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弟の戦争 の商品レビュー

4.2

39件のお客様レビュー

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2024/07/26

弱っている動物に優しく、難民の子どもの写真を見るとどうにかしてほしいというような弟のフィギス。 弟が成長するにつれてそばにいる兄は、何度も弟が誰か違う人格がいるのでは…と思う不思議な体験をする。 それは、湾岸戦争が始まった頃からで、フィギスは12歳になっていた。 フィギスに乗...

弱っている動物に優しく、難民の子どもの写真を見るとどうにかしてほしいというような弟のフィギス。 弟が成長するにつれてそばにいる兄は、何度も弟が誰か違う人格がいるのでは…と思う不思議な体験をする。 それは、湾岸戦争が始まった頃からで、フィギスは12歳になっていた。 フィギスに乗り移ったイラクの少年兵・ラティーフから伝わってくる戦争の残酷さに目を背けることができないのは、フィギス自身なのだと思うと尚更に辛さが増し心が痛む。 湾岸戦争を鮮明に覚えていることはないのだが、最新兵器は死傷者を最小限におさえる「きれいな戦争」だと言うことに胸糞悪い思いだった。 どれだけの子どもたちが犠牲になったであろうか。 その苦しさ、悔しさ、辛さ、絶望、ありとあらゆる負の感情を生きている少年の心に入り込んでまで、伝えてきたんだと言うことに戦争を無くせという声を聞いた感じがした。

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2024/07/24

途中までノンフィクションかなと勘違いしてしまうような迫力のある小説でした。最後のほうに笑える要素があったり、ホラー的なちょっとありえないような場面もあったりでようやくフィクションであることに気づく、そんな感じでした。

Posted byブクログ

2024/07/14

2021年8月、カブール空港から撤退する米空軍機に、脱出を望むアフガニスタン人がしがみつき、離陸後に振り落とされる映像を思い出す。 19991年湾岸戦争が終結し、1992年本書が英国にて刊行。 2001年9月11日同時多発テロを受けてアフガニスタン戦争が開戦し、20年に及ぶ泥沼...

2021年8月、カブール空港から撤退する米空軍機に、脱出を望むアフガニスタン人がしがみつき、離陸後に振り落とされる映像を思い出す。 19991年湾岸戦争が終結し、1992年本書が英国にて刊行。 2001年9月11日同時多発テロを受けてアフガニスタン戦争が開戦し、20年に及ぶ泥沼の戦いの後にアメリカは敗北に等しい撤退をする。 その間にはテロ容疑者に対する米軍の拷問、性的虐待も暴露されている。 もはや世界中の誰も、正義のための良い戦争の存在も、最小限の犠牲などという欺瞞も信じることはない。 それでも、ウクライナ戦争への軍事支援は? ハマスの奇襲と人質連行に対するガザ侵攻は? ミャンマー国軍への抵抗は? どこまでが“許されて”、どこまでが“行き過ぎ”なのか。良い戦争という幻想が消えた代わりに、虚しい線引きを考えることが強いられるのは何故か。 自らの行為の醜悪さを自覚しながらも大義を掲げて戦いに赴くものに、感情移入できるのか。 彼等が昨日までは兵士ではなく、ただの市民であったことを忘れずにいられるか。 目を閉じて、半径3メートルの世界で幸せを探したくなる。 本書のラストで「危機」を乗り越えた後の、傷つき優しく寄り添って内向的になる家族の姿はあまりにも苦い味を残す。 目の前の我が子の苦しみになにもできずマッチョさを失ってゆく父親、自信を失い人道主義・博愛主義のキャリアを降りた母親、他者への共感に押しつぶされて自我の一部を失い、代償のごとく全てを忘却して“普通の退屈な”男の子になってゆく弟。 1993年に亡くなったウェストールが生前に発表した最後の作品である本書が求めるものは、皆が忘れたふりをしている中でも苦しくても覚えておくこと、そして独りでも自問し続けること。 忘れやすい僕は、たまにこうして自分を揺りおこす必要がある。 結局はまた、無力感にまどろんでしまうのだとしても。 なんどでも、なんどでも。答えがないことはわかっていても。

Posted byブクログ

2024/07/13

どなたかのレビューを読んで図書館予約 〈 人の気持ちを読み取る不思議な力も持っている。そんな弟が、ある時「自分はイラク軍の少年兵だ」と言い出した。湾岸戦争が始まった夏のことだった…。人と人の心の絆の不思議さが胸に迫る話題作。〉 湾岸戦争 連日のテレビニュース まるで映画のよう...

