月の森に、カミよ眠れ の商品レビュー
上橋菜穂子作品にしてはまどろっこしい展開だなと思っていたら、ここ最近の作品でなく、初期の作品らしい。
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上橋菜穂子の初期の作品。班田収授法が行われていた時代に、九州の山奥の小さなむらが朝廷の定めを守るために稲作を行おうとする村長たちと古いカミのしきたりを守ろうとする巫女とカミと人との間に生まれた人との対立と交流を描く。
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時代の流れに取り残された貧しい集落。貧しさから脱却するために近代化を図るも古来からの掟が村人を縛る。ゆえに村人は神殺しを決行することに。ただ新たな時代となっても貧しさからは逃れられないという、虐げられた村人の姿は悲しみしかない。
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私の好きな、上橋菜穂子作品の「らしさ」が織り込まれている世界観。他の作品と比べれば確かにやや読みづらいところもあるが、初期作品ということで、納得できる。 実際、民俗学などをより理解できていれば、さらにこの作品を読み解くヒントになり得るのかもしれないが、そう言った知識がなくとも、...
私の好きな、上橋菜穂子作品の「らしさ」が織り込まれている世界観。他の作品と比べれば確かにやや読みづらいところもあるが、初期作品ということで、納得できる。 実際、民俗学などをより理解できていれば、さらにこの作品を読み解くヒントになり得るのかもしれないが、そう言った知識がなくとも、まるで実際に語りかけられているように読み進めることができた。 この話自体はある程度もととなる話はありつつも、資料の少なさなどから、フィクションで肉付けられた部分が多いとのことだが、「この話、柳田国男あたりが伝承として書いてなかったっけ」なんて思ってしまうようなリアルさがある。 それは、(その数少ない資料を読み込んだ上での)事実から地続きのフィクションであるということ、そして、空気の生々しさ、まるでムッと漂ってくるような人間と、そして精霊たちの気配にある。もしくは、私自身の中にある「畏れ」を呼び起こすからかもしれない。 現代で宗教といえばどうしても、大きな組織か、もしくは怪しい信仰宗教となってしまった。だが、我々が信仰する宗教とは、そういった「名のついたもの」ばかりだろうか? 我々自身がこころのなかで信仰している、名もつけられないカミの存在が、この本の生々しさをより一層際立たせているように思う。 また他の作品を読み直したくなってきた。彼女の本を母国語で読めることが、本当にうれしい。
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2014.8/1 安定の上橋作品。カミと人の交わりのあった頃の物語。神の気高さ、人間の愚かさ、悲しさを、自然の美しさと相まって読ませてくれる。児童書なんで字数はそう多くはないのに、ちゃんと真剣勝負で紡がれている。
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人間と自然と神と。密接な関係があった頃の話。 言いたいことは分かるけど、なんかすりガラス越しに見てるようで、いろいろイライラした。 ラストのおばあちゃん2人は良かった、ような。
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古代文化においてこの極東にある島国に 大陸から多くの帰化人が押し寄せ 彼らが持ち込んだ全体観を見失う物質至上主義の台頭に翻弄され 大自然との絆でつながる長い縄文人の自律文化に 依存という武力を背景とする搾取と支配の天皇制による政治がはびこり 利己的部分観にとらわれていく新たな不安...
古代文化においてこの極東にある島国に 大陸から多くの帰化人が押し寄せ 彼らが持ち込んだ全体観を見失う物質至上主義の台頭に翻弄され 大自然との絆でつながる長い縄文人の自律文化に 依存という武力を背景とする搾取と支配の天皇制による政治がはびこり 利己的部分観にとらわれていく新たな不安と恐怖 その過渡期の変動に巻き込まれてあえぐ人々をモティーフにした物語 文化人類学者として沖縄からアボリジニへと関わり その後創作活動へと進展した上橋さんの二作目です お互いの個を尊重することでつながる 対等観による信頼関係の現場を踏まえた 中身の濃い意識と心を今に伝えてくれる客観性の中に 主観的な思いを織り込んだ壮大なストーリです
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小学生の時に読んで以来の再読。 舞台は古代日本……多分平安? で、隼人のある村を舞台にしたファンタジー。 あとがきによると、この物語は中学生でもわかるように意識して書かれているらしい。漢字にはいちいちふりがなが振ってあるし、そんなに長い小説でもない。だからといって大人が楽しめな...
小学生の時に読んで以来の再読。 舞台は古代日本……多分平安? で、隼人のある村を舞台にしたファンタジー。 あとがきによると、この物語は中学生でもわかるように意識して書かれているらしい。漢字にはいちいちふりがなが振ってあるし、そんなに長い小説でもない。だからといって大人が楽しめない児童書というわけではない。 実際、初めて読んだ時と今回読み直した時の感想はけっこう違っているけれど、今は今で歴史や宗教、文化の予備知識がついたおかげで新しい観点から楽しめた。当時の私はキシメとタヤタ、ナガタチの恋愛物語にばかり気をとられてどきどきしていた。今も勿論その辺りの話は大好きだが、古代の人とカミの在り方と変容について考えさせられたり、朝廷の出現が他の地域にどんな影響を及ぼしたか、古代日本は都と地域の発展度合いにかなりの差があったこと(小学生当時の話はこれを縄文時代が舞台の話だと思っていたくらい)など歴史の教科書を読む分では素通りしてしまう部分に目を向けることができた。 ただし、あとがきで著者も言っているようにこれはあくまでファンタジー。溢れる想像力に裏打ちされた、とてもリアルなファンタジーだ。 ただちょっと気になったところは、頻繁に視点移動が起こること。そのせいでどの登場人物の言動、気持ちなのか混乱する箇所が多々あった。 それにしても、上橋菜穂子さんが書く恋愛はいいですね。私は歯の浮くような台詞とシチュエーションを前面に出す恋愛ゲームや少女漫画にはのめりこめないが、この小説や同著者の『狐笛のかなた』にはかなり魅了された。静かな愛の形、触れ合い。
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神話や古事記の世界を上橋菜穂子さんが書かれたらこうなるのか。。 朝廷とムラ、八岐大蛇(八岐大蛇)や、櫛名田比売、タヤタの不思議でせつない、かなしい物語。
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古代日本が舞台。 人とカミとの掟をめぐる、切ない物語。巫女のカミンマであるキシメと、カミの子、ナガタチとタヤタが己の運命を背負いながら、自分の中の思いと葛藤する。何だか、子どもの頃よく見た「日本むかし話」を思い出してしまった。あれも、子どもが見るアニメなのに、切ないラストが結構多かった気がするな。私、こういう少し陰鬱だけど心に訴えるような古代の日本の物語の挿絵、少しやってみたいかも。
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