ユーゴスラヴィア現代史 の商品レビュー
この本では締めくくりとして、 「民族自決と国民国家は果たして本当に最良の選択なのだろうか」 という問いを投げかけている。 ユーゴスラヴィアでは経済問題を端に発し、各民族が独立する過程において凄惨な殺し合いとなった。これは何もユーゴに限らない。イスラエル・パレスチナ、インド・...
この本では締めくくりとして、 「民族自決と国民国家は果たして本当に最良の選択なのだろうか」 という問いを投げかけている。 ユーゴスラヴィアでは経済問題を端に発し、各民族が独立する過程において凄惨な殺し合いとなった。これは何もユーゴに限らない。イスラエル・パレスチナ、インド・パキスタン、同じではないだろうか。 もしかしたら、うまくいった国だってあるかもしれない。 国民国家は民族にとって悲願であり、何を持ってしてでも否定できないと言われるのかもしれない。 しかし、民族紛争は争いの種を生み、それはどちらかが絶滅するまで互いを恨み合い、いつまでも続く。 例えばボスニアのような多民族国家において、闘争を和らげる手段はないだろうか。 著者は別の帰属意識を持つことにより、争いを軽減できるのではないかと提案している。 例えば、同じく居住する地域に対しての愛着や、同じ言葉を話す者同士の愛着など、民族という枠だけにこだわり過ぎず、同じレベルで相対化できれば、民族紛争は軽減できるのではないか。 ベルギーにおいては、それが成功していると書かれている。 僕は、これを日本人的な発想のようにも思える。 ユーゴスラヴィアという国はそもそも、それを実現しようとして、失敗した国だったように思う。 ソ連のように、上からの統制で成り立っていた社会主義国家とは違い、チトー率いるユーゴは民族の枠を越えてドイツと戦い、互いに協調し合い、国を育もうとして、そして失敗していった。 課題は、経済問題においての脆さと、民族同一性以外の面について、プロパガンダ・結束力の弱さだろうか。
Posted by
民族、国家、宗教の絡み合い。 ユーゴにおいても壮大な「実験」でもってこれらのパズルを解こうと試みたがあえなく挫折を見た。 思うにこの問題は人間の業そのものであり、未来永劫解けることはないんだろうな。 悲観的ではありますが、これらがこんがらがってしまった場合には行くところまで行きつ...
民族、国家、宗教の絡み合い。 ユーゴにおいても壮大な「実験」でもってこれらのパズルを解こうと試みたがあえなく挫折を見た。 思うにこの問題は人間の業そのものであり、未来永劫解けることはないんだろうな。 悲観的ではありますが、これらがこんがらがってしまった場合には行くところまで行きつかないと収まりがつかないんでしょう。 故にせめてこんがらないよう、時には「大人の対応」も必要ということです。
Posted by
ふくろうシリーズの「バルカン半島」も編集している著者の新書版。 現代史とはあるが、簡単に近代史の流れからユーゴスラヴィアが成立し、それが崩壊していく様子を概論的に描いている。ソ連が崩壊したときには、社会主義国家の経済的破綻と民族主義が重なっていたが、ソ連とは違い、緩やかな連合で...
ふくろうシリーズの「バルカン半島」も編集している著者の新書版。 現代史とはあるが、簡単に近代史の流れからユーゴスラヴィアが成立し、それが崩壊していく様子を概論的に描いている。ソ連が崩壊したときには、社会主義国家の経済的破綻と民族主義が重なっていたが、ソ連とは違い、緩やかな連合であったユーゴスラヴィアでも、民族や言語の壁や近親憎悪ということは乗り換えられなかったのだと思う。 報道では、大セルビア主義を掲げたセルビアが悪い論調があったが、これは報道偏重や歴史的な流れの中で進んできたことだとわかった。1996年発刊で、この後コソヴォ紛争など、旧ユーゴはいろいろな意味で、民族や人間の姿を歴史の中で提示しているように見える。
Posted by
東欧と西欧、またトルコが近いこともあり数奇な運命をたどるユーゴスラビア。 読めばだいたい分かるので多言を要さないが、やはり「民族とはなにか。単に国家を与えて自決させればよいのか。」を考えざるを得ない。 日本はなかなか民族を意識しないが、ないわけではない。 ユーゴスラビアはヨーロッ...
東欧と西欧、またトルコが近いこともあり数奇な運命をたどるユーゴスラビア。 読めばだいたい分かるので多言を要さないが、やはり「民族とはなにか。単に国家を与えて自決させればよいのか。」を考えざるを得ない。 日本はなかなか民族を意識しないが、ないわけではない。 ユーゴスラビアはヨーロッパ連合への加入を模索する中、入れば「民族の克服」をなし得るであろう。
Posted by
民族紛争なんかじゃない。 その背後にあった経済的理由。 メディアによって民族紛争という言葉に摩り替えられた現実。 マスゴミに踊らされないためにも、情報を見極める「眼」を持たなければならない。
Posted by
ユーゴスラヴィアの近現代史について、ざっとわかる。 大変わかりやすく、単なる歴史だけでなく、ユーゴ内戦を通じ民族の在り方について考えさせられる本。 個々の人物や事件についてはあまり詳細には書かれていないので、それらはまた別の本で。
Posted by
ユーゴスラヴィアの歴史を知りたいと思い購入。 冷静な語り口で、若干読みづらい部分もあったものの(私の読解力不足だと思いますが)、「ユーゴスラヴィア」がどのような歴史を辿ったか掴むのには最適だった。 人道的介入、メディアなど、内戦についての記述部分からは様々な論点について更に深...
