センセイの鞄 の商品レビュー
恋愛の本質なんてものは自分にはわからなかったけれど、この微妙な距離感がとても心地よかった。考はかませ犬キャラかと思ったけど、あのあたりの葛藤も勉強になった
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センセイという呼び方でずっとこの話が進んでいく月子さんとセンセイの話です。最後に鞄が残された話はなんとも胸に残る話でした。
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お酒が出る本を探して出会いました。 年齢差がある恋の話ですが、酒好きとしてはその出会い、その空気感に憧れます。 後半少しだけ違和感を感じる部分はありましたが、お酒を飲みながら読み終えたこと嬉しく思います。
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「今年いっぱいはまだ三十七」の主人公の「わたし」と、「歳は三十と少し離れている(すなわち60代後半ということ)」「センセイ」の恋物語。センセイはわたしの高校時代の国語の教師であり、卒業から20年近く経ってから、偶然、再会したのだ。 恋愛のテンポは驚くほどゆったりしている。「センセイと再会してから、二年。センセイ言うところの"正式なおつきあい"を始めてからは、三年。それだけの時間を共に過ごした」とある。この物語は、主に、わたしがセンセイと再会してから、「正式なおつきあい」を始めるまでの二年間の出来事が綴られている。特に劇的な出来事があって、2人がつき合うようになるわけではない。物語の初めから、わたしはセンセイに、センセイはわたしに好意を抱いているのは明らかだ。そして、何度も居酒屋でお酒を一緒に呑み、市(いち)やキノコ狩やパチンコや旅行に一緒に行ったりし、センセイが「石野先生」と仲良くすることに嫉妬し自分は「小島孝」と良い雰囲気になったりしても、決定的なことは何も起こらない。かなりじれったい展開が、「再会してから、二年」続くわけである。 わたしの方は、「わたしが近づこうと思っても、センセイは近づかせてくれない、空気の壁があるみたいだ。いっけん柔らかでつかみどころがないのに、圧縮されると何ものをもはねかえしてしまう、空気の壁」を感じている。そしてセンセイの方は、「ワタクシはいったいあと、どのくらい生きられるでしょうか」と考えたり、「長年、ご婦人と実際にはいたしませんでしたので」「ワタクシは、ちょっと不安」を感じていたりして、一歩を踏み出せない。そして、わたしも、先生がそのような不安を抱えて一歩を踏み出せないことを分かっている。誠にじれったい展開だ。 しかし、月が満ちるように、二人は結ばれる。再会してから二年が経過した後で、そして、お互いに好意を持っていることを分かっていながら、ついにセンセイは「ワタクシと、恋愛を前提としたおつきあいをして、いただけますでしょうか」と告白する。わたしは、ずっと「すっかりセンセイと恋愛をしている気持ちに」既になっているのに、と思いながら、「センセイにかじりつ」く。 この後の二人の様子の描写が好きだ。 「闇がわたしたちをとりまき、わたしたちはぼわぼわと話しつづける。からすも鳩も、巣へ帰っていったらしい。センセイの乾いてあたたかな腕に包まれて、わたしは、笑いたいような泣きたいような気持ちだった。けれど笑いもせず泣きもしなかった。わたしはただひっそりと、センセイの腕の中におさまっていた。 センセイの鼓動が、上着越しにかすかに伝わってくる。闇の中で、わたしたちは、静かに座りつづけていた。」 このような瞬間のために人生があるのだと思わせてくれるような美しい場面だ。 そして、この小説には、静かに、しかし胸を揺さぶるような場面がもう一つある。小説の最後の場面だ。「正式なおつきあい」を始めてから三年で、センセイは亡くなる。そして、センセイの息子さんから形見として、センセイの鞄をわたしはもらう。「センセイが書き残しておいてくれた」のだ。この鞄は、センセイがわたしと再会してから、センセイと共に、色々な場面に登場し、色々な場所に一緒に出掛けたものである。わたしはセンセイと過ごした日々を時々思い返す。 「そんな夜には、センセイの鞄を開けて、中を覗いてみる。鞄の中には、からっぽの、何もない空間が、広がっている。ただ儚々とした空間ばかりが、広がっているのである」と小説は結ばれている。「儚々」という言葉は、初めて見かけた。「ぼうぼう」と読むらしい。「儚」は、「はかない」という言葉なので、意味は分かる。 センセイのことを思い出してみるが、それは、「からっぽ」で「はかない」ということ。「わたし」の淋しさは、如何ばかりかと思う。 美しい物語と美しい描写・言葉遣いがされている、しかし、儚い小説だ。
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私(ツキコ)が自分の思いをセンセイに打ち明けるところはキュンキュンしました。 センセイはもうご老体だし、ツキコは来年38になる独身だし、若者のような恋はできないとわかっているけど… なんだか2人ともかわいらしい。 センセイが告白するところはキュン死にものです…!
