養老孟司の<逆さメガネ> の商品レビュー
またまた養老先生の本。いったい何冊書くんだろう。でも何冊読んでもおもしろい。「バカの壁」とは少し違うスタンスで書かれている。本書は教育について書いたものだとまえがきに書かれている。しかし直接学校教育について書かれているわけではない。そのまわりのところから責めているという感じ。特に...
またまた養老先生の本。いったい何冊書くんだろう。でも何冊読んでもおもしろい。「バカの壁」とは少し違うスタンスで書かれている。本書は教育について書いたものだとまえがきに書かれている。しかし直接学校教育について書かれているわけではない。そのまわりのところから責めているという感じ。特におもしろかったところを取り上げます。個性について。個性を伸ばす教育と言うけど、個性とはいったい何だろう。身体は一人ひとりすべて違います。親の身体の一部を移植してもうまくつかない。脳も身体の一部だから、人それぞれ違います。つまり、個性とは身体そのもののことです。しかし、普通、心に個性があると考えているでしょう。人それぞれの考え方があると。ところがです、人それぞれ勝手なことばで考えていたのでは話が通じません。話が通じるということは、共通なものをもっているということです。もし本当に心に個性があるとして、他人がまったく理解できないことを考え、他人とはまったく違う感じ方をしていたら、それは病気ということになってしまうのでしょう。だから、身体は個性だけど、心は共通なのです。心の個性を考えるのはムダなのです。養老先生の本が個性的で誰にも理解されないとしたら、こんなには売れないのです。もう一度言います。身体には個性があります。足が速い子もいれば、楽器を上手に奏でる子もいる、頭の良い子もいる。それを皆同じにしようというのが学校教育です。そこには無理がある。一方で個性尊重の教育という。矛盾している。もう一つ言っておきたいことがあります。「ああすれば、こうなる」原因と結果が一対一に対応する。そう考えている人が多い。どうすれば成績が上がるんでしょう。答が一つに決まっていれば皆の成績が上がるはず。そうすれば順位は上がらない。人が生きていく中ではいろんな原因がからみあって、いろんな結果が出てしまう。それこそカオスです。ほんの少しのずれが、大きな違いをもたらす。予測不可能なのです。養老先生の話を聞いた後にこう質問する人がいるそうです。「それでは、どうすればいいのでしょう。」だから、「ああすれば、こうなる」とはいかないんだ。自分でいろいろ考えろ!言いたいけど言えないことをよくもまあこれだけ堂々と書いてくれるなあ、という1冊でした。
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著者の教育論。 著者は、近代になって、意識にとって理解できるものだけが存在すると考える「脳化社会」への動きが加速化し、「自然」が見られなくなってしまったという観点に立っています。そこから、現代人が「自然」である子どもや身体をどのように扱えばよいのかわからなくなってしまっていると...
著者の教育論。 著者は、近代になって、意識にとって理解できるものだけが存在すると考える「脳化社会」への動きが加速化し、「自然」が見られなくなってしまったという観点に立っています。そこから、現代人が「自然」である子どもや身体をどのように扱えばよいのかわからなくなってしまっていると論じています。 意識は、自分というものは変わることなく、ずっと「同じ私」だと考えますが、教育は意識を変えることを意味しています。著者は、すべてを自分の意識で理解できるという考え方から、「生成する自分」という発想をとりもどすことが、迂遠に見えても現在の教育が抱える問題を根本的に解決する道だと考えています。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「常識は意識されずに変わります。だから老人は気がつかないで時代遅れになる。」 中年や老人にとって、激しく移り変わる常識について行くことは、とても難しい。でも、ついて行けないまでも「何となく知っている」というぐらいには、しておきたいものです。そして、そう簡単に移り変わらない哲学や思想、心理学などについては、若者たちよりも精通しておきたいものですね。 「知るということは、本質としての自分も変わるということです。学問をするということは、いわば目からウロコが落ちることです。つまり自分の見方が変わるわけです。人間が変わったら、前の自分は死んで、新しい自分が生まれているといってもいいのです。それを繰り返すのが学問です。」 勉強すると、見えなかったことが見えるようになる。アリのように地面の表面を歩いていたのに、いつのまにか鳥になって大空に舞い上がり高いところから見下ろしているような感覚。今まで部分を拡大して見ることしかできなかったのに、全体を見渡すことができるようになる。これは大きな自信に繋がり、今まで情報不足で判断できなかったようなことも簡単に決めることができるようになる。
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久しぶりの養老節。ぶしつけでストレートな書き方が好き。終始、「意識中心主義」への批判。 ◉行動に影響がなければ現実にはならない。 ◉知識が増えても行動に影響がなければ意味がない。
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毎週聴いてるラジオで流れてくる「進化する東京」というアナウンス。「都市化」で「快適」になったことは間違いないと思いますが、果たして我々は「都市化」で「幸福」になったのかと考えさせられる本です。
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今の社会では、自然そのものには『価値がない』のです。お金にならないかぎり価値がない。 そういう社会で、子どもにまともに価値がおかれるはずがない。さんざんお金をかけてもドラ息子になるかもしれない。 現代社会では、そういう先が読めないものには、利口な人は投資しないのです。だから子ども...
