1,800円以上の注文で送料無料

菜の花の沖 新装版(一) の商品レビュー

4.2

53件のお客様レビュー

  1. 5つ

    17

  2. 4つ

    24

  3. 3つ

    7

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2019/06/11

こんなにも激しい作品は、なかなかないように思える。 縄文の思想を読み終えたあとだけに、海民の風習が生き生きと浮き立ってくる。 恋愛小説でないかと思わせるような激しい想いや武士階級への反骨精神。この幕末の武士階級への批判的な視線は司馬さん特有のものであるように思える。燃えよ剣しかり...

こんなにも激しい作品は、なかなかないように思える。 縄文の思想を読み終えたあとだけに、海民の風習が生き生きと浮き立ってくる。 恋愛小説でないかと思わせるような激しい想いや武士階級への反骨精神。この幕末の武士階級への批判的な視線は司馬さん特有のものであるように思える。燃えよ剣しかり、花神しかり。 ただ、嘉兵衛とサトニラさんの関係性が、急というか、いつのまに好意に変わったのだろうという印象を、受ける。嘉兵衛の大人び過ぎていて、好かれないという描写と、何か秘めていて事を成しそうだという描写が、やや噛み合っていないような。読みが浅いのか。

Posted byブクログ

2019/03/24

 この時期、嘉兵衛おぼろげながらかれ自身が生涯をかけてつくりあげた哲学の原型のようなものを、身のうちにつくりつつあった。  そのことは、かれの気質や嗜好と密接にむすびついている。  潮汐や風、星、船舶類の構造とおなじように、嘉兵衛は自分の心までを客観化してしまうところがあった。す...

 この時期、嘉兵衛おぼろげながらかれ自身が生涯をかけてつくりあげた哲学の原型のようなものを、身のうちにつくりつつあった。  そのことは、かれの気質や嗜好と密接にむすびついている。  潮汐や風、星、船舶類の構造とおなじように、嘉兵衛は自分の心までを客観化してしまうところがあった。すくなくとも自分のすべてについて、自分の目からみても他人の目からみてもほぼ誤差がないところまで自分を鍛錬しようとしている。  つまりは正直ということであった。しかし不正直ほど楽なものはなく、正直ほど日常の鍛錬と勇気と自律の要るものはないとおもいはじめていた。  自分と自分の心をたえず客体化して見つづけておかねば、海におこる森羅万象がわからなくなる、と嘉兵衛はおもっている。  嘉兵衛が貞代に感じた不愉快な感情は、煮物のにおいのように貞世の感覚にすぐつたわった。貞代は、 (いやな男だ)  と、ばく然とおもった。そういう感情が湧き出てしまった以上、貞代の理性は嘉兵衛のどういう部分がいやなのかということをさがし、自分を納得させねばならない。そういう目でみてゆくと、なんとも油断のならない男のように見えてくる。  第一、若いくせに言うことに淀みがない。若いということは自分自身の気持ちが整理ができないということなのである。たいていの若者は何を問われてもたじろぎ、首をかしげる。貞代のように物事の整理がついた大人からいえば、そういう若者に接すると助言者としての快感をもつのである。

Posted byブクログ

2019/01/04

高田屋嘉兵衛の子供時代。 どんどん居場所がなくなって、村から出なくてはならないところが何とも切ない。 加えて、現代にも通じる日本の文化的風景を感じてしまうところが更に切ない。 しかし、この奥さん、芯が強いな。出会う女性で男の運命も変わるような。

Posted byブクログ

2018/12/14

一巻読了。 貧家に生れながら、後に偉大な商人に成長してゆく、高田屋嘉兵衛さんが主人公。 サクセスストーリーと思って楽しみに読み始めたのですが、この巻の前半は、村社会特有の理不尽ないじめに嘉兵衛が晒され続け、正直読んでいてツラかったです。 淡路島を脱出して以降の後半は、嘉兵衛の...