ユーゴスラヴィアの歴史を知りたいと思い購入。 冷静な語り口で、若干読みづらい部分もあったものの(私の読解力不足だと思いますが)、「ユーゴスラヴィア」がどのような歴史を辿ったか掴むのには最適だった。 人道的介入、メディアなど、内戦についての記述部分からは様々な論点について更に深く掘り下げて考えていかねばならないと痛感させられた。
Posted by
この著書は、民族・宗教対立による凄惨な内戦を通して、多民族国家の悲劇、統合・分裂が交差する複雑な歴史を地域内部の動きと国際社会の対応から解説している。 第2次大戦後のユーゴスラヴィアは、東欧の社会主義国家とは一線を画している。ソ連を反面教師として自主管理社会主義、非同盟政策を2...
この著書は、民族・宗教対立による凄惨な内戦を通して、多民族国家の悲劇、統合・分裂が交差する複雑な歴史を地域内部の動きと国際社会の対応から解説している。 第2次大戦後のユーゴスラヴィアは、東欧の社会主義国家とは一線を画している。ソ連を反面教師として自主管理社会主義、非同盟政策を2本柱として、独自の社会主義国を形成していたことは実に興味深い。とりわけ緩い連邦制のもとで、各共和国の権限が強い国家連合形態に近い連邦制を維持していたチトーの強大な求心力と巧みなパワーバランスは賞賛に値する。その一方で連邦そのものは危うい均衡の上に成り立っていたことは彼の死後、歴史が証明している。 例えばボスニア・ヘルツェゴビナのような微妙な民族構成の共和国の場合は、政治・社会・経済上のポストを配分し合うことが国家のバランスを維持するには一般的であった。チトー死後は、経済危機が進行するに伴い、先進共和国が後進地域への援助を拒否するなど、共和国の利害が対立し、やがて共和国の利害対立はやがて民族対立へと転化していった。 ソ連が崩壊し、脅威が取り除かれる過程の中で、東欧諸国は社会主義体制から民主化へと移行していくわけであるが、ユーゴスラヴィアも連邦を維持していく必要が無くなっていった。民族自決に基づいて築かれてきた社会主義連邦制であったが、民族自決のアイデンティティに火が点くと、連邦国内の民族対立は激化し戦場は泥沼化していった。 結論的にはユーゴ紛争が発展した切っ掛けとは、民族の長い歴史の中で、お互いの誇りや憎悪が交織し合い、それが引き金となって生まれた民族・宗教対立であると言える。
Posted by
自分が知っている範囲のユーゴスラヴィアといえばサッカーと、漫画『石の花』で描かれていたユーゴ紛争くらいで、その歴史に関してはほとんど知らなかった。 この一冊は第一次世界大戦前から96年のボスニア紛争和平までを分かり易くまとめたものとなっており、歴史が苦手な自分でもその概要を上手...
自分が知っている範囲のユーゴスラヴィアといえばサッカーと、漫画『石の花』で描かれていたユーゴ紛争くらいで、その歴史に関してはほとんど知らなかった。 この一冊は第一次世界大戦前から96年のボスニア紛争和平までを分かり易くまとめたものとなっており、歴史が苦手な自分でもその概要を上手く捉えることができたと思う。 ユーゴスラヴィアという国は大国に運命を左右され続けたように感じた。 ユーゴスラヴィアという国が生まれたのも分裂したのも大国の思惑があったのではないか。 勿論それ以上に紛争に至るまでは複合的な要素があったこともよく書かれていたが。 またこの本を読むまではセルビアが悪いというイメージをずっともっていたのだけど、著者はあくまで中立的なスタンスを貫いている点にも好感が持てた。 他にも自主管理社会主義など興味をそそるワードが出てきて興味深く読めた。 残念なことに初版の関係で99年コソボ紛争におけるNATO軍のベオグラード空爆まではカバーされていないので、その辺は自分でフォローする必要がある。
Posted by
[ 内容 ] 各共和国の相次ぐ独立や、激しいボスニア内戦の推移は、ユーゴスラヴィアを“多民族国家の悲劇”として、世界中の目をくぎづけにした。 戦後、独自の路線を歩んだ連邦国家の成立をはさんで、統合と分裂が交差する複雑な歴史を、地域内部の動きと国際社会の対応から描くことで、九五年末...
[ 内容 ] 各共和国の相次ぐ独立や、激しいボスニア内戦の推移は、ユーゴスラヴィアを“多民族国家の悲劇”として、世界中の目をくぎづけにした。 戦後、独自の路線を歩んだ連邦国家の成立をはさんで、統合と分裂が交差する複雑な歴史を、地域内部の動きと国際社会の対応から描くことで、九五年末の「和平協定」以後の情勢に確かな視点を提示する。 [ 目次 ] 第1章 南スラヴ諸地域の近代 第2章 ユーゴスラヴィアの形成 第3章 パルチザン戦争とは何だったのか 第4章 戦後国家の様々な実験―連邦制・自主管理・非同盟 第5章 連邦解体への序曲 第6章 ユーゴスラヴィア内戦の展開 終章 紛争からの再生をめざして [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
Posted by