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嗤う伊右衛門 の商品レビュー

4.3

196件のお客様レビュー

  1. 5つ

    82

  2. 4つ

    72

  3. 3つ

    29

  4. 2つ

    3

  5. 1つ

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2009/10/04

美しいものはどこか哀しく怖ろしい。すれ違うようでいて本当は確かに結びついていた心と心。切ない余韻がいつまでも残る。……映画に連動したカヴァの刷新、こいつはいただけない。あの紙張り子の美しいカヴァに戻して欲しいものだ。今回は、あえてジャンルを「ロマンス」にしてみたり。

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2009/10/04

初めて手にした京極作品です。最初、慣れない文体と漢字の読みに手惑いましたが、慣れるほどに引き込まれてしまい、いろんな意味でおもしろい作品でした。伊右衛門とお岩の実は思い合いながらも、現実にはすれ違うばかりの愛が痛かった。登場人物もそれぞれに魅力的で絡みがおもしろく、もとある「四谷...

初めて手にした京極作品です。最初、慣れない文体と漢字の読みに手惑いましたが、慣れるほどに引き込まれてしまい、いろんな意味でおもしろい作品でした。伊右衛門とお岩の実は思い合いながらも、現実にはすれ違うばかりの愛が痛かった。登場人物もそれぞれに魅力的で絡みがおもしろく、もとある「四谷怪談」を知ってる人も知らない人も楽しめる、深い一作です。

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2009/10/04

酷く哀しい話だった。 私は「東海道四谷怪談」というものを名前ぐらいは聞いたことはあるものの全くと言って良いほど知らなかった。「お岩さん」もお化け屋敷に出てくる左眼が潰れた女性の事か、というぐらいでむしろあのお化け、お岩さんって言うんだ、ぐらいだった。 そんな私にとってこの小説は斬...

酷く哀しい話だった。 私は「東海道四谷怪談」というものを名前ぐらいは聞いたことはあるものの全くと言って良いほど知らなかった。「お岩さん」もお化け屋敷に出てくる左眼が潰れた女性の事か、というぐらいでむしろあのお化け、お岩さんって言うんだ、ぐらいだった。 そんな私にとってこの小説は斬新かつ強烈だった。もしかしたら四谷怪談を知らなかったからこそ深く感動したのかもしれない。 疱瘡を患い醜女となっても強く生きる、岩といつも冷静で少しも笑わない伊右衛門が夫婦となったとき愛情と憎悪が数々の人物を渦巻いて陰惨な事件へと展開していく。 初めカバーの粗筋に「傑作怪談」と記されていたので、怪談なのに愛憎物語?と全く内容を予測出来なかった。しかし読み進めるうちに見事に京極夏彦の、いや岩と伊右衛門の世界へと引きずり込まれていった。 まずキャラクターが良い。どの人物も人間味があって面白い。登場する自分物皆が事件の一端を担っていて彼らはちゃんと物語の中で生きているのだという実感がもてるし感情移入ができる。悪徳非道の伊東喜兵衛にすらその生き方に考えさせられてしまう。 私の好きな人物は伊右衛門と又市である。特に又市は京極さんの他の作品にも登場する重要なキャラクターで興味深い。伊右衛門は生真面目で世の中が分からないでもないくせに頑として笑わない優しい不器用さに惹かれた。不器用故に上手く伝えられない愛情を命をかけて貫き通す静かな激情がこの作品から確かに伝わってくる。 ラストのシーンでは伊右衛門の岩への想いが強烈に描かれていて私は凄く哀しかった。これは読む価値あり。傑作。 粗筋と解説は本筋から逸れているようで少し遺憾だ。なぜ岩と伊右衛門の事を書かない!?そんなに直助とお袖が好きか? 2004/11/05 (Fri)

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2009/10/04

すれ違い続ける二人が、とてもじれったい。読んでいる最中、岩が常に僕を苛々させていました。岩は、「ああ、駄目だ。それをしちゃいけないよ」とこちらが思っていることを見事にやってのけてくれます。人間の汚さと綺麗さがやけに目に付くお話。

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2009/10/04

東海道四谷怪談の焼き直しです。歌舞伎で有名なお岩さんですな。うわーもんのすごくツボでした。お江戸言葉が(そこかよ 町人と武家の言葉が綺麗に書き分けてあって、かつ台詞まわしは美しく、描写も流麗。 物語は訥々と進み、ぞくりと背筋を震わせる結末。 小説を楽しむにはストーリーが面白いのは...

