太陽の子 の商品レビュー
子どものころに一度読んだことがありました。たぶんふうちゃんと同じくらいの年頃に。その時、どこまで理解して読めていたのかはわからないけど、衝撃を受けた印象深い一冊だったと記憶しています。 神戸生まれのふうちゃんの両親は沖縄出身。琉球料理の店を営んでいます。みんなに愛されて素直に育っ...
子どものころに一度読んだことがありました。たぶんふうちゃんと同じくらいの年頃に。その時、どこまで理解して読めていたのかはわからないけど、衝撃を受けた印象深い一冊だったと記憶しています。 神戸生まれのふうちゃんの両親は沖縄出身。琉球料理の店を営んでいます。みんなに愛されて素直に育ったふうちゃんのお父さんが心の病気にかかってしまう。その原因が昔の沖縄の戦争にあることに気づいたふうちゃんは沖縄のことを少しずつ知っていく。ふうちゃんの周りにいるみんなの優しさには悲しみが隠れていることに気づいていく。 私たちが知らない沖縄、知ろうとしてなかった沖縄が見えてきます。美しさもつらく悲しいことも。 今はこの本の頃のようなあからさまな沖縄差別はないけど、基地問題のように沖縄に苦しみを押し付けている部分があるわけで。考えさせられる一冊です。 お話を通してふうちゃんの無垢な健気さに打たれ、11歳の少女がここまで深く考え強く優しくなれるだなんてすごいことだと思い。 結末がやるせなくて辛かった。でもリアリティーがあった。読む価値のある本。
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沖縄の物語ではあるが、沖縄のことだけではない。普遍的な人間の人としての「悲しみ」がテーマの物語だ。どの登場人物にも、背景に、生きていくことのつらさ、悲しさがつきまとっている。生きることに対し、どれだけ誠実に向き合えるかが問われていく。キヨシ君が良い。おとうさんは、あと少しで手が届いたのかもしれない幸福をすり抜けて亡くなってしまうが、それが幸福だったのかもしれない。沖縄に帰るのが怖かったのだろうか。残念だ。 あとがきからすると、実際に著者の兄が子どもを残して亡くなっているようで、それが、この物語を書くきっかけになっているらしい。兄の自死の理由を探る旅であったのかもしれないが、だからか、その理由は明確にはならない。残された者が、抱えていくしかないのかもしれない。 また、キヨシ少年やお父さんのような、そういった精神的に躓き、苦しんでいる人を、社会として、どう受け入れて支えていくかが問われている。 とはいえ、若い頃には、もっとひねくれていたから、そんなふうに素直には読めなかったかな、とは思う。 おとうさんのつらさよりも、物語の終盤、ろくさんが自分の失った手を見せて、淡々と語る部分が身に沁みた。小さな我が子を殺めなければならない、そういうことが、沖縄戦の中では多くあった。波照間島から西表島への疎開してマラリアで亡くなった話など、以前、島で碑を見たことなどを思い出した。それらは、沖縄が自ら選んだことではなかった。そのことを、日本人は、どれくらいを本当に知っているだろう。 ずいぶん昔、沖縄の人たちと祭りを行う際、あれこれと話をしている中で、ヤマトの人たちは沖縄のことを日本だと思っていないだろう、と言われたことがあった。その時、私は「そんなことは思ったこともない:と答えたが、その言葉の裏には、長らく、日本人として認められてこなかった、という沖縄の人たちの悔しさや悲しさが秘められていたことに、その時、私は理解ができていなかった。 沖縄の現実は、これが書かれた頃から、ほとんど変わっていない。そのことについては、考え続けていく必要がある。
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とても心に残った。もっともっとたくさんの日本人の手に渡ってほしい。久しぶりに良書に出会ったきがした。
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この豊かな国の基礎をなしているのは、戦争で犠牲となった多くの人々の死と悲しみである。作者の強い思いは、登場人物達の思いやりの心を描くことを通じて、世代を超えて伝わっていく。読み終えて、そうなって欲しいと痛切に感じました。
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ネタバレ 平成10年(底本昭和53年)刊行。◇描れるのは昭和40年代初期の空気感なのだろう。マンション、ニュータウン、郊外ができる前、できた頃の時代風景のように感じる。つまり、高度成長期、石油ショック前夜に近い時期の少年・少女のありようで、現在におけるリアリティとしてはどうにも…。また沖縄に対する目線も一面的(ステレオタイプ的)に感じる。◇バブルの前後による社会変動が、文化的心性にどのような影響を与えたか、少し考えてみる必要があるかも。もっとも、物語そのものは悪くないが…。
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大学時代、沖縄戦を語る戦後メディアの変遷について卒論を書きました。だから、沖縄の人たちが長らく本土からの差別に苦しんでいたかも、どんな戦いを経験したかも、それをどれほどの辛苦をのんでここまで持ち直したかというのもは知っていたつもりでしたが、本当の意味では「わかって」はいない、と痛...