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ずっと読みたい!と思ってた本、やっと読めた… 全体的な雰囲気、文章の感じはとても好き。 森のような文章、読んでいてとても落ち着く。 正直、自分が主人公と同じ年齢で、20個以上歳が離れた初老の男性と恋愛できるか…ってなるとかなり想像がつかなくて、あまりそこは共感できなかった。でもツ...
ずっと読みたい!と思ってた本、やっと読めた… 全体的な雰囲気、文章の感じはとても好き。 森のような文章、読んでいてとても落ち着く。 正直、自分が主人公と同じ年齢で、20個以上歳が離れた初老の男性と恋愛できるか…ってなるとかなり想像がつかなくて、あまりそこは共感できなかった。でもツキコさんとセンセイの間にあった静謐で淡い時間の流れは、かけがえのないものだったんだろうな、ということはすごくわかった。自分が主人公と同じ年齢になった時、どう読めるか、もう一回読んでみたい。
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描写が綺麗で美しいからこそ、切なさが際立つ。 自分の高校時代の雰囲気を思い出して泣いてしまった。 センセイとは、どれだけ近づいても見えない距離がある。 だからこそ、センセイという存在なんだろうけどやっぱり寂しいし苦しいな。 主人公のように、センセイとお酒を飲みたい。 こんな私で...
描写が綺麗で美しいからこそ、切なさが際立つ。 自分の高校時代の雰囲気を思い出して泣いてしまった。 センセイとは、どれだけ近づいても見えない距離がある。 だからこそ、センセイという存在なんだろうけどやっぱり寂しいし苦しいな。 主人公のように、センセイとお酒を飲みたい。 こんな私でも20歳まで生きていいんだ、生きててよかったとかつての自分に証明したいの。
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「大人は、人を困惑させる言葉を口にしてはいけない。次の朝に笑ってあいさつしあえなくなるような言葉を、平気で口に出してはいけない。」 自分自身が思い出になる前に、鞄が空っぽになる前に、どれくらいの出会いがあるだろうか。
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最初のほのぼのした感じ の頃はいいのだけど なんとなく なまなましい感じに なってきて ちょっと引いてしまった 別にいやらしい描写が あるわけじゃないんだけどね レトロな感じの装丁は すごく良い ブックオフ妙興寺店にて購入
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めっちゃ良かったです。良すぎて、下手な感想が書きにくい…。 よく思うのが、恋愛が成就する、というのは、どういうことなのか、ということ。30も歳の離れたセンセイと、30代後半のツキコの場合、恋愛が成就するってどういう状態なのかな?って考えてしまったんですが、やっぱり、いくつになって...
めっちゃ良かったです。良すぎて、下手な感想が書きにくい…。 よく思うのが、恋愛が成就する、というのは、どういうことなのか、ということ。30も歳の離れたセンセイと、30代後半のツキコの場合、恋愛が成就するってどういう状態なのかな?って考えてしまったんですが、やっぱり、いくつになっても恋愛はいいものだし、自分の年齢も相手の年齢もそんなこと、どうでも良いことなのでしょう。 と、月並みなことしか、書けないですが、とても良かったです。
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