新釈 遠野物語 の商品レビュー
誇大癖のある"ぼく"と、語り部である いんちき臭い犬伏老人が「遠野物語」の序文に なぞらえつつ紹介され、つるりと始まる物語。 山の緑の稜線に重なる白い夏雲。 世界が反転するような不思議で美しい 桜の花びらほどの大きな雪の舞う景色。 美しい描写にうっとりしな...
誇大癖のある"ぼく"と、語り部である いんちき臭い犬伏老人が「遠野物語」の序文に なぞらえつつ紹介され、つるりと始まる物語。 山の緑の稜線に重なる白い夏雲。 世界が反転するような不思議で美しい 桜の花びらほどの大きな雪の舞う景色。 美しい描写にうっとりしながら、 老人の話す怪異に夢中になりページをめくると、 それはいつしか艶っぽい話、悲しい恋の話、 残酷な話、悲しく面妖な話へと様変わりしていく。 本家遠野の話を小さな骨組みとして 話は隆々と肉をつけ、種を知っているはずの 手品が鮮やかに趣向が変わり、感嘆し、 最後には井上氏の愉しい試みに口角が上がる。 遠野とどこかしら地続きでありながらも、 延長線上のオマージュに留まらず、 再構築され生まれ変わる遠野。 "ぼく"となった聞き手の私は 犬伏老人の話を心の底から楽しみ魅了される。 見事な筆致にまさしく、どんとはれ!!
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柳田国男の『遠野物語』を読む前に読了。 一つ一つの話が気持ちのいい終わり方をしていたので楽しく読むことが出来た。
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久々に手に取り読みました。 もともとは柳田国男が遠野地方にまつわる民話・伝説を集めたものですが、これは何度読んでも、不思議な気分にさせられる本です。
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goole mapとwikipediaを見れば、だいたいのことは分かってしまう世の中だけど、それが完全に思い込みであることを教えてくれる1冊。 目の前にいる人は、人間なのか、獣の類なのか。 ここからあそこへは、近いのか、遠いのか。 全ては、やってみなきゃ分からないんだ。
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「遠野物語」は柳田国男が佐々木鏡石から聞いた遠野地方にまつわる民話・伝説を集めたもの。 本書は、その「遠野物語」にインスパイアされた物語。 「犬伏」という名の老人から聞いた物語を「ぼく」が書きとめた、という設定。 「遠野物語」は語る側も聞く側も誠実な人物だったが、「新釈遠野物語...
「遠野物語」は柳田国男が佐々木鏡石から聞いた遠野地方にまつわる民話・伝説を集めたもの。 本書は、その「遠野物語」にインスパイアされた物語。 「犬伏」という名の老人から聞いた物語を「ぼく」が書きとめた、という設定。 「遠野物語」は語る側も聞く側も誠実な人物だったが、「新釈遠野物語」では語る側は、いんちき臭く、聞く側は誇張癖がある、という事になっている。 犬伏老人が語る物語は、山の民、動物、妖怪、人間が対等な立場で関わりあう。全て犬伏老人が関わった話ばかりで、なぜ、こんなに怪異に関わるのか、とツッコミを入れたくなるほどだが、それは最後の物語で全て分かる趣向になっている。 怪異の物語ではあるが、どこか懐かしい感じもする。 夏祭りの夜、人通りの少ない裏通りに入ってしまったような、 すぐ近くに「普通」の世界があるにも関わらず、少しだけ異なる「異世界」に踏み込んでしまったような、 「大人向け日本昔話」 と言ってしまってもいいかもしれない。
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肩肘張らずに読めて面白かったです。遠野物語をベースにしつつパロディではない。これは確かに「新釈」だなぁと妙に納得しました。柳田国男が読んだら、大喜びするんじゃなかろうか。
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初めて読んだのは高校生の頃だったか。。 その後、時折、読み直してしまい、結局何度読み直したことか。 読み直すたびに、気付かされることがある。 「笛吹き峠の話売り」が一番好き。
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10年以上前に立ち読みした一冊を久しぶりに購入して読了。 「東北・遠野の昔話」を「東京でトランペットを吹いてた犬伏老人」に語らせていることに意味があるのかもな、と感じた。東北外の人が東北の昔話を語りで聞くと、その語りの味わいは楽しめてもその聞き取りに気を取られてしまい話には入り込みにくい。それを犬伏老人にあえて標準語で語らせることにより、かえって遠野の物語にある普遍性と独自性に気づきやすくなる。 10年経って読み方が変わったな~、と感じるところも多かった。東北に生まれ育ち、東北と日本語を知り尽くした筆者にしか書けない一冊。
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じわりとした恐怖や、じわりとにやり。 遠野の世界は、こんなところ? 恥ずかしながら柳田国男を読んでいませんが、井上さんならではの優しさも、きっと込められているのだろうなぁと思いながら読みました。
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読後感は良い小説でした。 井上ひさしさんについては昔観たひょっこりひょうたん島くらいのイメージしかなく。 また、遠野物語事態も怖い話程度の事しか知らずに読み始めました。 序盤は愉快なセリフや展開に夢中になったけど、序盤の後半あたりに下ネタっぽい話があり、こういう話も書くんだなぁ、...
読後感は良い小説でした。 井上ひさしさんについては昔観たひょっこりひょうたん島くらいのイメージしかなく。 また、遠野物語事態も怖い話程度の事しか知らずに読み始めました。 序盤は愉快なセリフや展開に夢中になったけど、序盤の後半あたりに下ネタっぽい話があり、こういう話も書くんだなぁ、と思ってたらその後も下ネタっぽい展開が多くてちょっと辟易しました。 あと、最初に「腹の皮を少しはよじらせる」とありましたが、なんだか悲惨な死に方が多く、個人的によじれたのはごく最初の方だけでした。 ただ、結末はとても爽快な感じで良かったです。
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