大学時代、沖縄戦を語る戦後メディアの変遷について卒論を書きました。だから、沖縄の人たちが長らく本土からの差別に苦しんでいたかも、どんな戦いを経験したかも、それをどれほどの辛苦をのんでここまで持ち直したかというのもは知っていたつもりでしたが、本当の意味では「わかって」はいない、と痛感させられる本でした。今だって私たち、知らなければいけない多くのことに目をつぶって過ごしてる。本当の勇気とは静かで優しくて厳しいものである。自分の後ろにあった歴史がどのようなものだったか、知る必要がある。『兎の眼』を読んだ時もものすごい衝撃で、今まで自分の視野がどれだけ狭かったか思い知らされたけど、今回は自らの思考の浅さを痛感した。皆に読んでもらいたい一冊。
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重たい。ふうちゃんもキヨシ君もみんなも明るく優しいのに。 沖縄を題材にした話であって、沖縄の悲しみだけの話ではない。
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初めて読んだのは小5のとき。ふうちゃんの明るさに引き込まれて、何度も泣きながら読みました。 悲しい沖縄の過去を描いた話だけれど、ふうちゃんを囲む人々はみんな優しくて、人の温かさを感じる。なかなか奥深いです。 昔に書かれた本だけれど、今も沖縄の立場は相変わらず弱いまま。非道い国だと...
初めて読んだのは小5のとき。ふうちゃんの明るさに引き込まれて、何度も泣きながら読みました。 悲しい沖縄の過去を描いた話だけれど、ふうちゃんを囲む人々はみんな優しくて、人の温かさを感じる。なかなか奥深いです。 昔に書かれた本だけれど、今も沖縄の立場は相変わらず弱いまま。非道い国だと思います。
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私も沖縄に6年弱住んでいた。だからこそ、共感し、共感できない部分がある。最も共感できるところは、沖縄は住んでみると、胸が痛くなったり、だから沖縄の人はと呆れることがあったりして、楽園のイメージと大きくずれのある現実を伝えたいと思ったとこ。 共感できない所は、沖縄は楽園ではない。す...
私も沖縄に6年弱住んでいた。だからこそ、共感し、共感できない部分がある。最も共感できるところは、沖縄は住んでみると、胸が痛くなったり、だから沖縄の人はと呆れることがあったりして、楽園のイメージと大きくずれのある現実を伝えたいと思ったとこ。 共感できない所は、沖縄は楽園ではない。すべての人が優しいわけでもないという当たり前なことが伝わっていない。あと、米軍が悪かったりという偏見もそのままで、沖縄のいい雰囲気の一部は、米軍がいて、気楽な風をもたらしてくれるからとかも伝わっていないとこ。 私は、本当に色々なことを沖縄で見た。最初の2年、楽園の人たちの絆は固く、友達ができず、ベランダで泣いた私。クリスマスに家族と離れ、孤独を噛み締める米軍の若者。その彼らを愛してもいないのに結婚し、ブランド品を持ち、同じ国出身の妻とランチするフィリピン妻。平日の夜中3時に那覇の上空を騒音をたてて飛ぶ米軍機。政治家は静かな高級ホテルに泊まるので、知らないと思う。大切な所では、移住先も日本も信じていない帰国日系人。基地内パレードに友達が参加する日や、沖縄だけの休日には、ないちゃーがと思われないように息をひそめて一人で過ごす。そして、時に、友達の祖先が戦争を生き延びて、友達が生まれたことに感謝をする。 伝わっていない現実を先に並べてしまったけど、私は沖縄が大好きだ。贅沢をするのではなく、島サバをはいて、海辺で、ハンバーガーを友達とほうばる。最初は暇をもてあましたけど、友達さえいれば、一日300円でも幸せを感じる。米軍がもたらしてくれた自由な気風。したい恰好をしていても、誰もけばいなんて言わない。何もない贅沢さがそこにはあった。 最期をアンハッピーにしたのは反対。沖縄には住んで、現地の友達ができた人にしか分からないものがあり、それを紹介した貴重な本だと思うので、★4にしたいけど、何かが足りない。ごめんなさい。
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曼珠沙華が咲く9月中旬からレンゲソウが咲く4、5月までの間の物語。11歳の少女が目の前に起こってる出来事や周りの人たちとの関わりの中で、なぜ?と考えて必死に向き合っていきます。 ゆっくり読もうと思ったものの、のめり込んでしまい半日で読み終わってしまいました。 初めて心に残る本を...
曼珠沙華が咲く9月中旬からレンゲソウが咲く4、5月までの間の物語。11歳の少女が目の前に起こってる出来事や周りの人たちとの関わりの中で、なぜ?と考えて必死に向き合っていきます。 ゆっくり読もうと思ったものの、のめり込んでしまい半日で読み終わってしまいました。 初めて心に残る本を読みました。
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