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孤独の発明 の商品レビュー

3.9

56件のお客様レビュー

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2011/10/02

著者の自伝のような、少し違うような作品。 定義としては私小説のようだけれども、日本のそれとは全然違う。 かなり骨太に、記憶をめぐる思考を語る。 (それはそれで素晴らしいけれども)情景の中に感情を読み込んだり、そういう空気を写し取るようなものではない。 特におさめられた二作目、『...

著者の自伝のような、少し違うような作品。 定義としては私小説のようだけれども、日本のそれとは全然違う。 かなり骨太に、記憶をめぐる思考を語る。 (それはそれで素晴らしいけれども)情景の中に感情を読み込んだり、そういう空気を写し取るようなものではない。 特におさめられた二作目、『記憶の書』は強烈。 どのエピソードが、ではない。どの一文が、でもない。 膨大な物語がおさめられていながら、無駄な一文、冗長な語りがあり得ない。 結論が示されるわけではなく、煮詰められた考察、をそのまま呈示してみせたような本。 考察の対象は、父への子の、子への父の眼差しを表象としながら、自らの内へ内へ向かっていくもの。 父の死から生へ、そして自らの生に遡って(明示されているわけではないけれど、息子を見る眼差しは反転して、息子にとって父である自身の死、というか消滅、社会的な死も含めた死、記憶の中の生も含めた生、に向かっている)

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2011/06/26
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

【概要・粗筋】 見えない人間である父を何とか理解して語ろうとする「見えない人間の肖像」と、古典的な著作や聖書、詩などを引用・言及しつつ、孤独や記憶、文学などについて語る「記憶の書」の二部構成からなるポール・オースターの初期の作品。 【感想】 小説を期待していただけに第二部の「記憶の書」にややとまどった。第一部は、自己完結して他者を必要としないようでつかみ所ない父親の一生を巡る物語で、自伝的小説として読め楽しめた。一方、第二部は、エッセイとも評論とも自伝的小説とも云えるもので、そして、ポンポンと語られている内容が飛ぶから、あんまり理解できず、字面をただ読んだだけだった。だから、評価しようがない。もっとも、理解できるようにもう一度読み返そうとは思わなかった。 でも、第二部で、Aが16歳のときに恋していた少女とロンドンで偶然彼女を見かけた箇所(P237)は気に入った。

Posted byブクログ

2011/05/08

先生。そう呼びたい。この人は舞台装置のような仕掛け作りが好きなのだろう。文章ははっきりしないが、舞台上でどこまでもトントンとやっていけそうな作風。全てが親父をすり抜けてゆき、たまに親父の意識した何かが少し親父に留まった的書き方に感銘を覚えた。

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2011/04/26

http://blog.goo.ne.jp/abcde1944/e/dd4c8b056f7f4cd8dfbacdc4117b5583

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2010/08/27

むずい。ひたすらほそーいふかーい穴を掘り続けるような感じだった。仕事も何もなくなってぶらぶらする時が来たら再読したい。

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2012/07/12

 作者が自分の父について書いた本。エッセイのような自伝のようなものであるのに、いわゆるそれとはまるで違うものにしてしまうのだからやっぱりオースターはすごい。  書かなければいけないと思い立ったところから物語を終わりにするところまで、何を残したいのか何故書くのか、作者の気持ちと彼の...

 作者が自分の父について書いた本。エッセイのような自伝のようなものであるのに、いわゆるそれとはまるで違うものにしてしまうのだからやっぱりオースターはすごい。  書かなければいけないと思い立ったところから物語を終わりにするところまで、何を残したいのか何故書くのか、作者の気持ちと彼の父親という一人の人間について。家族というもの、人間というもの、生と死、生き方、人生。非常にプライベートな作品でありながらパブリックに仕上げた作品。

Posted byブクログ

2016/07/31

前半「見えない人間の肖像」。 孤独の内に亡くなった自分の父親を描いた作品。 一人の人物を描いた小説と言えば、その人物を主人公にした物語が普通だが、この小説は違う。沢山のエピソードで語られるのは、あくまで父親の姿。まさしく文字で書かれた「肖像画」であり、「物語」では無い。 通常の物...

前半「見えない人間の肖像」。 孤独の内に亡くなった自分の父親を描いた作品。 一人の人物を描いた小説と言えば、その人物を主人公にした物語が普通だが、この小説は違う。沢山のエピソードで語られるのは、あくまで父親の姿。まさしく文字で書かれた「肖像画」であり、「物語」では無い。 通常の物語ではせいぜい数ページで語られる人物の姿を、100ページ以上に亘って描いていく。しかし冗長ではなく、見事に選択された言葉を用い執拗に描いていく。 緻密だがせせこましくは無い。パワーは有るが静的。密度は濃いが重くは無い。そして作品自身が持つ圧倒的な存在感。 凄いです。 後半「記憶の書」 さて困ってしまう。余りに哲学的。非常に晦渋。 どうやら書くことの意味と孤独の関係を描こうとしているらしいとしか判らない。そもそも表現が詩的だし、さらに多くの神話・古典知識が要求される。 本音の話、へばってしまい、読みきれなかった。最後のページまでたどり着いたけど、内容的には理解できていない。 凄いことだけは判るのですが。

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2010/03/11

これがオースターの最高傑作だと思う。 内面を掘り下げていく感覚を触覚的に表現しているような、と言ったらいいのだろうか。うまく表現できないものを表現している。

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2009/11/09

 微妙にマイブームなオースター。それまで詩人として活躍していたオースターの小説の第1作。この後の訳のわからないものとは違って、ほとんど自伝。ても、自分ではなく父親のことを書いている。他者と交わりたいという欲求も能力もない父親の絶対的な孤独。それを淡々と描くことで孤独という檻を容赦...

 微妙にマイブームなオースター。それまで詩人として活躍していたオースターの小説の第1作。この後の訳のわからないものとは違って、ほとんど自伝。ても、自分ではなく父親のことを書いている。他者と交わりたいという欲求も能力もない父親の絶対的な孤独。それを淡々と描くことで孤独という檻を容赦なく見せている。  2つの短編からなっている本で、「孤独の発明」というタイトルの小説はないのだけど、それがかえって重い。  すごくよかった。特にその父親のことを書いた「見えない人間の肖像」。ただ、途中でハリポタ読んでしまったんだよね、私。ホント馬鹿なことしちまったよ。やれやれ。

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2020/12/18

何度も再読を重ねている一冊。父の死をきっかけに、常に「見えない人間」であった父親の実像をたどる作業に著者が乗り出す「見えない人間の肖像」と、息子であり父である著者が自らの記憶の中から浮かぶ上がるフレーズたちを断章形式でつづった「記憶の書」の二作品を収録。血の繋がった父親を含む他者...

何度も再読を重ねている一冊。父の死をきっかけに、常に「見えない人間」であった父親の実像をたどる作業に著者が乗り出す「見えない人間の肖像」と、息子であり父である著者が自らの記憶の中から浮かぶ上がるフレーズたちを断章形式でつづった「記憶の書」の二作品を収録。血の繋がった父親を含む他者との間に求める絆は、記憶の積み重ねとしての生の中から生まれえるのか。過ぎていく時、失われていく記憶、遠ざかっていく世界。「孤独」とは、決して溶け合うことのできない「他者」の存在なくしては存在しない意識であり、繋がりたい、分かり合いたいという願いが生まれた瞬間に生まれるものであり。そうして、「孤独」から虚しさではなく愛しさを導き出してくれるオースターの言葉たちが、倦怠し鈍化した心をいつでも清々しく洗い清めてくれる――私にとってかけがえのない座右の書です。

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