社会的共通資本 の商品レビュー
2022/02/16読了。 なかなかすっと入ってくる内容ではなかったけれど、今の自分にない物の見方でこの先の参考にできるのでは、と感じた。これが2000年に出版されたのだと思うと賢人はなんと先を見ているのだろうと思う。
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22年前に本書が出版され、日本では宇沢氏の言葉は響いたのであろうか。 社会的共通資本に対して市場メカニズムを適用し食い尽くすことは、一時的な経済発展を将来世代の安心と天秤にかけて自分達の経済発展を優先するに等しい愚行である。 既にツケを回された"将来世代"であ...
22年前に本書が出版され、日本では宇沢氏の言葉は響いたのであろうか。 社会的共通資本に対して市場メカニズムを適用し食い尽くすことは、一時的な経済発展を将来世代の安心と天秤にかけて自分達の経済発展を優先するに等しい愚行である。 既にツケを回された"将来世代"である我々が更に自分達の子どもや孫に同じ愚行をせず、何ができるかを考え行動する事が求められる。
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参考になったのは、コモンズは限られたコミュニティメンバーへのオープンアクセスで良い(完全に誰でもOKである必要はない)ということと、農業を工業的に捉え過ぎない方が良いということの2点が主。 ただアクが強くて読みづらい。一昔前の本に多い、具体的な部分は極端に具体的で、総論部分はやや...
参考になったのは、コモンズは限られたコミュニティメンバーへのオープンアクセスで良い(完全に誰でもOKである必要はない)ということと、農業を工業的に捉え過ぎない方が良いということの2点が主。 ただアクが強くて読みづらい。一昔前の本に多い、具体的な部分は極端に具体的で、総論部分はややオリジナリティが強い構成。田園長屋構想の参考にはあまりならず。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
1928年生まれの著者 2000年刊行の岩波新書 なのだが、内容は2021年現在深刻に語られているすべての経済的、SDGS的持続可能社会への道標となる考察に満ちている。 俊英としてアメリカ経済学界でノーベル賞受賞のスター学者たちの中にあっても一目置かれていたという宇沢氏が、日本に帰国、高度成長真っ只中で積み上げていった知見。 時代より早過ぎたのかなあ。 そして本書に書かれていることが、過去50年に少しでも顧みられていたならば、地球の現在はもう少しマシになっていたはず。 しかし、経済が自己増殖し続け、環境も人のコミュニティも破壊し続け、ついには崖っぷちまで来てしまった現状、理性や良心や次世代への思いやりなどを当てにしていてはその力に歯止めをかけることはできない。 藤原正彦氏などに共通する、旧制高校出身エリートの良心を感じる本。
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SDGsという言葉が広く流布するようになった今でも通用する普遍的な内容。 制度主義の柱である、自然環境、社会インフラ、制度資本をいかに構築するか。 経済学とは人間を理解することから始まる、倫理的、社会的規範から考えるという視点がとても参考になる。
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「豊かさとは何か」という問いから始まって、血肉の通った生命としての人間をどう経済に組み込むか、と考えたら避けては通れない本。人間的で、文化的な生活を維持するために必要な社会的共通資本をないがしろにし、私的所有に任せてしまった結果、社会のあらゆる領域で人間的な営みが失われている。大...
「豊かさとは何か」という問いから始まって、血肉の通った生命としての人間をどう経済に組み込むか、と考えたら避けては通れない本。人間的で、文化的な生活を維持するために必要な社会的共通資本をないがしろにし、私的所有に任せてしまった結果、社会のあらゆる領域で人間的な営みが失われている。大気や森林といった自然にせよ、教育や医療といった諸制度にせよ、社会的共通資本は社会全体の財産であるから、国家や利潤というものに左右されてはならない。本書はこうした視点から社会の諸制度のあり方を素描するもので、そのマインドに共感する人は多いのではないかと思う。
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この本の基本的概念=「制度主義」 それは人間が豊かに生きることができる社会をめざすこと。資本主義は経済面では豊かになるが人が豊かに生きれるかと言ったらそうではない。 制度主義の重要なキーワードは「自然環境」「社会的インフラ」「制度資本」から構成される3つの社会的共通資本。 これら...
