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陰翳礼讃 の商品レビュー

4.1

293件のお客様レビュー

  1. 5つ

    101

  2. 4つ

    93

  3. 3つ

    55

  4. 2つ

    5

  5. 1つ

    1

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2012/03/31
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

対象が主役の西洋文化にたいして、陰翳が主役の日本文化、という視点がおもしろかった。正直、金屏風や金の蒔絵など、悪趣味な金持ちの道楽程度の認識しかなかった。しかし、それは蛍光灯が深夜にも煌々と灯る、現代の我々の視点でしかない。それを、蝋燭の光がゆらめく暗がりのなかで見たら、どんな感興をさそうのか。 厠にしろ、ぼくたちにとって、それは家の外にあるものではない。外の寒気に耐えつつ、自然のなかで排泄するのは、それほど風流なのだろうか。 谷崎の時代から、遠く隔たってしまった、今の日本を思った。 そして、利便性の反面、どれだけの損を背負ってきたのか、そして、今この国家はそのツケを支払わなくなくてはならないときに来ているように感じた。

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2012/03/28

 部活の引率のバスの中で読了。日本という国のさまざまな側面(厠、色情、肌、部屋、気質…)を取り上げ、「翳(かげ」というキーワードでその特徴を明らかにしていく。  一種の評論なのだが、堅苦しくなく(現代の日本語と若干違うため多少読みずらくはあったが)、ユーモアを交えながら話が展開す...

 部活の引率のバスの中で読了。日本という国のさまざまな側面(厠、色情、肌、部屋、気質…)を取り上げ、「翳(かげ」というキーワードでその特徴を明らかにしていく。  一種の評論なのだが、堅苦しくなく(現代の日本語と若干違うため多少読みずらくはあったが)、ユーモアを交えながら話が展開する。西洋や中国との比較の文脈で、日本について語られる調子も読んでいて楽しい。かといって西洋を絶賛したり。逆に日本を誇示するのでもなく、淡々と、流れるように軽やかに文章が展開していく。  日本語を操る達人はこうも読者を引きつけるのかと思うほど、一文の長さがちょうど良く、特に速読できるわけでもない私でも、3時間もかからずに読んでしまった。日本という国に生まれた以上、無意識に備わっている感覚があり、それが文章化されることで、深くうなずきながら読み進める自分がおり、それも新鮮な発見であった。

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2012/03/24

谷崎潤一郎の小説は一冊も読んだことがないが、この随筆ひとつとってみても文章の調子がほれぼれするほど素晴らしい。内容も自分が日本人である、ということを忘れがちな昨今、日本文化を再発見した気持ちだ。身の回りの者が全く西洋の物となってしまっている私にとって、谷崎潤一郎の和式へのこだわり...

谷崎潤一郎の小説は一冊も読んだことがないが、この随筆ひとつとってみても文章の調子がほれぼれするほど素晴らしい。内容も自分が日本人である、ということを忘れがちな昨今、日本文化を再発見した気持ちだ。身の回りの者が全く西洋の物となってしまっている私にとって、谷崎潤一郎の和式へのこだわりは共感というより、なんだか現代とかけ離れた古き日本を思い起こさせるものだった。

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2012/03/04

谷崎潤一郎の文章の巧みさに舌を巻く。 モノの表現の仕方がうまくて大変参考になる。 これだけモノが書ければ楽しいだろうな。

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2012/03/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

陰翳礼讃 懶惰の説 恋愛及び色情 客ぎらい 旅のいろいろ 厠のいろいろ からなるエッセイ。 あえて陰をつくり、ぼんやりとした中に生まれる美しさ、の描写にうっとりした。 日本の女の美しさや、化粧の性質について書いてある部分が面白かった。

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2012/02/18

*日本家屋や日本料理、能、蒔絵、人形浄瑠璃などは、電燈にこうこうと照らされるのではなく、燭台や月明かりの中でこそ美しい。それが元来日本人が追求して来た美意識であり、アメリカに真似て明るく照らし出しては趣きが失われる。 *南北戦争で32分の1混血まで迫害されたのは、僅かばかりでも翳...

*日本家屋や日本料理、能、蒔絵、人形浄瑠璃などは、電燈にこうこうと照らされるのではなく、燭台や月明かりの中でこそ美しい。それが元来日本人が追求して来た美意識であり、アメリカに真似て明るく照らし出しては趣きが失われる。 *南北戦争で32分の1混血まで迫害されたのは、僅かばかりでも翳りがあるから気にせずにいられなかったのだろう。 *お歯黒は口の中まで闇を含ませ顔を際立たせるための化粧であり、眉を剃ること、地味な着物もしかり。女性は薄暗い家屋のなかで顔と手だけで存在した。それは蝋燭の明かりの中でこそ美しい。 *美は物体にあるのではなく、それが次作り出す陰翳や明暗にあると考える。

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2012/02/26
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

谷崎潤一郎の美的センスや生活態度が窺える一冊。 『陰翳礼讃』では、タイトル通り、光の調和における日本美を彼独自の視点で考察している。日本と中国、日本と西洋などを比較し、そこから分かる各文化の光に対する美意識の違いはなかなか興味深い。 最後の章が『厠のいろいろ』であったのには笑ってしまった。内容もユーモラスで、谷崎潤一郎の人間的な魅力にも触れられるような一冊だと感じた。

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2012/02/01

谷崎というのは「死んでもなお女の足に踏まれ続けていたい」などと書いてしまう生粋の変体であって、しかもそれを芸術的に描いて社会的に評価されてしまうという手の付けられない変体だ。そんな人間が書いた日本文化論は芸術から日用品、そして人種までを貫く「陰り」の必要性についてのエッセイ。 ...