どなたかのレビューを読んで図書館予約 〈 人の気持ちを読み取る不思議な力も持っている。そんな弟が、ある時「自分はイラク軍の少年兵だ」と言い出した。湾岸戦争が始まった夏のことだった…。人と人の心の絆の不思議さが胸に迫る話題作。〉 湾岸戦争 連日のテレビニュース まるで映画のような遠い映像 でもうさん臭さはきつく感じていた イラク、フセインだけが悪か?! 憎しみの連鎖 あとがきにあるように、戦争のリアルをうまく物語にしているなあと 作者はイギリス児童文学の巨匠といわれるウェストール 今現実に起こっている戦争 いろんな角度から見つめたい 知らずに自分は何かに加担しているのではないかと ≪ 爆撃の 下でふるえる 少年兵 ≫

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2024/06/24

今の時代だからこそ、読んで欲しい。 テレビの向こうの戦争ではなく、いつ自分も巻き込まれるか、苦しんでいる人達がどれだけいるか、戦争とは何かを考えさせられる。 全てを共感するのは難しくても、現状をしっかり見て聞いて考えて、知ることは本当に大切だと思った。 「弟はぼくらの良心だった」...

今の時代だからこそ、読んで欲しい。 テレビの向こうの戦争ではなく、いつ自分も巻き込まれるか、苦しんでいる人達がどれだけいるか、戦争とは何かを考えさせられる。 全てを共感するのは難しくても、現状をしっかり見て聞いて考えて、知ることは本当に大切だと思った。 「弟はぼくらの良心だった」というような文があったけれど(しっかりメモし忘れました)、とても印象に残った。

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2024/06/23

 本書は、フォローしている方のレビューによって知ることができ(別の本)、イギリス児童文学を代表する作家とのことですが全く知らなくて、今回出会えたことに、とても感謝しております。ありがとうございます。  カテゴリとしては児童書になるけれど、過去の私のように、湾岸戦争には善と悪と...

 本書は、フォローしている方のレビューによって知ることができ(別の本)、イギリス児童文学を代表する作家とのことですが全く知らなくて、今回出会えたことに、とても感謝しております。ありがとうございます。  カテゴリとしては児童書になるけれど、過去の私のように、湾岸戦争には善と悪とが、はっきりしていたと思っている方には、特に読んでほしい作品。  トムの弟「フィギス」こと、アンディは正気では無かったように思われていたけれど、それは完全に真逆で、狂っているのは周りの世界だと知ったときの衝撃度は凄いものがあったものの、そこには確かに当時の私も含まれていたことを改めて痛感させられた、それは『ひとつの小さな体の中に戦争が丸ごとあった』という、現実とファンタジーの狭間にあるような設定から見事に戦争の本性を暴き出した、作家ロバート・ウェストール自身の斬新でありながら、これ以上無いという程の説得力を持って、戦争というものの現実味を物語を通して私に体感させてくれた、それは現場で何が起こっているのかも知らずに、正義とか悪とか分かったように言っていた、人間の愚かさも如実に表していたのである。  そして、訳者原田勝さんのあとがきには、改めて心を痛め、確かにサダム・フセインは問題のある大統領だったけれども、彼の中にも理由はあり、何よりもイラクにだって普通に暮らす人達が存在するのだということ、それを私は自宅のテレビで他人事のようにして観ていたこと、それらを思い出しながらハッとさせられたのが、『これほど「良い者」と「悪い者」がはっきりしている戦争はないように思えた』けれども、『「良い戦争」など絶対にない』ということ。本当にその通りだと思った。  中でも、当時の私があまりに無知すぎて、今回初めて知ったことで怒りを覚えたのが、当時の最新兵器は死傷者を最小限におさえる『きれいな戦争』を実現すると言われていたことで、これを読んだ瞬間、涙が止まらなくなって、ふざけんなって思った。死傷者を最小限におさえるって、その時点で亡くなった人がいるってことじゃないか。何がきれいな戦争だよ。戦争にきれいも汚いもないんだよ! と言いたくなるくらい、我が事のように感じ入ることができた、そんな本書は、兄弟の絆のあり方も爽やかな余韻を残してくれた、素晴らしい作品だと思う。

Posted byブクログ

2024/02/17

 誰か、何かに感情移入するのは、「弟」にとって当たり前なんだろうな、と思います。「弟」は感性が鋭いキャラクターとして描かれていると感じました。  でも、感情移入しやすいというのは、両刃の剣なのかもしれません。  相手が苦しい、怖いと感じると、自分もそう感じる。相手に寄り添いやすい...

