父と暮せば の商品レビュー
NHKテレビの人形劇「ひょっこりひょうたん島」で知られる井上ひさしの名作。広島の原爆の下、生き残ってしまった娘の所に、死んだ筈の父親が現れる。「幸せになってはいけないのだ」と思い定める娘に、父親は何を言いに来たのか?
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戯曲。文庫だとさらっと読める。広島方言で交わされる言葉に味がある。 死者の分まで生者が生きる。記憶や体験は伝えられていく。訴求力のある作品。 解説は長いだけあって、読めば作品への理解が深まる内容。 MVP:なし
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戯曲。原爆被害者の娘さんの葛藤。原爆被害の話は苦手なものが多いがこれはシンプルで良い。広島弁がいい味。
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原爆で亡くなってしまった父。被爆して心にまで傷を負った娘。引き裂かれた心。本当に娘は再生できるのか。腕の痛み、好きになった人の実家への訪問の結果は。戯曲が終わっても、残されている不安感に、心を締め付けられる思いがします。
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一瞬にして焼き尽くされた暮らし。残された者のつらさ。広島弁がやさしく、せつない。一年に一度、読み返す本。
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8月15日は、66回目の敗戦記念日でした。お盆ということもあって、毎年実家のある和歌山で過ごしています。特別な日ですので、何か映画を観たり、本を読んだりして過ごします。今回は前から気になっていた「父と暮らせば」を読みました。戯曲として書かれたこの作品は、色々な言語に翻訳され、各国で上演され好評を博しました。また映画化もされ、宮沢りえさんと最近亡くなった原田芳雄さんが出演されていました。 作者井上ひさしさんは「あの二個の原子爆弾は、日本人の上に落とされたばかりではなく、人間の存在全体に落とされたものだと考えるからである。あのときの被爆者たちは、核の存在から逃れることのできない二十世紀後半の世界中の人間を代表して、地獄の日で焼かれたのだ。だから被害者意識からではなく、世界五十四億の人間の一人として、あの地獄を知っていながら、「知らないふり」することは、何にもまして罪深いことだと考えるから書くのである。」と述べています。今回は3.11以降の放射能のこともあり、この言葉が胸に沁みました。 「ほいじゃが。あよなむごい別れがまこと何万もあったちゅうことを覚えてもろうために生かされとるんじゃ。おまいの勤めとる図書館もそよなことを伝えるところじゃないんか。」と父竹造は娘に語ります。「死者が生者に語る」、一見荒唐無稽な設定に思えますが、私達人間はつい最近までそんな世界に住んでいました。日本におけるお盆とはまさにそんな世界の名残です。作者井上ひさしはクリスチャン。キリスト教徒とは、2000年前に亡くなったあのイエスを今も生きて働いていると信じ、会話をし続ける人々です。いつの頃からか私達はその豊かさを忘れてしまったのだと思います。 今回の災害で、残念ながら命を失わざるを得なかった多くの方々の魂の声を聞きながら、これからどんな社会を創造していくのか?そう問われているような気がしてなりませんでした。
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井上ひさしの戯曲。 広島に落ちた原爆で、家族や友人など多くの人を失った図書館員の女性を主人公に、戦後ヒロシマで行きぬいた人たちの葛藤が描かれている。 作者自身は、仙台(だったような)の出身なのに、広島の地名や方言等、詳細に調べて作り上げている作品だ。 そんなに長い話では...
井上ひさしの戯曲。 広島に落ちた原爆で、家族や友人など多くの人を失った図書館員の女性を主人公に、戦後ヒロシマで行きぬいた人たちの葛藤が描かれている。 作者自身は、仙台(だったような)の出身なのに、広島の地名や方言等、詳細に調べて作り上げている作品だ。 そんなに長い話ではなく、戯曲であるがゆえ、ほとんどが台詞で読みやすい。また、井上ひさしならではのユーモアであふれており、安心して読むことができる。 ただし、原爆というテーマを扱うだけあって、ユーモアだけでは物語は終了しない。 最終幕の父の娘に伝えることばは、本当に真剣で熱い思いが詰まっている。娘を愛するがゆえに伝えることば、それから娘が生きているからこそ伝えることば、このシーンがあってこそヒロシマの持つ意味が問われる。 その意味は、核兵器だけでなく、戦争や紛争、人災、あるいは自然災害についても共通のものが見出せるのではなかろうか。 たった370円なのに、2000円もするハードカバーの分厚い本よりも価値のあるものではないかと感じさせられる作品だった。
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私の中では文句なく、傑作です。 わずか120ページのなかで、 戦闘シーンを一切描かずに、戦争の非人間性を、戦争に翻弄される市民の悲しみを、静かに強く語りかけてくれます。 親族が、被爆者なだけに・・・・。
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泣いてしまった。今だから、なおさらなのかもしれない。 忘れてはいけないことがある。あの日のヒロシマのことを、その後、生きた人の苦しみを。ともすれば、人はつらいことや悲しいことを忘れたいと願うけれど、「ちゃんと記憶し伝える」べきことだってあるのだ、、、たとえそれがとても苦しいことで...
泣いてしまった。今だから、なおさらなのかもしれない。 忘れてはいけないことがある。あの日のヒロシマのことを、その後、生きた人の苦しみを。ともすれば、人はつらいことや悲しいことを忘れたいと願うけれど、「ちゃんと記憶し伝える」べきことだってあるのだ、、、たとえそれがとても苦しいことであったとしても。 「知らないふり」をしてはいけない、というメッセージが込められた物語。 劇作家としての作者の技量がひしひしと伝わってくる、台本の様式の一冊。
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劇団の次回公演の候補台本として劇団員が出してきたのがこの『父と暮らせば』である。 昭和23年の広島が舞台。 登場人物は娘と父親の二人。 何気ない日常のあり様を描いた作品と思いつつ読み進めると、大きなどんでん返しがあり、ラストは衝撃的な感じでした。 次回公演の上演台本に取り上げるか...
劇団の次回公演の候補台本として劇団員が出してきたのがこの『父と暮らせば』である。 昭和23年の広島が舞台。 登場人物は娘と父親の二人。 何気ない日常のあり様を描いた作品と思いつつ読み進めると、大きなどんでん返しがあり、ラストは衝撃的な感じでした。 次回公演の上演台本に取り上げるかどうかはまだ分からないけど、将来的には上演台本として取り上げたい作品です。
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