうだが、一応総括しておくと、暗くて長い話と向き合う非常に苦痛な時間であった。このような小説を評価するような文学的な才能は残念ながら僕にはない。
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家族と、人間のプライド、信頼…とにかく人間臭いところがたくさん詰まっている。登場人物がどうしてそんな行動を取ったのかを生い立ちや環境から紐解いていく場面が多い。
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2004年(発出1998年朝日新聞社) 790ページ 『火車』に続く宮部みゆきさんの作品、2冊目を読破。 第120回直木賞受賞作です。 巻末に池上冬樹さんの解説がおさめられています。池上氏は、アメリカの現代文学の巨匠、ジョイス・キャロル・オーツの言葉を借りて、この『理由』を、...
2004年(発出1998年朝日新聞社) 790ページ 『火車』に続く宮部みゆきさんの作品、2冊目を読破。 第120回直木賞受賞作です。 巻末に池上冬樹さんの解説がおさめられています。池上氏は、アメリカの現代文学の巨匠、ジョイス・キャロル・オーツの言葉を借りて、この『理由』を、『まさに“ドラマとして具体化された、心の琴線に触れる意義深い状況に読者を引き込む小説” “表現と人物造形の独創性”に満ちた傑作』と評しています。さらに『リアリズムでありながら形式上の実験もおこたらず、それが見事な成果をあげている』と。形式上の実験がドキュメンタリー的手法ということで、このスタイルが素晴らしいとのことです。『どの場面も生々しく、事件を語る人々の表情と心理、その興奮と失望と躊躇と怒りが直截伝わってくるし、記述者が変わることによって見る角度がかわり、現代社会の複雑な様相がやおら迫り出してくる仕掛けだ』と。 長々と池上氏の解説を引用してしまいましたが、まさしく引き込まれました。 また、前回の『火車』も同様でしたが、この『理由』も社会派小説の側面を持っています。法律関係の知識がないと理解するのに難しい用語などが出てきますが、宮部さんは実にわかりやすく物語で解説してくれています。バブルが崩壊した後の不良債権処理のため大量の不動産を競売にかける中で常に付きまとう『執行妨害』。その中の罪名に『競売妨害』がありますが、この罠にかかってしまったのが、話の冒頭「荒川の一家四人殺し」の重要参考人である石田直澄でした。マンションを競売で落札したにも関わらず、占有屋により邪魔されてしまう。 裁判所の不動産競売物件は市場よりも破格の安値で売られる物件で、一般人も入札に参加できますが、それでも不動産業者がほとんどでしょうか? 暴力団関係者なども関わってくるみたいです。ここの件りは作中で詳しく書かれており、物語の1番の被害者は誰なのだろうか?と思うにつけ、石田直澄には同情してしまいました。石田は事件の原因は自分にあると後悔し、マスコミにはあらゆることを書き立てられているのですから。 作中、多くの家族が登場し、それぞれ家族間の問題がリアルに赤裸々に綴られています。フィクションだけどリアリスティック。その中で、共感したり嫌悪したり、同情したり腹がたったり。 ギスギスした夫婦関係、親子関係、親に振り回される子供など、リアルな存在感で迫ってきます。 家族の在り方を考えさせられました。 そして、事件の被害者と犯人は最後の方まで読み進めないと正体が明らかになりません。ジワジワと核心に迫っていき、ついに明らかになった被害者については、あまり記述がなく影が薄かったです。 それにしても、題名の『理由』の意味がわからなかった( ; ; ) 作中、『理由』という言葉がいくつか出てきます。 多角的な視点から語られるこの物語、登場人物の行動、それぞれの理由づけがあるということなのでしょうか? 『「その前になんであたしがまたあの人と会うようになったか、それは訊いてくれないの?」ーー「いいよ。理由は何さ」』 『八代祐司は、なぜ彼が砂川信夫たちとそんな暮らしをしているのか、理由を説明しましたか』 など。 長いお話ではありますが、一読の価値ありです。面白かったなあ。
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