銃・病原菌・鉄(下巻) の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ようやく下巻読み終わりました。 上巻は家畜を飼うことによって感染症が多く発生し、その感染症の耐性を持つヨーロッパ人(スペイン人)が南北アメリカのインカ、アステカ帝国に渡ったとき、多くの現地人が感染症で命を落としたところまで書いて終わっていました。 下巻は文字が生まれた地域とそうでない地域の話しから始まります。そもそも文字が必要にならなかった地域。つまりは狩猟採集で暮らしている人が住む地域では文字は必要にならなかったので、文字は生まれなかった。農耕が早くにいきわたった地域では人口が増え、上下の差が生まれ、人々を支配する階級が出てくると支配するルールを広く浸透させるために文字が必要になり、文字が生まれてきた。メソポタミアのシュメール人、エジプト人、メキシコの先住民が作り出した文字は独自に作り出されたものとされている。 という話しから始まって、その後地球上の大きな大陸(ユーラシア、アフリカ、アメリカ、オーストラリア)ごとに発展の違いがどこから生まれたか、についての考察が進む。 結論としては、第二次大戦下のナチスドイツのような人種による優劣というのはみとめられず、ただただその地域の環境によるものだ、というのが著者の考え。 環境といっているのは、まず栽培化できる作物がそもそもあったかどうか。もちろんその地域の気候にも左右される。それから、家畜にできる動物がいたかどうか。南北アメリカには家畜にできるような動物がほとんどいなかったため、先住民(インディアン)はヨーロッパから来た人たちに侵略されてしまったという。インディアンは、馬に乗って雄々しく戦っているイメージだが、もともとは馬を家畜として飼ってはおらず、ヨーロッパから馬が入ってきてから、それを使いこなすようになったとのこと。栽培化できる作物があって、家畜がいるってことは農業しながら豊富な栄養素をとることができたということ。そうすると、狩猟採集していた時代より人口が増える。人口が増えるとやがて集団を形成する。形成した集団が大きくなるとやがて国家を形成する。国家ほどの大きさになると多くの人民を使って灌漑を作ったりすることができ、より発展する。そして文字も浸透し、さらに発展する。 発展した技術は人が移動することによって伝播する。アフリカ大陸や南北アメリカ大陸は南北に長い。しかも途中で行く手を阻む障壁がある。アフリカ大陸は中央部にいたツェツェバエがそれより南に行くことを阻み、アメリカ大陸はそもそも地形的に中央できゅっとすぼんでいて南に行けない。でも、ユーラシア大陸は東西に長くいく手を阻むものが少ないため、農業やその他の技術が伝播してそこここの地域が発展した。 そうして一足早く発展した地域の人たちが、その時点で遅れを取った地域を侵略し、またたくまに原住民を駆逐してしまった。結局は環境の差なんだ、と。駆逐された地域には「銃」も「病原菌」も「鉄」も無かったんです。 家畜がいることで感染症の耐性が遺伝子に書き込まれたってのには驚かされました。でも、確かにそうかも。ユヴァル・ノア・ハラリからジャレド・ダイヤモンドにやってきましたが、とっても興味深く読めました。訳も読みやすかったと思います。
Posted by
世界史において征服する者とされる者の違いは食料だという事を理路整然と説明しているのが本著である。 食料を持てる者が圧倒的優位に立って持てない者達を征服できると言うことと、なぜ食料を持てる者と持てない者に分かれたのかと言うことを1万3000年の歴史を通じてわかり易く説明している。 ...
世界史において征服する者とされる者の違いは食料だという事を理路整然と説明しているのが本著である。 食料を持てる者が圧倒的優位に立って持てない者達を征服できると言うことと、なぜ食料を持てる者と持てない者に分かれたのかと言うことを1万3000年の歴史を通じてわかり易く説明している。 この本を読み終わった時、この本で得た知識を誰かに話したくてウズウズする自分に出会えるだろう。
Posted by
2020年6月21日読了。図書館で下巻だけ借りられたので先に読了。「なぜユーラシア大陸の文明が世界中に伝播したのか?なぜ逆は起こらなかったのか?」という問いから、地球の1万3千年におよぶ人類の歴史を、刺激的な表題「銃・病原菌・鉄」の観点から読み解く本。文明に濃淡ができたのは結局「...
