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孤独の発明 の商品レビュー

3.9

56件のお客様レビュー

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2015/04/09

今までオースターの本を5冊ほど読んでずっと感じていた、捉えどころが無くメランコリックで空虚な感じ。なぜオースターの作品はそうなのかが、よく分かるような自伝的作品。 「見えない人間の肖像」は読んでいて恐ろしかった。オースターの父の底なしの空虚が。息子オースターの内にも外にも満ち満...

今までオースターの本を5冊ほど読んでずっと感じていた、捉えどころが無くメランコリックで空虚な感じ。なぜオースターの作品はそうなのかが、よく分かるような自伝的作品。 「見えない人間の肖像」は読んでいて恐ろしかった。オースターの父の底なしの空虚が。息子オースターの内にも外にも満ち満ちている孤独が。彼らの、常に紗幕越しであるかのようなぎこちないふれあい。そこにほんの時おり、目が合ったように思える一瞬があったのだと思うと切ない。オースターが空虚な父を発見して理解していったように、いつか私も子供に見透かされるのだろう。 後半に収録された「記憶の書」は、あまりにも断片的で、集中力が途切れてしまい残念ながら読み通せなかった。

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2015/01/17

「見えない人間の肖像」と「記憶の章」の二部構成からなる長編。あらすじ的にはオースターの自伝。でも自伝的小説というのには当たらない。解説にもあったようにオースターの精神の成り立ちをあぶりだすような作りになっている。こういう内省的な小説は自分に合わないものだと吐くくらい気持ち悪いけど...

「見えない人間の肖像」と「記憶の章」の二部構成からなる長編。あらすじ的にはオースターの自伝。でも自伝的小説というのには当たらない。解説にもあったようにオースターの精神の成り立ちをあぶりだすような作りになっている。こういう内省的な小説は自分に合わないものだと吐くくらい気持ち悪いけど、オースターの孤独を通り越して空虚な感じはやっぱり好きです。最初は本当怖いぐらい空っぽな父親の空っぽが息子を孤独にしていく過程が恐ろしかった。でも「見えない人間の肖像」は進むにつれて父親の人間的な部分も見えてきて混乱する。一人の人間を語るのには混乱がつきものなのだろうけど。たくさんんの部屋を通して見る孤独、物語ことの重要性。

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2014/06/16

孤独が生み出すもの。 孤独でしか生み出せないもの。 閉ざされると同時に開かれるもの。 断片は断片ではない。 父の不在。 不在の存在。 歴史。 偶然。

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2014/06/02

『死は人間の肉体をその人間から奪い取る。生にあっては、人間とその肉体は同義である。死にあっては、人間があり、それとは別に肉体がある。「これはXの遺体だ」と我々は言う。あたかもその肉体、かつてはその人物そのものだった、Xを代表するものでもXに帰属するものでもなくXという人物それ自身...

『死は人間の肉体をその人間から奪い取る。生にあっては、人間とその肉体は同義である。死にあっては、人間があり、それとは別に肉体がある。「これはXの遺体だ」と我々は言う。あたかもその肉体、かつてはその人物そのものだった、Xを代表するものでもXに帰属するものでもなくXという人物それ自身だった肉体が、いまや突然何の重要性ももたなくなってしまったかのように。 ある男が部屋に入ってくる。私は男と握手をする。そのとき私は、彼の手と握手しているとは感じないし、彼の肉体と握手しているとも感じない。私は彼と握手をしているのだ。死がそれを変える。これはXの遺体だ。これはXだ、ではない。それはまったく別の構文である。それまでひとつのことについて語っていたのが、いまや我々はふたつのことについて語っている。そこで前提とされているのは、人間そのものは依然として存在しつづけているということだ。』 第一部の「見えない人間の肖像」は良かったが、第二部の「記憶の書」は難解で、かつ、興味も湧いて来なかった。

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2013/01/23

「見えない人間の肖像」 書くことによって近づこうとする父の肖像。父にまつわる数々の事実と、空しさ。 「記憶の書」 断片的で難しく、途中で読むの断念してしまった。時間置いてからまた読んでみよう。

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2013/03/09

父の肖像はわからない。 父という存在は、知れば知るほど自分と遠ざかると思うのは全世界共通なのだな、と。それを改めてつきつけられる。だよね、と。 最も近い人とも実は分かり合えていなかった、という悲しくなる事実を、避けては生きていけない。知らないといけないのだ、と思うこと自体は非常に...

父の肖像はわからない。 父という存在は、知れば知るほど自分と遠ざかると思うのは全世界共通なのだな、と。それを改めてつきつけられる。だよね、と。 最も近い人とも実は分かり合えていなかった、という悲しくなる事実を、避けては生きていけない。知らないといけないのだ、と思うこと自体は非常に重要なことだと思う。それは真摯さか、父を通した自己探求か、ただの好奇心か。 調べる前から虚しくなるとわかってて進んでく作者はマゾに思える。 自分もそうなるかもしれない。

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2012/07/18

「見えない人間の肖像」 死後の父、生前の父。決して触れることのできない他人という存在。 その肖像は血の繋がりゆえにいくらも思い浮かぶだろう。 さっぱりと語り続ける口調、あえて何かの肖像をとらえようとする研究者の体で、疑問も反感もそのままに。仮定はいっさい使わない。 でもとてもやさ...

「見えない人間の肖像」 死後の父、生前の父。決して触れることのできない他人という存在。 その肖像は血の繋がりゆえにいくらも思い浮かぶだろう。 さっぱりと語り続ける口調、あえて何かの肖像をとらえようとする研究者の体で、疑問も反感もそのままに。仮定はいっさい使わない。 でもとてもやさしいと感じる。 真実であるがゆえ哀しいこと。美しくないこと。偶然から無視されること。 すべて、ぜんぶ。ああ、これが愛かと思ってしまった。 そのやさしい手の内にわたしは人間の愛の深さを思い知らされて、 ほんとうに救われました。ほんとうに。 「記憶の書」 連なる記憶からなる書。 すこし気が散った。 けれども部屋の描写はとても印象深い。 ひとつの部屋、空間。自分、境界線。 たまにふと思い出す。

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2012/06/12

変わり者で孤独な父親が持つ多面性。複雑で単純。変わり者ではなくても、普通の人などいない。一部が好き。 ちょうど祖母を亡くして葬儀を終えたばかりのときに読んだので、一部の父の遺品についての語りには共感するところがあった。

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2012/12/11

著者が自らをモデルにして書いたという、 自伝風フィクションだそうだが、 印象として、ほとんど事実ではないかと思われる。 二部構成で、 第一部は、語り手が父の死を契機に、父について思いを巡らす。 第二部は、主人公(著者の分身のようなキャラクター)が 様々なテクストを引用して、父と子...

著者が自らをモデルにして書いたという、 自伝風フィクションだそうだが、 印象として、ほとんど事実ではないかと思われる。 二部構成で、 第一部は、語り手が父の死を契機に、父について思いを巡らす。 第二部は、主人公(著者の分身のようなキャラクター)が 様々なテクストを引用して、父と子の関係を考察する、 という内容。 最も「距離」が近いはずの親子でありながら、 どうしても手が届かない、もどかしさがあるわけだけど、 その悶々とした気持ちが創作意欲を駆動しているのかもしれない。

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2011/12/07

オースターの家族を描いた自伝的作品。彼の作品には孤独を描いたものが非常に多い。なぜ、彼がそこまでして孤独というモチーフに拘るのか、その答えは彼の出自にあったのかもしれない。ただし、小説というよりは彼の思弁の叙述も多いため、物語が躍動する独特のオースター節はあまりないように感じた。

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