陰翳礼讃 の商品レビュー
美の目的に沿うように陰翳を利用した日本人。 翳を表現した様々な言葉が出てきて、においや音や湿度まで運んでくるよう。 瞑想的雰囲気に誘われる。 厠や漆器、座敷、能、鉄漿などについて陰翳の持つ効果を豊かに考察する。 終盤では郷土料理における田舎の豊かさを評したり、森林を伐り開いたドラ...
美の目的に沿うように陰翳を利用した日本人。 翳を表現した様々な言葉が出てきて、においや音や湿度まで運んでくるよう。 瞑想的雰囲気に誘われる。 厠や漆器、座敷、能、鉄漿などについて陰翳の持つ効果を豊かに考察する。 終盤では郷土料理における田舎の豊かさを評したり、森林を伐り開いたドライブウェーを嘆いたりして、西洋化以前の文化を慕う。
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そうか陰翳。 赤毛のアンでも 「ランプを消すと暗闇に親密になれる」 ようなことが書いてあった気がするけど。 闇を恐れて、 結果闇を際立たせるようなことをしてるんだよなー、と。 鉄漿のくだりにはっとしたわ。 そうか、明るいところで見るからグロテスクなんだよね。 薄暗い中にひっそりと...
そうか陰翳。 赤毛のアンでも 「ランプを消すと暗闇に親密になれる」 ようなことが書いてあった気がするけど。 闇を恐れて、 結果闇を際立たせるようなことをしてるんだよなー、と。 鉄漿のくだりにはっとしたわ。 そうか、明るいところで見るからグロテスクなんだよね。 薄暗い中にひっそりといる様を想像すると、 確かにしっくりくるし。 調度めいた美しさも際立つってものよ。 男視線のそれらにム…としつつも、羨んでみたり。 我に返って、自室のそっけなさにガッカリしたり。
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谷崎らしい細かい描写ながらくどくどと説明することも無く、共感を得るところがおおい1冊。いつよんでもすばらしい。
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ずっと読みたかった『陰翳礼讃』。 私がかなり影響を受けた原研哉さんが著書で紹介していたのを機に、いつかは必ず読まねばと思っていました。 表題作の『陰翳礼讃』は、まさにその名のとおり陰翳を好む日本人の美的感覚について触れられています。 ここでの陰翳って実は単純な「影」ではなく、 ...
ずっと読みたかった『陰翳礼讃』。 私がかなり影響を受けた原研哉さんが著書で紹介していたのを機に、いつかは必ず読まねばと思っていました。 表題作の『陰翳礼讃』は、まさにその名のとおり陰翳を好む日本人の美的感覚について触れられています。 ここでの陰翳って実は単純な「影」ではなく、 光/闇 表/裏 (一般的な)美/醜 の後者全般を指すのではないかな。 その好み方にも、 足りない「光」を引き立てる 良く見えないことによって、想像力をかきたてる 控えめなことに大して奥ゆかしさを感じる などがあるように感じました。 特に3番目は独特の感覚だから共有できる範囲が狭い。だけどこの感覚をあらゆる人に伝えることが出来れば、と思います。 欧米などで見られる「闇は全て光らせよう。」という発想に対して、ここで触れられているのは「闇で光を際立たせよう。闇にも同等の価値を感じよう。」という発想なのかなーなどとも思いました。 読んでいると、「完璧よりも一点の曇りがある方が奥ゆかしい」「ぴかぴかよりも、年月の重みを感じさせる錆が欲しい」など、納得する感覚がありました。ちょっと嬉しかったり。 意識的になってみると、この本に書かれているような「陰翳」への捉え方は、意外といろんなところで見られます。 今まで気づかなかったけれど、すごく素敵な感覚だなと思います。 世界の見方が少し変わる。至る所に発見がある。 この本を読んで得た収穫です!!
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翳りのあるものは確かに美しい。 すべてが明るい日の元に引っ張り出されればいいというわけでもないとしみじみ思う。 それにしても厠に対する真剣な考察が面白いなぁ。
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アンチ和洋折衷なのか?日本人の風情ってどこか昔の話しかな~って悲しいけど思っていたけどそんなことないっ!!日本人の美意識って独特だけど理解は出来る。「森羅万象に美を意識する」これこそ文化から美学が見える文学。
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古き良き、現代人が忘れている日本人の真の姿が、 ここにすべて網羅している。 繊細なニュアンスの違いがわかる日本人で本当に良かった! ・・・と思うw
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日本の古い美的感覚が紹介されて、日本人でよかったと感じさせて貰える。 でもその繊細な美意識に対して、ぐいぐい主張する語り口が ギャップがあって楽しいと思いました
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休暇に合わせて購入。 谷崎潤一郎の文章好き。 陰翳礼讃、内容も共感・納得できます。 この本が書かれた時と今では時間の隔たりがあるにもかかわらず、 今でも十分通じる考察かなと思います。 私は今までひっくりめて、わび・さび で考えていたけど、 影を美とする ってことも日本文化理...
休暇に合わせて購入。 谷崎潤一郎の文章好き。 陰翳礼讃、内容も共感・納得できます。 この本が書かれた時と今では時間の隔たりがあるにもかかわらず、 今でも十分通じる考察かなと思います。 私は今までひっくりめて、わび・さび で考えていたけど、 影を美とする ってことも日本文化理解で重要かも。 恋愛の考察も面白い。 次は細雪またよもうっと。 Sep 2010
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もう、勝てないなあって思う。 色々と。 昔は今と違って、インターネットもなく、文章を気軽に多くの人に見てもらう事なんて出来なかった。だからこそ、文豪と呼ばれる人たちは文字通り心血を注いで言葉を紡いでいく。 個性なんてイマドキの陳腐な言葉じゃ、到底押さえきれない貪欲さは現代...
もう、勝てないなあって思う。 色々と。 昔は今と違って、インターネットもなく、文章を気軽に多くの人に見てもらう事なんて出来なかった。だからこそ、文豪と呼ばれる人たちは文字通り心血を注いで言葉を紡いでいく。 個性なんてイマドキの陳腐な言葉じゃ、到底押さえきれない貪欲さは現代では絶対に手に入れる事は叶わないと思う。 谷崎のこの脂っこさなんて最たるものだよね。 この作品は彼の作品の中でも取り分け軽めではあるけれど、このねちっこい視線、描写力、切り口鮮やかな切り捨て様。 完璧。 こんなに短いのに、読んでいる最中はそんなこと全然感じない。 一文字一文字に滾っている精力って言えばいいのかな、それが今の作家と比べると桁違いとしか言いようがない。 日本文学に独特のぬめりみたいなものが散りばめられていて、ゆったり本を読みたい時や心を落ち着ける時に読んでしまう。 間違っても通勤ラッシュで読んではいけない。 こういうこってりした文章はゆとりがあって楽しむべきもの。 スペインの様式美の中に「ソル・イ・ソンブラ」という言葉があって、これは「光と影」を意味する。 強い日差しを遮るものとの間に生まれる、明瞭にくっきりと浮かび表れる「狭間」の美。 日本の幾重にも陰を重ねる美、闇を演出する美とは真逆の言葉。 大事に読みたい一冊。
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