谷崎というのは「死んでもなお女の足に踏まれ続けていたい」などと書いてしまう生粋の変体であって、しかもそれを芸術的に描いて社会的に評価されてしまうという手の付けられない変体だ。そんな人間が書いた日本文化論は芸術から日用品、そして人種までを貫く「陰り」の必要性についてのエッセイ。 「 私達は一概に光るものが嫌いといいう訳じゃないが、  浅く冴えたものよりも、沈んだ翳りのあるものを好む」 何もそれは、景色や道具だけに限った話ではない。 僕らは明るいだけの人間を好むわけではないのだ。 陰りのある人を好むこともあるし、沈んだ表情に惹かれてしまうことだってある。 それを暗に教えてくれる。 無理して明るくあり続ける必要なんて、ないんだよね。

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2012/01/31

2008年06月23日 01:56 陰翳を礼賛するって・・ さらに粗筋。 「人はあの冷たく滑らかなものを口中にふくむ時、あたかも室内の暗黒が一箇の甘い塊になって舌の先で融けるのを感じ・・」 なんの話だろう・・一見気味悪いというか、妖しい感じの話かと思いきや。 ...

2008年06月23日 01:56 陰翳を礼賛するって・・ さらに粗筋。 「人はあの冷たく滑らかなものを口中にふくむ時、あたかも室内の暗黒が一箇の甘い塊になって舌の先で融けるのを感じ・・」 なんの話だろう・・一見気味悪いというか、妖しい感じの話かと思いきや。 「・・ほんとうはそう旨くない羊羹でも、味に異様な深みが添わるように思う。」 羊羹の話かよ。 もちろん羊羹の話に終始してるわけじゃないけど。 日本の色んなもの(和紙から女性から衣服から)の”陰翳”による美について語ったエッセイでした。 玉の記述なんかは鋭い考察だな、とも思ったけど、全体的にちょっと自国贔屓がめだったかなあ。 「私は、われわれが既に失いつつある陰翳の世界を、せめて文学の領域へでも呼び返してみたい。 文学と言う殿堂の軒を深くし、壁を暗くし、見え過ぎるものを闇に押し込め、無用の室内装飾を剥ぎ取ってみたい。」 昔の日本の様式美を懐かしがるのはいまさら無駄。だって文化は発達してしまった。 でも、文学の世界は別だと思います。 私も深い陰翳の戻った文学に触れてみたい。

Posted byブクログ

2012/01/30

随筆集のなかのひとつだったので、 他の部分も読んでいたら、 えらいこと時間がかかった。 さすがに読んだことない小説の書評なんて読むもんじゃないな。 常々、よくクールジャパンだの和モダンだのでくくられる、 日本文化の基本であると思われている シンプル、無駄をそぎおとした、禅の精神...

随筆集のなかのひとつだったので、 他の部分も読んでいたら、 えらいこと時間がかかった。 さすがに読んだことない小説の書評なんて読むもんじゃないな。 常々、よくクールジャパンだの和モダンだのでくくられる、 日本文化の基本であると思われている シンプル、無駄をそぎおとした、禅の精神とかの形容詞で語られる特色に関して、 全く日本人である自分に沿ったものだという認識を感じない。 だって、俺、そんなにシンプルなものを志向して生きてない。 気の引き締まる思いがしていいもんだ、とは思うけど、毎日そのように暮らしたら多分疲れる。そんなたまにしか近づけないような堅苦しいものが、日本文化の特色というのか?という疑問がある。 それを世界に広めたところで、実際日本のその部分に興味を持った人々が実際の日本を見たら、まったくルーズでごちゃごちゃで、日本に対して幻滅するだろう、という危機感もある。 確かにそういうシンプリニシティは、非常に強い魅力がある。たしかに日本文化にはそういう志向も一部分あるだろう。 でもその部分は、日本文化の特色というより、目標と呼ぶべきものだったんじゃないのか? そうなると、日本文化がそういうものだといわれるのって、そうしたいと思う誰かが仕掛けた計画なんじゃないだろうか、という疑惑があって、それが誰かを探るために、日本文化論なんかに興味がある。 正直、谷崎潤一郎の陰影礼賛は、その総本山に近いものなんじゃないか、これを否定して論を立てれば、アジテーション的な意味での、本当の日本文化というものを見せられるんじゃないか、と思って読んだ。 が。 言ってることにほとんど共感してしまった。 谷崎潤一郎が好むものとして書かれた陰影とは、そこにあるのは光と影のみ、それ以外は無、のみ、という意味の陰でなく、 普段陰、といわれて想像がつくもの、怖いもの、穢れ、訳のわからないもの、曖昧なもの、としての陰だった。 そしてその陰は、俺が「本当の日本文化」と呼びたいものと同じ、ごちゃごちゃで全てを飲み込み、隠し、消化するものと同じ志向のものだった。 つまり陰影礼賛、俺、同意見です。 光と陰、それしかなくていい、じゃなくて、 陰に得体の知れない不気味なものを隠しながら、それと共に生きていくとき、日本的なものは鈍く輝く。 とりあえず部屋の電気を間接照明にしようと思いました。

Posted byブクログ