台所のおと の商品レビュー
言葉の使い方で、この世の憂ごとがこんなにも柔らかく見えるものかと思える。そして、幸田文と父、幸田露伴の関係をつづった解説が素晴らしかった。解説に思わず涙ぐんでしまった。父を正しく継いだ娘、という関係に、ぐっとくるものがあった。
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表題『台所のおと』のみ読了。病床の夫と、その病の重さを悟られないよう気丈に振る舞う妻。各々紆余曲折ありつつ互いに年を重ね、はっきりとした愛情表現は口にすることはないけれど、確かに2人は心から想い合っていた-。 ところどころ古い言い回しはあるが抵抗なく、むしろ作中では味のある表現...
表題『台所のおと』のみ読了。病床の夫と、その病の重さを悟られないよう気丈に振る舞う妻。各々紆余曲折ありつつ互いに年を重ね、はっきりとした愛情表現は口にすることはないけれど、確かに2人は心から想い合っていた-。 ところどころ古い言い回しはあるが抵抗なく、むしろ作中では味のある表現に感じた。描写が丁寧で、かつ綺麗な日本語が使われてるため、読んでいて背筋が伸びる。読了後も穏やかな余韻の残る、良い作品だった。
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いまはもう見なくなってしまった情景とか、 あまり聞かなくなった言葉遣いとか、 情緒があっていい。 一方で、時代の変化のせいか、 自分の知識不足か、 理解できない展開などもあり。 自分のボキャブラリーを増やすのに、いい。
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綺麗な日本語を読みたいならこれ!とのレビューを見、購入した。 静謐で淡々とした文章。旧字体で読めなかったり、知らない単語がでてくるたびに高鳴る。ころころとしたアクセサリーのような女性作家の文章が多いように思えるが、心がすとんと落ち着くような、そういう感覚を覚える文章は改めて好き...
綺麗な日本語を読みたいならこれ!とのレビューを見、購入した。 静謐で淡々とした文章。旧字体で読めなかったり、知らない単語がでてくるたびに高鳴る。ころころとしたアクセサリーのような女性作家の文章が多いように思えるが、心がすとんと落ち着くような、そういう感覚を覚える文章は改めて好きだなぁと思った。
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幸田 文 著 講談社文庫 短編集 台所のおと 佐吉は寝勝手をかえて、仰向きを横にしたが、首だけを少しよじって、下側になるほうの耳を枕からよけるようにした。 濃紺 土曜日の午後は、息子の家へ行って寛ぐのが、きよの習慣になっていた。 草履 都会に季節感は少ないといいます。 雪もち 「まあ、いいの?こんなにたくさん。」 食欲 鉄と石とで丈たかくできていり大門を、我知らず縮まって身をひけながらはいって行った。 祝辞 食事のコースもなかばを過ぎ、はじめ固苦しかった客たちにも、すっかり寛いだ空気が行きわたって、久夫と甲斐子の結婚披露宴は今たけなわというところだった。 他人同士は五十六十になれば、もうあまり喧嘩なんかしないけど、夫婦は年とっても、何度も不愉快をぶつけあったり、我慢しあったりするもの、そんな淋しい時に楽しかった記憶がたくさんあるほうが、しのぎいいわ。少なくともあたしはそうだわ。 冷淡なようでもあたし達は、力量につりあわない人情はだめだと思うね。 呼ばれる よく晴れていてそう寒くはないのに、洗濯物を竿にかけていれば、指の先のつめたさがこたえる。 おきみやげ 克江が玄関で大きな声を出して、ただいまあという時は、まだ晩のご飯は食べていないんだ、お腹が空いているのだ、というお触れに決まっていた。 ひとり暮し 去年のくれから、ひとり暮しになった。 あとでの話 今年はきびしい寒さだった。
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静謐で美しい文章によって紡がれる、日々の暮らし。いずれの短編にも、病や不幸な要素が散りばめられており、平成の世でも、親や自分に起こり得る事柄だったので、背筋の伸びる思い。妻がたてる物音で感情の機微を読み取る表題作「台所のおと」に惚れ惚れ。「祝辞」は、収録作の中で一番穏やかな気持ち...
静謐で美しい文章によって紡がれる、日々の暮らし。いずれの短編にも、病や不幸な要素が散りばめられており、平成の世でも、親や自分に起こり得る事柄だったので、背筋の伸びる思い。妻がたてる物音で感情の機微を読み取る表題作「台所のおと」に惚れ惚れ。「祝辞」は、収録作の中で一番穏やかな気持ちになれました。正月に読めて良かった一冊。
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表題作『台所のおと』のみ読了。台所から聞こえてくる、包丁で刻む音、水を流す音をはじめ、人が動く音や気配から、相手のことがこんなにもわかるものなのだろうか。台所でかもし出される音から、夫婦の互いを思う気持ちを描いていくところがすごい。
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美しい文章と、決して退屈しないその流れのよさにうっとりしてしまう。 静かな場所でゆっくり読みたいと思った。 表題作の「台所のおと」と、「雪もち」が特に好きです。 どの作品も、五感の鋭さ、芯の強さが、女性らしさを際立たせている。
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「台所のおと」 「あき」のようでありたかった。わたしは、まったくのところ佐吉の最初の女房そのものだった。 短編なのにつまずきつまずきのろのろぐずぐずと読んだ。酔わない酒をずるずると飲んでいるみたいだった。それでも、「つくろう、こしらえよう、調えよう」にならって、「つくらなきゃ、こしらえなきゃ、調えなきゃ」、とやってきて、数年たってもう一度読んでみた。今度は、少しだけ気持ちよく酔えた。うまい日本酒を飲ル気分だった。 料理好きの料理上手なお母さん(私にとって)と知り合いになった。(まさに、おふくろの味!!) 料理の話を聴いているうちに、、「つくろう、こしらえよう、調えよう」のこころが芽吹いてきた。 病で寝ている佐吉は、台所に立つ女房「あき」のたてる音に慰められる。佐吉は「あき」が台所でたてる様々な音を、何がどう料られているのか、聞き分ける。「あき」は角の立たないやさしい音をたてる。生まれ持った性分がそれを作る。料理人の佐吉がそれを伸ばす。 「あき」にはなれない。私は。が、やはり身につけたいものだと思う。艶のあるやさしい音を。 これは、佐吉とあきが主人公の物語 私は、私が主人公の人生を生きる。それでいいのだ。 もう、落ち込まないぞ。
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