磁力と重力の発見(1) の商品レビュー
古代ギリシャからルネサンスの手前までの磁力の捉え方を、文献を詳細に読み込んで書かれている。 とにかく面白い。 不可思議な魔術や、神秘的、迷信的に捉えられていた磁力が、少しずつあらわになってくる。 プラトン、アリストテレス、 ルクレチウス、プリニウス、アウグスティヌス、トマス・アク...
古代ギリシャからルネサンスの手前までの磁力の捉え方を、文献を詳細に読み込んで書かれている。 とにかく面白い。 不可思議な魔術や、神秘的、迷信的に捉えられていた磁力が、少しずつあらわになってくる。 プラトン、アリストテレス、 ルクレチウス、プリニウス、アウグスティヌス、トマス・アクィナス、ロジャー・ベーコン、ペレグリヌスたちの考えたことが目の前で生き生きと再現されていて、まるでその時代の雰囲気に包まれるような錯覚に陥いる。 さすが名著と言われるだけの事はある。 続きは後二冊ある。 楽しみ!
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物理の発祥が外国であり、日本はいまだにその恩恵に預っている。物理記号、数学記号がアルファベット、ギリシャ文字を未だに世界中で使っているのが、何よりの証拠。 僕は高校物理が苦痛だった。 高校数学も苦痛だった。 理由なく、3次元座標軸、XYZ軸とかか?ABC軸でも良いじゃない?と...
物理の発祥が外国であり、日本はいまだにその恩恵に預っている。物理記号、数学記号がアルファベット、ギリシャ文字を未だに世界中で使っているのが、何よりの証拠。 僕は高校物理が苦痛だった。 高校数学も苦痛だった。 理由なく、3次元座標軸、XYZ軸とかか?ABC軸でも良いじゃない?とか僕はちょっとでも理由・ワケのわからない事には、拒否感を出していた。 理由は、小学校の時に「担任の教員が、自作自演の窃盗事件で指紋を僕から押収したことが遠因である」。。。 教員と名が付く奴らに、これ以上僕の人生を捏造されるのは小学生で終わりにしたい、という考えから、中高大学生の期間は、ロクに勉強しなかった。結果中退をせざるを得なかった。良い教員、まともな教員に恵まれている学生は幸せである。 僕のように、教員にすら目を付けられてしまったような学生、子供、生徒は、社会不安や、勉強のやる意味すら解らなくなっていると思う。 しかし、今はインターネットがある。なぜ数学では多く円は、「円C」と書かれるかがちゃんとググれば掲載されている。Circleの頭文字Cである。英語でググってみる手段は、数学記号の由縁・由来がわかり、僕と同じく社会不安、教員全般に対して不信感を今だ捨てられないヒトにはとてもよいツールであり、捗る。 けど、この「磁力と重力の発見」シリーズは、その発見の経緯を、哲学と宗教と歴史(世界史)を交えて解説してくれる。 ただ、単に、「勉強は義務だからやる」と諦めて日々ヒーヒー言いながら苦学している人にこそ、「磁力と重力の発見」は、是非読んでもらいたい良書です。 駿台予備校の教員として、「新・物理入門」という駿台文庫から参考書を出しておられる山本義隆氏。 新・物理入門は、「微分積分で、物理を解説してしまう」ハイレベルな駿台生徒向けの超難解参考書でありますが、山本義隆氏が、こういった文系寄りな本も書けるのが凄いと僕は感じました。https://study-for.com/study-for/24863/も読みましたが、激しく同意しました。
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序文 第一章 磁気学の始まり——古代ギリシャ 1 磁力のはじめての「説明」 2 プラトンと『ティマイオス』 3 プラトンとプルタルコスによる磁力の「説明」 4 アリストテレスの自然学 5 テオプラストスとその後のアリストテレス主義 第二章 ヘレニズムの時代 1 エピクロスと原...
