台所のおと の商品レビュー
名前はもちろん知っていたけど、こんなに良い文章を書く女性だとは。さすが、高校の文学史で習うだけのことはあります。 女性というもの、夫婦というもの、病気の際などこれから出会うであろうたくさんの経験を垣間見たような気がします。
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幸田露伴さんの娘さんだと知らずに、高校の時に読みました。 女性の感性で日常をしなやかに切り取る小説、そんなイメージを抱きました。 現代の日常、「音」って凄くペタン、としている気がする。 でもこの小説の中では「音」って「生活」そのもので、ぬくもりのような温度や、柔らかな立体感がある...
幸田露伴さんの娘さんだと知らずに、高校の時に読みました。 女性の感性で日常をしなやかに切り取る小説、そんなイメージを抱きました。 現代の日常、「音」って凄くペタン、としている気がする。 でもこの小説の中では「音」って「生活」そのもので、ぬくもりのような温度や、柔らかな立体感があるんですよね。 この小説を読んで、食事中の箸が鳴る音にさえも耳を澄ませるようになりました。 したたかに音を生みながら生活したいものです。
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ちょうどこの本を読んでいるときに入籍し、結婚式を挙げましたが、女性として一番幸せな時であるとともに、ともすれば舞い上がって大切なことを見失いがちなこの時分に、この本に巡り合えたことが本当によかったと思います。優しく、静かに丁寧に生きている、幸田さんの本に出てくる女性たちは私の憧れ...
ちょうどこの本を読んでいるときに入籍し、結婚式を挙げましたが、女性として一番幸せな時であるとともに、ともすれば舞い上がって大切なことを見失いがちなこの時分に、この本に巡り合えたことが本当によかったと思います。優しく、静かに丁寧に生きている、幸田さんの本に出てくる女性たちは私の憧れです。
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≪内容≫ 病気、夫婦生活、老い、貧困などを題材に、幸田文の女性らしい細やかな感性で書かれた十編の短編小説。 ≪感想≫ 女性たちの細やかな心遣いや立ち振る舞いからは素朴ながらも確かな品位のようなものが感じられ、著者である幸田文の人間性が滲み出ているようにも思う。どの話も決して明るいわけではないが、その困難や不安の中でこそ、女性の芯にある優しさと力強さが見えてくる。
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夫婦、老、病・・・など、どうにも明るくない題材の短編集。 全編において共通することは、女性の芯だったり強さだったりする。 どの作品も「過酷な状況」というものが何某かの形で出てくるのだけれど 立ち向かう女性たちは妻であったり、母であったりしながら、それらのことに目をそむけない...
夫婦、老、病・・・など、どうにも明るくない題材の短編集。 全編において共通することは、女性の芯だったり強さだったりする。 どの作品も「過酷な状況」というものが何某かの形で出てくるのだけれど 立ち向かう女性たちは妻であったり、母であったりしながら、それらのことに目をそむけない。 表題作の『台所のおと』は 小料理店を営む夫が病に伏せ、代わりに10年下の妻が台所に立つ話。 夫の病気について閉口している妻の台所の音を聞く夫、という描写が繊細で美しい。 「気がはやってきたときは、座ればいいのだ。(略)人と口を利きすぎないために、帳面つけをはじめればよかった。」 深い愛情の音がする。
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短編集。とにかく料理が美味しそうでハッとする。落ち着いた女の視点で静かに、しかし鮮やかに語られる物語は心地良い。
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表題作「台所のおと」もいいし、「祝辞」もいい。 夫婦で人生を進んでいくこと、離れることはあってもまた絆を確認して強くしていく様子が描かれていて、なんだか背中を押される。また、生活の端々で感じられるごく小さな気づきや風景がふいに描かれていて、それが控えめでありながら鮮やかで、なんとも味わいがある。日本の文章を読んでいる感じがする。
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読了するのに少々時間がかかった。というのも、表題作含めた10編の女たちの思い、惑い、憂え、決する流れのひとつひとつに思い当たる部分があり過ぎて、ともすると苦しくなってしまうから。小説の登場人物というのは普通キャラクター設定によって方向付けられるが、幸田文の描く人物は実によく揺れ動...
読了するのに少々時間がかかった。というのも、表題作含めた10編の女たちの思い、惑い、憂え、決する流れのひとつひとつに思い当たる部分があり過ぎて、ともすると苦しくなってしまうから。小説の登場人物というのは普通キャラクター設定によって方向付けられるが、幸田文の描く人物は実によく揺れ動く。これが人間なのだと愕然とさせられる面もあり、それでこそ人間なのだと安堵させられもする。重苦しい短編が多いなか「祝辞」は気持ちのよい話だった。これだから人生やめられない。
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病に臥せっている夫の隣の台所で 小さな料理屋を営むあきは今日も仕事をする。 夫の病気は重いらしいけれど医者には口止めされている。 悟られないようにと慎重になるあきだが 最近台所のおとに元気がないと夫に指摘される。 この人はもしかしてすでに気づいているのではないか。 表題作ほか9編...
病に臥せっている夫の隣の台所で 小さな料理屋を営むあきは今日も仕事をする。 夫の病気は重いらしいけれど医者には口止めされている。 悟られないようにと慎重になるあきだが 最近台所のおとに元気がないと夫に指摘される。 この人はもしかしてすでに気づいているのではないか。 表題作ほか9編。 カバーデザイン:菊地信義 カバー写真:坂本真典 女たちのつつましやかな生活感溢れる短編集。 病人がたくさん出てくるのにはっとした。 今まで身の回りに慢性的な病気の人がいなかったから 病気って非日常的なことのような気がしていたけれど この先たぶんそれが日常になる日が来るのだろうなぁ。 「台所のおと」「祝辞」「おきみやげ」が好き。
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120930 全作読了。死は、生の途中で起こるもの。 表題作しか読んでいないけど、表現のあざやかさにはっとする。 (ちなみに我が家の本棚から拝借したものです) 100204 読了 一月下旬のような、透明な冷たさ。
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