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嘘つきアーニャの真っ赤な真実 の商品レビュー

4.4

374件のお客様レビュー

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2022/10/16

著者、米原万里の少女時代の友人3人にスポットを当て、彼女たちとの思い出と、大人になってから再開したときのエピソードが描かれたノンフィクション。 父が共産党の政治家であり、チェコスロバキアに代表として家族を連れて送り込まれたという特異な生育環境だけあって、彼女が持つ思い出も一般的日...

著者、米原万里の少女時代の友人3人にスポットを当て、彼女たちとの思い出と、大人になってから再開したときのエピソードが描かれたノンフィクション。 父が共産党の政治家であり、チェコスロバキアに代表として家族を連れて送り込まれたという特異な生育環境だけあって、彼女が持つ思い出も一般的日本人からは想像も難しいようなワールドが広がっている。 チェコのソビエト学校に入れられていたという経歴から、自然と友人たちも各国の共産党関係者の子弟であり、共産主義が瓦解していく末路と共にそれぞれのその先を生きている。 それは、主義者から離れ自由に家族と小さなしあわせを持つ未来であるし、特権階級の欺瞞に飲み込まれ切って自身の矛盾すら理解できない醜悪な姿になった未来でもあるし、果てしない主義とナショナリズムの争いから逃れられない運命にあって疲弊する未来だったりする。 重い現実がそこにはあるが、筆者の筆致もあって各友人たちが実に魅力的なキャラクターとして描かれており、読み物として面白い。

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2022/09/23

一気に読み終えました。 激動の歴史と少女時代の想い出が、鮮やかに映像になって 迫ってくるような、優れたドキュメンタリーでした。 あの時代の複雑な旧ソ連と周辺国の問題に、そこに生きている人の立場から触れることができました。 ロシアとウクライナの戦争が、単なる領土問題ではない、歴史や...

一気に読み終えました。 激動の歴史と少女時代の想い出が、鮮やかに映像になって 迫ってくるような、優れたドキュメンタリーでした。 あの時代の複雑な旧ソ連と周辺国の問題に、そこに生きている人の立場から触れることができました。 ロシアとウクライナの戦争が、単なる領土問題ではない、歴史や民族感情からくる根深いものだというのが少し分かったかもしれません。

Posted byブクログ

2022/09/13

ロシア語翻訳者の草分けである米原万里によるノンフィクション小説。 日本共産党の代表としてプラハに赴任した父親に連れられて、小学校時代をプラハのソビエト学校で過ごすという、著者の特殊な体験を記している。 まず、ジュブナイル作品として最高に面白い。 3人の友人について、ソビエト学校...

ロシア語翻訳者の草分けである米原万里によるノンフィクション小説。 日本共産党の代表としてプラハに赴任した父親に連れられて、小学校時代をプラハのソビエト学校で過ごすという、著者の特殊な体験を記している。 まず、ジュブナイル作品として最高に面白い。 3人の友人について、ソビエト学校での彼女らとの思い出、そして大人になってからの再会が語られる。 回想に滲み出ているのは、10歳前後の少女が持つ大人顔負けの気高さや鋭さ、そして大人になってわかる「あの頃」の他愛なさとかけがえのなさ。 『スタンド・バイ・ミー』や『IT』を観たときのように、二度と戻れない少年・少女時代への郷愁を存分に味わわせてくれる。 その上で、時間的にも場所的にも遠く離れた共産主義国の社会について、実体験に基づいて教えてくれる貴重な本でもある。 民族対立や複数の共通語、イデオロギーへの忠誠心など、日本では縁遠いこうした問題が子供にとってさえ決定的な影響力を持つ世界の話はいちいち新鮮で、目から鱗が落ちるような思いがした。 ウクライナ戦争以来、世間でも再注目されているようだが、まさしく今読むべき本と感じた。

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2022/09/12

一度ペンで書かれた言葉は斧でも切り取られないの。 主人公マリの先生が発した一言にどきっとした。文章を気軽に発信できる今でも同じことが言えるのではないか。刺さる言葉は、国境を越え色褪せないのだと教わった気がした。 1960年代にマリが出会ったプラハのソビエト学校時代の親友たち、そし...

一度ペンで書かれた言葉は斧でも切り取られないの。 主人公マリの先生が発した一言にどきっとした。文章を気軽に発信できる今でも同じことが言えるのではないか。刺さる言葉は、国境を越え色褪せないのだと教わった気がした。 1960年代にマリが出会ったプラハのソビエト学校時代の親友たち、そして時を越えて再会する彼女たち。国に翻弄され時代の荒波にもまれる彼女たちの人生は、とてもノンフィクションとは思えず、読みすすめる指が止まらなかった。

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2022/08/07

エッセイストの著者が、1960年代にプラハのソビエト学校でともに学んだ3人の友人を尋ねる。旧ソ連の影響の大きい東欧で過ごした学生時代と、その後の人生は三者三様に厳しいものだった。ギリシャ、ルーマニア、ユーゴスラビアと、それぞれに揺れ動く国の歴史でもある。 出版されて直ぐくらいに読...