序文 第一章 磁気学の始まり——古代ギリシャ 1 磁力のはじめての「説明」 2 プラトンと『ティマイオス』 3 プラトンとプルタルコスによる磁力の「説明」 4 アリストテレスの自然学 5 テオプラストスとその後のアリストテレス主義 第二章 ヘレニズムの時代 1 エピクロスと原子論 2 ルクレティウスと原子論 3 ルクレティウスによる磁力の「説明」 4 ガレノスと「自然の諸機能」 5 磁力の原因をめぐる論争 6 アプロディシアスのアレクサンドロス 第三章 ローマ帝国の時代 1 アイリアノスとローマの科学 2 ディオスコリデスの『薬物誌』 3 プリニウスの『博物誌』 4 磁力の生物態的理解 5 自然界の「共感」と「反感」 6 クラウディアヌスとアイリアノス 第四章 中世キリスト教世界 1 アウグスティヌスと『神の国』 2 自然物にそなわる「力」 3 キリスト教における医学理論の不在 4 マルボドゥスの『石について』 5 ビンゲンのヒルデガルト 6 大アルベルトゥスの『鉱物の書』 第五章 中世社会の転換と磁石の指向性の発見 1 中世社会の転換 2 古代哲学の発見と翻訳 3 航海用コンパスの使用のはじまり 4 磁石の指向性の発見 5 マイケル・スコットとフリードリヒ二世 第六章 トマス・アクィナスの磁力理解 1 キリスト教社会における知の構造 2 アリストテレスと自然の発見 3 聖トマス・アクィナス 4 アリストテレスの因果性の図式 5 トマス・アクィナスと磁力 6 磁石に対する天の影響 第七章 ロジャー・ベーコンと磁力の伝播 1 ロジャー・ベーコンの基本的スタンス 2 ベーコンにおける数学と経験 3 ロバート・グロステスト 4 ベーコンにおける「形象の増殖」 5 近接作用としての磁力の伝播 第八章 ペトロス・ペレグリヌスと『磁気書簡』 1 磁石の極性の発見 2 磁力をめぐる考察 3 ペレグリヌスの方法と目的 4 『磁気書簡』登場の社会的背景 5 サンタマンのジャン 注
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こういう本を書きたい こういう科学史を書かずにおれなかった気持ちがとてもわかる こういうつながりをこそみたい!というのがみえて嬉しいと同時にちゃんとつながってて嬉しい 続きが楽しみ
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(中巻、下巻も含めたレビューです) 物理学のキー概念である”力”、その中でも直観的に説明しがたい遠隔作用である万有引力および磁力にスポットを当てて、近代物理学の成立過程を古代ギリシャから18世紀まで追いかけていく本だ。その過程でルネサンス時代の魔術など意外な思想が重要な役割を果...
(中巻、下巻も含めたレビューです) 物理学のキー概念である”力”、その中でも直観的に説明しがたい遠隔作用である万有引力および磁力にスポットを当てて、近代物理学の成立過程を古代ギリシャから18世紀まで追いかけていく本だ。その過程でルネサンス時代の魔術など意外な思想が重要な役割を果たしていたことを明らかにし、まったく直線的ではなかった物理学発展の様相を描き出していく。 古代ギリシャの哲人たちも磁力のナゾには頭を悩ませていたようだ。間違いなく地頭は優れているであろう哲学者たちが、「磁石が鉄を引くのであってその反対ではない」なんて珍妙な説を大真面目で書き残しているし、磁石同士の引力・斥力についてぜんぜん気づいていなかったりする。今のようにN・S極が塗り分けられた人工磁石なんかが簡単に手に入る訳ではないからだろうが、それにしても人間の知識ってヤツは過去からの積み重ねだと感心させられる。 それでもギリシャ人は磁力のナゾについて色々な説明をひねり出そうとした。だが、そうした動きもローマ時代以降は弱まり、学問軽視の中世キリスト教世界ではすっかり鳴りを潜めた。13世紀に中世ヨーロッパは転換点を迎え、思想面でもイスラム世界との接触によりアリストテレスを再発見してスコラ哲学が興る。だが、スコラ哲学はまだまだ過去の知識に偏重した学問で、磁力についても抽象的な思考を重ねるばかりだった。 磁力のナゾを解明するきっかけはアカデミアとは違う所からやってきた。船乗りたちが磁針の指北性を発見して、航海に利用するようになったのだ。その後、磁石を使って近代的な自然科学実験の嚆矢をおこなったペレグリヌスも、磁針の伏角を発見したノーマンも、学者ではなくて職人・町人階級に属する人間であり、実験・観察や定量的な測定を重んじた。その経験重視の流れの中心にあったのは、錬金術などを含む自然魔術であった。自然魔術は実用を求めるがゆえに観察や実験を通した経験を重視し、当時では科学と判別しがたいような所もあった。 しかし経験だけではミステリアスな遠隔力である磁力、ひいては重力を説明することは難しかった。経験を解釈するための仮説、理論的枠組みが必要とされたのだ。現にガリレオ・ガリレイは物体の落下について精緻な実験を行ったが、「合理的」すぎるあまり遠隔力を認められずに万有引力を発見しそこなった。地球が巨大な磁石であることを発見したギルバートにおいては、遠隔力の仮説が意外な方向からやってくる(ここは本書の白眉なのでネタバレはやめておきます)。。。そして、ケプラーからニュートンへという流れで万有引力の法則が発見された。 どちらかと言えば地味なテーマだと思うが、出た当時に色々と賞をもらったり評判の良い本であるようだ。とても多くの資料にあたって論を進めていくので全3巻の大部になっているものの、飽きることなく読み進められた。むしろ、あまり知られていない人物までも丁寧に取り上げていくことにより、その時代々々に支配的だった考え方が、なぜそうだったのかという社会背景とともに浮かび上がってくる。メッセージの数としては、厚みの割りに沢山こめられた本ではない。しかしそのメッセージを支えるファクトの数々を例証していくのにかけては惜しむところがない。贅沢な本だと思う。 物理学や数学の知識については、文系でも高校(もしかすると中学かも)の授業内容をいくらか覚えていれば大丈夫だろう。最終章の磁力測定だけは数式オンパレードで全くついていけなかったが、それでも本筋の理解にはさほど支障がないと思う。
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現代の物理学において力という概念は四つに分類できると知り、その中二っぽさすら感じる統一理論に興奮したものだが、その四つを目の当たりにしてまず不思議に思ったのは、「人間が物を押す力はどれ?」ということだった。 触れていないのに生じる力についての説明ほど、その人の世界に対する見方を...
