霞町物語 の商品レビュー
「青い火花」の後半、どこかで読んだことがあるなぁと思って思い出してみると、高校時代に受けた模試の現代文で読んだのだった。模試であることを忘れて、ひきこまれたのを覚えている。模試が終わってから、全文読みたいと思っていたのにいつの間にか忘れていた。数年越しに読めたことに運命を感じる。...
「青い火花」の後半、どこかで読んだことがあるなぁと思って思い出してみると、高校時代に受けた模試の現代文で読んだのだった。模試であることを忘れて、ひきこまれたのを覚えている。模試が終わってから、全文読みたいと思っていたのにいつの間にか忘れていた。数年越しに読めたことに運命を感じる。 「卒業写真」はずるいなあ。感動しないはずがないストーリー。
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目次 ・霞町物語 ・夕暮れ隧道 ・青い火花 ・グッバイ・Drハリー ・雛の花 ・遺影 ・すいばれ ・卒業写真 著者の青春時代を反映した自伝小説? 甘く切なくほろ苦い? ちょっとナルシズム入っちゃってたりしたら、読めたもんじゃない。 ところが、主人公であるはずの僕よりはるかに魅...
目次 ・霞町物語 ・夕暮れ隧道 ・青い火花 ・グッバイ・Drハリー ・雛の花 ・遺影 ・すいばれ ・卒業写真 著者の青春時代を反映した自伝小説? 甘く切なくほろ苦い? ちょっとナルシズム入っちゃってたりしたら、読めたもんじゃない。 ところが、主人公であるはずの僕よりはるかに魅力的なのが、彼の祖父母だ。 江戸っ子で、粋で、気風(きっぷ)がよくて、ボケている祖父。 写真技師としての誇りが高く、妥協をしない。 その祖父が心から愛していたのが、元深川芸者の祖母。 学生運動の嵐が通り過ぎたころの東京の高校生。 学校から帰るとバリッとしたコンテンポラリィのスーツを着て、タブカラーのシャツに細身のタイを締め、髪はピカピカのリーゼントで固め、ブルーバードのSSSやスカイラインに乗ってダンスに繰り出す。 酒もたばこも女もあり。 進学校なので、校内の成績が多少悪くても、まあ慶応くらいには行ける。 そんな主人公の青春物語よりも、はるかに祖父母の物語の方が深くて濃い。 ちょっと影は薄いが、両親もいい。 優しくて、写真の師匠である祖父に頭の上がらない入り婿の父と、あっけらかんと明るい母。 祖母を巡る、口にされることのない家族の秘密。 大人が大人であった時代。 死期を悟り、家族がまだ寝ている早朝に、ひとり荷物をまとめて病院へ向かう祖母も格好いいが、好きなシーンはこちら。 “僕が高校を卒業する年の冬、祖父はスタジオの籐椅子の上で、ゴブラン織りの絵柄のようになって死んでいた。 駆けつけた父は、祖父の膝からライカを取り上げると、胸に抱きしめて、わあわあと泣いた。検死の医者や警察官が来ても、近所の人がおくやみに来ても、そのままどうかなっちゃうんじゃないかとまわりが気を揉むほど、スタジオに立ちつくして泣き続けていた。” 血のつながりより強いきずなのあった祖父と父。 いつも頭ごなしに怒られていても、二人だけにわかる信頼がそこにあったのだなあと思わせるシーン。 家族の在り方が、とても美しくて泣けた。
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浅田次郎といえば「泣かせ」ですが、この作品集は自伝的小説のせいか、余りエモーショナルに走らず、自制が利いています。私よりも少し年上の、しかも都会の少年の自叙伝になりますが、不思議な懐かしさがあって気持ち良い作品です。 一族の描き方も良いですね。特にボケが始まった名人かたぎの祖父...
浅田次郎といえば「泣かせ」ですが、この作品集は自伝的小説のせいか、余りエモーショナルに走らず、自制が利いています。私よりも少し年上の、しかも都会の少年の自叙伝になりますが、不思議な懐かしさがあって気持ち良い作品です。 一族の描き方も良いですね。特にボケが始まった名人かたぎの祖父の正気のときの格好よさ、いかにも明治の江戸っ子。そして深川芸者だった祖母の伝法さ。著者の思い出の暖かさがにじんでくるような文章です。 一気に読み上げてしまいました。
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きっと時代そのものが活気に溢れてたんだろうな。それにしてもどうしてこんなにも他人の人生を綴った物語なのに懐かしさを感じるんだろう…。
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いくら浅田次郎が賢い子どもだったとはいえ、小学生や高校生時代のことをこんなに詳細に覚えているはずもなく、やはりフィクションなのでしょう。そうは思ってもこれは彼自身の物語、そんな気がします。 本作は、町の写真館に生まれた「僕」の回顧録。短編8話で語られ、前半はおもに僕の高校生時代...
