1,800円以上の注文で送料無料

新釈 遠野物語 の商品レビュー

3.9

45件のお客様レビュー

  1. 5つ

    14

  2. 4つ

    14

  3. 3つ

    11

  4. 2つ

    3

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2020/09/02

柳田国男の『遠野物語』とどれほど対応しているのかはわからない。 でも、河童や沼の主のウナギが登場したり、馬と人間の娘の恋など、多くの話が下敷きになっているのだろう。 大学を休学し、故郷近くの釜石の国立療養所で働く青年を視点人物に、山で出会った犬伏老人から怪異譚を聞くという設定に...

柳田国男の『遠野物語』とどれほど対応しているのかはわからない。 でも、河童や沼の主のウナギが登場したり、馬と人間の娘の恋など、多くの話が下敷きになっているのだろう。 大学を休学し、故郷近くの釜石の国立療養所で働く青年を視点人物に、山で出会った犬伏老人から怪異譚を聞くという設定になっている。 老人はいったい何者なのかという謎解きが、個々の怪異譚をくるむように配される。 老人の体験談として語られるため、東北の嘗めてきたつらい歴史も織り込まれている。 たとえば昭和恐慌で、多くの娘たちが身売りされたこと。 鉱山での恐ろしい労働。 私たち読者は、怪異譚を楽しみつつも、そんな悲しい歴史にも思いをはせることになる。 本作の特徴は、地形が目の前に見えてくるかのような描写だろうか。 昔、地理学を専攻する先輩が、村上春樹を読むと、その土地が目に浮かんでくると言っていた。 へえ、専門家(事実、彼は現在大学の教員になっている)は違うものだなあ、と思ったものだ。 本作は、シロートたる私が読んでも、土地のありさまが想像できた。 これを彼が読んだら、どう読むのだろう?

Posted byブクログ

2020/03/23

井上ひさしの本をそういえばあんまり読んだことないな、と思って手に取る。昔話や妖怪の出てくる話。元ネタの、遠野物語を読みたくなる。 落語でも狸や狐に騙された小咄というのはよく出てくるけど、その感じととてもよく似ていて、既視感があったので少し評価は低めに。 里山や村などの自然と近...

井上ひさしの本をそういえばあんまり読んだことないな、と思って手に取る。昔話や妖怪の出てくる話。元ネタの、遠野物語を読みたくなる。 落語でも狸や狐に騙された小咄というのはよく出てくるけど、その感じととてもよく似ていて、既視感があったので少し評価は低めに。 里山や村などの自然と近い生活感が感じられるところがよかった。ちょっと自然に近い気持ちになれる。 短い話が続くので、気分転換したいとき、旅のお供におすすめ。小説も、ある意味では化かし合いだなあと思ったり、霞のかかったような本でした。表紙が可愛い。

Posted byブクログ

2020/01/16

遠野物語を下敷きにした物語集。筋はどれも陰惨にして哀切、だけども次が読みたくなる面白さがある。 一発目が夢オチなのでオチもなんとなく想像できてしまうが、読後感はスッキリ爽やか。

Posted byブクログ

2019/01/22

柳田国男の遠野物語は昔読んだことあってなんか不思議な物語だなぁ、と思った記憶があった。中途半端なところで物語が終わったり、話のつながりがなかったりしたところにそんなイメージを持ったのだと思う。 それから、10年以上経って再び本を読み始めると、いたるところで柳田国男と遠野物語の名前...

柳田国男の遠野物語は昔読んだことあってなんか不思議な物語だなぁ、と思った記憶があった。中途半端なところで物語が終わったり、話のつながりがなかったりしたところにそんなイメージを持ったのだと思う。 それから、10年以上経って再び本を読み始めると、いたるところで柳田国男と遠野物語の名前を見るようになった。これはもう一度読まねばと思っていた時に、ちょうどハマっていた井上ひさしさんの「新釈」バージョンを見つけたので思わず手に取った。 最初の感想としては、柳田国男の作品より読みやすい、という物であった。山奥の病院でバイトをしている僕に山伏老人が話を聞かせるという体で物語が進んでいくため、なんとなく全体的につながりがあるように感じた。絶妙なところで山伏老人がお茶を飲んだりキセルをふかしたりするためこちらも飽きずに話にのめりこめる。 また、これは扇田さんの解説を読んで思ったことだが、柳田国男が遠野に伝わる口語物語をまとめたのは、民俗学的に素晴らしいことだが、一部口語によって伝わったという文化が結果的になくなってしまった。(確かこんな感じの事だった)と書かれていたのが印象的だった。その点、この新釈遠野物語は、話を語って聞かせるという体で物語が進むため、口語という文化に折しも本を読んで触れられた。 ただ、幾人もの作家を引きつけてやまない遠野物語の魅力が私はまだ実感できない。だから、これからも遠野関係の本を読んでいきたいと思う。

Posted byブクログ

2015/12/16

タイトルに「遠野物語」が入っているからという先入観入りまくりで最初の話を読んでしまったので 最後に「ええー;」という感じに(笑) でもオチまではどきどきしながら楽しく読めました。 他の作品も断言しない、言い切らない良さと 善と悪で容易に分けない良さがあり、 ただただ切ない話もあり...

