神の火(下) の商品レビュー
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原発は攻撃されない、という大前提の元に設計されているとか。 今回、あとからあとから津波で破壊する可能性があるという報告があったというニュースが出ていたけれど、それにしても津波で見事にあそこまで破損するとは。 文庫本版と単行本版の内容が異なるとの事を聞いたので、読み比べたい。
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高村さんの作品を読むと、必ずといっていいほど身体が寒風に吹かれているような気分になる。この作品も。島田さんと日野さんが起こした行動は頭では理解できるが、のうのうと恩恵を受けてきた者としてどう受け止めるべきなのか。発電所で働く善意のひともいるではないか。しかしこの小説を読めば正否な...
高村さんの作品を読むと、必ずといっていいほど身体が寒風に吹かれているような気分になる。この作品も。島田さんと日野さんが起こした行動は頭では理解できるが、のうのうと恩恵を受けてきた者としてどう受け止めるべきなのか。発電所で働く善意のひともいるではないか。しかしこの小説を読めば正否など何の役にも立たないとわかる。また良という青年の命の行方をおもえば“絶対”の保障など永遠に生まれない、巨大な存在に対峙する際の気持ちなど明白だろう。厳しくも純粋な良の問いかけにどう応えるべきか。わたしたちはもうわかっているはず。
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作品の中で繰り返し語られるのは、 『日本の原発は人間の善意に基づいて運用されていること』 に対する疑問。 原発に対して害をなす人間がいないことが前提とされた運用なので、 テロへの対策も戦争への対策もしていない。 果たしてそれで本当に『世界で一番安全な原発』と言えるのか?という疑問が最初は良の口から、次第に島田のモノローグから、何度も呈される。 構想といい筆致といい、とても緻密で、 原発内部の構造についても詳細に記されており臨場感がある。 アナーキーなのにどこか純情な感じのする登場人物の造形といい、 髙村薫っぽさが強く感じられた。 私は大好きなのでとても面白かったですが。 この小説の中では最終的に原発でテロを起こし、 それを通して日本人が『原発の安全性』に疑問を持つことを期待するような終わり方をしているが、 おそらく、これは執筆時に考えられる現実的な悪意がテロだったからだと思われる。 想像でここまで書いた(書くことができた)作者でも、まさか原発の安全管理があそこまで危ういものだとは考えもつかなかったのだろう。 この小説が書かれてから約20年たったけれど、 これまでずっと小説の中でしか起き得なかったことが現実になってしまった。 良は日本の原発は世界一安全と言っていたけれど、 コントロール可能な人間の悪意どころか、 日本では避けられない地震に対してすら無策だったのだ。 読んでいると二重の意味で、日本の安全に対する意識の甘さを痛感する。
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「全ての科学技術は本来、その運用に当たって完全と言う言葉は使えない人間の所産にすぎないが、いったん壊れたが最後、周辺地域が死滅するような技術の恩恵を、人間はどれほどうけて来たというのか」 核…知る程に魅惑的なエネルギー源です。 ただ、破壊活動や自然災害なんかを「想定外」にするこ...
「全ての科学技術は本来、その運用に当たって完全と言う言葉は使えない人間の所産にすぎないが、いったん壊れたが最後、周辺地域が死滅するような技術の恩恵を、人間はどれほどうけて来たというのか」 核…知る程に魅惑的なエネルギー源です。 ただ、破壊活動や自然災害なんかを「想定外」にすることで成立つ危うさが怖いし非現実的。 あくまで、机上のエネルギー源だと私は結論。
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仕事の合間にゆっくりと時間をかけて読んでみました。 この作品の取材にどれだけ時間がかかっているのか興味深いです。
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おもしろかったけど、リヴィエラの方が個人的に好きです(読みづらいけど)。 読む前から、結構ほかのかたのレビューを読んで、ちょっと期待しすぎたかも。
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2010年5月10日読了。2010年93冊目。 面白かった。 良と対面した島田のシーンが印象的。
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ややこしくてたまらんかったです(笑)が、必死で読んでしまいました。 行き帰りの電車で読むので、どうしても緊張感のあるシーンでも関係なしに読み終わらなくちゃいけなくてそれがイヤ。 家帰って一気に読みたいのは山々なんだけどできないもどかしさったらありませんよ。 あー家で自由に本読める...
ややこしくてたまらんかったです(笑)が、必死で読んでしまいました。 行き帰りの電車で読むので、どうしても緊張感のあるシーンでも関係なしに読み終わらなくちゃいけなくてそれがイヤ。 家帰って一気に読みたいのは山々なんだけどできないもどかしさったらありませんよ。 あー家で自由に本読める生活になりたい!! しかしまあ、おもしろかったんですけど、なんで島田も日野も良にあそこまで執着するのかがナゾでした。 下巻に入ってから島田の心境とかを読んで、やっとちょっと理解できそうな気になったのですけど…前半からそういうことが分かって読めてたらもっとずっとよかったのになーと思います。 マークスのときもそうだったんですよね。マークスが真知子のことをちょっとでも特別に思ってたというのがこれまた最後の方になるまで分からなくて。途中気づいてからはうわーってきましたけど。 今度のもその辺が消化不良…高村さんってそういうのを書くのが苦手なんかなー?
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面白かったんだか、つまらなかったんだか、よくわからない。ものすごく緻密で、メチャクチャ乱暴な話なのだわ。狙っているのかもしれないけれど、筆致も、これでもかというくらいの書き込みと、ナゾで終わらせていいの?と思うほど省かれた部分があって、最後までその省かれた部分に「何かある」と思っ...
面白かったんだか、つまらなかったんだか、よくわからない。ものすごく緻密で、メチャクチャ乱暴な話なのだわ。狙っているのかもしれないけれど、筆致も、これでもかというくらいの書き込みと、ナゾで終わらせていいの?と思うほど省かれた部分があって、最後までその省かれた部分に「何かある」と思ってしまった私。でもまあ、凄い書きっぷり。
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9月25日読了。くすぶり続ける「火」を内面に抱え無為に生きる島田だが「北」に拉致された良の身の上と日本に来た理由を知り、彼の身柄を拘束しようとする・あるいは泳がせようとする・あるいは個人的な信義から守ろうとする諸国の思惑をよそに旧友・日野とともに原発の爆破作戦にのめりこんでいく・...
9月25日読了。くすぶり続ける「火」を内面に抱え無為に生きる島田だが「北」に拉致された良の身の上と日本に来た理由を知り、彼の身柄を拘束しようとする・あるいは泳がせようとする・あるいは個人的な信義から守ろうとする諸国の思惑をよそに旧友・日野とともに原発の爆破作戦にのめりこんでいく・・・。何の意味もないテロに突き進む主人公や、それをとりまく過去しか見ない面々の心情には最後まで共感できないが、最後までぐいぐい読ませる迫力はある。中華料理を食べながらウォッカを食べたい。原発潜入後の手法には、「黄金を抱いて飛べ」と一緒やんか!あんたいつもそれか!と言いたくなるが・・・。
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