弟の戦争 の商品レビュー
兄弟や親子、家族のつながりって、国によって違うよなぁと思う。もちろん人によってもかなり違うけど。 自分の兄弟をとても愛し、その兄弟が特異な体質を持っていたとして、自分一人で抱えられるだろうか。 最初は面白半分だとしても、説明のつかないことがどんどん出てきて、明らかにおかしい、狂っ...
兄弟や親子、家族のつながりって、国によって違うよなぁと思う。もちろん人によってもかなり違うけど。 自分の兄弟をとても愛し、その兄弟が特異な体質を持っていたとして、自分一人で抱えられるだろうか。 最初は面白半分だとしても、説明のつかないことがどんどん出てきて、明らかにおかしい、狂っているのではなく「普通ではない」と思って、それでも寄り添えるだろうか。 戦争に関する報道は、まったく身近にはない。いったことのない国の、世界地図でしか認識していない場所での戦争。 それは他人事であり、そのニュースすらも熱心に追いかけることはない。過去に起こった大戦には興味を持っても、現在おこっている戦争には頓着しない。 誰かの利害があって、でもその人は当事者ではなく、自分みたいな一般市民がある日突然戦う。人を殺す。より多くの人を殺してから死にたい、と思ってしまう。 自分に何がどうできるかはわからないけど、すべての人が自分や自分の大切な人のために平和に過ごせることを願うし、そのようになればいいと思うし、ならなければならないと思う。 でも、何ができるだろうか。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
本当に夢なのか。 遠くにいる誰かの夢を見るフィギス。 遠くにいる誰かになってしまうフィギス。 アンディは忘れてしまうけど、兄のトムは覚えている。 いい家族なんだろうけど、フィギスの居場所はなくて、真剣に受け止めてくれる人も少なくて、それを今の世の中に例えて考えたら怖くなった。 YA向けの本らしいけど、突き詰めると現代ニュースとか社会問題をすごく反映させて、それに無関心な私たちを描いているのかな、と勝手に深読みしてしまいました。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
なんという切ない本なのだろうか… こんなに心をえぐられて、 悲しくて、やるせないと思う本は そうそう出会えません。 そして、これ、児童書ですよ? クオリティが高すぎるのです。 この本を読むこれから大人の体へ近づいてくる 子供たちには、この本の大きな意味は 分からないことでしょう。 ただ、戦争には正義なんかないのです。 結局、憎しみしか生まないこと。 現実に中東の現在の戦争では 生まれるものは、憎しみと 弱気ものの血しか流されません。 これが現状なのです。 フィギスの体に宿った ラティーフの魂は こころからの叫びだったのでしょう。 恵まれない環境なのに 一方の別の国は豊か… 不条理… これを解決しないといけないのに いまだにできていないのです。 悲しいですよね。
Posted by
イギリスに生まれたトムには、弟・アンディ(トムはフィギスと呼ぶ)がいる。 フィギスは小さな頃から、知らないはずの環境・状況の夢をみる事や、些細な物や動物、人に固執する事があった。 それでも、家族四人で平穏に過ごしていた。 しかし、湾岸戦争が始まる少し前、トムが十五歳、フィ...
イギリスに生まれたトムには、弟・アンディ(トムはフィギスと呼ぶ)がいる。 フィギスは小さな頃から、知らないはずの環境・状況の夢をみる事や、些細な物や動物、人に固執する事があった。 それでも、家族四人で平穏に過ごしていた。 しかし、湾岸戦争が始まる少し前、トムが十五歳、フィギスが十二歳の時、フィギスが砂漠の夢を見、英語ではない言葉を叫び始める。 そして湾岸戦争が始まり、フィギスはイラクで少年兵として戦場にいる「ラティーフ」という存在になっていく…。 児童文学ではあるけれど、戦争についてや戦場で少年兵となって苦しむ弟を助けられない兄の苦悩、人種差別など、物語は複雑で深い。
Posted by
素晴らしい作品だった。 こんな風に戦争を描くことができるなんて。 児童書ではあるけれど、湾岸戦争を知る大人も読むべき作品であると思う。 どこかで行われている戦争をTVで見る。 それが今の戦争。 非現実として捉えられてしまう現実。 それを自分のものとして感じるための物語。 物語...
