月の森に、カミよ眠れ の商品レビュー
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ううう面白い。荒削りだけどそれが神話の語りに見事にはまってます。とても好みだった。日本人だけど人名がカタカナだったりするのが読みにくそうで今まで読んでなかったんだけど。 テーマは神殺し。 飢えないために太古の森を切りひらいて田を作ろうとする人間たちと、森を守ろうとする蛇神。その間で揺れる巫女の娘。 人間的な恋物語に、三輪山神話のモチーフもうまく使われてたりして、うまいなあって感服。 ムラを豊かにしたいという人間の思い、それを超えるところで森を守ろうとする神の子。誰も悪くないのに、起こってしまう悲劇。 「もののけ姫」とかなりテーマがかぶってるんですが、こっちのほうが先に発表された作品だよな。宮崎駿と上橋菜穂子を誰か比べてみてほしい・・・。 神殺しって「竜の子太郎」もある意味そうなのかなあとふと思い出したり。
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稲作が広がり定着する過渡期、縄文時代辺りが時代設定の 古代ファンタジーでした。歴史ファンタジーと言っても過言で ないかな。 人間が短期的視野しかもてないのは仕方のないことだけれど 他の動物と違い、生態系への影響力が強いことを認識しなければ という、すこし切ない余韻が残り、そこがとても良かったです。
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人は自然の一環であり、自然の中で生かされているのは事実だけど、同時に自然を食い物にしなければ生きていけない生き物でもあるということ。 人は本能だけではなく「情」を持つ生き物であり、その「情」の中に「欲」もあり、その「欲」は必要最低限のものを求めるところからスタートしてもどこかで「より多く」を求めるようになってしまう悲しい性を持つということ。 「ムラ」の人びとが「カミ」を封じ込めようとしたのはただ「自分たちが生き延びるため」に過ぎなかったはずなのに、その悪意なき選択がそれまで守り続けてきたもの、しかもそこに秘められたもっと大きな世界の崩壊への第一歩であることには気が付きようもなかったということ。 いやはや何とも深いテーマです。 人の世がどんなにかわろうと、「掟」は変えられぬ。 むしろ、今のような時のために「掟」はある。 「掟」があるということを知っていてさえ、「かなめの沼」を踏みにじったように、人は、してよいことと、いけないことが、わからぬからだ。 「掟」をいちどやぶることは、崖からちょろちょろとふきだした、湧き水のようなものだ。 しだいにまわりを削り、人にとっては、考える気にもならぬほど長い時の後に、その水におのが身を削られて、崖は崩れ去る。 現代ではどんな「掟」があったのかさえ人々の記憶にさえ留められていない「ヒト」と「カミ」の盟約。 そもそもそんなものが本当にあったのかどうかさえわからないけれど、少なくとも現代に生きる私たちは科学万能(最近でこそ懐疑的な風潮もあるけれど)の世の中で暮らし、「自然の生態系の中の一生物」というよりは「経済的動物」に変貌してしまったことにより、死生観も変わってしまったことこそがこの「掟」の意味するところなのかもしれません。 私たちは「死」を恐れ、忌み嫌い、「若さ」に価値を求めるようになってしまったけれど、そしてその「若さ」が象徴するのは動的 & エネルギッシュなものとも言えるわけで、であればこそ数に頼み(要は種としての繁栄)、進歩を求め続けてきたわけだけど、ここまで進歩してしまったのは生きとし生けるものの中で人間だけであるということに今一度思いを馳せる必要があるのかもしれません。 (全文はブログにて)
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重いテーマで、心に残る一冊。上橋さんの作品は答えの無い問いを投げかけてくるようなものが多く、考えさせられます。「どうしようもないことを、どうにかしたくて、切ない感じ」というか。厳しくも優しい物語です。オススメ。
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神々がいた時代から、人の時代に変わっていく。 これまで、その間の時代はどんなだったか、うまく想像できずにいたけれど、この物語を読んで、ほんのすこし見れたように思う キシメ、タヤタ、ナガタチ…… 3人それぞれの視点から、それぞれに感情移入しながら読んだ みんなそれぞれが...
神々がいた時代から、人の時代に変わっていく。 これまで、その間の時代はどんなだったか、うまく想像できずにいたけれど、この物語を読んで、ほんのすこし見れたように思う キシメ、タヤタ、ナガタチ…… 3人それぞれの視点から、それぞれに感情移入しながら読んだ みんなそれぞれが愛し合って想い合ってた 運命は、時代は、3人の想いにかまわず動いてしまうけれど 3人の真摯な心に…涙
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力強い話。 カミは死ぬのね。ニーチェの言葉を思い出す。 ヒトとしてカミとして、それぞれの思い。気持ち。 それでも歌い、歌い返す者たち。ホタル。闇。渦。大蛇。 満月の夜にホタルを見せてくれるなんて、なんて素敵な人なのかしら。
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「守り人」シリーズや「獣の奏者」とは少し毛色の違う作品でした。 読後にスッキリしたい場合にはあまりオススメしない。 反対に自分の中であれこれ考えたいな、って時には良い材料かも。 【収録内容】 序章 <訪れた者>と<カミ>のすもう 第一章 過ぎ去りし時の語り 第二章 夏...
「守り人」シリーズや「獣の奏者」とは少し毛色の違う作品でした。 読後にスッキリしたい場合にはあまりオススメしない。 反対に自分の中であれこれ考えたいな、って時には良い材料かも。 【収録内容】 序章 <訪れた者>と<カミ>のすもう 第一章 過ぎ去りし時の語り 第二章 夏の満月の夜まで 終章 「むかし、むかし……」 あとがき 文庫版あとがき <解説>失われしものへの哀歌 ――石堂藍
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「守り人」シリーズの作者の初期作品。 古代日本を舞台としたファンタジー。大きなるクニに飲み込まれるムラ、オニとして滅ぼされるカミ、大きく歴史がうねり人の生き方が変わっていく頃の物語。 自然に根付いた原始宗教観を大蛇に託して見せるやり方が巧いです。正史を裏から見たような構成も面白か...
「守り人」シリーズの作者の初期作品。 古代日本を舞台としたファンタジー。大きなるクニに飲み込まれるムラ、オニとして滅ぼされるカミ、大きく歴史がうねり人の生き方が変わっていく頃の物語。 自然に根付いた原始宗教観を大蛇に託して見せるやり方が巧いです。正史を裏から見たような構成も面白かったです。 でも物語としては切ないですね。オニとされ封じられたカミと、カミと人との境で悩む巫女の心のすれ違い、そして一瞬の逢瀬を描いた物語ですから。
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読み終わった後、不思議な思いを感じました。 俺はどっちかって言うと、歴史とか昔の事には無関心で、深く考えた事は無かったんだけど、 この作品を読んで、少しは考えるようになりました。 今の自分があるのは、今の世界があるのは、昔があったからなんだよね。 当たり前のことだけど、でも、普段...
読み終わった後、不思議な思いを感じました。 俺はどっちかって言うと、歴史とか昔の事には無関心で、深く考えた事は無かったんだけど、 この作品を読んで、少しは考えるようになりました。 今の自分があるのは、今の世界があるのは、昔があったからなんだよね。 当たり前のことだけど、でも、普段は忘れている事。なんか不思議だよね。 この作品は「もののけ姫」に近いです。もののけ姫が好きな人は楽しめると思います。 2010.09.04 読了
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