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陰翳礼讃 の商品レビュー

4.1

293件のお客様レビュー

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  3. 3つ

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2015/07/23

2014年浴衣読書会の課題本です。 http://www.nekomachi-club.com/side/13644 -------------------- 昭和5年から23年にかけてのエッセイです。 全6章。連続性はなく、書かれた時期もばらばらです。 谷崎純一郎とい...

2014年浴衣読書会の課題本です。 http://www.nekomachi-club.com/side/13644 -------------------- 昭和5年から23年にかけてのエッセイです。 全6章。連続性はなく、書かれた時期もばらばらです。 谷崎純一郎といえば、『細雪』や『春琴抄』などを思い浮かべる 方が多いかと思いますが、わたしにとって谷崎作品の中で 最も心に残っている作品は、この『陰影礼賛』です。 (もちろん、前述の作品も好き) 初めてこれを読んだとき(確か学校の教室)、闇の中に かそけく光る、漆の艶の描写にもだえました。変な高校生。 暗い大座敷の奥の金屏風の沈痛な黄金色、老僧侶の皮膚と金襴袈裟、 お歯黒をした女の顔、能役者の少年の唇、人形文楽、床の間、漆器。 【もしあの陰鬱な室内に漆器と云うものがなかったなら、  蝋燭や燈明の醸し出す怪しい光りの夢の世界が、その灯のはためきが  打っている夜の脈搏が、どんなに魅力を減殺されることであろう。  まことにそれは、畳の上に幾すじもの小川が流れ、池水が湛えられている如く、  一つの灯影を此処彼処に捉えて、細く、かそけく、ちらちらと伝えながら、  夜そのものに蒔絵をしたような綾を織り出す。】 ああ、ぞくぞくする(悶) わたしたちは何と明るい世界に暮らしていることか。 わたしたちは暗闇の中の深さを知らない。 しかし、最終章の「厠のいろいろ」で思ったけど、 やっぱり谷崎先生、ひと癖おありになります。

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2013/03/15

愚痴、外国に対するコンプレックスだと思いつつ読んでいた。そしたら解説で吉行淳之介が正しくそれを否定した。我が意を得た気になった。 45年前高校の教科書に載っていた「陰翳礼讃」に痛く感動した記憶が鮮明に残っていたのだが・・・・。感受性が人生の垢で剥げ落ちたのか?

Posted byブクログ

2013/02/23

以下、部分引用。 われわれの喜ぶ"雅致"と言うものの中には幾分の不潔、かつ非衛生的分子があることは否まれない。つやとは手垢に違いない。 位へ鵜兄すむことを余儀なくされたわれわれの先祖は、いつしか陰翳のうちに美を発見し、やがては美の目的に添うように陰翳を利用...

以下、部分引用。 われわれの喜ぶ"雅致"と言うものの中には幾分の不潔、かつ非衛生的分子があることは否まれない。つやとは手垢に違いない。 位へ鵜兄すむことを余儀なくされたわれわれの先祖は、いつしか陰翳のうちに美を発見し、やがては美の目的に添うように陰翳を利用するに至った。 浮世絵の美は西洋人によって発見され、世界に紹介されたもので、西洋人が騒ぎだすまでは、われわれ日本人は自分の有するこの誇るべきものの価値を知らなかったとい言う話を聞く。 平安時代の女はややもすると男に対して優位な地位に立ち、男はまた女に対してとかく優しかった気がする。清少納言や紫式部の人気をみて なぜ日本では、武門の政治が起こり武士道が確立するに従って、女性を卑しめ、奴隷視することになったのか。このことは日本文学に取って大きな損害をもたらした 西洋文学のわれわれに及ぼした影響のうちで最も大きいものの1つは、実に恋愛の解放、性欲の解放にあったと思う。それより昔の物語ではそういった話は平安時代をのぞいてタブー視された。西洋では高貴な文学には恋愛が含まれていたのに対し、日本には無かった。 西洋の婦人が女性美の極致に達する年齢は、31,2歳、すなわち結婚後の数年間であるというが、日本においては18,9からせいぜい24,5歳までの間。 源氏物語などに出てくる時代は、男は婦人の個性に恋したのでもなく、ある特定の女の容貌美、肉体美に引きつけられたのでもない。彼らにとっては、月が常に同じ月である如く、女も永遠にただ一人の女だったのであろう。 孔子は政を古に復すことを理想とし、この絶えず古を模範とし、それに復帰しようとする傾向のあったことが東洋人の進歩開発を妨げた所以であるが、良くも悪くも、われわれの祖先は皆その心がけで倫理道徳の修養においても、自分を立てるというよりは、先哲の道を守ることを第一とした。 西洋の婦人は包容するよりも、より多く見るに適したものであり、東洋の婦人はその反対であると考える。支那婦人をもって第一とするが、日本人の肌も西洋人に比べればデリケートであって色は白でないとしても、ある場合には深みを増す。日本の男児は、婦人の全身の姿を明るみでまざまざと眺める機会を与えられたことがなく、いつもほのぐらき闇のうちに、ほんの一部ばかりを手触りだったことから、自然に発達した結果だと考えられる。 歌舞伎などで、白塗りをする理由は、古代の日本が今のように明るい証明を持たなかったためで、その中であればあの白さは今よりも美しかった。

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2013/02/17

谷崎潤一郎のエッセイ集です。 評論集とも言えるかもしれません。 いろいろなテーマを取り上げていますが、 一貫しているのは新しく入ってきた西洋的なくらしを通して 日本文化を見るという姿勢です。 これが書かれた時代は、西洋文化は入ってきたばっかりで板についておらず、 日本的な部分と西...

