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悪童日記 の商品レビュー

4.4

448件のお客様レビュー

  1. 5つ

    217

  2. 4つ

    136

  3. 3つ

    47

  4. 2つ

    7

  5. 1つ

    1

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2023/12/18

双子の不条理な現実の受け止め方が興味深かった。一つ一つ徹底的に練習して自分のものにしていく彼らには悲壮感がない。過酷な生活に押し潰されることなく、冷静に、時に冷酷に生きていく。 双子の『紙と鉛筆とノートを買う』の交渉、『恐喝』のゆすりは秀逸だった。 最後は、え?という驚愕とそ...

双子の不条理な現実の受け止め方が興味深かった。一つ一つ徹底的に練習して自分のものにしていく彼らには悲壮感がない。過酷な生活に押し潰されることなく、冷静に、時に冷酷に生きていく。 双子の『紙と鉛筆とノートを買う』の交渉、『恐喝』のゆすりは秀逸だった。 最後は、え?という驚愕とその余韻の中で、続きの2作もぜひ読みたいと思った。

Posted byブクログ

2023/12/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

⚫︎受け取ったメッセージ  狂気。毒。 過酷な戦中、終戦時 早熟で双子が感情抜きで 事実のみを語る形をとった サバイバル日記 ⚫︎あらすじ(本概要より転載) ハンガリー生まれのアゴタ・クリストフは幼少期を第二次大戦の戦禍の中で過ごし、1956年には社会主義国家となった母国を捨てて西側に亡命している。生い立ちがヨーロッパ現代史そのものを体現している女性である。彼女の処女小説である本作品も、ひとまずは東欧の現代史に照らして読めるが、全体のテイストは歴史小説というよりはむしろエンターテインメント性の強い「寓話」に近い。 そもそもこの小説には人名や地名はおろか、固有名詞はいっさい登場しない。語り手は双子の兄弟「ぼくら」である。戦禍を逃れ、祖母に預けられた「ぼくら」は、孤立無援の状況の中で、生き抜くための術を一から習得し、独学で教育を身につけ、そして目に映った事実のみを「日記」に記していく。彼等の壮絶なサバイバル日記がこの小説なのである。肉親の死に直面しても動じることなく、時には殺人をも犯すこの兄弟はまさに怪物であるが、少年から「少年らしさ」の一切を削ぎ落とすことで、作者は極めて純度の高い人間性のエッセンスを抽出することに成功している。彼らの目を通して、余計な情報を極力排し、朴訥(ぼくとつ)な言葉で書かれた描写は、戦争のもたらす狂気の本質を強く露呈する。 凝りに凝ったスタイル、それでいて読みやすく、先の見えない展開、さらに奥底にはヨーロッパの歴史の重みをうかがわせる、と実に多彩な悦びを与えてくれる作品である。続編の『証拠』『第三の嘘』も本作に劣らない傑作である。(三木秀則) ⚫︎感想 非人道的な戦争、常に冷徹な双子の行動、主観を排除し、事実をあるがまま書くという体裁で書かれた二人の9歳から15歳までの間の日記。二人の完全なサイコパスぶりと、気持ちの揺れは全くかかれないせいで、感情のない人間二人が浮き彫りになり、余計に気味が悪い。 日記小説はたくさん書かれてきたであろうが、「悪童日記」は黒い光を放つ、唯一無二の小説であると思う。 最初に衝撃を受けるのは、母方の祖母の横暴、不潔、奸悪。だが、それを淡々と受け流し、必要なことを考え、間違いなく遂行する9歳の双子も怖い。そして、出てくる大人の性的搾取と簡潔な描写。圧倒される。 母と義妹の死を目前にしても淡々とし、父に至っては彼の命と引き換えに双子の片方は父を踏みつけた上、越境する。 読後、毒を喰らって心臓を掴まれた気持ちになるが、真唯一無二の存在感と小説内で語られる「主観抜きで書く日記」の設定の見事さに★5

Posted byブクログ

2023/11/26

貧しい中でたくましく暮らす双子。東ヨーロッパ特有?の殺伐とした雰囲気。 最後がまたすごいエピソード。あの後どうなったんだろう?

Posted byブクログ

2023/11/05

翻訳なので、難しいと思っていたが、 章が細かく分かれており、非常に読みやすい。 ぼくらが感情なく淡々と物事を進めていく。 ハンガリーの戦時中の話。 特に盛り上がる所もないように思うが、続きが気になり読み進めてしまう。婆さんと関係が築けていくのが なんだかほっこり。 ぼくらの今...

