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魔法飛行 の商品レビュー

3.8

175件のお客様レビュー

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  2. 4つ

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  3. 3つ

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2010/07/11

誰にも譲れないものがある。 いつもいつも意識しているわけではないのだが、 それは「事件」が起こると意識せざるを得ない。 私は、ミステリーの読者ではまったくない。 だから、味わい方のルールを知らないといえるのかもしれない。 加納作品については、『モノレールねこ』、『ななつの...

誰にも譲れないものがある。 いつもいつも意識しているわけではないのだが、 それは「事件」が起こると意識せざるを得ない。 私は、ミステリーの読者ではまったくない。 だから、味わい方のルールを知らないといえるのかもしれない。 加納作品については、『モノレールねこ』、『ななつのこ』、 『ななつのこものがたり』という ちょっと珍しい読み順でここまできた後追い蛇行読者である。 私は、駒子とほぼ同世代である。 (『スペース』まで読んだ今は、諸条件から駒子の方が若干年上かなと想像している。) 本書がハードカバーで出版された1993年当時、私は確かに大学生だった。 90年代がまとっていた雰囲気、90年代の普通の生活が、 冷凍保存のようにここに残っていたことを 懐かしく思いながらページを繰った。 私は、駒子が取得した単位よりもはるかに多くの単位を費やし、 ある資格と学位を取った。 所属していたのがその学位を専門とする場所だったからだ。 その職業は、職業倫理に関わる文章を2種類もっている。 それらは宣言であり自律的規範であるから、 それを破ったからといって、刑事的責任を問われるわけではない。 だが、本書の中で、「職業倫理的にどうなのよ!!」という人物が、 ふたりもその職業に就いているのは、私にはどうにも理解しがたかった。 しかも、その人物の職業倫理に関わる問題行動がなければ、 そもそも事件も起きなかったし、解決もしなかったという構成になっている。 私にとっては、それがなんとも理不尽で悔しかった。 私が読んだ数少ないほかの加納作品についても関連しながら書くと、 『モノレールねこ』は、対極の立場を理解するのが生命線だったのだと思う。 自分目線だけに立っていたら理不尽で理解できない行動が、 そうだったのねとわかるところがきらめきだった。 『ななつのこ』にも、それはあり、 なぜそうなったのかという理由、ばらばらだと思っていたものが、 最後につながるのが魔法のようだった。 そこにこめられた、それしか名づけようのない言葉は宝石だった。 私にとっては、それは謎が解けるに匹敵する、 大切な、大切な要素だったのだ。 本書でも、ばらばらだったものが、つながってはいるのだが、 そのつなげるものが私の譲れないものの対極にあった。 そうしないと、このお話ではばらばらがつながらないとわかっても、受け入れたくなかった。 この「事件」が、私の譲れないものを教えてくれたと思えばいいのかもしれない。 ダメ男は許せても、職業倫理に則らないこの職業の人物は許せないのだと。 私の中では、この職業の職業倫理は簡単に超えてほしくないと思っているのだ。 この部分は、この職業の存在理由に関わるのだから。 こだわりのポイントが、ちょっとズレていることは承知で、それでも力説してしまったが、 お話なのに、こんなに感情的にさせるのも、 それだけ私の中に本書が生きた存在になったからともいえるだろう。 本書については、つなぎとめる糸が違う色をしていたのならと思うと本当に悔しいだけなのだ。 このシリーズが好きな部類に入ることには変わりない。 ところで、ひとつ興味深かったことがある。 駒子が『ソフィーの世界』のソフィーと似たようなことをつぶやいていたことである。 『ソフィーの世界』の日本語訳が出るのは1995年。 駒子の、ときに哲学的とも思えるような悩みや思索は、ソフィーの前を行っていたのかもしれない。 こんな読み方ができるのも、後追い読者の特権かな。 さて、今回私の書いたものは、非常に個人的なものになったように思う。 誰かの役に立つものになっているのかどうかというと自信はない。 正直、とても怖いのである。 だが、駒子と似た悩みとちょっと向き合うためにこれを投稿してみることにする。 私は、ときにネガティブな感情を抱いてしまう自分をうまく表出できない。 どちらかというと個性的な方なので、万人受けはしないのだから、 勇気を持って、そのまんま表出してしまうしかないのだが、 それでもどこかみんなに好かれようとしてしまっている。 嫌われてしまうのが怖いのだ。 そのため、大きく嫌われていはいないけれど、 結局のところ、 自分は二番目以降であって誰の一番でもないという悩みを 駒子と同様に抱えることになる。 書くものにもそれは出ていて、 特に批判的なことをうまく書くことができなかった。 みんなと違っていても、ずれていても、 もしかして、かなり的外れでも、 それでも勇気を持って、今の私の感じたところを残しておく。