いくら浅田次郎が賢い子どもだったとはいえ、小学生や高校生時代のことをこんなに詳細に覚えているはずもなく、やはりフィクションなのでしょう。そうは思ってもこれは彼自身の物語、そんな気がします。 本作は、町の写真館に生まれた「僕」の回顧録。短編8話で語られ、前半はおもに僕の高校生時代。両親と呆け気味の祖父と僕で暮らしています。由緒正しい写真館でしたが、時代が変われば住人も変わり、記念日だからと家族で写真館に来るような客は激減。いっそのこと店をたたんで引っ越すほうがいいのだけれど、昔気質の祖父が生きている間は許されないこと。ヤケクソ気味の両親は、祖父の財産を食いつぶす勢い。父はふらふらと写真を撮りにあちこちへ出かけ、母は芝居見物三昧。まだ一応ぼんぼんの僕は、高校生ながら車を所有。学校の所在地の環境のせいで、同級生と酒場に入り浸ることもあります。 こんな前半もいいのですが、素晴らしいのは僕の小学生時代が描かれる中盤と、再び高校生時代の話に戻る後半。当時は存命だった祖母のこと、呆ける前の祖父のこと。遊ぶことについては何も言わないのに遊び方についてはあれこれうるさい家族がものすごくいい。嘘をつくな、見栄を張るな、愚痴を言うな、一瞬をないがしろにするなと教えてくれたおじいちゃん、おばあちゃん。 決してお涙頂戴に走ってはいないのに、浅田次郎の本を読むと涙で目がかすむことが多すぎる。この余韻があるから、本を読むのは止められない。たまりません、浅田次郎。
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小説で久しぶりに涙を流した。そして声を出して笑った 浅田次郎のイメージが良い意味で変わった。 「青い火花」「雛の花」双璧
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子ども時代のところはいいが、高校生時代の話になると、どこか浅田次郎っぽくない。 高校生がおさけやたばこ、飲酒運転、すぐに女を手に入れる、あたりが現実味が薄くて、なじめない。
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浅田次郎さんの作品は、物語の中に「幽霊」が出てくるものは最高の出来。もちろん、白い着物来てでてくるわけじゃないんだけど。「霞町物語」にもしっかりでてくる。どの作品のどこの部分で出てくるかは秘密。かなりあとになってからでないと、あそこで出てた人たちは、その時はもう死んでたんだ、とい...
浅田次郎さんの作品は、物語の中に「幽霊」が出てくるものは最高の出来。もちろん、白い着物来てでてくるわけじゃないんだけど。「霞町物語」にもしっかりでてくる。どの作品のどこの部分で出てくるかは秘密。かなりあとになってからでないと、あそこで出てた人たちは、その時はもう死んでたんだ、という推理があって、初めて幽霊だったとわかるんだけど。
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オリンピックの頃の東京の山手っ子の、夜遊びを含む高校生活。まだ、その頃にはいくばくか残っていた江戸っ子風味の家族(語り手の祖父母)のやりとりを、軽いタッチで描くことによって、時代の移り変わりと家族の情愛を浮かび上がらせる。うまいね。
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浅田次郎が1970年代の青春を描く、自伝的な面もある連作短編集。 連作短編文芸の最高峰だと思う。 ストーリー、台詞、論調、テンポ、人物、時代、アイテム…味のあるかっこよさがひたすら漂う。 他人事なのに懐かしく、切なく、誇らしい。来世はこんな青春を送りたい。 こういう話が描ける作家...
浅田次郎が1970年代の青春を描く、自伝的な面もある連作短編集。 連作短編文芸の最高峰だと思う。 ストーリー、台詞、論調、テンポ、人物、時代、アイテム…味のあるかっこよさがひたすら漂う。 他人事なのに懐かしく、切なく、誇らしい。来世はこんな青春を送りたい。 こういう話が描ける作家がたくさん出てきてくれれば、いつまでも飽きないと思う。 5+
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