谷崎潤一郎のエッセイ集です。 評論集とも言えるかもしれません。 いろいろなテーマを取り上げていますが、 一貫しているのは新しく入ってきた西洋的なくらしを通して 日本文化を見るという姿勢です。 これが書かれた時代は、西洋文化は入ってきたばっかりで板についておらず、 日本的な部分と西洋的な部分がごっちゃになっていたんでしょうね。 今でこそ西洋的な部分はしっかり生活に根付いてなんの疑問もないけれど、 当時はその狭間であっちがいい、こっちがいいという迷いがあったんだろうと思います。 日本的な部分は今の私たちにはどれくらい残っているんでしょう。 日本家屋の心地よさだったり、生活の中にある調度品、 日本食の奥深さ、日本人らしい考え方。 すっかり忘れている、というか知らないんじゃないかと思います。 この本の中で西洋はとにかく部屋を明るくしようとしていたけれど、 日本はろうそくの灯りのもとでどれだけ生活を豊かにできるかと工夫していたということを指摘していて、 本来はそれが当たり前だったのかぁということに気づきます。 そういうほの暗いところで生活しているから、 その暗さの中で美しく見える調度品や料理が発達したとも指摘していて、 なるほどなぁと新たな視点をもらった気分でした。 今まで日本の伝統工芸品を見に行くことは多かったけれど、 暗いところで見てみようとは思わなかった。 例えば、赤い漆だったり金屏風なんかは本当に周りの明るさで 見え方はずいぶん違うんでしょう。 その本来の美しさを見てみたくなりました。

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2013/02/17

正論づくしの日本文化論。西洋文化との比較で、現在の日本の生活様式を、その根本的な発祥の違いから日本人の「不幸」と位置づける。もし日本独自の文明がそのまま発達したならば、現在の我々の生活は様変わりしていただろう。そのことに対する悔恨と憧憬が綴られる。目からウロコの日本文化論なのだ。...

正論づくしの日本文化論。西洋文化との比較で、現在の日本の生活様式を、その根本的な発祥の違いから日本人の「不幸」と位置づける。もし日本独自の文明がそのまま発達したならば、現在の我々の生活は様変わりしていただろう。そのことに対する悔恨と憧憬が綴られる。目からウロコの日本文化論なのだ。日本人必読の傑作。

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2013/01/21

えろじじいという印象が強かったんだけど、考えを改めました。すみませんでした…。 暗く怖い闇を知らずに、どうやって光を知れるか。こんご、何度か読み返すときがきそう。

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2013/01/12

西欧の曇りのない銀食器と日本の茶器などを比較して、日本の美的感覚を考察する1冊。 文明開化前の日本の美には陰が前提としてあります。 明るくない、陰影が落ちた中で見るからこそ、ものとものとの境界が曖昧になる。日本はそんな美を求め続けたにも関わらず、文明開化後は西欧の明るい電気の元に...

西欧の曇りのない銀食器と日本の茶器などを比較して、日本の美的感覚を考察する1冊。 文明開化前の日本の美には陰が前提としてあります。 明るくない、陰影が落ちた中で見るからこそ、ものとものとの境界が曖昧になる。日本はそんな美を求め続けたにも関わらず、文明開化後は西欧の明るい電気の元にその美を持ち込んだために、バランスが取れなくなってしまったし、日本はどうしてこんなあか抜けないものを作っていたんだろうという感覚になってしまった。 日本を見つめなおすには、本書がうってつけです。

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2013/01/10

この本を読んでから、京都・奈良の社寺仏閣の楽しみ方を知り、毎年師走になると(空いてるので)、出掛けるようになりました。 初版が1975年になっているので、40年前にはもう日本古来の美意識は薄れかけていたんですね。 LEDの電球色って、なんか偽物っぽくてしっくりこないですよね。...

この本を読んでから、京都・奈良の社寺仏閣の楽しみ方を知り、毎年師走になると(空いてるので)、出掛けるようになりました。 初版が1975年になっているので、40年前にはもう日本古来の美意識は薄れかけていたんですね。 LEDの電球色って、なんか偽物っぽくてしっくりこないですよね。個人的には白熱電球がやっぱり好きだけど、エネルギー消費量の圧倒的な違いを考えるとしょうがないですね。(レビューでも感想でも無いですね)

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2012/11/04

建築を学んでいるために、この本は知っていたが、難しそう…と思いなかなか手が出せなかった一冊。しかし読んでみると、文体が軽妙で、内容もユーモラスですぐに読み切った。やはり陰翳礼讃の建物については興味深く、また、女が闇とセットであったことも、面白かった。自分の新しい視点を得れたと思う...

建築を学んでいるために、この本は知っていたが、難しそう…と思いなかなか手が出せなかった一冊。しかし読んでみると、文体が軽妙で、内容もユーモラスですぐに読み切った。やはり陰翳礼讃の建物については興味深く、また、女が闇とセットであったことも、面白かった。自分の新しい視点を得れたと思う。

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2012/10/15

品と重厚感のある一流の文章で、日本の伝統美をたたえ、西洋文化をDISっています。LEDライトが煌々と光る部屋で、派手で分かりやすいハリウッド映画を流し、クリームたっぷりのケーキを食べながら読むとさらにいい味が出ます。もちろん、トイレはウォシュレット。

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