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ふたりの証拠 の商品レビュー

4.1

171件のお客様レビュー

  1. 5つ

    52

  2. 4つ

    70

  3. 3つ

    32

  4. 2つ

    3

  5. 1つ

    1

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2021/01/31

前作の「え?」と言う衝撃的な終わりの続き。 初めて双子の名前が明かされ、今作はおばあちゃんの家に戻ったリュカの話。 相変わらず陰鬱な雰囲気漂う町と、訳あり過ぎるほどの訳ありな人たち。 前回みたいに、露骨に殺したりとかそういうのはないけれど、ちょこちょこと見え隠れする。 出てくる...

前作の「え?」と言う衝撃的な終わりの続き。 初めて双子の名前が明かされ、今作はおばあちゃんの家に戻ったリュカの話。 相変わらず陰鬱な雰囲気漂う町と、訳あり過ぎるほどの訳ありな人たち。 前回みたいに、露骨に殺したりとかそういうのはないけれど、ちょこちょこと見え隠れする。 出てくる人物たちは、きっと何かのメタファーなのだろう。 モデルとなった地域や当時の世界情勢にもっと明るければ、もっともっとわかるし楽しめるんだろう。 そう思いながら読んでいく。 そして、次々にページを捲り、物語に没頭していた私だが、最後に「え?」となった。前作とは違う意味で。 ふたりの証拠って、こういうことなの!?え!? やだやだ、続きが気になる…

Posted byブクログ

2021/01/16
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

『悪童日記』三部作の二作目。 『悪童日記』の壮絶なラストシーンにおいて別離した双子の二人の運命のその後が描かれる。 本作では、ハンガリー側(と思われるが固有名詞は出てこない)に残ったリュカのその後が詳細に記述される。 前作ではあえて固有名詞を全く出していなかったが、本作で初めて双子の名前が「リュカ」と「クラウス」であることが明かされる。 15歳になったリュカは、一人で淡々と日々を過ごす。彼が街に住むいろいろな人々と交流していく姿が描かれていく。 実の父親との子供を産み、町から追放された18歳の少女とその生まれつき障害を持った子供との交流や、夫を反体制派だと決めつけられ処刑された女性とのふれあいを通してリュカは成長していく。しかし、リュカは本当の「愛」とは何か分からず、日々思い悩む。 前作とは違って、「殺し殺される」という日常は無くなるも、町全体が全体主義の暗い雰囲気の中で、誰もがひっそりと生きていかなければならないという非常に辛い息苦しい生活を強いられている。 本3部作は著者の子供時代からの体験に色濃く影響を受けているのだが、この本を読むと第二次世界大戦終了後から、ハンガリーをはじめとした各東側諸国の生活がどのようなものだったのか何となくイメージできる。 我々には非常にイメージしがたいその生活ぶり。こういった本を読むことでしか本当のところは分からないのだろう。 本作のラストではまたショッキングな別れが描かれるが、そもそも、この双子自体が存在していたのかという疑問が残る。これはこの「ふたりの証拠」という題名にも表れているのだろう。 次作の『第三の嘘』ですべての謎が解き明かされるのだろうか?

Posted byブクログ

2020/09/08

第二次世界大戦前後のハンガリーが舞台 「われわれは皆、それぞれの人生のなかでひとつよ致命的な誤りを犯すのさ。そして、そのことに気づくのは、取り返しのつかないことがすでに起こってしまってからなんだ」

Posted byブクログ

2020/07/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

3部作の2部。戦後の抑圧し統制された、死がありふれた世界で、主人公リュカは双子の片割れクラウスと別離した後も生活の記録を綴る。1作目の『悪童日記』では子供だった主人公は、本作では青年期を迎えている。『悪童日記』は随所パンチが効いていて終始驚きっぱなしだったが、本作もラストに期待していた展開がやってきた。 主人公の強さの源は、超えてはならない一線を軽く越えてしまうところにある。それはアイデンティティの欠如からくるものなのかもしれない。母へのこじらせた愛や父性の獲得など彼なりの苦悩も本作では見受けられる。1作目を読んでいるからこそ、近隣住民との交流や、情婦や子供との何気ない日常の描写のなかでも、彼が何かとんでもないことをしでかすのではないかという不安がつきまとう。そしてやはり本作でも彼はやらかしてしまう。 『2人の証拠』という表題にもあるが、本当に双子は存在したのかに関して様々な謎が残る。双子の存在はリュカあるいはクラウスの創作物を唯一の典拠としているため、3部目で明らかになるのかもしれないが、実はリュカ=クラウスで「2人の証拠」が彼の罪逃れのための創作物である可能性もある。 なんにせよ最後の調書は謎だらけだ。(同一人物なのか?あるいは、でなければどちらが日記を書いたのか?ペテールも存在しないのか?)はやく次作が読みたい。