2020年6月21日読了。図書館で下巻だけ借りられたので先に読了。「なぜユーラシア大陸の文明が世界中に伝播したのか?なぜ逆は起こらなかったのか?」という問いから、地球の1万3千年におよぶ人類の歴史を、刺激的な表題「銃・病原菌・鉄」の観点から読み解く本。文明に濃淡ができたのは結局「たまたまある環境で、食糧生産・人口密度など条件が揃ったから」であり、人種の優劣は関係ないという結論、特に「農耕による食糧生産→家畜による生産安定化、人口増→家畜由来の疫病発生、免疫の獲得」のサイクルが、他地域の侵略・影響拡大においては銃・鉄による支配以上に強力であった(免疫のない先住民が探検隊由来による疫病で弱体化)ことが非常に興味深い…。今も、疫病の発生は家畜・食料になる中国の動物が由来だものな…。下巻だけでも相当なことを言い切っているが、これに加えて上巻には何が書かれているのか。図書館の予約を楽しみに待つことにしよう。
Posted by
今日の世界情勢を形作る要因となった人類の歴史を紐解き、なぜユーラシア大陸における農業や工業が早期に発展し、他の大陸ではそれが起きなかったのかを解明した一冊。(上下2冊) 著者の分析では、人類発展の歴史が狩猟採集民族から始まった点は全ての大陸で共通している一方、ユーラシア大陸の肥...
今日の世界情勢を形作る要因となった人類の歴史を紐解き、なぜユーラシア大陸における農業や工業が早期に発展し、他の大陸ではそれが起きなかったのかを解明した一冊。(上下2冊) 著者の分析では、人類発展の歴史が狩猟採集民族から始まった点は全ての大陸で共通している一方、ユーラシア大陸の肥沃三日月地帯に栽培可能な植物と家畜化可能な動物が数多く存在していたことにより、人類の定住化がいち早く可能になり、さらにはユーラシア大陸が東西に長い形状だったことにより、それらの農作物や家畜が同様の気候を持つ他の地域に容易に伝播したことが、同大陸における人口密度の拡大とそれに伴う文字や技術の発達、伝染病に対する集団免疫の獲得に繋がり、結果として他の大陸を侵略するための競争優位に繋がったという。 今日の欧米諸国の政治や経済、文化が支配的な世界においては、ともすればヨーロッパ人種の生物学的優位性といった概念が人々の間で無意識に浸透し、それが差別的言動に繋がる場合もあるが、著者の主張は人種間に能力や資質の違いはなく、今日の地域間の発展の不平等は、単に地理的偶然性がもたらした結果に過ぎないことを明確に示してくれる。
Posted by
文明の発展は人種の差ではなく、置かれた環境によって進展のスピードが変わってくるということが分かる。 自然環境、他者との切磋琢磨、これは個人の成長に影響する外的要因も同じだと思う。この外的要因が人類の文明というマクロなモノに影響した場合、何千年というスパンで途方もない差ができてしま...
文明の発展は人種の差ではなく、置かれた環境によって進展のスピードが変わってくるということが分かる。 自然環境、他者との切磋琢磨、これは個人の成長に影響する外的要因も同じだと思う。この外的要因が人類の文明というマクロなモノに影響した場合、何千年というスパンで途方もない差ができてしまう。この事に改めてショックを感じてしまう。
Posted by
小麦の支配に基づく私たちの文明 上巻に引き続き下巻も読了しました。 下巻では、文字・発明・集権化という大まかに3つの視点から俯瞰し科学としての人類史を考察しています。 いずれにおいても大陸における環境的要因(それに附随する食料生産の発展)によるものが大きいとされ、とても興味深...
