日の名残り の商品レビュー
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古き良き時代の英国、名家に仕えた執事スティーブンス。 今は名家の主人も亡くなり新しいアメリカの主人に仕えている。 その主人から薦められて英国内を車で旅することになる。 美しい景色を楽しみながら、その景色に反映されるように 昔の華やかなりし頃を思い出し郷愁にふける。 この旅のもう一つの目的は人手不足のお屋敷にかつて一緒に働いた 女中頭のミスケントンに再びお屋敷で働く意思がないか会って確認すること。 昔の回想の中では、執事として感情を押し殺して職務を全うしている スティーブンスに対し感情的な女中頭のミスケントンが対照的に描かれている。 自分の感情は二の次にして職務を冷静に全うする事こそ 執事として最も大切な事。しかしそちらを優先するあまり、 1人の人間として人を愛し、家族を作るということをしてこなかった。 対してミスケントンは仕事を捨て、家族を持ち、 今では孫の誕生を心待ちにしている。 どちらが良い人生か、それはその本人が決めること。 スティーブンスはこの旅で自分自身を振り返り、 そして自分自身を受け入れたように思える。 英国の情景、名家の執事としての誇り高い仕事、ミスケントン とのからみあいそうであわない感情のやり取りなど 色々な面から楽しむ事の出来る本。 ジョークを必死に練習しなくては、と思う主人公に 真面目な話なのに「ふっ」っと笑ってしまった。
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2011.06.09 授業で原作の方を使ったのだけど、英語だけじゃ理解できない部分も多かったので補助に買いました。 まず、先生も言っていたのだけど、訳が素晴らしい。 すごく雰囲気が出てるし、例えば"godfather"の話の所も、日本には馴染みがない習慣だから...
2011.06.09 授業で原作の方を使ったのだけど、英語だけじゃ理解できない部分も多かったので補助に買いました。 まず、先生も言っていたのだけど、訳が素晴らしい。 すごく雰囲気が出てるし、例えば"godfather"の話の所も、日本には馴染みがない習慣だから、さりげなく補足が加えられてる。 留学時代にショートストーリーの"Family Supper"を読んだけど、カズオ・イシグロのお話の雰囲気は好きだなー。これって盛り上がるメイン・イベントは無いんだけど、静かで、でも響く物があると言うか。
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より良い世界の創造に微力を尽くすため、この文明を担っている偉大な紳士に仕える職業人=執事という間接的ではあるけど、世界の中心、大事な局面を紳士と迎えたことが仕事のやりがい。執事という仕事そのものをこの先我々が選択することがないであろう職業なのに、とても鮮やかにイメージできます。日...
より良い世界の創造に微力を尽くすため、この文明を担っている偉大な紳士に仕える職業人=執事という間接的ではあるけど、世界の中心、大事な局面を紳士と迎えたことが仕事のやりがい。執事という仕事そのものをこの先我々が選択することがないであろう職業なのに、とても鮮やかにイメージできます。日々の間接的な行為そのものが味わいどころです。
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カズオ・イシグロは、僕は、『わたしを離さないで』から入った。一人称で淡々と語られる施設での出来事や、臓器提供システムのことは、淡々な語り口あるがゆえに、切実で切なかった。この作品だけで、これはすごい作家だ、と思える。 日の名残りは、かつて栄華を誇った時代のイギリスにおける、紳士に仕えた執事の追想。 印象に残るのは、「品格」に関する記述。 「品格の有無を決定するものは、みずからの職業的あり方を貫き、それに堪える能力といえるのではありますまいか」と語るスティーブンスは、作中でずーっと品格のことを考えている。 執事という職業の性質上、主人たる紳士がいる。 スティーブンスが仕えた主人は、反ユダヤに傾いて、結果的にナチス・ドイツを支持する形に向かってしまった。世間は主人のことを罵り、うち枯れた屋敷を忘れていく。ユダヤ人という理由だけで、二人の女中を解雇したこともある。スティーブンスはこの主人の決断に心を痛めていたのだけど、それをおくびにも出さない。後に、主人が間違いを認めた段階で、ようやく女中頭に明かすほどだ。 情がないとか、冷血だとか、そーゆうことじゃない。 敬愛する父の臨終にも、スティーブンスは立ち会えなかった。会議があったからだ。主人にとっても、或いは世界にとっても、重要な国際会議が。彼は役割を全うし、会議を成功させた。この情報だけ聞くと、出世欲のようにも見えるかもしれない。でも違うのだ。スティーブンスは「品格」を守ったのだ。 科学が進歩して、執事ロボットが出来上がる日が来るとしても、そこには品格はきっと伴わない。英国の凋落とともに、スティーブンスのような執事もまた、必要とされなくなっていく。それでも、きっと残るものはある。夕方は、一日で一番美しい時間かもしれない。人生には色々な選択があって、あの時ああしていれば、って後悔することもたくさんあるけれど、それを夕方に嘆いても詮無いことだ。スティーブンスは真に価値のあるモノに微力でも尽くしたいと願い、それを完遂した。 そんな彼が見る夕方は、すげー綺麗なのだろう。
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映画『私を離さないで』の影響で、原作者カズオ・イシグロ氏の別の作品も読んでみることにした。 主人公の執事スティーブンスがドライブの旅に出る。その道すがら彼は自分の執事としての人生を振り返る、という物語。 それが本当に淡々と、静かに、でも深い深い味わいで。 スティーブンスが「執事...