タイトルに「遠野物語」が入っているからという先入観入りまくりで最初の話を読んでしまったので 最後に「ええー;」という感じに(笑) でもオチまではどきどきしながら楽しく読めました。 他の作品も断言しない、言い切らない良さと 善と悪で容易に分けない良さがあり、 ただただ切ない話もあり… 特に妻の話の切ない事と言ったら…! と 思っていたのに 最後の話を読んでまた「ええー;」という感じで終わるという(爆) とても面白い一冊でした。 10年後くらいにもう1度読みたい一冊。

Posted byブクログ

2015/06/02

(*01) 柳田は伝説成立の要件として具体的で固有名称で呼ばれる地物と関連付けられていることを指摘している。その点で本書に収められて数編の創作は伝説的でもある。 新釈遠野物語と称しているものの、多くは釜石側に編まれた物語である。本書に現われる地名を地図に探れば、この新釈物語の世界...

(*01) 柳田は伝説成立の要件として具体的で固有名称で呼ばれる地物と関連付けられていることを指摘している。その点で本書に収められて数編の創作は伝説的でもある。 新釈遠野物語と称しているものの、多くは釜石側に編まれた物語である。本書に現われる地名を地図に探れば、この新釈物語の世界がやや立体的に(*02)浮かび上がってくる。 伝説の語りは怪異とされ得体の無いものを対象にしていると印象されてしまうが、本書においてはそうでもなく多くは動物譚(*03)として読める。 語りの老人の姓は犬伏であり、老人はイヌないしキツネをトーテムとしてトランペットという鳴き声の隠喩とともに老人像が描かれる。「川上の家」はカッパ(これも古典的には動物である)、「雉子娘」はキジとコウモリ、「冷し馬」はウマ、「狐つきおよね」はキツネ、「鰻と赤飯」はウナギとコイと老人周辺の人物との交歓であった。動物との交歓のクライマックスは獣姦と殺傷である。冒頭の「鍋の中」の巨漢は柳田の文脈の面影が残る山人であり、人間よりは動物に近しい霊的な存在であった。 (*02) 創作か実在か定かでない地物も登場するが、これは最終話で主人公(*04)が指摘する老人の語りのクロニクルな編集における齟齬とともに、創作面と現実面との作為的なずらしや歪みとして読めるのかもしれない。時間と空間をもっともらしく現実に溶接する試みとして興味深い。 (*03) もう一つの物語の筋に近代と資本がある。鉱山の現場、運搬の現場、畜産の現場、小作の現場を、老人は近代的な個として巡っている。この近代の解釈を新釈とするかどうかはともかく、伝説的な語りの中に近代がどのように現れるか、柳田の本編でもその端緒は現われていたように思う。 (*04) 主人公が老人の語りに対し、時に急かすような合いの手を入れる。そしてそれを老人が諌めるというおなじみパターンが数話繰り返される。合いの手は物語に読み手を参入させる方法である。主人公を通じて私たちは物語に挿入されているのである。

Posted byブクログ

2015/05/16

柳田国男の「遠野物語」を下敷きにして井上ひさし版の民話を9話収録している。作者自身であろうと思われる、大学休学中の「ぼく」が、遠野と釜石の間にある療養所で働く内に山にすむ犬伏老人と出会い、民話を聞くという筋立てだ。柳田版に比べれば格段に読み易いが、なにかやはりおどろおどろしい雰囲...

柳田国男の「遠野物語」を下敷きにして井上ひさし版の民話を9話収録している。作者自身であろうと思われる、大学休学中の「ぼく」が、遠野と釜石の間にある療養所で働く内に山にすむ犬伏老人と出会い、民話を聞くという筋立てだ。柳田版に比べれば格段に読み易いが、なにかやはりおどろおどろしい雰囲気は否めない。井上ひさしの文章だから読めるという感じで、他の人ならかなり怖い話である。

Posted byブクログ

2014/11/09

〈メモ〉とても上手く出来ている。 切なくなる物語もちらほら。 「遠野物語」を物語化・立体化し、ユーモアを加えた作品。解説が良い。 また読みたい。特に解説。

Posted byブクログ

2014/07/07

2014.7.7. am2:53 読了。題名の通り、随所に遠野物語の影響がみられる。遠野物語を現代版ににしたことで、本来この物語が持っている時代に対応して変化していく能力や話し手によるアレンジがなくなった

Posted byブクログ

2014/11/29

遠野近在の国立療養所でアルバイトをしている“ぼく”は、その山中に住む犬伏老人に出会う。老人は“ぼく”に、遠野に伝わる奇天烈な話の数々を語って聞かせた。柳田國男の名著「遠野物語」を井上ひさし氏が新釈したもう一つの「遠野物語」。 話し上手な犬伏老人のインチキ話の数々に、誇大癖のある...

遠野近在の国立療養所でアルバイトをしている“ぼく”は、その山中に住む犬伏老人に出会う。老人は“ぼく”に、遠野に伝わる奇天烈な話の数々を語って聞かせた。柳田國男の名著「遠野物語」を井上ひさし氏が新釈したもう一つの「遠野物語」。 話し上手な犬伏老人のインチキ話の数々に、誇大癖のある“ぼく”は当初疑心暗鬼になりながらも暇つぶしと思って話を聞き入るが、しだいに“ぼく”は老人に次の話を乞い始める。老人が語る9つの話は、木々や動物といった遠野の美しい自然を背景に今も昔も変わらない人間の滑稽な姿を浮彫にする。印象的だったのは「雉子娘」「笛吹峠の話売り」、そして最後の「狐穴」。 後悔先に立たずなオチはどれも秀逸で、読んでいる方は自分自身も話の登場人物のようにラストで途方に暮れるが、それがまた不思議と心地いい。「やられた」の一言。

Posted byブクログ