この本の基本的概念=「制度主義」 それは人間が豊かに生きることができる社会をめざすこと。資本主義は経済面では豊かになるが人が豊かに生きれるかと言ったらそうではない。 制度主義の重要なキーワードは「自然環境」「社会的インフラ」「制度資本」から構成される3つの社会的共通資本。 これらの社会的共通資本を「より人間的で、住みやすい社会」を前提にどう管理していくか。各国における政策の歴史や各専門分野の著名人の理論などを参考に、社会的共通資本に対してどのような変革が必要かを提言している。
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宇沢弘文先生の理論の中核本 大学時代塩野谷先生にご紹介頂いて40年漸く読破良かった 資本主義経済体制の限界・本質的問題は今日的「格差問題」 市場原理主義から漏れる「社会資本」の劣化 SDGsの問題意識に通じていると思う 宇沢弘文先生の価値観が求められる時代 コロナで加速する バ...
宇沢弘文先生の理論の中核本 大学時代塩野谷先生にご紹介頂いて40年漸く読破良かった 資本主義経済体制の限界・本質的問題は今日的「格差問題」 市場原理主義から漏れる「社会資本」の劣化 SDGsの問題意識に通じていると思う 宇沢弘文先生の価値観が求められる時代 コロナで加速する バイデン大統領の理念は近いものがある 米国の力が間に合うか 1.アンチ新自由主義 資本主義のダイナミズム リスクテイクとアップサイドリターン 市場の失敗 外部経済の統制 市場化・政治規制 2.地球という枠組みが劣化すると 与件の中で成果を最大化する資本主義は新たな制約を受ける 3.農村 都市・自動車 学校教育 4.学校教育 5.医療 6.金融制度 7.地球環境
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2019年に出版された評伝『資本主義と闘った男 宇沢弘文と経済学の世界』が大変素晴らしく、いつか本人の著書をしっかり読みたいと思っていた矢先、ちょっとしたきっかけで本書と出会いセレクト。 本書は宇沢弘文という経済学者が後期に提示した”社会的共通資本”の概念と重要性を平易な言葉で...
2019年に出版された評伝『資本主義と闘った男 宇沢弘文と経済学の世界』が大変素晴らしく、いつか本人の著書をしっかり読みたいと思っていた矢先、ちょっとしたきっかけで本書と出会いセレクト。 本書は宇沢弘文という経済学者が後期に提示した”社会的共通資本”の概念と重要性を平易な言葉で語りながら、ひいてはハイエク〜ミルトン・フリードマンに代表される市場重視型の経済学がこの社会的共通資本をないがしろにしていることへの警鐘を鳴らすことを目的としている。 ”社会的共通資本”と書かれるといかめしく聞こえるものの、現代の我々にとってみれば”コモンズ”という言葉で置き換えた方がピンとくるだろう。道路・鉄道・電力・通信等の社会的インフラストラクチャーが該当するのは当然として、”社会的共通資本”に含まれるのは教育・金融・医療などの社会の基盤となるような諸制度、そして宇沢弘文が晩年に最も力を入れた環境問題などが、”社会的共通資本”に含まれ、これらをそれぞれの領域でのエキスパートの人的能力を活かしつつ、国家が適度な介入を行う(その点で市場に全てを委ねるハイエク・フリードマンらの手法とも、国家が全てを支配しようとする社会主義とも当然異なる)のが、著者の説くあるべき”社会的共通資本”のマネジメントアプローチである。 この背景には、特に1970年代ごろから米国のレーガン、英国のサッチャー、日本の中曽根康弘など世界各国で同時多発的に起こった市場原理主義経済への強い警鐘がある。かといって、資本主義を批判するために社会主義のような馬鹿げた理論に依拠することのではなく、資本主義の枠内でどのような是正が可能なのかという点を真摯に考え続けた点に、宇沢弘文という学者の今日的な意義があるのだろう。 直近では日本において若手の論客が資本主義の限界をマルクスの読み直しから解こうというする馬鹿げた理論が跋扈していて頭が痛くなっていただけに(それをもてはやしている一部のビジネス界の人間も同様にアホとしか言いようがない)、引き続き、宇沢弘文の理論を個人的に学びたい、と思っている。
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社会的共通資本を意識しながら、資本主義を貫くというのはなかなか大変なことだということを理解しました。経済学者は大変!
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