一巻読了。 貧家に生れながら、後に偉大な商人に成長してゆく、高田屋嘉兵衛さんが主人公。 サクセスストーリーと思って楽しみに読み始めたのですが、この巻の前半は、村社会特有の理不尽ないじめに嘉兵衛が晒され続け、正直読んでいてツラかったです。 淡路島を脱出して以降の後半は、嘉兵衛の船乗りとしての才覚が垣間見えて、ようやく話が明るくなりつつある感じです。次巻以降、嘉兵衛の境遇が良くなる事を期待します。

Posted byブクログ

2017/10/27

全巻読んだけど好きなのでまた1巻から読む。このシリーズは1巻と最後の巻が好き。 船乗りの知識だけでなく江戸時代の文化や考え方まで分かるのでオススメ

Posted byブクログ

2017/08/10

廻船商人高田屋嘉兵衛の物語。嘉兵衛の人物の大きさ。素晴らしい。司馬さんは初読みだがもっと読みたい。詳細は→http://takeshi3017.chu.jp/file6/naiyou23901.html

Posted byブクログ

2016/05/12

http://hinbeee.blog31.fc2.com/blog-entry-2497.html

Posted byブクログ

2014/12/06

「世に棲む日々」「播磨灘物語」に続いて今年3作品目の司馬遼太郎長編作品。 舞台は江戸時代中期。主人公は武将でも政治家でもなく、廻船業者の高田屋嘉兵衛。今まで彼の名はゴローニン事件でロシアに囚われたというくらいの知識しかなく、人となりや業績などは全く知らなかったので非常に楽しみで...

「世に棲む日々」「播磨灘物語」に続いて今年3作品目の司馬遼太郎長編作品。 舞台は江戸時代中期。主人公は武将でも政治家でもなく、廻船業者の高田屋嘉兵衛。今まで彼の名はゴローニン事件でロシアに囚われたというくらいの知識しかなく、人となりや業績などは全く知らなかったので非常に楽しみである。 本巻では、彼の少年時代から海の男として身を起こすまでを描く。彼の出身は淡路島の貧家(農家)ということで、今後大廻船業者として成長していくのだからサクセスストーリーか。前半部は閉鎖的な村社会において虐めや村八分の制裁を受けたりと痛々しいものだが、彼の真っ直ぐな性格と抜群の行動力によって成功への道を切り拓いていく様は清々しい。 以下に興味深かった点を引用したい。 諸国をながめて、淡路の百姓身分の者ほど武士階級を軽侮している例は少ない。たれもが、阿波の国主蜂須賀家の祖の小六が戦国期の野盗の頭だったという俗説を信じている。 →蜂須賀小六の時代は16世紀後半であり、この舞台(18世紀後半)から遡ること200年も経過しているのに、そんな感情を持ち続けるとは、日本人は執念深く、出自を気にする民族である。土佐藩における上士と下士(関ヶ原の戦いにおける東軍方の山内と西軍方の長宗我部)が幕末まで引きずっていたことと同じか。 船上では言葉数を吝しまねばならない。声が風で吹きちぎられて相手の耳に届きにくく、たとえ無駄口でも相手は神経を集中して聞かねばならない。無駄口が続くと、咄嗟に変事を伝える時に相手の耳が馬鹿になっていることが多い。物を言えば必ず重要なことというのが船上の作法であった。 →なるほど、納得。 農家の若者が他家へ遊びに行って、尿意を覚えると、その家では用を足さず、家へ帰ってからする。或いは、そうせよ、と親が教えた。もしくはそう教える親の吝嗇を笑う話かもしれないが、それほどに農家は下肥を貴重なものとしていた。 →マナーのためかと思ったら、肥料になるから、ということか。

Posted byブクログ

2014/11/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「童心を去るとは、どうやら社会の縦横の関係のなかでの自分の位置を思いさだめ、分際をまもり、身を慎み、いわば分別くさくなれということらしいが、嘉兵衛のなかでの大人はそういうものではなく、自分の世界をつくりだす者といったことのようだ。」 淡路島の村で生まれた主人公。縄張り意識が強く、よそ者を強く排除する田舎の風習。それは今も変わらない。その中で、周囲から村八分にされ、ついには村を抜ける。兵庫で船乗りとして力をつけていく姿が力強い。

Posted byブクログ

2014/09/27

2014.9.27 高田屋嘉兵衛。爽やかな主人公。権力で圧迫感のある陸とは異なる、自由な海。権力構造から抜け出し、自由な海を舞台に、嘉兵衛が成長していく。 司馬遼太郎が描写する青年の恋模様は、秀逸だね。淡い青春という感じがします。

Posted byブクログ