神の火(下) の商品レビュー
〝島田は、いのちだ、と他愛もない事を思った。何の慈愛も庇護も受けることなく、ひとりでしぶとく生き延びる野の生命に目を奪われた。広島や長崎も今は緑深く、あのチェルノブイリにさえ草木は芽吹いている・・・〟母とロシア人宣教師との密通で生まれた「日本海と同じ深い緑色の瞳」を持つ〝不義の子...
〝島田は、いのちだ、と他愛もない事を思った。何の慈愛も庇護も受けることなく、ひとりでしぶとく生き延びる野の生命に目を奪われた。広島や長崎も今は緑深く、あのチェルノブイリにさえ草木は芽吹いている・・・〟母とロシア人宣教師との密通で生まれた「日本海と同じ深い緑色の瞳」を持つ〝不義の子〟島田浩二は、CIA、KGB、北朝鮮、日本公安警察ら諜報機関との虚々実々の駆引きの末路に「臨界の原子炉の圧力容器の蓋を開ける!自分が盗んだ火は自分で消し、神に返す!」・・・それぞれの〝業〟を背負った男たちの哀しくも壮絶な物語。
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2022.3月 再読、多分2回目 初読は後半は先がどうなるか気になりすぎて読み飛ばし気味に読んじゃってた気がします 全体的に切なくて、主人公の良くんへの執着とかは、髙村さんの他の作品にもあるような静かだけど情熱的な感じで好き ラストもしんみりするけど、主人公は開放されたんだなって...
2022.3月 再読、多分2回目 初読は後半は先がどうなるか気になりすぎて読み飛ばし気味に読んじゃってた気がします 全体的に切なくて、主人公の良くんへの執着とかは、髙村さんの他の作品にもあるような静かだけど情熱的な感じで好き ラストもしんみりするけど、主人公は開放されたんだなって気持ちになって少し安心する 手に取ったのは偶然なんだけど、テーマ的に、時期柄、色々考えた
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帰省とか旅行などのお供に高村薫を読むようになってしばらく経つ。上巻はこれはスパイ小説かなと思いながら過ごしたが、下巻でスパイの詳細が明らかに。そして更に原発へ。読み応えがあって楽しめた。
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二重、三重のスパイ島田。彼は優しく父母の愛にも飢えている。スパイ活動のやりとりは手に汗握るが、さすがに原発の用語は、よくわからない。最後は日野ともどもかなしい。
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原子力発電所をめぐるスパイもの ぐんぐん引き込まれて、あいかわらず高村さんは 力強い小説を書くなあ~ だけれども 「建屋」「格納容器」の名称、原子力発電所の異様な姿など 東日本大地震の事故を見聞きしなければ いくら想像力をたくましくしても、こうは臨場感が湧かなかっただろう ...
原子力発電所をめぐるスパイもの ぐんぐん引き込まれて、あいかわらず高村さんは 力強い小説を書くなあ~ だけれども 「建屋」「格納容器」の名称、原子力発電所の異様な姿など 東日本大地震の事故を見聞きしなければ いくら想像力をたくましくしても、こうは臨場感が湧かなかっただろう むしろ原子力を使った発電所があることを意識しないでいた... という忸怩たる思いを一層強く感じた
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
原発技術者だったかつて極秘情報をソヴィエトに流していた島田。すべてを捨てて平穏に生きていたが、謎につつまれた原発襲撃プラン「トロイ計画」に巻き込まれる。CIA、KGB、北朝鮮情報部、日本公安警察が入り乱れ、駆け引きが苛烈さを増す。完璧な防御壁を突破して、現代の神殿の奥深く、静かに燃えるプロメテウスの火を彼らは解き放つことができるのか?
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良が身柄を北朝鮮に捕らえられしまったことから、島田はみずからが北へわたることを条件に良を解放することを求めます。こうした彼の申し出により、アメリカ、ソ連、北朝鮮、日本の駆け引きが慌ただしくなっていきます。 そしていよいよ海上で良の身柄が引き渡されることになりますが、すでに彼の命...
良が身柄を北朝鮮に捕らえられしまったことから、島田はみずからが北へわたることを条件に良を解放することを求めます。こうした彼の申し出により、アメリカ、ソ連、北朝鮮、日本の駆け引きが慌ただしくなっていきます。 そしていよいよ海上で良の身柄が引き渡されることになりますが、すでに彼の命はうしなわれていました。チェルノブイリから逃げ出した彼の身体は、放射能によってむしばまれていたのです。島田と日野は、良の計画していた原発襲撃のプランを彼に代わって実行するため、計画を練りはじめます。 ディテールの描写は精密ですが、リアリティのあるストーリーを求める向きには不満を感じるのではないかという気がします。時間の流れを追いながらクライマックスへと突き進んでいく最後のシーンは、美しいアニメ映画のようなイメージで思い描きながら読みました。
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結局、高村さんは原発の安全神話を本書によりぶち壊したかったのではなかったのかと思う。福島第一原発事故の20年前に原発が如何に不安定な安全の上に鎮座する代物であるかを看破し、自身の小説の中でテロという形にて安全神話を打ち壊す、作家に許される最大限の自由の中で世の中に問う事がモチベー...
結局、高村さんは原発の安全神話を本書によりぶち壊したかったのではなかったのかと思う。福島第一原発事故の20年前に原発が如何に不安定な安全の上に鎮座する代物であるかを看破し、自身の小説の中でテロという形にて安全神話を打ち壊す、作家に許される最大限の自由の中で世の中に問う事がモチベーションではなかったか、それでなければ原発に関わった主人公が自らの手で原発事故を起こす動機の必然は見出せない。何れにしても、最後まで読んだ感じは星二つ
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詳細部分が長かったり、細かいところは読み飛ばしていたら、はなしが全体的につながらない部分が多々あり、正直理解できたかというと微妙。。。
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いろいろと考えさせられました。本が書かれた後に起きた出来事のいくつかが、小説の舞台や設定と重なり合い、様々な想像へと誘い込む、あまり経験したことのない読書体験となりました。
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