 誰か、何かに感情移入するのは、「弟」にとって当たり前なんだろうな、と思います。「弟」は感性が鋭いキャラクターとして描かれていると感じました。  でも、感情移入しやすいというのは、両刃の剣なのかもしれません。  相手が苦しい、怖いと感じると、自分もそう感じる。相手に寄り添いやすいというのは、いいこと。だけど、自分も傷ついて苦しくなってしまうのかな、と読みながら考えていました。

Posted byブクログ

2023/07/19

「きみの弟はあまりにも正気だったんだ。だれもが自分と同じ人間だ、っていう思いが強すぎたんだよ。狂っているのはまわりの世界の方さ。」 主人公トムはイギリス人の少年。弟であるフィギスことアンディのことが大好きだ。 けれど人一倍感受性が強く、優しすぎる弟は時折突拍子もないことをし、第...

「きみの弟はあまりにも正気だったんだ。だれもが自分と同じ人間だ、っていう思いが強すぎたんだよ。狂っているのはまわりの世界の方さ。」 主人公トムはイギリス人の少年。弟であるフィギスことアンディのことが大好きだ。 けれど人一倍感受性が強く、優しすぎる弟は時折突拍子もないことをし、第一次湾岸戦争が始まった頃、寝ている間まるで人が変わったような行動を取るようになる。そのことに責任の一端を感じたトムはその行動の意味するところの最後までを見届けようとする。 すごくあらすじを書くのが難しい。 けれど作中でも言っていたように、これだけは言える。良い戦争なんてものはない。こうも言い換えられる。正義のある戦争なんてない。 日本ではいよいよ戦争の恐ろしさや悲惨さを忘れて久しい。来月にはまた終戦記念日が訪れるが、無関心な人の方が多いのではなかろうか。ロシアが戦争を仕掛け始めて一年をとうにすぎ、日本もまた、戦争へと刻々と近づいているのではないかと恐ろしくてならない。 世界中、私たちは同じ人間で、苦しむのはいつも普通の人たちだ。…つまり私たちのような人間だ。 そのことを忘れてはいけない。 万が一戦争の熱に浮かされそうになった時は、戦争により苦しむのは、消えて無くなるのは私たちだと自認していなければならない。 忘れてはいけない。 他にも家族の在り方、人生における仕事とは、人種差別などなど多くのメッセージが込められた本作だが、そう思わせてくれた。 児童文学ではあるが、老若男女分け隔てなく読んでほしい一冊だ。 この作品が評価され続ける世界であってほしい。

Posted byブクログ

2022/10/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

どんな命も、誰も命も同じだと、大切に思える少年の優しすぎる心が戦地へ飛んでいき、現地の少年の目を通して悲惨な戦争を目撃、体験する。 つらい思いをするのはいつだって普通の人たちなのです。 どんな戦争でも人が死に、それを悲しむ者がいる。(訳者あとがき)

Posted byブクログ

2021/10/03

第一次湾岸戦争時の物語。「誰もが同じ人間だ」と思えないと、悪いやつが治める国の国民はどうなっても仕方がない、と思いかねない?!その反面「誰もが同じ人間なんだから、同じような考えを持っていて当り前」と思ってしまうと他者への想像が難しくなる…そんなことを考えさせられたセリフ、「誰もが...

第一次湾岸戦争時の物語。「誰もが同じ人間だ」と思えないと、悪いやつが治める国の国民はどうなっても仕方がない、と思いかねない?!その反面「誰もが同じ人間なんだから、同じような考えを持っていて当り前」と思ってしまうと他者への想像が難しくなる…そんなことを考えさせられたセリフ、「誰もが自分と同じ人間だ、っていう思いが強すぎる。狂ってるのは世界の方だ…」という文章が印象に残った。

Posted byブクログ