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2010/06/15

またまた最後に謎がとけました~今回は駒子の手紙のような小説のような日常を瀬尾さんに書いたもの。駒子の日常では色々なことがあってそれをいつも瀬尾さんが解決してくれる。 なんでクリスマスに風邪をひいたのかわかった。やっぱり加納朋子すごい!!

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2010/06/13

「ななつのこ」の続編です。今回も連作短編だけど 大きく1つのストーリー仕立てですかね。 駒子の学生生活の素の感じが伝わってきて、その中の謎の手紙の存在が気を惹かれるお話ですね。

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2010/06/03

『ななつのこ』の続編。 一話ずつ完結していくものの、なんかぼやっとしたまとめかたやなぁと思っていたら、 やっぱり最後にちゃんと気持ち良く解決してくれて大満足。 今回は手紙だけの登場かと思っていた瀬尾さん。 最後はなーんかかっこよく登場しちゃって、 駒子との距離も縮まっちゃって、こ...

『ななつのこ』の続編。 一話ずつ完結していくものの、なんかぼやっとしたまとめかたやなぁと思っていたら、 やっぱり最後にちゃんと気持ち良く解決してくれて大満足。 今回は手紙だけの登場かと思っていた瀬尾さん。 最後はなーんかかっこよく登場しちゃって、 駒子との距離も縮まっちゃって、こっちまでちょっとときめいてしまった。

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2010/05/22

とっても気持ちのいいミステリーです。 読後も温かくそれでいて、ミステリーの楽しみの驚きもくれる素晴らしい本です。

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2010/10/12

「私がときおり見る夢。あれは決して『脱出』の夢ではない。こそこそ逃げ出そうとしているのではなく、これからどこかへ行こうとしているのではないだろうか?そうだ、あれは『出発』の夢なんだ。そう考えて、いかにも単純なことに、ふわりと心が軽くなった。」 期待に違わぬ駒子の日々。 厳しい、...

「私がときおり見る夢。あれは決して『脱出』の夢ではない。こそこそ逃げ出そうとしているのではなく、これからどこかへ行こうとしているのではないだろうか?そうだ、あれは『出発』の夢なんだ。そう考えて、いかにも単純なことに、ふわりと心が軽くなった。」 期待に違わぬ駒子の日々。 厳しい、、というかぞわりとするような、出来事も当然あるし、甘いことばかりではないということをこれでもかとばかりに伝えてくる。 それでも、どこか大丈夫だと、囁き続けてくれるのだ。 そこが、凄く好き。 表題作ももちろん面白いかったのだけれど、私はやはり一番最後の「ハロー、エンデバー」が凄く印象に残った。 エンデバーなんて、全く覚えていないし、遠い過去の話のような気もする。 それでも、今の私と通じるのが、出発を感じる駒子の気持ち。 いつでも、出発を願っていたい。 【4/30読了・初読・市立図書館】

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2011/12/10

駒子ちゃんと瀬尾さんのシリーズ。瀬尾さんがさりげなくかっこよかったラスト(笑)個人的には「ななつのこ」の方が好きでした。でもこっちにも味がありますね。間にある誰かからの手紙は、確かにちょっと不気味でなんか怖い。最後がちょっと曖昧で残念。でも回答が手紙じゃなく行動なのは好きでした。...