小麦の支配に基づく私たちの文明 上巻に引き続き下巻も読了しました。 下巻では、文字・発明・集権化という大まかに3つの視点から俯瞰し科学としての人類史を考察しています。 いずれにおいても大陸における環境的要因(それに附随する食料生産の発展)によるものが大きいとされ、とても興味深い考察であると思いました。 また、巻末には本書で語り尽くせなかった課題が取り上げられており、著者の思索の深さを感じました。 ・なぜ中国ではなくヨーロッパだったのか? ・歴史に影響を与える個人 こういった難問であっても「歴史科学」という見地から紐解くことができる可能性が示されており今後の同学問分野の発展に期待されます。 「古代の文字は他の人間を隷属化させるためにおもに使われていた。」 「文字が誕生するには、数千年にわたる食料生産の歴史が必要だった。」 「「必要は発明の母」ではなく「発明は必要の母」 である。技術は、必要に応じて発明されるのではなく、発明されたあとに用途が見出されることが多い。」 「あの時、あの場所で、あの人が生まれていなかったら、人類史が大きく変わっていたというような天才発明家は、これまでに存在したことがない。」 「小規模集団の併合は自発的に起こるわけではない。戦争やその脅威が、社会が併合されていく過程で、多くの場合、重要な役割を果たした。」 こういった記載は、今までの自分の中の常識を覆すもので、とても刺激的でした。 ただ本書について少し残念に思ったのは、それぞれの大陸における環境的差異が究極要因とされていますが、前述した巻末の課題群は、歴史科学において紐解くことができるとしてはいるものの、本書の結論を揺るがすような大難問のように感じます。 統一された国家である中国が、当時後進国とされた不統一な国家群であるヨーロッパに遅れをとった原因や歴史に影響を与える個人の存在等は、本書で説明されている内容と一部矛盾が生じるように思え、理論のグラつきが少し気持ち悪さを残しました。
Posted by
上巻があまりおもしろくなかったので、下巻にもあまり期待はしていなかったのだが、はたして、書き留めておきたくなるような記述もなく、ただよく調べてあるなあという感想のみの個人的読後感だった。
Posted by
世界の人工分布が現在、なぜ今の状態になったのかを、的確に説明してくれる書。なるほどと唸らされるエピソードばかり並ぶ。世界全体を対象にそれぞれの地域毎に解説しているところがすごい。 以下注目点 ・発明は必要の母 ・ヨーロッパ人が定住できなかったのは、マラリアなどの熱帯病のせい。
Posted by
文明発達の鍵は地形にあり、人種による優劣ではないという説を西欧に投じた本。ただし長すぎる。 東西に長い大陸は農耕文明が伝播しやすいためユーラシア大陸が先進文明になった 農耕は社会化が進み、技術革新がおきやすくなる(銃と鉄) 多様な動物がいると家畜化しやすい動物が存在する確率が上が...
文明発達の鍵は地形にあり、人種による優劣ではないという説を西欧に投じた本。ただし長すぎる。 東西に長い大陸は農耕文明が伝播しやすいためユーラシア大陸が先進文明になった 農耕は社会化が進み、技術革新がおきやすくなる(銃と鉄) 多様な動物がいると家畜化しやすい動物が存在する確率が上がる(病原菌) 中国は高度に国家統一が進み大国化し、国家間の競争にさらされなくなったため停滞した 戦国時代の日本は世界の最先端の銃器文明を持っていたが、徳川幕府により中国と同じ理由で停滞 歴史を見ると先進文明は後進文明を容赦なく圧倒する。将来宇宙で同じことが起きるのだろうか。平和は尊いが人類は進歩し続けなければいけない。
Posted by
【由来】 ・塾長からいただいた。 【期待したもの】 ・ ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。 【要約】 ・ 【ノート】 ・ 【目次】
Posted by