素晴らしい作品だった。 こんな風に戦争を描くことができるなんて。 児童書ではあるけれど、湾岸戦争を知る大人も読むべき作品であると思う。 どこかで行われている戦争をTVで見る。 それが今の戦争。 非現実として捉えられてしまう現実。 それを自分のものとして感じるための物語。 物語としての流れに乗せられて、トムと同調していく。 目の前にフィギスがいるように感じる。 圧倒的な筆力。 突き放した結末が、皮肉を含んで、重たくなく終わらせる。
Posted by
実話に基づく話のようだ。 弟に徐々に表れ始める、別の人格。 兄の目線を通して、その一部始終が語られる。
Posted by
「夜物語」 バウル・ビーヘル 「かっこう時計」 モールズワース 「ぼくの心の闇の声」 ロバート・コーミア 「狼とくらした少女ジュリー」 ジーン・クレイグヘッド・ジョージ 「天使の足あと」ベント・ハラー 「海辺の王国」 ロバート・ウェストール 「魔法使いハウルと火の悪魔」 ダイアナ...
「夜物語」 バウル・ビーヘル 「かっこう時計」 モールズワース 「ぼくの心の闇の声」 ロバート・コーミア 「狼とくらした少女ジュリー」 ジーン・クレイグヘッド・ジョージ 「天使の足あと」ベント・ハラー 「海辺の王国」 ロバート・ウェストール 「魔法使いハウルと火の悪魔」 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
私は、湾岸戦争のテレビから垂れ流される映像を、ぼんやりと眺めいてた者の1人だ。しかし何故だか“Gulf War”という呼称は、頭の中にこびりついて離れなかった。 この本の原題でもある“Gulf”は、訳者あとがきにもある通り「湾」という意味だが、象徴的には「へだたり」や「断絶」も表すらしい。 マスコミやWEBの記事を見て、知った気になっている自分。でも実体験した時とは違う「へだたり」を感じているのにも気づく。 抜け落ちているのは、多分、ニュースになった人の感情だ。 最終章の回想シーンで、主人公はフィギスを「断絶」をなくそう、溝に橋をかけようとした子どもとして理解する。 確かに努力がなければ、溝は埋まらない。でも、相手にシンクロしすぎたら、自分は消えてしまうのだ。 大切なのは、相手でも自分でもない、中間になることなのだろう。最後にフィギスが主人公の中に生きづいたのは、その象徴である気がした。
Posted by
宮崎駿は嫌いなんだけど、その理由の一つに、自分と好きな本がかなり被るというのがある。(なのにアニメ作品が好きになれないので余計にいやになる。) 前に「ウェストールが好きだby宮崎駿」という「他に言い方ないんかい」的帯を見たときから、自分がウェストール好きかもという不安に駆られ、読...
宮崎駿は嫌いなんだけど、その理由の一つに、自分と好きな本がかなり被るというのがある。(なのにアニメ作品が好きになれないので余計にいやになる。) 前に「ウェストールが好きだby宮崎駿」という「他に言い方ないんかい」的帯を見たときから、自分がウェストール好きかもという不安に駆られ、読まないようにしていた。 ついに読んでしまったのだが、悔しいことに良かった。 弟が精神的な感応性が高く、ひどい目にあった人や動物に異常なほど感情移入してしまうというところまでは納得したが、イラク兵になってアラビア語まで喋り出した、というところまで来ると「嘘くさいな」と思ったし、科学的にこういうことはあり得ないと思っているので、ちょっと白けた。 しかし最後まで読むと、ウェストールが言いたかったことが、ずしんと胸に響いた。 この後味の苦さは、人間が是非とも知っておかねばならない味だと思う。 そうなのよ。相手側のことが自分と同じ人間だとリアルに感じていないから戦争が起きるのよ。 マッチョな父親に鋭い言葉を突きつける母親の言葉を、男性作家が書いたということにも感銘を受ける。 児童書ではあるが、政治家に読んでほしい。優秀な医師をアラブ人に設定して、差別問題を盛り込んだところも良かった。
Posted by
戦争で犠牲になる子どもがどれだけ恐怖に慄くのか、曖昧なようではっきりした描写から知ることができます。 戦場で強くなるラティーフと同時に、何も出来ずただ見ているだけで弱っていくフィギス。だけど本当は、ラティーフが弱くなっていってたんだろーなー。 ラシード先生が人種差別について話して...
戦争で犠牲になる子どもがどれだけ恐怖に慄くのか、曖昧なようではっきりした描写から知ることができます。 戦場で強くなるラティーフと同時に、何も出来ずただ見ているだけで弱っていくフィギス。だけど本当は、ラティーフが弱くなっていってたんだろーなー。 ラシード先生が人種差別について話していることからも、シリアの問題がある今だからこそ、子どもに読んで欲しいと思いました。
Posted by