映画『私を離さないで』の影響で、原作者カズオ・イシグロ氏の別の作品も読んでみることにした。 主人公の執事スティーブンスがドライブの旅に出る。その道すがら彼は自分の執事としての人生を振り返る、という物語。 それが本当に淡々と、静かに、でも深い深い味わいで。 スティーブンスが「執事の品格」なんていうことを言い訳にするから、女中頭との恋愛は全く進展せず、あげく別の男と結婚されてしまうところとか、彼の不器用さというか、もどかしさにイライラしつつも、彼の人生にはまり込んでいった感じ。 最後、夕日を眺めながら泣く風景はとても美しい。
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素晴らしい文章力。時制の違うエピソードがまったく違和感なく流れるように展開されていく。しかも無駄がない。本当に感心します。ちょっと突出した文章力だと思う。 執事のスティーブンスの語り口調がエレガントで楽しくて好き。実直で堅苦しいからこそ起こるユーモラスな会話や出来事が、彼を愛す...
素晴らしい文章力。時制の違うエピソードがまったく違和感なく流れるように展開されていく。しかも無駄がない。本当に感心します。ちょっと突出した文章力だと思う。 執事のスティーブンスの語り口調がエレガントで楽しくて好き。実直で堅苦しいからこそ起こるユーモラスな会話や出来事が、彼を愛すべきキャラクターにしている。 執事としては最高の仕事人なわけだけれど、執事以外のことはもうぜんぜんなのね。お屋敷ではあれだけ気が利くのに、仕事以外のことにはまあ鈍感というか、鈍感通り越して無神経と言っても過言ではないような(笑)。でも最近はなんとなくそのことに気付いたり、自分の老いにも気付き始めてたり、まさに今、彼の人生はありし日の名残。最後に夕日を眺める場面はちょっと物悲しいけれど、でもその夕日を見ながら新しいご主人様のためにジョークをもっと練習しなければと決意するスティーブンスに明るさと強さを感じました。がんばれスティーブンス。 悪い人がひとりも出てこない小説は大好きです。
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なんというか郷愁と優しさに満ちた、「美しい」と表現したくなる作品だった。 これまでの歳月を振り返りながら旅する執事。 執事ならではの静かで上品な語り口。 どこかユーモラスで、ジョークの返し方がわからなくて困惑する様や、旅の目的を何度も職業上の理由とするあたりなど、思わずクスリ。...
なんというか郷愁と優しさに満ちた、「美しい」と表現したくなる作品だった。 これまでの歳月を振り返りながら旅する執事。 執事ならではの静かで上品な語り口。 どこかユーモラスで、ジョークの返し方がわからなくて困惑する様や、旅の目的を何度も職業上の理由とするあたりなど、思わずクスリ。 最後は胸がキュンと切ない思いに。 全体的にさりげなくて、押し付けがましいところがないのもいい。 再読。だけどまた読むんじゃないかな。
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ページが進むにつれ、執事という職務に誇りを持っていた主人公の回想に、徐々に「実直さ、鈍感さ」がにじみ出始める。あたかも次第に暮れ行く夕刻の空を思わせる、物語の流れが絶妙だ。
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名家の執事であったことに誇りを持っている主人公。 彼の回想を中心に展開される物語は、丁寧な語り口と上質なユーモアがなんとも心地良いです。 読み終えた後は、暖かな余韻が残ります。
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古風な執事のお話。自分の理想とする執事の美学に邁進し、全てを犠牲にする。武士道のようでもあり、滅私奉公する昔のサラリーマンのようでもある。その頑なで硬直した生き方に付き合わされ、イライラしながら読んだ。著者は何が言いたいの?と。そしたらラスト数ページで彼が自分の生き方に疑問を感じ...
古風な執事のお話。自分の理想とする執事の美学に邁進し、全てを犠牲にする。武士道のようでもあり、滅私奉公する昔のサラリーマンのようでもある。その頑なで硬直した生き方に付き合わされ、イライラしながら読んだ。著者は何が言いたいの?と。そしたらラスト数ページで彼が自分の生き方に疑問を感じ涙を流すという何とも切ないラストであった。執事とは特殊職業だが、仕事にかまけ過ぎの全ての人がいつかは身につまされる話だと思う。自分の人生の優先順位を、主人公のように田舎を巡りながら見直してみたい。
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