エッセイストの著者が、1960年代にプラハのソビエト学校でともに学んだ3人の友人を尋ねる。旧ソ連の影響の大きい東欧で過ごした学生時代と、その後の人生は三者三様に厳しいものだった。ギリシャ、ルーマニア、ユーゴスラビアと、それぞれに揺れ動く国の歴史でもある。 出版されて直ぐくらいに読んだが、ウクライナとロシアの今を見ていて、もう一度読んでみようと思った。島国日本では思いもよらない歴史を実感した。

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2022/08/12

3人によくたどりつけたなあ、と驚く。 そんなことがあるのか、と。 それぞれの人生や人柄が強く感じられ、とても興味深かった。 社会情勢に弱いので、理解しきれない部分があったとは思うけれど。 文化の違いも感じられ、読んでいて楽しかった。 勉強は苦手だったリッツァは、偏見や先入観が...

3人によくたどりつけたなあ、と驚く。 そんなことがあるのか、と。 それぞれの人生や人柄が強く感じられ、とても興味深かった。 社会情勢に弱いので、理解しきれない部分があったとは思うけれど。 文化の違いも感じられ、読んでいて楽しかった。 勉強は苦手だったリッツァは、偏見や先入観がない子どもの感覚や率直さをもっていた。 チャーミングな女の子だと思う。 リッツァとの再会は、読んでいる私も、いくつもの驚きの連発で、楽しかった。 自分の人生を守るため、自分をごまかし心を直視できないアーニャが悲しい。 国のことは、個人の力ではなんともできないことばかり。 目をそむけたくなるアーニャの気持ちはわかる気がする。 しかし、それでも祖国を愛するアーニャであってほしい。ズルい大人であってほしくない。そんなマリの気持ちも、よくわかる。 この先、人生の後半に自己のアイデンティティに向き合わざるを得ない時がアーニャにやってくる気がする。 なんとなく。 ヤスミンカの知性や人間性が美しい。 彼女がマリに手紙を書かなくなった気持ちはよくわかる。 「空気になりたい」という彼女の気持ちは悲しく痛い。その想いも、よくわかる。 時を隔てても、日本から探し訪ねてきてくれたマリの存在は、大きな支えとなったのではないか。 この先の彼女の生活が無事であってほしい、と、私も祈りたくなった。 3つの作品の中で、一番凛とした女性のように感じた。

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2022/07/18

社会は大人の都合で変わっていく。民族は誇りと体裁による分断を繰り返し、対話ではなく暴力を先行していく。それが政治ならば、犠牲になる民は信奉するのだろうか。弱き者は諦めと妥協をひた隠すように生活の場を求めていく。血や思想が違うことが何故争い事の発端になるのだろうか。愚かな人間の政を...

社会は大人の都合で変わっていく。民族は誇りと体裁による分断を繰り返し、対話ではなく暴力を先行していく。それが政治ならば、犠牲になる民は信奉するのだろうか。弱き者は諦めと妥協をひた隠すように生活の場を求めていく。血や思想が違うことが何故争い事の発端になるのだろうか。愚かな人間の政を冷ややかに見遣る筆致に引き込まれていく。権力の魔は恐ろしい。

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2022/07/30

手記のような小説かと思って読んでいたら、実話だった。 昔の本だけど、今と重なることが多く、胸が苦しくなる。 いまに繋がる歴史

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2022/07/07

カテゴリーはエッセイとされているが、まるで小説のような構成と展開。 少なからず脚色もあるだろう。 冷戦時代の東ヨーロッパがどのような状況だったのか、またその地域で暮らす西側諸国の子女の暮らしがいかなるものだったのか等、興味深い事柄の一端を知ることができる、貴重な生の資料でもある。...

カテゴリーはエッセイとされているが、まるで小説のような構成と展開。 少なからず脚色もあるだろう。 冷戦時代の東ヨーロッパがどのような状況だったのか、またその地域で暮らす西側諸国の子女の暮らしがいかなるものだったのか等、興味深い事柄の一端を知ることができる、貴重な生の資料でもある。 著者も自認されているように、お行儀という点を含み、なかなか色合いが強い文章なので、そこらの好みが合うかどうか。

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2022/06/10

米原万里の本は大好きで随分読みました。そしてNHKのラジオ番組で幅広くジャンルを問わず紹介される本は彼女の人生観そのもののような気がして大好きでした。亡くなった時はもうあの独特の考え方を聞けないと思うと本当にショックでした。 今ロシアのウクライナ侵攻がある中でまた彼女の本を読み返...

米原万里の本は大好きで随分読みました。そしてNHKのラジオ番組で幅広くジャンルを問わず紹介される本は彼女の人生観そのもののような気がして大好きでした。亡くなった時はもうあの独特の考え方を聞けないと思うと本当にショックでした。 今ロシアのウクライナ侵攻がある中でまた彼女の本を読み返しています。この嘘つきアーニャの真っ赤な真実は彼女がチェコのプラハで過ごした4年間に出会った友人達を30年ほど経ってから探し当てるまでの話です。1980年台から90年台は世界情勢が激変し、其処で一緒に過ごした友人たちの人生もまたその頃には思いもよらないものになっていました。それにしても米原万里さんの記憶力の良さ、友人たちを探し当てる気力に改めて感激しました。そして幼少期の異文化体験がいかにインパクトの強いものであるかということも思いました。

Posted byブクログ