今の社会では、自然そのものには『価値がない』のです。お金にならないかぎり価値がない。 そういう社会で、子どもにまともに価値がおかれるはずがない。さんざんお金をかけてもドラ息子になるかもしれない。 現代社会では、そういう先が読めないものには、利口な人は投資しないのです。だから子どもがいなくなる。 今の子どもは早く大人になれと言われているようなもの。だから幼児期というものは『やむを得ないもの』必要悪になっている。 都市の中では『ああすれば、こうなる』という合理性が徹底的に要求される。子育てはそうはいかない。自然そのものであるから。 子育てはシミュレーションが効かない。コントロールできない。努力・辛抱・根性しかない。だけど都会の人はこの三つが大嫌い。楽したいと思う。 少子化=自然破壊/ボタンを押せば風呂がわく/空き地、雑草/ナイフ殺傷事件/大学に行った方が偉くなれる。/じゃあ、どうしたらいいんですか。 喧嘩両成敗 戦国時代を経て、江戸時代に始まった考え方。どっちが悪いという話ではない。相手が怒れば自分が怒る。自分が怒れば相手も怒る。暴力は循環する性質がある。 動物をまったく怖がらない人が、動物に襲われにくいのはそのため。動物を怖がると、相手を忌避するサインが出ている。多くの場合には、それは臭い。 人は動物と違って鼻が殆どきかないので、自分が原因であることに気づかない。 全ての動きは脳から出る。運動神経は筋肉ではなく脳に依存する。/教育:無理強いではなく、動機付け(親・教員のやる気) よいことは人に知られないようにやりなさい。=ボランティアの精神。/知ることは変わることであり、HDDの容量が増えることではない。 ホスピスで上手に死ねる人とは、そのときそのときを楽しんで、懸命に生きている人。今の自分こそ、間違いのない自分です。 国が自分になにをしてくれるかではない、自分が国に対してどう貢献できるかだ。ジョン・F・ケネディ 社会的コストを下げて、仕事の能率を上げるためにはお互いに信用するのが一番手っ取り早い。 共同体に取ってデキの悪い人間も大切。都会も田舎も必要。/共同体と機能体(体のバリアフリーと頭のバリア)
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逆さメガネはいつも意識しておかなければ、すぐに外されてしまうのだろう。自分自身の成長について、子供に対する教育について、自分を見直すよいきっかけになるのではないだろうか。 独特のものの見方と表現というか言い回しが苦手な人も多いかもしれないが、自分にとってはとても心地よい。まるで...
逆さメガネはいつも意識しておかなければ、すぐに外されてしまうのだろう。自分自身の成長について、子供に対する教育について、自分を見直すよいきっかけになるのではないだろうか。 独特のものの見方と表現というか言い回しが苦手な人も多いかもしれないが、自分にとってはとても心地よい。まるで会話しているかのように読書することができる。一人の作家さんを妄信する気は無いが、養老さんの考え方はとても腑に落ちる。
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逆さメガネについて知りたくて読書。 エピローグの男と女は平等か印象的。常識といわれるものを常に疑ってみること。情報は不変であるが、見る方の人間の脳は変化し続けることを忘れてはいけないと思う。 知行合一。江戸時代に日本で流行した陽明学の教えのひとつ。原理的主義的な朝鮮儒教、朱子...
逆さメガネについて知りたくて読書。 エピローグの男と女は平等か印象的。常識といわれるものを常に疑ってみること。情報は不変であるが、見る方の人間の脳は変化し続けることを忘れてはいけないと思う。 知行合一。江戸時代に日本で流行した陽明学の教えのひとつ。原理的主義的な朝鮮儒教、朱子学との違いが現在の日本と韓国、中国の違いへとつながっているように感じられて興味深い。 もっと現代人は体を使いインプットとアウトプットをしないといけないと思う。 合氣道の教えは非科学的なものが多い。しかし、本文で紹介されているオオムと違って神秘現象や超人的なものではない点が大きく違うと感じる。また武道を稽古したくなってきた。 読書時間:約45分
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自分には難解でいまひとつだった。 ・自分が正しいと思ってもそれ自体が曲がっている。 これに気付くこと。 ・歴史は起こったことを評価する。⇒歴史は、起こらなかったことの連続。
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現実は人それぞれ。 あなたの行動に影響するものが、あなたの現実だ。 個性とは実は身体そのもの(心ではなく)。 日常生活は何かが「起らないため」の努力で 埋められている(かつそれは評価されない)。 私の仕事「品質保証」もトラブルが起こらないように することがミッション。 できて当...
現実は人それぞれ。 あなたの行動に影響するものが、あなたの現実だ。 個性とは実は身体そのもの(心ではなく)。 日常生活は何かが「起らないため」の努力で 埋められている(かつそれは評価されない)。 私の仕事「品質保証」もトラブルが起こらないように することがミッション。 できて当たり前で評価小。地味。 問題が起こると大変。 けど、社会のために大事な仕事。
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