駒子ちゃんと瀬尾さんのシリーズ。瀬尾さんがさりげなくかっこよかったラスト(笑)個人的には「ななつのこ」の方が好きでした。でもこっちにも味がありますね。間にある誰かからの手紙は、確かにちょっと不気味でなんか怖い。最後がちょっと曖昧で残念。でも回答が手紙じゃなく行動なのは好きでした。UFOの男の子と現実主義の夢を見たい女の子の話が一番好きでした。表題作の魔法飛行。ロマンチックで羨ましい(笑)

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2010/05/01

どこにでもありそうで、実は滅多に出会うことのできない、そんな日常とファンタジーを上手く融合させたお話だと思う。糸電話を使った子どもたちの交信。ペンライトを使った野枝さんの交信。見せ方やその人の捉え方によって、いつもは身の周りにひっそり息を潜めているものがあっという間に私たちを魔法...

どこにでもありそうで、実は滅多に出会うことのできない、そんな日常とファンタジーを上手く融合させたお話だと思う。糸電話を使った子どもたちの交信。ペンライトを使った野枝さんの交信。見せ方やその人の捉え方によって、いつもは身の周りにひっそり息を潜めているものがあっという間に私たちを魔法使いにしてくれる。おまけだといってクッキーを渡した野枝さんにニヤニヤ。駒子シリーズは手紙が多く出てくるから文章が書きたくなる!!そして豆知識が増える!!ライカ犬、シャガールの「魔法の飛行」、ガウスという天才数学者などなど…。そして何より瀬尾さんが素敵すぎる!!

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2010/04/06

鮎川哲也賞受賞作「ななつのこ」。 その続編にして受賞後第一作。 手紙の形を取った作品と感想のやり取り。 間に挟まれた「誰かからの手紙」。 結末に明かされてゆく謎に触れた時、氏の巧みな構成力の罠に嵌まったと気付かされる。 日常の中に忍び込んだ魔法の力。 氏の魔法で空...

鮎川哲也賞受賞作「ななつのこ」。 その続編にして受賞後第一作。 手紙の形を取った作品と感想のやり取り。 間に挟まれた「誰かからの手紙」。 結末に明かされてゆく謎に触れた時、氏の巧みな構成力の罠に嵌まったと気付かされる。 日常の中に忍び込んだ魔法の力。 氏の魔法で空を飛んでみませんか?

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2010/01/20

ひとつひとつはわりといいと思うんだけど。表題作なんてトリックも内容もすてきで、まさに「論理じゃない、魔法だ」であり、駒子の微妙に不安定な位置・彼女の成長が垣間見えてよろしんですが。 前作『ななつのこ』からすると、薄い印象…つながってない、分断された印象を受けてしまうのは何故でしょ...

ひとつひとつはわりといいと思うんだけど。表題作なんてトリックも内容もすてきで、まさに「論理じゃない、魔法だ」であり、駒子の微妙に不安定な位置・彼女の成長が垣間見えてよろしんですが。 前作『ななつのこ』からすると、薄い印象…つながってない、分断された印象を受けてしまうのは何故でしょう。十分最後の話に収束しているんですけどね。 今回再読して、その理由があの中途半端にわかった風な挿入手紙とその結末だということに気付きました。それが全体の流れになっているのだけど、そこへの持っていき方がちょっと強引かな、と。 だってこの手紙の差出人、忍ぶ恋と言えば聞こえはいいが、ストーカーの一歩手前?いやいや、恋っていうのはそういうものなのだけど、この手紙とその内容から、「気持ち悪い」「ストーカーだわ」と思われても仕方ないような…;;  #見知らぬ人に恋しちゃうと大変だな…(苦笑) よく駒子はこの手紙を見て、「気持ち悪い」と思わなかったなあと。あまつさえ助けに走る…信じられん。そこが駒子なのかなあとも思うけど。 それにしても、瀬尾さんがよくわからない。よくわからないというのは、描かれていないということではなくて…不思議な人だ、ということ。ただひとつ思うことは、自由の空気を、旅人の空気を纏っているなあということ。 彼が大学生だったということにびっくりだが(卒業してると思ってた)、卒業したら大陸を放浪しそうだよなあこの人。バックパッカー似合いすぎ!(笑)瀬尾さんの宇宙の話や、想像と観察に裏付けられた推理を聞くと、こんな感じしません? どーでもいいんですが、今回を読んでいて、舞台が今住んでいるところ&隣の市だということに気付きました。今度デパート屋上に行ってみようかな。

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