東海道四谷怪談の焼き直しです。歌舞伎で有名なお岩さんですな。うわーもんのすごくツボでした。お江戸言葉が(そこかよ 町人と武家の言葉が綺麗に書き分けてあって、かつ台詞まわしは美しく、描写も流麗。 物語は訥々と進み、ぞくりと背筋を震わせる結末。 小説を楽しむにはストーリーが面白いのは勿論ですが、その背景の「空気」が感じ取れる描写、文章が大事と考えます。特に現代モノではない、時代小説や非現実世界を扱うファンタジーやSFについては。 現代日本ではないお江戸という街の空気が深々と伝わってくる感じ。行灯も灯さない(貧乏だから)長屋の、暗い闇に沈む部屋。 舗装道路なんか勿論ない砂利の路や草の生い茂る川端、ココではない違う世界に、あたりまえに生きるキャラクター達の世界を、自然に書ききる描写力が素晴らしいです。 お江戸文化フェチの久弥にはたまらなくツボでした。うっとり。 京極夏彦を誤解してたかも。「姑獲鳥の夏」が駄目だったのでこの作家は駄目かな・・・と思ってましたんでした。失敗〜。

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2010/04/19

民谷岩はいきなり父・又左衛門より執拗に婿を取れと勧められ腹を立てていた。民谷の名が無くなろうが、跡目が無かろうが、父が怪我をして役を解かれようが不都合な事は一つも無い。そう思っていた。ましてや、疱瘡の病で、自分の顔が醜く崩れていることのどこに不都合があるのかとさえ思っていた。が、...

民谷岩はいきなり父・又左衛門より執拗に婿を取れと勧められ腹を立てていた。民谷の名が無くなろうが、跡目が無かろうが、父が怪我をして役を解かれようが不都合な事は一つも無い。そう思っていた。ましてや、疱瘡の病で、自分の顔が醜く崩れていることのどこに不都合があるのかとさえ思っていた。が、間に立った小股潜りの又市はその気があるのなら婿を探し、厭なら断れという。やがて、民谷家に1人の浪人・伊右衛門が婿として迎い入れられることとなる。 京極版四谷怪談ですね。別に怖かぁ無いです(笑) 四谷怪談というのは、色々な人が色々な解釈で書いていますが、私の知ってる四谷怪談は、岩が夫に裏切られて化けて出る。というヤツです。従って、私のイメージでは、伊右衛門は悪なんですね。反対に岩が可哀相で仕方ない。そんな感じを持ってました。 が、これはちょっと違う。岩も夫に従順な感じでは無く、凛としてて強い。強すぎるぐらい。伊右衛門は伊右衛門で、めちゃめちゃ愛情深い。で、潔い。 ただ、二人の絡みが少なすぎるのでお互いがお互いに対する思い(愛情)はガツンとは届かないですけれど。 章毎に、主軸視点が変わるし、二人の心理描写が少ないのでちょっと物足りない感じはしますね。だから二人の気持ちが読み手に届かないというか感情移入しにくい。 表面をさらっと流してる感じですから。 些細な一つの邪な思いが、徐々に周りを取り込み膨らみ、そして全てを飲み込んで後には何も残らない。無にしてしまうという感じかな。 それぞれがそれぞれの思惑で行動をするんだけれど、膨らみすぎたモノからどう足掻いても抜け出れなかったという。このモノを何かに例えるなら何だろう。エゴかな。 ラストの描写を頭で想像して絵として思い描くと、かなり気持ち悪いのだが、美しい光景だと感じましたね。愛ですね。愛。 でもまぁ、タイトル通りに締めくくってるからから綺麗に感じるのかも(笑) 何にしても悲哀。

Posted byブクログ