翻訳なので、難しいと思っていたが、 章が細かく分かれており、非常に読みやすい。 ぼくらが感情なく淡々と物事を進めていく。 ハンガリーの戦時中の話。 特に盛り上がる所もないように思うが、続きが気になり読み進めてしまう。婆さんと関係が築けていくのが なんだかほっこり。 ぼくらの今後が気になるため、二部作目も読んでみます。

Posted byブクログ

2023/10/17

重いテーマを扱った内容なのに、なぜか心に食い込んでくる面白さ。シリアスさとユーモラスが混ざり合った不思議な感動がある。 続編もすぐに読みたくなってしまう。

Posted byブクログ

2023/10/15

戦争の激化で疎開した双子の少年が、独特の生きる術によって生きぬいていく。感情が一切描かれず他者からの過酷な仕打ちも、気遣いも淡々と処理されていく。双子が不気味で、読んでいて楽しくないのに引き込まれてしまう。

Posted byブクログ

2023/09/23

抑揚のない簡素で淡々とした著述がより現実的な凄味を感じさせる。 様々な立場の人々が、戦争中の市井でそれぞれ辛酸を舐めるエピソードに満ちている。二人の少年による、諦観にも似た冷徹で感情を押し殺したような視点が恐ろしくもある。楽しい瞬間は皆無で、読む程にシビアに心が削られていく感覚。...

抑揚のない簡素で淡々とした著述がより現実的な凄味を感じさせる。 様々な立場の人々が、戦争中の市井でそれぞれ辛酸を舐めるエピソードに満ちている。二人の少年による、諦観にも似た冷徹で感情を押し殺したような視点が恐ろしくもある。楽しい瞬間は皆無で、読む程にシビアに心が削られていく感覚。 しかし、傑作と言っても差し支えない作品だと思う。

Posted byブクログ

2023/09/20

訳者の素晴らしい訳ですごく読みやすい。巻末の訳者による解説もわかりやすい。 1日5ページ程の少年の日記という体裁をとっている。文体は優しいが、内容は苛酷で様々な事柄が淡々と書かれている。 特徴的なのは、名前及び地名が一度も書かれてない。主人公達の心理描写も一切無く、事実のみ(小...

訳者の素晴らしい訳ですごく読みやすい。巻末の訳者による解説もわかりやすい。 1日5ページ程の少年の日記という体裁をとっている。文体は優しいが、内容は苛酷で様々な事柄が淡々と書かれている。 特徴的なのは、名前及び地名が一度も書かれてない。主人公達の心理描写も一切無く、事実のみ(小説中の虚構であるが)を描いている点である。 主人公達が何を考えているかは、言動から推測するしかないが、そこに作者の描写力が見られるのだろう。

Posted byブクログ

2023/08/23

おもしろい、とは言えないのだが、興味深い作品であることは間違いない。 ファクトで固められた語り。故の生々しい描写。 日記、ということで一つ一つのエピソードは短いものの、印象的なやり取りが多いこと。 双子が結構サイコパスチックなところ。 中盤までは結構読むのしんどかったが、後半...

おもしろい、とは言えないのだが、興味深い作品であることは間違いない。 ファクトで固められた語り。故の生々しい描写。 日記、ということで一つ一つのエピソードは短いものの、印象的なやり取りが多いこと。 双子が結構サイコパスチックなところ。 中盤までは結構読むのしんどかったが、後半は結構加速。彼らが女中にしたことがいちばんの驚きだ。したこと、が驚きなのではなくその行動を取るまでに至った心の動きが驚きだ。 2023.8.23 135

Posted byブクログ

2023/08/06

激しい戦争のため、小さな町のおばあちゃんの元へ預けられることとなった双子の話。 淡々と綴られる短い文がなによりも印象的。それなのに、物語はとても色鮮やかに感じられた。戦時下という時代背景が「ぼくら」に様々な感情を与えていく。周りからは忌み嫌われる主人公たちだが、真っ直ぐな生き様が...

激しい戦争のため、小さな町のおばあちゃんの元へ預けられることとなった双子の話。 淡々と綴られる短い文がなによりも印象的。それなのに、物語はとても色鮮やかに感じられた。戦時下という時代背景が「ぼくら」に様々な感情を与えていく。周りからは忌み嫌われる主人公たちだが、真っ直ぐな生き様が、読んでいて眩しい。「ぼくら」のもう一人は、常に自分であるかのような気持ちになる。一話一話が短編であることもあって、とても読みやすい。ページをめくる手が止まらなくなる、久しぶりに一気読みした作品。

Posted byブクログ