現代の物理学において力という概念は四つに分類できると知り、その中二っぽさすら感じる統一理論に興奮したものだが、その四つを目の当たりにしてまず不思議に思ったのは、「人間が物を押す力はどれ?」ということだった。 触れていないのに生じる力についての説明ほど、その人の世界に対する見方を示すものはない。それを古来から示してきたのが、試金石ならぬ魔法の石、磁石だ。 目に見えない力が現実に存在するというのに、どうして神や精霊の実在性を疑うことができようか。 だがそんな時代にあってすら、磁力を説明しようと試みた傑物たちがいた。 物理現象に対する論理的な説明の開祖であるタレスやアリストテレスは、磁力を霊的なものと見なし、近代の原子論を紀元前に構築したエピクロスやルクレティウスは、磁石から放出される原子流が空気を打ち払って真空をつくり、鉄を引き込むと説明した。 医学思想を伝承したガレノスやアレクサンドロスは、親近性のある質を引きつける生物的な性質と考えた。 その後、哲学と科学が衰退したローマにおいて原因と結果の探究は失われ、ディオスコリデスやプリニウスらの博物誌にて魔術的な力として記されるに留まり、以後のキリスト教信仰の時代につながることとなる。 中世の長い間を通して、磁石は魔術的で心霊的な研究とのみ関わりを持っていたが、トマス・アクィナス、ペトロス・ペトグレス、ロジャー・ベーコンらによって指向性と極が明らかにされたところから、ついに天体の力と見えない力が結びつくこととなる。 この磁力と重力が天体を介して結びつく本題は第3巻から。 本巻および次巻では、魔術や錬金術などの側面ばかりが取り上げられる中近末期以降について、磁力に対する理解を焦点に、科学に対する視座を読み解く。 歴史の横道に入るのが大好きな人にとっては、時代背景どころか対象の生い立ちにまで詳細に立ち入る語り口を存分に楽しめるが、そうでない人にとっては、なかなか本筋に入らないことに焦らされるかもしれない。 だが、そもそも歴史に結論などあるはずもなく。 今の時代に筆者の目線から見た過去がどう物語をつむぐのか。 それに共感するには、同じ景色を見る以外の方法はない。 歴史から何かを得ようとするのではなく、ただ歴史を眺めることを楽しめる人にとっては、これ以上の一冊はないと言えるだろう。
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140621 中央図書館 カリスマ予備校講師にして全共闘闘士であり、有名な理論物理学テキストの著者であり、なにより自己の思考に忠実なインテリとして有名らしい著者による物理の歴史シリーズだ。『熱学思想の史的展開』で目に見えない熱量やエントロピーの概念の発達を、また近作の『世界の見方...
140621 中央図書館 カリスマ予備校講師にして全共闘闘士であり、有名な理論物理学テキストの著者であり、なにより自己の思考に忠実なインテリとして有名らしい著者による物理の歴史シリーズだ。『熱学思想の史的展開』で目に見えない熱量やエントロピーの概念の発達を、また近作の『世界の見方の転換』では広くいえば「宇宙」を認識する歴史をテーマとして扱っているが、本作では、この世の理を支配する遠隔作用のうち、磁力と重力について、人間はどのように認識を深めてきたか、が明晰に描かれている。 とはいえ、とにかく細かいことがいっぱい書いてあるな。どんだけ勉強しているのか、と思う。こういう本なら文系の人も、ツボにヒットすれば読めるだろうから、出版するほうとしては理にかなっているのであろうが、理系の人が読む価値はあるかな?