Posted byブクログ

2020/02/22

なまえがついて、話に出てくる人がはっきりしてきて、 それによって街の景色もはっきりしてきたのに、 だからこそ最後の流れがこわい。 もやもや疑問は残るけど、考えてみても到底及ばず。 やっぱりこわい。

Posted byブクログ

2020/02/16

悪童日記のサイコパスな双子が大好きでした。 こちらの続編は、少し人間味を帯びて弱くなってしまった双子の片割れの話です。

Posted byブクログ

2020/01/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

双子だと思っていたクラウスとリュカが、最後のクラウスの語りで実は自身が作り上げていた創作の人物だったかもしれないこと。 ではあの悲しい母親と息子の物語は創作だったのか?

Posted byブクログ

2019/12/28

文体は悪童日記と同様に簡潔で直接的な表現が多く、読みやすい。前作では悲劇は主人公の外側であり、主人公は何が起こっても巧みに対処していた。それに対して本作では、悲劇が主人公の内部に侵食してきて、主人公は絶えず苦悩している。 前作の主人公は”ぼくら”であり、2人で1つの人格を形成し...

文体は悪童日記と同様に簡潔で直接的な表現が多く、読みやすい。前作では悲劇は主人公の外側であり、主人公は何が起こっても巧みに対処していた。それに対して本作では、悲劇が主人公の内部に侵食してきて、主人公は絶えず苦悩している。 前作の主人公は”ぼくら”であり、2人で1つの人格を形成している一心同体の存在だった。本作では、ぼくらのうち、おばあちゃんの家に残ったリュカの物語を主としている。しかし、最終章で、国境を越えていったクラウスが姿を現す。ここで、2人は存在していたと証明されたように感じる。しかしラストシーンで、本当に2人存在していたのか、実は同一人物なのか、日記は本当に日記という形で存在していたのかという疑念が生まれる。街の人が、双子の片割れについて全く触れない理由、ペテールが悪童日記を読んでもなおクラウスの存在を信じない理由。今までの自分の全ての解釈を疑い始める。悪童日記の時と同様、ラストシーンで読者に与える衝撃が大きい。 タイトルは多様に解釈できると感じる。まず、2人が存在していた証拠はあるのか、存在の証明とは何か?という意味。公的なもの、書物、肉体、精神。彼らはいずれの形で確かな存在となろうとしているのか。または、彼らは2人でなければならない証拠という意味。ラストシーンを読む前まではこの意味だと思っていた。2人でいた時はどんな苦悩にも侵食されることなく達観していた彼らが、バラバラになって、1人でも失ってしまったピースを埋めようとするが、埋まらない。だとすれば、なぜ彼らはバラバラにならなければならなかったのか、その試練を自ら課すことは本当に必要だったのかという疑問がある。 次巻は第三の嘘というタイトルであるが、何が嘘なのか確信が持てないため、三つ目の嘘に拘る理由が気になる… 主人公が好きすぎて、あの種の苦悩に共感できるだけに、読んでいて本当に辛かった。半分くらいは泣きながら読んでた。

Posted byブクログ

2019/07/15

一作目よりも難しいテーマだった。前作同様、主観を剥ぎ落としたような文体で主人公リュカの生活が描かれる。戦争の傷跡と戦後のの体制による抑圧により物語全体として押し殺されたもの悲しい雰囲気に包まれていた。本作品に出て来る人々は何かしら不幸と孤独を抱えており、これがまさに旧ソビエトの属...

一作目よりも難しいテーマだった。前作同様、主観を剥ぎ落としたような文体で主人公リュカの生活が描かれる。戦争の傷跡と戦後のの体制による抑圧により物語全体として押し殺されたもの悲しい雰囲気に包まれていた。本作品に出て来る人々は何かしら不幸と孤独を抱えており、これがまさに旧ソビエトの属国に住んでいた人々の、当日の情況だったのだろう。

Posted byブクログ

2019/06/25

今回の準主役は近親相姦の娘から生まれた不具の子マティアスだ。驚くほど精神が強く、理想が高く、賢い。反面、寂しがりやでリュカが他の子とその母に心を寄せるのに嫉妬して自殺してしまう。リュカに親の心を育て、引越しや読書室のオープンまでさせたマティアス。そして強かったリュカの子供時代を次...

今回の準主役は近親相姦の娘から生まれた不具の子マティアスだ。驚くほど精神が強く、理想が高く、賢い。反面、寂しがりやでリュカが他の子とその母に心を寄せるのに嫉妬して自殺してしまう。リュカに親の心を育て、引越しや読書室のオープンまでさせたマティアス。そして強かったリュカの子供時代を次元の違う強さと優しさで乗り越えようとするマティアス。

Posted byブクログ