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情報量の時代では、何かを説明する際にWikipediaは即時接触的な道で繋がっていく有能なツールであるが、すっぽりと抜け落ちた歴史観を補うことは難しい。歴史観とは簡単にいうと思想的修正の果ての個人的な思い込みなのだが、それが聞きたいことなのだ。物理については門外なのでわかりません...
情報量の時代では、何かを説明する際にWikipediaは即時接触的な道で繋がっていく有能なツールであるが、すっぽりと抜け落ちた歴史観を補うことは難しい。歴史観とは簡単にいうと思想的修正の果ての個人的な思い込みなのだが、それが聞きたいことなのだ。物理については門外なのでわかりませんが、著者の思い入れが感じられて、時に人間臭く、時に下世話で、居酒屋で先輩の与太話を聞いてるような良本。
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プリニウスだの、パラケルススだのという澁澤龍彦や種村季弘の本でよく目にした名前が出てきて、何だかとても懐かしい気持ちになった。磁力と重力を鍵語にして、素人にも分かる平明な科学史を書こうという著者の目論見は、第一巻を見る限り成功しているのではないか。三巻に及ぶ大部な著作になるはずだ...
プリニウスだの、パラケルススだのという澁澤龍彦や種村季弘の本でよく目にした名前が出てきて、何だかとても懐かしい気持ちになった。磁力と重力を鍵語にして、素人にも分かる平明な科学史を書こうという著者の目論見は、第一巻を見る限り成功しているのではないか。三巻に及ぶ大部な著作になるはずだが、語り口のせいか、歴史物語の講話を受けているような、余裕に満ちた読書体験をさせてもらった。 第一巻は、古代から中世の時代を扱っている。洋の東西を問わず探し集めてきた文献を手がかりに、磁石あるいは磁力というものが、当時の人々にどのように受け止められてきたかを初学者にも分かるように丁寧に解説してくれている。当時の人々と言っても、その時代に磁石や磁力について何かを書き残しているというのは、一流の知識人に限られる。プラトン、アリストテレスは言うに及ばず、アルベルトゥス・マグヌス、トマス・アクィナスと綺羅星の如く並ぶ錚々たる顔ぶれに、何やらこちらまで偉くなったような錯覚に陥ってしまいそうだ。 科学史というと、何だか専門的で難しそうな気がするが、当時の人にとって磁力というものは、得体の知れない不思議な力であった。磁石が鉄を引きつけるという事実は多くの人の経験するところだが、そこにどんな力が働いているのかを理解するということになると、見えないだけに厄介なことになる。山羊の血やダイヤモンドを鉄と磁石の間に置くと、その力はなくなるなどという憶説が、何百年にも渉って当時の知的エリートたちに疑いもされずに語り継がれてきたなどと聞かされると、なあんだという気にさせられるが、話はそうは簡単ではない。 すでに理屈を知ってしまった後代の者から見れば、磁力をめぐる奇妙にさえ見える試行錯誤の繰り返しのなかに、著者は「知」というもののあり方を見る。引用された文章についての丁寧な解説から分かるのは、錯誤や混乱に満ちた文章の奥に広がる科学的な思考の、緩慢なそして時には飛躍的な、発展である。それは、時には現代の理論物理学の萌芽のようにも見えたりする。さすがに、そう言ってしまうことには躊躇いがあるのか、著者の語り口は冷静だが。 科学的な思考の発達とキリスト教神学の関係も、一概に敵対するものとは言えない。キリスト教はプラトンのイデア界を神の世界と重ねあわせることによって、勃興する科学と共存してきた。しかし、アリストテレスの場合はプラトンのようにはいかない。神学を否定することなく、いかにして科学的な思考を公にするかということに、科学者ばかりでなく、キリスト教の神学者の果たしてきた役割の大きさにあらためて気づかされた。この時代、科学と神学、或は魔法、魔術もそうだが、現代のように截然と分けるわけにはいかなかったのだ。 科学史というより、人間の知というものの発達史と言った方がより適切だろう。大学の大きな教室で講義を聴くのではなく、市井の賢人の隠遁所を訪ねて、部屋中にあふれた万巻の書に囲まれ、暖炉の火を前に、腰を落ち着けてじっくり話を傾聴する。そんな趣をもった良質の解説書である。二巻、三巻が楽しみだが、ルネッサンスまではいいとして、近代、現代に近づいてもこのように楽しく読めるかどうか、科学に疎い読者としては少しばかり心配でないこともない。
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